2008年 01月 03日
アイ・アム・レジェンド
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2008年最初の映画は、ウィル・スミスがレジェンドになってしまうお話。
空気感染によって広まる恐るべきウィルスが席巻し、世界人口の9割が死滅、残りの99%がゾンビ化してしまった近未来NY。一人免疫を持つウィルは、ゾンビを人間に戻すための血清を作るべく孤独な闘いに挑んでいた。
原作は有名なホラーSFで何度も映画化されている作品だそうです。寡聞にして原作についても前作についても何も知りません。
なのでこの映画に関してのみしか言えないのですが、SFとしては穴だらけ、パニックものとしては新味に欠け、脚本は大味、演出の仕方などもうまいとはいえないと思います。ただし、ある側面から見てみると、この映画、ものすごく面白い。それは何か?
人間と犬物としての、傑作じゃねー? これ?
ウィルスとかゾンビとか、そんなものはどうでもいいから置いておいて。
何らかの理由で完全な孤独状態に置かれた男が、理性を失わず、生活の秩序をなくさず、(あれほどの悲劇を体験したにしては)日々心穏やかとすら言えるほどに、「真っ当な」日常を淡々と過ごしていく映画なんですよ。
なぜそんな事が可能だったか?
男のそばには犬がいた。
この映画って、ひとえにそれに尽きるです。だからサムが死んでしまった後のエピソードは、いきなり現れた美女と子どもも、神様のお告げに導かれた山奥のサバイバーの村も、そんなものはみんなつけたし。ましてやかれの最後の行動は、人類の再生をかけた貴い自己犠牲でも何でもなく、若干派手目の自殺の試みにすぎません。
それで全然問題ない。だってそれほど犬が世界の全てだったんだから。
犬と共に狩りをし、釣りをし、娯楽を楽しみ、食事の世話をし、運動をし、ちゃんとお風呂になんかもはいり、共に危険に立ち向かい、互いに相手を気遣いあい、倦怠期の夫婦よりよほど多くの言葉をかけあって、男はきちんとした生活を営んでいく。
それほどに犬は男をささえているわけですが、その辺の描写がきっちり描かれていて(ところどころ、ストーリーをムリクリ進めるために、描写がおかしくなっている所はありますが)、犬の健気さと、男の切なさに観客はどっぷり感情移入してしまいます。いっそゾンビなんか出さず、単に男と犬との静かなる悲劇、として最後まで前半の調子で進めても映画としては成り立ったんじゃないかと思ってしまうほど。
世界にたったひとり生き残る絶望感って、どれほど恐ろしいものだろう。
そんな絶望の中で、きちんと自分を律して生きていくって、どれだけ英雄的な行為だろう。
そんな静かな感動に打たれるんじゃないかと思います。
ウィルの生活があまりに快適に文化的すぎるので、「たったひとりでサバイバル」という要素があまり感じられないのが難点だったりはするのですが、でもそれって、ウィルは優秀な科学者で軍人なんだし、なにしろ広いNYにたったひとりなんだから、エネルギー問題は迅速にして決定的な解決を見たであろうし、この程度の文明が維持できるのは、ロビンソンが無人島でそれなりの文明を維持していたのと、たぶんレベル的には同じようなものなのかもしれません。
あと、犬以外にも素晴らしいのは、もちろん崩壊したNYの描写の緻密さ、リアリティ。わたしはNYに行ったことすらないですが、住んでいる人や、住んだことのある人からしたら、「異変前」の姿をありありと感じさせながらも廃墟と化したNYの映像は、それを観るだけで十分楽しめるレベルであろうと思います。それに、廃墟というけど、それはとても美しい廃墟だし。
一つ残念に思えたのは、ゾンビ人間、ゾンビ犬、ゾンビネズミ、と出てくるのに、そのほかの動物でゾンビ化したのは出てこないのね。
北米大陸にいる動物のみならず、ライオンとかが闊歩しているNYです(たぶん動物園からの脱出組だろうと思うけど)。ゾンビライオンとかゾンビゾウとかゾンビワニとかいたら、どんだけ恐ろしいか。
空気感染によって広まる恐るべきウィルスが席巻し、世界人口の9割が死滅、残りの99%がゾンビ化してしまった近未来NY。一人免疫を持つウィルは、ゾンビを人間に戻すための血清を作るべく孤独な闘いに挑んでいた。
原作は有名なホラーSFで何度も映画化されている作品だそうです。寡聞にして原作についても前作についても何も知りません。
なのでこの映画に関してのみしか言えないのですが、SFとしては穴だらけ、パニックものとしては新味に欠け、脚本は大味、演出の仕方などもうまいとはいえないと思います。ただし、ある側面から見てみると、この映画、ものすごく面白い。それは何か?
人間と犬物としての、傑作じゃねー? これ?
ウィルスとかゾンビとか、そんなものはどうでもいいから置いておいて。
何らかの理由で完全な孤独状態に置かれた男が、理性を失わず、生活の秩序をなくさず、(あれほどの悲劇を体験したにしては)日々心穏やかとすら言えるほどに、「真っ当な」日常を淡々と過ごしていく映画なんですよ。
なぜそんな事が可能だったか?
男のそばには犬がいた。
この映画って、ひとえにそれに尽きるです。だからサムが死んでしまった後のエピソードは、いきなり現れた美女と子どもも、神様のお告げに導かれた山奥のサバイバーの村も、そんなものはみんなつけたし。ましてやかれの最後の行動は、人類の再生をかけた貴い自己犠牲でも何でもなく、若干派手目の自殺の試みにすぎません。
それで全然問題ない。だってそれほど犬が世界の全てだったんだから。
犬と共に狩りをし、釣りをし、娯楽を楽しみ、食事の世話をし、運動をし、ちゃんとお風呂になんかもはいり、共に危険に立ち向かい、互いに相手を気遣いあい、倦怠期の夫婦よりよほど多くの言葉をかけあって、男はきちんとした生活を営んでいく。
それほどに犬は男をささえているわけですが、その辺の描写がきっちり描かれていて(ところどころ、ストーリーをムリクリ進めるために、描写がおかしくなっている所はありますが)、犬の健気さと、男の切なさに観客はどっぷり感情移入してしまいます。いっそゾンビなんか出さず、単に男と犬との静かなる悲劇、として最後まで前半の調子で進めても映画としては成り立ったんじゃないかと思ってしまうほど。
世界にたったひとり生き残る絶望感って、どれほど恐ろしいものだろう。
そんな絶望の中で、きちんと自分を律して生きていくって、どれだけ英雄的な行為だろう。
そんな静かな感動に打たれるんじゃないかと思います。
ウィルの生活があまりに快適に文化的すぎるので、「たったひとりでサバイバル」という要素があまり感じられないのが難点だったりはするのですが、でもそれって、ウィルは優秀な科学者で軍人なんだし、なにしろ広いNYにたったひとりなんだから、エネルギー問題は迅速にして決定的な解決を見たであろうし、この程度の文明が維持できるのは、ロビンソンが無人島でそれなりの文明を維持していたのと、たぶんレベル的には同じようなものなのかもしれません。
あと、犬以外にも素晴らしいのは、もちろん崩壊したNYの描写の緻密さ、リアリティ。わたしはNYに行ったことすらないですが、住んでいる人や、住んだことのある人からしたら、「異変前」の姿をありありと感じさせながらも廃墟と化したNYの映像は、それを観るだけで十分楽しめるレベルであろうと思います。それに、廃墟というけど、それはとても美しい廃墟だし。
一つ残念に思えたのは、ゾンビ人間、ゾンビ犬、ゾンビネズミ、と出てくるのに、そのほかの動物でゾンビ化したのは出てこないのね。
北米大陸にいる動物のみならず、ライオンとかが闊歩しているNYです(たぶん動物園からの脱出組だろうと思うけど)。ゾンビライオンとかゾンビゾウとかゾンビワニとかいたら、どんだけ恐ろしいか。
by shirakian
| 2008-01-03 21:53
| 映画あ行