2008年 08月 27日
ブラック・ダリア
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『ダークナイト』の熱に浮かされて、アーロン・エッカートがもっと観たくなり、DVDをレンタルしました。
エルロイだから陰惨だろう、デ・パルマだから鈍重だろう、との予測にたがわず、陰惨で鈍重な映画でした。ジェームズ・エルロイ原作というと、『L.A.コンフィデンシャル』が浮かびますが、複雑にからまった原作をスッキリとまとめた見事な脚本が印象的だったLAに比べて、BDは無駄に複雑な原作そのままに、とっちらかったまんまの脚本という感じ。
ロス市警のアーロンとジョッシュ・ハートネットは、ボクサーとしての経歴が市警の宣伝に寄与したと、共に花形部署の特捜部に配置されます。アーロンとジョッシュはよき相棒で、アーロンはスカーレット・ヨハンソンと同棲中、ジョッシュは美貌のスカーレットが気になってしょうがない、そんな三人は微妙な仲良し三人組を結成。そんなある日、顔を切り裂かれ、腰から切断され、内臓を抜き取られた若い女性の惨殺死体が発見される。
エルロイは別にミステリーを書きたいひとじゃないと思うので、ミステリーとして破綻している、となじってもしょうがないのですが、映画としてみると、なんともしまりがないです。「犯人はおまえだ!」と言われたときに、「なんと、こいつが犯人だったとは!」と驚くよりは、「えーと、この人だれだっけ?」と言いたくなるような、ドラマ的にはどうでもいい人が犯人でした。別に出さなくてもいいキャラクターが犯人要員として出てくるので、出てきたときからいかにも怪しいのだから、どうしようもない。
第一、こんな説得力のない殺人の割には、殺しの手口だけが無駄に残忍すぎる。もちろん、この話は実話がベースになってるので、少女は実際にそういう手口で殺されたわけですが、これだけの陰惨な殺しを中心に話を作るのであれば、犯人にはそれなりの説得力がほしかったところです。
キャラクターの配置のしかたも、んー? という感じ。ヒラリー・スワンクと被害者の少女が「そっくり」と言われてもな。ヒラリー・スワンクが「絶世の美女」と言われてもな。スカーレット・ヨハンソンのキャラクターも、印象不鮮明な感じです。なんか勿体無い使われ方をしてしまった。ジョッシュ・ハートネットは、この時代のファッションがとても似合ってて、すこぶるカッコイイのですが、どうもあんまり好感度の高い人物ではないです。
というわけで、映画としては、わたしはこれは好きではありませんでしたが、アーロン・エッカートが観たくて観てるんだから、別にいいです。
最初にかれがボクサーであるいう設定を知ったとき、随分軽量級のボクサーだなぁ、と思ってしまったのですが、いくらなんでもそれは違いますよね(笑)。
身長が180cmあって、『カンバセーションズ』の中で、ヘレナ・ボナム=カーターにおデブ、おデブといぢめられてたくらい、それなりにしっかりと肉もついてるアーロンが(おデブぢゃないよ、ヘレナ(>_<)!)、どう考えても軽量級のはずないのですが(ミドル級ぐらいに相当するのかな?)、でも、189cmのベン・アフレックとか、188cmのヒース・レジャーとか、同じく188cmのクリスチャン・ベイルとか、最近観た共演相手がでかすぎる。しかも、この映画の共演者、ジョッシュ・ハートネットも189cmあるのだし。相対的に、ちっちゃく感じてしまうのはしょうがないです。
ボクシングのことは、全然わかりませんけど、ファイトシーンはやたら大振りしてるだけのように見えて、あんまり迫力なかった。これなら、ヒラリー・ミリオンダラー・スワンクの方が強いんじゃないかと思う(笑)。
この映画の見所は、実は惨殺された「ブラック・ダリア」の事件ではなく、アーロンとジョッシュとスカーレットが織り成す三角関係だと思うので、そこをもっとじっくり丁寧に描いてくれてたら、もっと面白くなってたのになぁ、と思う反面、そこばっかじっくり描いてたら、韓流メロドラマになってたのかもなぁ、とも思います。
とは言ってもやはり、アーロンとジョッシュの相棒関係がしっかり描けていないので、ジョッシュがアーロンのこと「命の恩人」とありがたがるのも、表層的な感じがするし、アーロンからヨハ子への気持ちもが全然描けてないので、事件に巻き込まれてふたりの仲が壊れていく悲劇が伝わらないし、ジョッシュがヨハ子に惹かれているのはわかるけど、いかにも簡単にヒラリーと肉体関係を持ってしまうジョッシュのキャラクターを見ていると、ヨハ子への気持ちも単なる肉欲か、と思えるし、だいたいアーロンに対する後ろめたさとかあるのかないのかつきつめたくなるし、ヨハ子はヨハ子で、あきらかにジョッシュを誘っているのはわかるとしても、彼女のアーロンへの気持ちがわからないので、こちらも単なる尻軽か、とも思えるし、なんかどうも、スッキリしません。
もっとこう、アーロンとジョッシュの絆をしっかりと描いていれば、アーロンから利用されたのだと気づいたときのジョッシュの衝撃は鮮明になっただろうし、アーロンとの強い絆があればこそ、ヨハ子に惹かれるジョッシュの葛藤にはドラマが生まれたであろうし、アーロンに養われつつも実はヨハ子はアーロンに対しては微妙な感情を抱いている、というのがきちんと描けていれば、ヨハ子からジョッシュへの気持ちもまだ、納得のいくもののになったであろうし、どう考えても、猟奇的殺人事件の顛末よりは、そっちの方が面白い。何よりもエキサイティングなのは、ひとの心のドラマなのだから。
アーロンは、バリッとしたスーツ姿もカッコイイし、事件に没頭して次第に崩れていく様子もセクシーだし、映像的には見所満載です。……殺されるシーンの「いかにもデ・パルマ」な演出は、笑うとこかなと思いましたが。
エルロイだから陰惨だろう、デ・パルマだから鈍重だろう、との予測にたがわず、陰惨で鈍重な映画でした。ジェームズ・エルロイ原作というと、『L.A.コンフィデンシャル』が浮かびますが、複雑にからまった原作をスッキリとまとめた見事な脚本が印象的だったLAに比べて、BDは無駄に複雑な原作そのままに、とっちらかったまんまの脚本という感じ。
ロス市警のアーロンとジョッシュ・ハートネットは、ボクサーとしての経歴が市警の宣伝に寄与したと、共に花形部署の特捜部に配置されます。アーロンとジョッシュはよき相棒で、アーロンはスカーレット・ヨハンソンと同棲中、ジョッシュは美貌のスカーレットが気になってしょうがない、そんな三人は微妙な仲良し三人組を結成。そんなある日、顔を切り裂かれ、腰から切断され、内臓を抜き取られた若い女性の惨殺死体が発見される。
エルロイは別にミステリーを書きたいひとじゃないと思うので、ミステリーとして破綻している、となじってもしょうがないのですが、映画としてみると、なんともしまりがないです。「犯人はおまえだ!」と言われたときに、「なんと、こいつが犯人だったとは!」と驚くよりは、「えーと、この人だれだっけ?」と言いたくなるような、ドラマ的にはどうでもいい人が犯人でした。別に出さなくてもいいキャラクターが犯人要員として出てくるので、出てきたときからいかにも怪しいのだから、どうしようもない。
第一、こんな説得力のない殺人の割には、殺しの手口だけが無駄に残忍すぎる。もちろん、この話は実話がベースになってるので、少女は実際にそういう手口で殺されたわけですが、これだけの陰惨な殺しを中心に話を作るのであれば、犯人にはそれなりの説得力がほしかったところです。
キャラクターの配置のしかたも、んー? という感じ。ヒラリー・スワンクと被害者の少女が「そっくり」と言われてもな。ヒラリー・スワンクが「絶世の美女」と言われてもな。スカーレット・ヨハンソンのキャラクターも、印象不鮮明な感じです。なんか勿体無い使われ方をしてしまった。ジョッシュ・ハートネットは、この時代のファッションがとても似合ってて、すこぶるカッコイイのですが、どうもあんまり好感度の高い人物ではないです。
というわけで、映画としては、わたしはこれは好きではありませんでしたが、アーロン・エッカートが観たくて観てるんだから、別にいいです。
最初にかれがボクサーであるいう設定を知ったとき、随分軽量級のボクサーだなぁ、と思ってしまったのですが、いくらなんでもそれは違いますよね(笑)。
身長が180cmあって、『カンバセーションズ』の中で、ヘレナ・ボナム=カーターにおデブ、おデブといぢめられてたくらい、それなりにしっかりと肉もついてるアーロンが(おデブぢゃないよ、ヘレナ(>_<)!)、どう考えても軽量級のはずないのですが(ミドル級ぐらいに相当するのかな?)、でも、189cmのベン・アフレックとか、188cmのヒース・レジャーとか、同じく188cmのクリスチャン・ベイルとか、最近観た共演相手がでかすぎる。しかも、この映画の共演者、ジョッシュ・ハートネットも189cmあるのだし。相対的に、ちっちゃく感じてしまうのはしょうがないです。
ボクシングのことは、全然わかりませんけど、ファイトシーンはやたら大振りしてるだけのように見えて、あんまり迫力なかった。これなら、ヒラリー・ミリオンダラー・スワンクの方が強いんじゃないかと思う(笑)。
この映画の見所は、実は惨殺された「ブラック・ダリア」の事件ではなく、アーロンとジョッシュとスカーレットが織り成す三角関係だと思うので、そこをもっとじっくり丁寧に描いてくれてたら、もっと面白くなってたのになぁ、と思う反面、そこばっかじっくり描いてたら、韓流メロドラマになってたのかもなぁ、とも思います。
とは言ってもやはり、アーロンとジョッシュの相棒関係がしっかり描けていないので、ジョッシュがアーロンのこと「命の恩人」とありがたがるのも、表層的な感じがするし、アーロンからヨハ子への気持ちもが全然描けてないので、事件に巻き込まれてふたりの仲が壊れていく悲劇が伝わらないし、ジョッシュがヨハ子に惹かれているのはわかるけど、いかにも簡単にヒラリーと肉体関係を持ってしまうジョッシュのキャラクターを見ていると、ヨハ子への気持ちも単なる肉欲か、と思えるし、だいたいアーロンに対する後ろめたさとかあるのかないのかつきつめたくなるし、ヨハ子はヨハ子で、あきらかにジョッシュを誘っているのはわかるとしても、彼女のアーロンへの気持ちがわからないので、こちらも単なる尻軽か、とも思えるし、なんかどうも、スッキリしません。
もっとこう、アーロンとジョッシュの絆をしっかりと描いていれば、アーロンから利用されたのだと気づいたときのジョッシュの衝撃は鮮明になっただろうし、アーロンとの強い絆があればこそ、ヨハ子に惹かれるジョッシュの葛藤にはドラマが生まれたであろうし、アーロンに養われつつも実はヨハ子はアーロンに対しては微妙な感情を抱いている、というのがきちんと描けていれば、ヨハ子からジョッシュへの気持ちもまだ、納得のいくもののになったであろうし、どう考えても、猟奇的殺人事件の顛末よりは、そっちの方が面白い。何よりもエキサイティングなのは、ひとの心のドラマなのだから。
アーロンは、バリッとしたスーツ姿もカッコイイし、事件に没頭して次第に崩れていく様子もセクシーだし、映像的には見所満載です。……殺されるシーンの「いかにもデ・パルマ」な演出は、笑うとこかなと思いましたが。
by shirakian
| 2008-08-27 23:28
| 映画は行