2009年 05月 11日
バーン・アフター・リーディング
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腹をかかえて転げまわる、というんじゃないけど、クスッというか、ニヤッというか、むしろグフッ、って感じでしょうか。かなーり笑わせていただきました(笑)。
滑った転んだのスラップスティックス系とも、小学男子大好きのシモネタ満載系ともちがう、キャラクターが織り成すちょっとしたズレをどんどんエスカレートさせていってどうしようもないディザースターに突入していく系の笑いで、こういうのは大好物。
確かに、同じ「ちょっとしたズレ」からくる笑いと言っても、三谷幸喜監督の映画みたく、だれが観ても楽しく笑えて場内に笑いのウェーブが起きる、という種類の笑いではなく、かなりブラックで意地が悪くて残酷な笑いですが、人間って不思議なものね、こんな残酷なシチュエーションが、なんでこんなにおかしいの。
「飲酒の問題」でCIAをクビになったジョン・マルコヴィッチは、嫌がらせに暴露本を執筆中。連邦保安官のジョージ・クルーニーと不倫中の妻ティルダ・スウィントンは、そんなマルコヴィッチを見限って着々と離婚準備中。有利に離婚を進めるために、夫のパソコンのデータをコピーしたところ、データの入ったCD-ROMを紛失し、フィットネスジムの従業員、ブラッド・ピットの手に渡ってしまう。ピットがCD-ROMの扱いを相談した相手は、全身整形願望に凝り固まった同僚のフランシス・マクドーマント。事もあろうにふたりはマルコヴィッチを強迫して金銭を手にいれようと画策。マクドーマントの上司であるリチャード・ジェンキンスは密かに彼女を愛していたが、マクドーマントは出会い系サイトで知り合ったジョージ・クルーニーと交際を始める。ダブル不倫をエンジョイ中のクルーニーの妻で児童文学の作家であるエリザベス・マーヴェルには、クルーニーの知らない計画があった……。
ぐうるりぐるり(笑)。
だれもがみんな、自分のことしか考えてなくて、だれもがみんな、自分こそが相手に先んじていると信じ込んでて、その結果、だれもがみんな、ちょっとずつ(というか、すさまじく)しっぺ返しをくらう。そんな中で、ティルダ、フランシス、エリザベスの女性陣だけが、ちゃっかりおいしいところをせしめてしまう皮肉なエンディング。
マルコヴィッチの自分史、という、情報戦的見地からは全くなんの値打ちもない情報を、国家機密と思い込み、なんとか金にしようとマクドーマント(とピット)が駆け込んださきがロシア大使館。持ち込まれたロシアも、なんでこんなクズ情報を? と困惑しきりだけど、他ならぬCIAの面々が、全員そろって、なぜロシア? と首をかしげるのが爆笑もんです。
なんだかもう、色々とおかしいのですが、たとえば、いつもイライラしてて強圧的で恋愛ですら自分のペースでごり押しするイヤな女のティルダ・スウィントンの職業はお医者さんなんですが、よりによって、専門が小児科だったりする皮肉(笑)。治療の最中に素直に口をあけない子どもを、優しくなだめすかすどころか、言うことを聞かないと母親を追い出してわたしとふたりっきりにするわよ、と脅す小児科医(笑)。この一こまだけでも腹筋が痙攣します。
フランシス・マクドーマントが全身整形願望にとりつかれているという設定のリアルすぎるおかしさ(笑)。マクドーマントは別に不美人じゃないので、整形といっても目鼻立ちをどうこうしたいわけじゃなく、たるんだお腹や二の腕をひきしめたり、目尻の小じわをなんとかしたいだけなんですが、そのお腹や二の腕のたるみっぷりの、ザ・リアリティといった描写の残酷さ。コーエン監督ってば、自分の奥さんになんてことするの(笑)。
それにしても、マクドーマントはジムで働いてるわけだから、身体をひきしめたいなら、整形になんか頼らず自分とこのジムでちょっとトレーニングすればいいのに、全身整形をしたいと思い込んだら、全くまわりが見えなくなってしまう盲目っぷりが、また皮肉。
妻と別れる気なんかないくせに、出会い系サイトにはまってダブルトリプルで不倫を繰り返すジョージ・クルーニーの女ったらしっぷりも、つい先日、若い恋人を文字通り家からおっぽりだした事件なんかを思い起こさせて、本人イメージとだぶっちゃう皮肉。
銃を携行してるが撃ったことは一度もない、と、銃を一種のカンバセーションツールとしてさんざんナンパに活用してきた保安官、ついにその銃に足をすくわれるの一幕も、ひどい話じゃあるんだけど、コメディの文脈の中でみれば、やっぱり相当おかしいです。
マクドーマントを愛してるジムマネージャーのリチャード・ジェンキンス、前歴は牧師さんだったというマジメで小心な男は、ささやかな今の暮らしに幸せをかみしめていたはずなのに、ちっとも自分の愛情に気づいてくれない馬鹿な女のために、いらぬ一肌ぬいでしまって、とんでもない目に陥ってしまう。哀愁漂うジェンキンスが演じると、男の哀れが身に染みるのだけど、そうは言っても、女が馬鹿ならあんたも愚か。この悲劇もまた滑稽なんである。
ブラット・ピットは、よくいる頭ん中がからっぽの無責任で行き当たりばったりの若造キャラなので、なぜもっと若い役者ではなくピットが演じることになったのかが謎ですが、ピットでちっとも違和感ないのが凄いです。ブラピって、頭のネジが困ったことになってるキャラクターを演じるのが好きだよねー。
何の覚悟も計画もノウハウもなく、自転車に乗ってうかうかとマルコヴィッチを恐喝にでかけるシチュエーションはおかしすぎ。こんな脅迫者はイヤだ、に登録してやりたいです。
しかしなんといっても、個人的に一番笑いのツボだったのは、CIAの上官を演じたJ・K・シモンズ! 解雇したマルコヴィッチ周辺に起こる怪しい一連のできごとに、いかなる筋の通った理屈も求めることができず、困惑のどん底に落しいれられつつ、組織にだけは傷がつかないようにちゃっかり事態を処理しちゃう悪辣っぷりが、たまりません(>_<)。
思いっきりニヤニヤしながら劇場を出ました(笑)。あんたが一番怪しいって。
滑った転んだのスラップスティックス系とも、小学男子大好きのシモネタ満載系ともちがう、キャラクターが織り成すちょっとしたズレをどんどんエスカレートさせていってどうしようもないディザースターに突入していく系の笑いで、こういうのは大好物。
確かに、同じ「ちょっとしたズレ」からくる笑いと言っても、三谷幸喜監督の映画みたく、だれが観ても楽しく笑えて場内に笑いのウェーブが起きる、という種類の笑いではなく、かなりブラックで意地が悪くて残酷な笑いですが、人間って不思議なものね、こんな残酷なシチュエーションが、なんでこんなにおかしいの。
「飲酒の問題」でCIAをクビになったジョン・マルコヴィッチは、嫌がらせに暴露本を執筆中。連邦保安官のジョージ・クルーニーと不倫中の妻ティルダ・スウィントンは、そんなマルコヴィッチを見限って着々と離婚準備中。有利に離婚を進めるために、夫のパソコンのデータをコピーしたところ、データの入ったCD-ROMを紛失し、フィットネスジムの従業員、ブラッド・ピットの手に渡ってしまう。ピットがCD-ROMの扱いを相談した相手は、全身整形願望に凝り固まった同僚のフランシス・マクドーマント。事もあろうにふたりはマルコヴィッチを強迫して金銭を手にいれようと画策。マクドーマントの上司であるリチャード・ジェンキンスは密かに彼女を愛していたが、マクドーマントは出会い系サイトで知り合ったジョージ・クルーニーと交際を始める。ダブル不倫をエンジョイ中のクルーニーの妻で児童文学の作家であるエリザベス・マーヴェルには、クルーニーの知らない計画があった……。
ぐうるりぐるり(笑)。
だれもがみんな、自分のことしか考えてなくて、だれもがみんな、自分こそが相手に先んじていると信じ込んでて、その結果、だれもがみんな、ちょっとずつ(というか、すさまじく)しっぺ返しをくらう。そんな中で、ティルダ、フランシス、エリザベスの女性陣だけが、ちゃっかりおいしいところをせしめてしまう皮肉なエンディング。
マルコヴィッチの自分史、という、情報戦的見地からは全くなんの値打ちもない情報を、国家機密と思い込み、なんとか金にしようとマクドーマント(とピット)が駆け込んださきがロシア大使館。持ち込まれたロシアも、なんでこんなクズ情報を? と困惑しきりだけど、他ならぬCIAの面々が、全員そろって、なぜロシア? と首をかしげるのが爆笑もんです。
なんだかもう、色々とおかしいのですが、たとえば、いつもイライラしてて強圧的で恋愛ですら自分のペースでごり押しするイヤな女のティルダ・スウィントンの職業はお医者さんなんですが、よりによって、専門が小児科だったりする皮肉(笑)。治療の最中に素直に口をあけない子どもを、優しくなだめすかすどころか、言うことを聞かないと母親を追い出してわたしとふたりっきりにするわよ、と脅す小児科医(笑)。この一こまだけでも腹筋が痙攣します。
フランシス・マクドーマントが全身整形願望にとりつかれているという設定のリアルすぎるおかしさ(笑)。マクドーマントは別に不美人じゃないので、整形といっても目鼻立ちをどうこうしたいわけじゃなく、たるんだお腹や二の腕をひきしめたり、目尻の小じわをなんとかしたいだけなんですが、そのお腹や二の腕のたるみっぷりの、ザ・リアリティといった描写の残酷さ。コーエン監督ってば、自分の奥さんになんてことするの(笑)。
それにしても、マクドーマントはジムで働いてるわけだから、身体をひきしめたいなら、整形になんか頼らず自分とこのジムでちょっとトレーニングすればいいのに、全身整形をしたいと思い込んだら、全くまわりが見えなくなってしまう盲目っぷりが、また皮肉。
妻と別れる気なんかないくせに、出会い系サイトにはまってダブルトリプルで不倫を繰り返すジョージ・クルーニーの女ったらしっぷりも、つい先日、若い恋人を文字通り家からおっぽりだした事件なんかを思い起こさせて、本人イメージとだぶっちゃう皮肉。
銃を携行してるが撃ったことは一度もない、と、銃を一種のカンバセーションツールとしてさんざんナンパに活用してきた保安官、ついにその銃に足をすくわれるの一幕も、ひどい話じゃあるんだけど、コメディの文脈の中でみれば、やっぱり相当おかしいです。
マクドーマントを愛してるジムマネージャーのリチャード・ジェンキンス、前歴は牧師さんだったというマジメで小心な男は、ささやかな今の暮らしに幸せをかみしめていたはずなのに、ちっとも自分の愛情に気づいてくれない馬鹿な女のために、いらぬ一肌ぬいでしまって、とんでもない目に陥ってしまう。哀愁漂うジェンキンスが演じると、男の哀れが身に染みるのだけど、そうは言っても、女が馬鹿ならあんたも愚か。この悲劇もまた滑稽なんである。
ブラット・ピットは、よくいる頭ん中がからっぽの無責任で行き当たりばったりの若造キャラなので、なぜもっと若い役者ではなくピットが演じることになったのかが謎ですが、ピットでちっとも違和感ないのが凄いです。ブラピって、頭のネジが困ったことになってるキャラクターを演じるのが好きだよねー。
何の覚悟も計画もノウハウもなく、自転車に乗ってうかうかとマルコヴィッチを恐喝にでかけるシチュエーションはおかしすぎ。こんな脅迫者はイヤだ、に登録してやりたいです。
しかしなんといっても、個人的に一番笑いのツボだったのは、CIAの上官を演じたJ・K・シモンズ! 解雇したマルコヴィッチ周辺に起こる怪しい一連のできごとに、いかなる筋の通った理屈も求めることができず、困惑のどん底に落しいれられつつ、組織にだけは傷がつかないようにちゃっかり事態を処理しちゃう悪辣っぷりが、たまりません(>_<)。
思いっきりニヤニヤしながら劇場を出ました(笑)。あんたが一番怪しいって。
by shirakian
| 2009-05-11 21:41
| 映画は行