2008年 07月 18日
ジェヴォーダンの獣
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『イースタン・プロミス』のヴァンサン・カッセルがとても印象深かったので、かれの過去作ということでDVDで観ました。
ヴァンサン・カッセルって、えーと、あのー、なんていうか、ハンサムというには微妙な顔というか、むしろ人類というには微妙な顔というか、いや、まあ、その、スラッとしてカッコイイんですけど、なんとなく普通にしてるのを見ると違和感を感じるという部分があるのは否めないんじゃないかと思うのですが(ごめん)、コスチュームプレイだと、この違和感は大幅に解消されることが判明しました。よかったねぇ、ヴァンサン(余計なお世話じゃ)。
『イースタン・プロミス』では、心の弱いダメなダメな男を演じたヴァンサンですが、そう言えば『クリムゾン・リバー』では、あの容姿の割には(しつこくてすまん)子犬のようで愛くるしかったです。そしてこの映画ではなんと、ロココな衣装に身を包み、怪しげな色香を振りまいております。引き出しがいっぱいある役者さんなんだねぇ。
物語は、18世紀フランスで実際に起こった“ジェヴォーダンの野獣”事件を土台にしたもの。女と子どもばかりなんと100人以上もが惨殺されたという凄まじい猟奇事件なんですけど、うええ、こんな事件がほんとにあったなんて(汗)。時の国王ルイ15世は、人々を殺した獣の正体を突き止めるため、自然科学者グレゴワール・デ・フロンサック(サミュエル・ル・ビアン)を当地に送り込みます。
ヴァンサンはジェヴォーダン地方の貴族、モランジアス家の長男という役どころで、狩りが趣味、アフリカでライオンに喰いつかれて片腕を失っています。この片腕、というビジュアルがまた怪しくてよいのでしょうね。
でも実は、『EP』がヴィゴ・モーテンセンじゃなくてヴァンサンの映画に思えたのとは逆に、この映画はヴァンサンの映画というより(っていうか、主人公はそもそもヴァンサンじゃなくてフロンサックを演じたサミュエル・ル・ビアンなんだけど。でも、このひと、特徴なさすぎ。次に再会しても認識できないかも)、えっ? だれ? このひと? こんなひとがいたとはっ!? という別のあの子の映画に思えてしまいました。
マーク・ダカスコスというひとなんですけども、初めて見ました。新人さんかい? と思ったのですが、1964年生まれですから、この映画の時点ですでに30代後半、「あの子」じゃないっつーの。キャリアも豊富で、むしろベテラン。ジャンル的に白木庵とはかぶらない分野でご活躍なさっていた模様(TVの「クロウ」シリーズで主役を演じておられる)。
フロンサックがアメリカ大陸で拾ってきたネイティブアメリカンのマニという青年を演じているのですが、もともとマーシャルアーツのひとなんだね。身ごなしに殺気があり、気品があり、キレがあり、ほんとに美しい。容姿はネイティブアメリカンと言われればああそうか、とも思えるし、メキシコ人だと言われればなるほどそうだね、とも思えるし、いや、プエルトリカンだ言われれば、それも納得できるという、国籍不明な感じです。ハワイ出身、日系の血がまじっているらしい。
フロンサックの一見従者、実は親友というマニ、ストーリー上は別に必要ないんじゃないかとも思えるのですが、にもかかわらず大活躍で、目立つ目立つ、強い強い。外国人なのでやっぱ言葉が不自由なのか、それともインディアンは無駄口を叩かないからなのか、とても無口で目だけで演技するシーンが多いのだけど、その目がまあ、訴える訴える。調査の仕事に対して、なんだかてんでやる気がなかったフロンサックも、マニが原因で俄然ふるいたつし。
監督は『サイレント・ヒル』のクリストフ・ガンズ氏です。『…ヒル』でも、ゲームの世界を完璧に映像化した、ということでファンの間に絶賛の嵐をまきおこした監督さんなので、ビジュアルに対するこだわりがとても強いひとなんだろうなと思います。この映画も、細部まで手を抜かない作りこんだ映像がとても面白く、寒くて湿っぽいジェヴォーダン地方の風景にも、リアルな手ごたえを感じさせてくれます。でも、一番ステキだったのは、「獣」のアニマトロニクスですね。全体の造形もカッコイイけど、目の表情がすばらしい。ガンズ監督、クリーチャーが好きなんだねぇ。
ビジュアルと言えば、モニカ・ベルッチが、土地のナンバーワン娼婦にしてその実態は謎の女、を演じていて、相変わらず非常にエロ美しいのですが、彼女の豊満な胸がそのまま雪山にシフトしていくという演出が、ものすごくいいです。なるほど、あの胸はそうだよ、雪山だよ、と深く納得してしまう美しさ。モニカだからこそ成り立つ映像美でありました。
どうでもいいけど、モニカ・ベルッチって、ヴァンサンと結婚してるんですねぇ。なんか、全然ピンとこないご夫婦だけど、子どもの顔が見てみたい(>_<)! どんな化学変化が生じているのか……。
フロンサックのモデルになったと言われるフランソワ・ルヴァイヤンというひとは、フランス王立動植物園に籍を置いてた博物学者ですが、南アメリカで育ったらしいです。
フロンサックがアメリカ帰り、という設定はそんなところから来てるのかもしれませんが、いやあ、そんなの別になくてもいい設定だろう、そいう設定にしなきゃマニを出せないからそうしただけダロ、ほんとはダカスコスのアクションが撮りたかっただけダロ、と、わたしなんぞは勘ぐっているわけですが、そこまでしてかれのアクションが撮りたかっただけに(勘ぐりではなく、すでに断定)、全体的にアクションの比重がとても高い映画です。もちろんそれを支えているのはダカスコス氏なわけですが、ヴァンサンもこれでどうして、負けていません。さすがサーカス出身! ダイナミックで軽やかな身ごなしは一見の価値ありです。
ヴァンサン・カッセルって、えーと、あのー、なんていうか、ハンサムというには微妙な顔というか、むしろ人類というには微妙な顔というか、いや、まあ、その、スラッとしてカッコイイんですけど、なんとなく普通にしてるのを見ると違和感を感じるという部分があるのは否めないんじゃないかと思うのですが(ごめん)、コスチュームプレイだと、この違和感は大幅に解消されることが判明しました。よかったねぇ、ヴァンサン(余計なお世話じゃ)。
『イースタン・プロミス』では、心の弱いダメなダメな男を演じたヴァンサンですが、そう言えば『クリムゾン・リバー』では、あの容姿の割には(しつこくてすまん)子犬のようで愛くるしかったです。そしてこの映画ではなんと、ロココな衣装に身を包み、怪しげな色香を振りまいております。引き出しがいっぱいある役者さんなんだねぇ。
物語は、18世紀フランスで実際に起こった“ジェヴォーダンの野獣”事件を土台にしたもの。女と子どもばかりなんと100人以上もが惨殺されたという凄まじい猟奇事件なんですけど、うええ、こんな事件がほんとにあったなんて(汗)。時の国王ルイ15世は、人々を殺した獣の正体を突き止めるため、自然科学者グレゴワール・デ・フロンサック(サミュエル・ル・ビアン)を当地に送り込みます。
ヴァンサンはジェヴォーダン地方の貴族、モランジアス家の長男という役どころで、狩りが趣味、アフリカでライオンに喰いつかれて片腕を失っています。この片腕、というビジュアルがまた怪しくてよいのでしょうね。
でも実は、『EP』がヴィゴ・モーテンセンじゃなくてヴァンサンの映画に思えたのとは逆に、この映画はヴァンサンの映画というより(っていうか、主人公はそもそもヴァンサンじゃなくてフロンサックを演じたサミュエル・ル・ビアンなんだけど。でも、このひと、特徴なさすぎ。次に再会しても認識できないかも)、えっ? だれ? このひと? こんなひとがいたとはっ!? という別のあの子の映画に思えてしまいました。
マーク・ダカスコスというひとなんですけども、初めて見ました。新人さんかい? と思ったのですが、1964年生まれですから、この映画の時点ですでに30代後半、「あの子」じゃないっつーの。キャリアも豊富で、むしろベテラン。ジャンル的に白木庵とはかぶらない分野でご活躍なさっていた模様(TVの「クロウ」シリーズで主役を演じておられる)。
フロンサックがアメリカ大陸で拾ってきたネイティブアメリカンのマニという青年を演じているのですが、もともとマーシャルアーツのひとなんだね。身ごなしに殺気があり、気品があり、キレがあり、ほんとに美しい。容姿はネイティブアメリカンと言われればああそうか、とも思えるし、メキシコ人だと言われればなるほどそうだね、とも思えるし、いや、プエルトリカンだ言われれば、それも納得できるという、国籍不明な感じです。ハワイ出身、日系の血がまじっているらしい。
フロンサックの一見従者、実は親友というマニ、ストーリー上は別に必要ないんじゃないかとも思えるのですが、にもかかわらず大活躍で、目立つ目立つ、強い強い。外国人なのでやっぱ言葉が不自由なのか、それともインディアンは無駄口を叩かないからなのか、とても無口で目だけで演技するシーンが多いのだけど、その目がまあ、訴える訴える。調査の仕事に対して、なんだかてんでやる気がなかったフロンサックも、マニが原因で俄然ふるいたつし。
監督は『サイレント・ヒル』のクリストフ・ガンズ氏です。『…ヒル』でも、ゲームの世界を完璧に映像化した、ということでファンの間に絶賛の嵐をまきおこした監督さんなので、ビジュアルに対するこだわりがとても強いひとなんだろうなと思います。この映画も、細部まで手を抜かない作りこんだ映像がとても面白く、寒くて湿っぽいジェヴォーダン地方の風景にも、リアルな手ごたえを感じさせてくれます。でも、一番ステキだったのは、「獣」のアニマトロニクスですね。全体の造形もカッコイイけど、目の表情がすばらしい。ガンズ監督、クリーチャーが好きなんだねぇ。
ビジュアルと言えば、モニカ・ベルッチが、土地のナンバーワン娼婦にしてその実態は謎の女、を演じていて、相変わらず非常にエロ美しいのですが、彼女の豊満な胸がそのまま雪山にシフトしていくという演出が、ものすごくいいです。なるほど、あの胸はそうだよ、雪山だよ、と深く納得してしまう美しさ。モニカだからこそ成り立つ映像美でありました。
どうでもいいけど、モニカ・ベルッチって、ヴァンサンと結婚してるんですねぇ。なんか、全然ピンとこないご夫婦だけど、子どもの顔が見てみたい(>_<)! どんな化学変化が生じているのか……。
フロンサックのモデルになったと言われるフランソワ・ルヴァイヤンというひとは、フランス王立動植物園に籍を置いてた博物学者ですが、南アメリカで育ったらしいです。
フロンサックがアメリカ帰り、という設定はそんなところから来てるのかもしれませんが、いやあ、そんなの別になくてもいい設定だろう、そいう設定にしなきゃマニを出せないからそうしただけダロ、ほんとはダカスコスのアクションが撮りたかっただけダロ、と、わたしなんぞは勘ぐっているわけですが、そこまでしてかれのアクションが撮りたかっただけに(勘ぐりではなく、すでに断定)、全体的にアクションの比重がとても高い映画です。もちろんそれを支えているのはダカスコス氏なわけですが、ヴァンサンもこれでどうして、負けていません。さすがサーカス出身! ダイナミックで軽やかな身ごなしは一見の価値ありです。
by shirakian
| 2008-07-18 21:39
| 映画さ行