2015年 09月 14日
★ネタバレ注意★

■クローザー/シーズン7
■Major Crimes ~重大犯罪課/シーズン1
シーズン始まって割とすぐ、銃撃戦が見込まれるシーンで、民間人であるバズの安全を慮って現場から遠ざけたプロベンザが、女性であり新人であるサイクスについては他のメンバーと完全に同等の扱いをするのを見て、ああ、サイクスもすっかりチームの一員になったのねぇ、と嬉しくなってしまった今季の重大犯罪課です。
レイダーが完全に実力でもって「誰がボスか」を認めさせ、サイクスもまたうまく馴染んだ上は、人的軋轢が完全に解消されてしまったかと言うとそうはいきません。それじゃドラマに波風が立たないものね。今回、撹拌要員として投入されたのが検事補のエマ・リオス(ナディーン・ベラスケス)です。
ラスティが証人を務めるストロー事件の担当検事補ですが、検事局の占める割合がブレンダの時代よりずっと大きくなっている本作では、それ以外のケースでもしばしば重大犯罪課に絡んできます。ゆるふわの巻き髪に12㎝のハイヒール、身体の線も露わなタイトミニのワンピースに、派手なスカーフやジャラジャラのアクセ、テイラーをラッセル呼びし、ラスティに向かって「ティーンエイジ・プロスティテュート」呼ばわりして憚らない超絶高飛車な女。
ただでさえ、一緒に仕事したくないタイプの、憎まれっ子として造形されたキャラクターですが、更なるダメオシとしてサンチェスとの絡みを持ってきました。SHB(スモーキンホットベイブ)には目のないサンチェスからしたら、ラテン系派手目美人のリオスはまさにどストライク。一目見た時から気に入ってせっせとアプローチに励むのですが、リオスの方ではサンチェスなんか全く眼中にありません。何度一緒に仕事をしても、名前すらまともに覚えようとしない始末。
公平に考えれば、職場で同僚女性に性的関心を抱くサンチェスの方もどうかと思うんですが、なにしろわれわれは(って誰々だ)サンチェスのファンですから、サンチェスをないがしろにするリオスがひたすら憎たらしい。視聴者ですらそう思うくらいだから、サンチェスのチームメイトたちもまた、リオスのことを苦々しく思っています。リオスはとかく人間関係に葛藤をもたらす不発弾。そしてその鬱憤はある事件をきっかけに爆発します。
それは例によってギャングがらみの一件、というより、一見、ギャング間の抗争に「見える」事件だった。しかし、長年ギャングに取り組んできた、身内を殺された経験すらあるサンチェスからしたら、この事件がギャング案件なんかじゃないことは火を見るよりも明らかだった。そこを舐めてかかって雑な仕事をしたら、報復合戦が始まって深刻な巻き添え被害をもたらしかねない。それなのにリオスときたら、犯人も動機も一目瞭然、こんなイージーケース、楽勝だわ、と舐めた態度に終始。そこでついにサンチェスが切れるのです。
こいつはギャング案件じゃない。口を慎むのはあんたの方だ。断じてギャングじゃあない! それからな、おれに対してウェイター相手みたいな口をきくのもやめろ。
恐らく格下認定していたであろうサンチェスに、思いがけない反撃をくらったリオスは、さすがにシュンとなってしまいます。それ以来、鼻っ柱が強いのは相変わらずだけど、(当然ながら)サンチェスの名前もきっちり覚えたし、リオスの方から歩み寄る姿勢を見せるようにすらなります。そうなってくると、最初のうちは忌々しい要因でしかなかった「血が苦手」という属性ですら何だかかわいく思えてきたりして、好感とまではいかないものの、嫌いじゃない、ぐらいのポジションを獲得。次のシーズンでも続投するのなら、もっとチームに馴染んでくれたらいいわね、と思うのでした。
今季、もうひとりの注目すべきキャラクターは、レイダーの夫のジャックです。演じるはトム・ベレンジャー。出オチ要員のビッグネームかと思いきや、さにあらず。数話限りの登場でしたが、ジャックという人物自身がクッキリと造形されており、レイダーとの関係性を通してレイダーの人となりもまたより明らかになっていくという手練れの脚本でした。
ジャックは弁護士さん。レイダーとは20年にも渡る別居生活中。これに関して、ラスティに何故離婚しないの? と尋ねられたレイダーが答えています。
経済的な問題もあるし、宗教的な問題もあるし、なんだか説明できないアレコレもね、あるのよ、いろいろ。
説明できないアレコレって、それは情ってやつでしょう。もはや愛ではないけれど、見限ることもできない何か。レイダー自身はとてもしっかりした女性ですが、それだからこそ、ダメ男を背負い込んでしまう巡り合わせにあるのかも。
ジャックというひとは、マメだし楽しいし友達にするなら大変よい人物だけど、圧倒的に家庭人としての責任感に欠けており、妻と別居した後は実子に電話すらかけようとしなかったし、妻の下を訪れるのも金銭的に困った時だけ。自分がダメンズであるという自覚は実はしっかり持っていて、妻に対しては劣等感の塊。自分がロースクールに行くために、同じくロースクールを志望していた妻には学業を諦めさせたのに(それ故レイダーは警察に就職した)、年月を経てみれば、仕事の上でも成功しているのは妻の方で、自分はしがない公選弁護人。妻に感謝もし、申し訳ないとも思っているけど、心のどこかで見返してやりたい思いが消せない。そんなダメ男を、レイダーはしかし完全に切ることができない。
仕事の上では厳しいけれど、そういう情の深さがレイダーの大きな人間的魅力です。クリスマスツリーの飾りつけは天使のオーナメントが大好きだったり、パンケーキは一枚でお腹がいっぱいになっちゃうので二枚目は食べられなかったり、職業柄マニキュアはしないけど実は綺麗にペディキュアをしていたり、窮屈なハイヒールが苦手で家に帰ったら速攻で脱いじゃったり、と小さな描写の積み重ねが愛しいのです。
そしてそんな描写が、クライマックスで生きてくるのですね。
今季は、ラスティに証言されたら困るストローが雇った代筆屋による脅迫状、というイシューが常に通奏低音のように不穏に鳴り続けていたのですが、番組が進むにつれ、次第にそれがエスカレートしていく。最初の脅迫状を受け取った時、即座に証人保護名目でレイダーと引き離されそうになってしまったラスティは、二通目以降については大人に相談することができなくなってしまいます。どんな物語のどんな内容のものであれ、当然共有すべき秘密を誰かが独占してしまうことがいい結果に繋がることなんかありません。一通、さらにまた一通と、脅迫状をため込んでしまうラスティの姿に視聴者は煎り煎り焦れ焦れしてしまいます。
しかしついにレイダーにまで脅迫状が届くに及び、30通近い脅迫状の存在を知ったレイダーは座して災禍を待つよりは、と反撃に出ることにする。ラスティを囮にして代筆屋を引きずり出すのです。そんな危険なこと、ほんとはラスティにさせたくない。ついうっかり自分のことをラスティの「母親」だと言ってしまうまでになったレイダーの心中は、察するに余りあるのです。
しかし、見事に警察の包囲網を突破した代書屋が、ラスティを拉致したと知った時、レイダーは裸足で現場に駆け付けるのです。犯人はレイダーが住んでいるマンションの一室を、そこの住人を殺して乗っ取っていたのです。もう、いろんな要素がギュッと凝縮された緊迫の一場ですが、それもこれも、今までじっくり時間をかけてレイダーとラスティの関係性や、ハイヒールを脱ぐ癖やらペディキュアやら、レイダーの暮らしぶりを描いてきたからこそ成り立つシーンでした。ラスティを守るため、ふんわりした女っぽいブラウス姿でガッチリと銃を構えるレイダーの色っぽいことといったら。母は強し、なのです。
今季のもうひとつの柱としては、ラスティの性的アイデンティティの問題がありました。母親に棄てられたラスティは、わずか15歳という年齢で、生きるためにストリートで身体を売らなければならなかった。快楽のために少年の身体を買うのは同性である男です。同性に身を任せたからと言って、少年の性的嗜好が同性に向いているわけではない。鳥肌が立つほど嫌で辛くておぞましいことを、ただ飢えを満たすためだけに、歯を食いしばって耐えていたのにすぎません。
だけど、なんですね。ラスティの心の奥底では、だけど、という疑念が常に燻っていた。自分が男たちに身を任せたのは、自分の中にゲイ的要素があったからではないのか、と。
ゲイであろうがなかろうが、そんなこと罪でも恥でもなんでもない。ゲイであろうがなかろうが、売春が鳥肌が立つほど嫌で辛くておぞましいことであったことに変わりはない。レイダーにしろプロベンザにしろバズにしろ、ラスティが信頼していた大人たちは誰も、ラスティの過去について痛ましいとは思っても、唾棄すべきことだなどと思うわけがない。だけどラスティは、頑なにそのときの話をかれらに聞かれることを恐れるのですね。裁判で見知らぬ公衆の前で口にするのはいい。だけどレイダーの耳にだけは入れたくなかった。だってそんなことを知られたら、嫌われてしまうに違いないから。
思いつめるあまり、もうそばにはいられない、とまで言い出したラスティに、レイダーは心の底から真摯な思いを告げるのです。
Rusty,what you are is who I love. And all of you is coming home.
ラスティ、あなたが何であれ愛しているわ。だから何にも変わらないあなたのままで家に帰っていらっしゃい。
と、感動的な台詞の後でナンですが、もうひとり、フリンについても言及しておかなきゃね。フリン、なんとびっくり恋する男フラグですよ。
シーズン冒頭から、まもなく結婚する娘のことで心中穏やかならぬフリン。妻とは離婚して、フリンとは疎遠のまま継父に育てられた娘。その結婚式に、継父と同席したくないフリン。妻方の親戚連中と顔をあわせるのも針の筵だし。イヤが高じて高血圧の発作起こして倒れちゃったりする始末。
しかしついに腹を括って大人しく結婚式に出席することを決めたフリン、レイダーに半休の許可を貰いに行きます。さてそこで、よきキリスト者であるレイダーは苦悩するフリンを見捨てることができません。
「行くことにしたのね? 親戚の皆さんへの防波堤はいらないかしら? わたし、結婚式って好きよ?」
「えっ? マジで? えっと、でも、その、あなたのこと一体何て紹介したらいいんです?」
「そうね、友達のシャロン、ではどうかしら?」
「ってことは、その、もしやデートとかそういうことでは?」
「もちろん違うわ、わたしは既婚者よ」
「あ、そっ、そうっすよね、そりゃそうだ、ありがとうございます、キャプテン、っていうか、その、シャロン☆」
それが全ての始まりだった(笑)。以来、隙あらばシャロン呼びしてプロベンザから「その呼び方はやめい」と窘められても、口をとがらせて「だってそれが名前だし!」と嘯くフリンは、猫まっしぐらっぽい。今度は娘の夫の連れ子(フリンからした義孫)のバレエの発表会にかこつけてレイダーを誘い出すことに成功します。さてこの恋、果たして発展するや否や。
ほかのアメドラだったら発展しないはずがないんですが、なにしろレイダーでしょ、規則に厳しい女性、っていうのが最大のセールスポイントですからね。そんな女性が、離婚もしていない状況で安易に夫以外の男性と恋に落ちるとあっては、キャラクター崩壊の危機ですもの、そこはうまくやってほしいと思う一方で、フリンの恋が実るといいな、とも思ってしまうのでした。シーズン3については、まだ何も知らないわたくしです。

■クローザー/シーズン7
■Major Crimes ~重大犯罪課/シーズン1
シーズン始まって割とすぐ、銃撃戦が見込まれるシーンで、民間人であるバズの安全を慮って現場から遠ざけたプロベンザが、女性であり新人であるサイクスについては他のメンバーと完全に同等の扱いをするのを見て、ああ、サイクスもすっかりチームの一員になったのねぇ、と嬉しくなってしまった今季の重大犯罪課です。
レイダーが完全に実力でもって「誰がボスか」を認めさせ、サイクスもまたうまく馴染んだ上は、人的軋轢が完全に解消されてしまったかと言うとそうはいきません。それじゃドラマに波風が立たないものね。今回、撹拌要員として投入されたのが検事補のエマ・リオス(ナディーン・ベラスケス)です。
ラスティが証人を務めるストロー事件の担当検事補ですが、検事局の占める割合がブレンダの時代よりずっと大きくなっている本作では、それ以外のケースでもしばしば重大犯罪課に絡んできます。ゆるふわの巻き髪に12㎝のハイヒール、身体の線も露わなタイトミニのワンピースに、派手なスカーフやジャラジャラのアクセ、テイラーをラッセル呼びし、ラスティに向かって「ティーンエイジ・プロスティテュート」呼ばわりして憚らない超絶高飛車な女。
ただでさえ、一緒に仕事したくないタイプの、憎まれっ子として造形されたキャラクターですが、更なるダメオシとしてサンチェスとの絡みを持ってきました。SHB(スモーキンホットベイブ)には目のないサンチェスからしたら、ラテン系派手目美人のリオスはまさにどストライク。一目見た時から気に入ってせっせとアプローチに励むのですが、リオスの方ではサンチェスなんか全く眼中にありません。何度一緒に仕事をしても、名前すらまともに覚えようとしない始末。
公平に考えれば、職場で同僚女性に性的関心を抱くサンチェスの方もどうかと思うんですが、なにしろわれわれは(って誰々だ)サンチェスのファンですから、サンチェスをないがしろにするリオスがひたすら憎たらしい。視聴者ですらそう思うくらいだから、サンチェスのチームメイトたちもまた、リオスのことを苦々しく思っています。リオスはとかく人間関係に葛藤をもたらす不発弾。そしてその鬱憤はある事件をきっかけに爆発します。
それは例によってギャングがらみの一件、というより、一見、ギャング間の抗争に「見える」事件だった。しかし、長年ギャングに取り組んできた、身内を殺された経験すらあるサンチェスからしたら、この事件がギャング案件なんかじゃないことは火を見るよりも明らかだった。そこを舐めてかかって雑な仕事をしたら、報復合戦が始まって深刻な巻き添え被害をもたらしかねない。それなのにリオスときたら、犯人も動機も一目瞭然、こんなイージーケース、楽勝だわ、と舐めた態度に終始。そこでついにサンチェスが切れるのです。
こいつはギャング案件じゃない。口を慎むのはあんたの方だ。断じてギャングじゃあない! それからな、おれに対してウェイター相手みたいな口をきくのもやめろ。
恐らく格下認定していたであろうサンチェスに、思いがけない反撃をくらったリオスは、さすがにシュンとなってしまいます。それ以来、鼻っ柱が強いのは相変わらずだけど、(当然ながら)サンチェスの名前もきっちり覚えたし、リオスの方から歩み寄る姿勢を見せるようにすらなります。そうなってくると、最初のうちは忌々しい要因でしかなかった「血が苦手」という属性ですら何だかかわいく思えてきたりして、好感とまではいかないものの、嫌いじゃない、ぐらいのポジションを獲得。次のシーズンでも続投するのなら、もっとチームに馴染んでくれたらいいわね、と思うのでした。
今季、もうひとりの注目すべきキャラクターは、レイダーの夫のジャックです。演じるはトム・ベレンジャー。出オチ要員のビッグネームかと思いきや、さにあらず。数話限りの登場でしたが、ジャックという人物自身がクッキリと造形されており、レイダーとの関係性を通してレイダーの人となりもまたより明らかになっていくという手練れの脚本でした。
ジャックは弁護士さん。レイダーとは20年にも渡る別居生活中。これに関して、ラスティに何故離婚しないの? と尋ねられたレイダーが答えています。
経済的な問題もあるし、宗教的な問題もあるし、なんだか説明できないアレコレもね、あるのよ、いろいろ。
説明できないアレコレって、それは情ってやつでしょう。もはや愛ではないけれど、見限ることもできない何か。レイダー自身はとてもしっかりした女性ですが、それだからこそ、ダメ男を背負い込んでしまう巡り合わせにあるのかも。
ジャックというひとは、マメだし楽しいし友達にするなら大変よい人物だけど、圧倒的に家庭人としての責任感に欠けており、妻と別居した後は実子に電話すらかけようとしなかったし、妻の下を訪れるのも金銭的に困った時だけ。自分がダメンズであるという自覚は実はしっかり持っていて、妻に対しては劣等感の塊。自分がロースクールに行くために、同じくロースクールを志望していた妻には学業を諦めさせたのに(それ故レイダーは警察に就職した)、年月を経てみれば、仕事の上でも成功しているのは妻の方で、自分はしがない公選弁護人。妻に感謝もし、申し訳ないとも思っているけど、心のどこかで見返してやりたい思いが消せない。そんなダメ男を、レイダーはしかし完全に切ることができない。
仕事の上では厳しいけれど、そういう情の深さがレイダーの大きな人間的魅力です。クリスマスツリーの飾りつけは天使のオーナメントが大好きだったり、パンケーキは一枚でお腹がいっぱいになっちゃうので二枚目は食べられなかったり、職業柄マニキュアはしないけど実は綺麗にペディキュアをしていたり、窮屈なハイヒールが苦手で家に帰ったら速攻で脱いじゃったり、と小さな描写の積み重ねが愛しいのです。
そしてそんな描写が、クライマックスで生きてくるのですね。
今季は、ラスティに証言されたら困るストローが雇った代筆屋による脅迫状、というイシューが常に通奏低音のように不穏に鳴り続けていたのですが、番組が進むにつれ、次第にそれがエスカレートしていく。最初の脅迫状を受け取った時、即座に証人保護名目でレイダーと引き離されそうになってしまったラスティは、二通目以降については大人に相談することができなくなってしまいます。どんな物語のどんな内容のものであれ、当然共有すべき秘密を誰かが独占してしまうことがいい結果に繋がることなんかありません。一通、さらにまた一通と、脅迫状をため込んでしまうラスティの姿に視聴者は煎り煎り焦れ焦れしてしまいます。
しかしついにレイダーにまで脅迫状が届くに及び、30通近い脅迫状の存在を知ったレイダーは座して災禍を待つよりは、と反撃に出ることにする。ラスティを囮にして代筆屋を引きずり出すのです。そんな危険なこと、ほんとはラスティにさせたくない。ついうっかり自分のことをラスティの「母親」だと言ってしまうまでになったレイダーの心中は、察するに余りあるのです。
しかし、見事に警察の包囲網を突破した代書屋が、ラスティを拉致したと知った時、レイダーは裸足で現場に駆け付けるのです。犯人はレイダーが住んでいるマンションの一室を、そこの住人を殺して乗っ取っていたのです。もう、いろんな要素がギュッと凝縮された緊迫の一場ですが、それもこれも、今までじっくり時間をかけてレイダーとラスティの関係性や、ハイヒールを脱ぐ癖やらペディキュアやら、レイダーの暮らしぶりを描いてきたからこそ成り立つシーンでした。ラスティを守るため、ふんわりした女っぽいブラウス姿でガッチリと銃を構えるレイダーの色っぽいことといったら。母は強し、なのです。
今季のもうひとつの柱としては、ラスティの性的アイデンティティの問題がありました。母親に棄てられたラスティは、わずか15歳という年齢で、生きるためにストリートで身体を売らなければならなかった。快楽のために少年の身体を買うのは同性である男です。同性に身を任せたからと言って、少年の性的嗜好が同性に向いているわけではない。鳥肌が立つほど嫌で辛くておぞましいことを、ただ飢えを満たすためだけに、歯を食いしばって耐えていたのにすぎません。
だけど、なんですね。ラスティの心の奥底では、だけど、という疑念が常に燻っていた。自分が男たちに身を任せたのは、自分の中にゲイ的要素があったからではないのか、と。
ゲイであろうがなかろうが、そんなこと罪でも恥でもなんでもない。ゲイであろうがなかろうが、売春が鳥肌が立つほど嫌で辛くておぞましいことであったことに変わりはない。レイダーにしろプロベンザにしろバズにしろ、ラスティが信頼していた大人たちは誰も、ラスティの過去について痛ましいとは思っても、唾棄すべきことだなどと思うわけがない。だけどラスティは、頑なにそのときの話をかれらに聞かれることを恐れるのですね。裁判で見知らぬ公衆の前で口にするのはいい。だけどレイダーの耳にだけは入れたくなかった。だってそんなことを知られたら、嫌われてしまうに違いないから。
思いつめるあまり、もうそばにはいられない、とまで言い出したラスティに、レイダーは心の底から真摯な思いを告げるのです。
Rusty,what you are is who I love. And all of you is coming home.
ラスティ、あなたが何であれ愛しているわ。だから何にも変わらないあなたのままで家に帰っていらっしゃい。
と、感動的な台詞の後でナンですが、もうひとり、フリンについても言及しておかなきゃね。フリン、なんとびっくり恋する男フラグですよ。
シーズン冒頭から、まもなく結婚する娘のことで心中穏やかならぬフリン。妻とは離婚して、フリンとは疎遠のまま継父に育てられた娘。その結婚式に、継父と同席したくないフリン。妻方の親戚連中と顔をあわせるのも針の筵だし。イヤが高じて高血圧の発作起こして倒れちゃったりする始末。
しかしついに腹を括って大人しく結婚式に出席することを決めたフリン、レイダーに半休の許可を貰いに行きます。さてそこで、よきキリスト者であるレイダーは苦悩するフリンを見捨てることができません。
「行くことにしたのね? 親戚の皆さんへの防波堤はいらないかしら? わたし、結婚式って好きよ?」
「えっ? マジで? えっと、でも、その、あなたのこと一体何て紹介したらいいんです?」
「そうね、友達のシャロン、ではどうかしら?」
「ってことは、その、もしやデートとかそういうことでは?」
「もちろん違うわ、わたしは既婚者よ」
「あ、そっ、そうっすよね、そりゃそうだ、ありがとうございます、キャプテン、っていうか、その、シャロン☆」
それが全ての始まりだった(笑)。以来、隙あらばシャロン呼びしてプロベンザから「その呼び方はやめい」と窘められても、口をとがらせて「だってそれが名前だし!」と嘯くフリンは、猫まっしぐらっぽい。今度は娘の夫の連れ子(フリンからした義孫)のバレエの発表会にかこつけてレイダーを誘い出すことに成功します。さてこの恋、果たして発展するや否や。
ほかのアメドラだったら発展しないはずがないんですが、なにしろレイダーでしょ、規則に厳しい女性、っていうのが最大のセールスポイントですからね。そんな女性が、離婚もしていない状況で安易に夫以外の男性と恋に落ちるとあっては、キャラクター崩壊の危機ですもの、そこはうまくやってほしいと思う一方で、フリンの恋が実るといいな、とも思ってしまうのでした。シーズン3については、まだ何も知らないわたくしです。
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by shirakian
| 2015-09-14 18:56
| 海外ドラマ