2014年 09月 08日
【海外ドラマ】クリミナル・マインド/シーズン7
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★ネタバレ注意★
■クリミナル・マインド/シーズン1
■クリミナル・マインド/シーズン2
■クリミナル・マインド/シーズン3
■クリミナル・マインド/シーズン4
■クリミナル・マインド/シーズン5
■クリミナル・マインド/シーズン6
クリミナルマインドのシーズン7です。
とてもとても楽しみにしていたシーズンでした。なにしろJJが戻って来る。エミリーも生き返る(笑)。上掲画像に顔を揃えた7人。やっぱりこのメンツが揃ってこそのクリマイですとも!
だけど実のところ、ちょっとガッカリな展開があって、気分が盛り下がってしまったのです。おかげであんまり熱心に視聴する気になれなくて、今回のエントリーは覚書みたいな感じです。
まずはやっぱりエミリー。
せっかく戻ってきてくれたのに、結局エミリーはこのシーズンで最後なんですよ。だけど、今回は納得できます。予算削減のための人減らしとかいう気の滅入る理由ではなく、エミリーを演じるパジェット・ブリュースター自身の意向ですから。綺麗で優しくて気配りのあるエミリーが大好きだったから、番組ファンとしてはとっても残念だけど、女優として、同じ役ばかりに縛られるのではなく色々なキャラクターを演じたいという希望はよくわかる。心から応援したいと思います。新しいお仕事、うまくいっているのならいいな。
そしてJJ。
JJには盛りだくさんのシーズンとなりました。第一に、今季は渉外担当ではなく、プロファイラーとしての復帰です。ただでさえオトコマエだったJJですが、肉体的にもタフネスを発揮することになりました。JJまで銃を構えたり回し蹴りしたりするなんてなんだかちょっと嘘っぽいけど、もともとこの番組で描かれるプロファイラー像って、この番組独自のファンタジーですから、その辺のところは華麗にスルーしたいと思います。ただただ気になるのは、ホッチが肩代わりしていた渉外の仕事は誰がやるんだ、ということなんだけど、やっぱりホッチがやるんだろうな。そう言えばホッチは今季、アルコールの問題を抱えるストラウスの仕事まで押し付けられておりましたね。(ホロリ)。
それよりJJ的に大変だったのは、リードに逆恨みされたことかも。
リードは、エミリーの死が偽装だったことを知っていたのに黙っていたJJが許せなかったのね。古狸のロッシは、もともとそんなことだろうと察していたからさほどのショックは受けなかったし、リードより大人のモーガンは、自分の中できちんと折り合いをつけたけど(しかも、オトシマエはきっちりエミリーにつけさせたし)、その点リードはまだまだ甘ったれの末っ子ちゃん。さすがにエミリー本人に向けるわけにはいかない怒りの矛先をモロにJJに向けてしまって、口をきこうとすらしない有様。見かねたホッチが、怒るならおれに怒るべきだろう、と諌めにかかると、ふてくされリードの言うことにゃ、ぼくはあなたの家で泣いたわけじゃないからね! ですと。
リードってば、JJの家で何日も泣き続けたらしいです。JJもさぞかし困っただろうと思うけど、それ以上にダンナのウィルはさぞや持て余したことでしょう。それでも追い出そうとしなかったあたり、ほんとにいい人だわ。そう言えば、JJを追ってワシントンにやって来たウィル、もしかして職業はヒモなのかしら、と心配していたんだけど、無事こっちの警察に異動できてたみたいでよかったです。しかも今シーズンはちゃんと見せ場もあった上に、ついにJJとゴールイン☆ おめでとう、ウィル、おめでとうJJ! なんだか女房の尻にしかれそうではあるけれど、末永くお幸せに。もうレギュラーの離婚劇なんか見たくありませんので、そこんところヨロシク。殉職とかは、もっとイヤよ。
リードに関してもうひとつ印象的だったのは、とある催し物で己の才能を生かし見事に社会貢献をしている若き天才に出会ったリードが、ぼくだって同じ天才なのに、毎日犯罪者なんかに関わってナニやってんだろうな、と自省するエピソードです。や、その迷い自体は、自分たちがやっている仕事は、犯罪捜査を通して一人でも多くの罪なき人を助けるやりがいのある仕事であり、なによりぼくはこのチームが大好きだ、という予定調和の地点に着地するんだけど、「とある催し」というのが面白かったです。パトリシア・コーンウェルの新作発表か何か? 講演会? リードはそこにゲストとして招かれていたんだけど、コーンウェル本人が出演していたのです。
コーンウェルと言えば、検屍官ケイ・スカーペッタシリーズ。残念ながらこのシリーズ、ヒロインの人格についていけなくなって途中で脱落してしまったのですが、ルミノール反応とか死体農場のシステムとか、犯罪捜査の基本のきに関するいろんなことを初めて知ったのがこのシリーズだったのです。
次はロッシ。今シーズンのロッシは波乱万丈。
ひとつは、最初の妻とのエピソード。三度の離婚を経験しているロッシですが、最初の妻はやっぱり格別。久しぶりにコンタクトがあって再会したら、そこはかとなく蘇る情熱。これはもしかしてよりが戻ったりするかも? とちょっとウキウキ気分だったロッシなのに、妻が連絡してきた理由は悲しいものでした。病魔に侵され余命幾ばくもないが、死ぬのは怖い、いよいよ最後の時がきたら、あなたのその手で逝かせてほしい。それはあまりに酷な願い。ロッシに肯う術などありません。悲しみと後悔と罪悪感すら抱えてロッシはかつて愛したひとを見送らなければなりませんでした。
この話、女は恋を上書き保存するが、男は名前をつけて個別保存する、と巷間言われているけれど、ロッシですらそうなんだなぁと感慨深かったです。
そしてもうひとつも負けないくらいキツイ。
かつて逮捕したシリアルキラー。判明しているだけでも40人あまりを殺害し、当然死刑を宣告されたが、死刑執行から逃れるために、犯人はロッシに条件を持ち出した。刑執行の延期と引き換えに、まだ見つかっていない被害者の埋葬場所を明かす、と。少なくともあと60人、見つけてもらえず朽ちていった被害者がいる。そして60人分の、愛するひとを弔うことすらできずにいる遺族がいる。ロッシは条件を飲むしかなかった。しかも犯人の悪魔の提案、ロッシは新しい被害者の名前を、何年にも渡って毎年ひとりずつ、自分の誕生日に聞かされなければならない。その名を知らされたロッシは、その都度自分で遺族に告知します。それが自分の仕事なのだから、と。いつか報われてほしい。決して壊れないでほしい。祈らずにはいられない挿話でした。
このエピソードでは、逮捕当時の若かりし姿が再現されているのが面白いです。ホッチがしきっていた現場にすでに引退していたロッシがアドバイザーとして招かれて、きみはなかなか優秀だな、とか言うのよ。この時の若作り、ほかのメンバーはソフトフォーカスでごまかしてた印象だけど、ロッシについては髪の毛を盛って若返りをはかっていたのがご愛嬌でした。
モーガンも個人的に辛い事件がありました。
行方不明になっていた従妹、いつまでも探し続ける叔母が不憫で、とある大量殺人事件の際に、その犯人が従妹も殺したと嘘をついてしまったモーガン。ところがその後、ほかならぬモーガンの妹が、生きている従妹を目撃してしまう。さっそく地元シカゴに駆けつけたモーガンですが、従妹の周辺はただならぬ気配。ヘタ打っちゃって大変なことに、とホッチに電話で泣きつくと、すぐに全てを理解してくれたホッチ、余計なことは何にも聞かず、すぐにシカゴに向かうと打てば響く返答。(ホッチはこういう際の決断がものすごく早い)。その時のモーガンの、ものっそほっとした顔がなんとも味わい深かったです。眉なんか八の字に下げちゃって。かわいいったらありゃしない。
たぶん、こんな感想を番組製作者が見ると、ちょっと情けない気持ちになるんじゃないかなぁと申し訳ないです。どんなに知力をふりしぼって面白いストーリーや斬新な犯人像を考えても、視聴者の記憶に残っているのはソコなんかい、って。うん、実はそうなの、ごめんなさいね。
記憶に残ると言えば、ゲストキャラのマックス・マーティーニ。
渋かっこいいマーティーニは、帰還兵の役。PTSD様の症状を発症して無差別殺人に走ってしまう男です。確かまだギデオンがいた頃にもそんな話あったよなぁ、と思いますけど、その時の話と違うのは、マーティーニの症状は戦場体験が直接の引き金になったわけではなく、帰還後の交通事故による器質障害が原因だった、という点です。他人を視覚認識できなくなってしまうらしい。電話で話をする分には相手が誰だかわかるのに、顔をあわせてしまうと、それがその人だとはわからなくなってしまう。だからその人になりすましている悪者だと思い込んでしまうのです。その結果、なんと自分の両親まで手をかけてしまうという悲劇的展開。心の歪んだモンスターなんかじゃなかったのが幸いでした。ちゃんと治療して立ち直ってほしい。っていうか、レギュラーになって出演してほしい(笑)。
ゲストキャラにまで触れながら、肝心のレギュラーメンバーが足りてない。
実は、今季ガッカリだった展開って、ガルシアとホッチに関するものだったのです。
まずはガルシア。ペネロペったらケヴィンと別れてしまった。
これがこのふたりだけの問題だったら、長い人生時にはそういうことだってあるよね、と肩をすくめて見過ごせるんだけど、ガルシアの場合モーガンが絡むのでちょとイヤな感触になってしまう。
モーガンとガルシアって、本人の魅力とか能力とか価値とか何とかそういうことは度外視して、「世俗の価値観のみにのっとって鑑みれば」、紛れもないジョックとナードの関係でしょう。スポーツマンで異性にモテモテのモーガンと、オタクで太めのガルシアでは、恋愛市場における立場は歴然としている。それにもかかわらず今まで曲がりなりにもふたりの間に対等な関係が成立していたのは、その関係性が世俗的男女関係とは無関係なところにあるという大前提があったから。もちろんふたりは同僚なわけで、共に同じ仕事をする者として、相手の有能さを認めてしまえば、異性として魅力的であろうがなかろうが、というより異性であろうがなかろうが、そんなことは関係ない。だけどこのふたりの場合、関係性は単なる同僚にとどまらず、兄妹のような親密さ、という考えようによっては何となくうさんくさい付加価値がつけられてきた。そしてその件に関するふたりの「無邪気さ」については疑問をさしはさんではいけないというのが暗黙の了解になってたと思うのね。
だけどほんとは言わないだけで、誰もがみんな前から知ってた。ガルシアってモーガンのこと、明らかに異性として好きじゃん。だけど自分じゃモーガンの恋愛対象にはならないってわかっているから、「兄妹のような関係」というところに甘んじていた。たぶんそのこと、ケヴィンも知ってたと思う。ガルシアの気持ちがほんとの本音じゃ自分にないことはわかっていたけど、だけどケヴィンにとって、モーガンの恋愛対象にはならないガルシアは、恋愛対象どころか崇拝の対象ですらあったから、だからガルシアがモーガンとどんな理不尽な振る舞いをしようと、必死に見て見ぬふりをしてきたんじゃなかったのかな。腕を組むとかキスをするとか遠征先で同室で寝泊まりするとかね。だけど今季のガルシア、夜中に酔ってモーガンを呼び出すなんて、明らかに一線を越えてた。のこのこやって来るモーガンもモーガンなんだけど、モーガンの場合、自分の「無邪気さ」に関しては疑ってもいないフシがある。そのくらい恋愛対象としては全く眼中になかったってことなのかも。そして一方のガルシアは、都合のいい崇拝者のケヴィンを、自尊心の防波堤にしていたような気がする。
そしてホッチ。かれには新しい恋人ができました。
普通だったら喜ばしいことだけど、ホッチの場合、ヘイリーの死から1シーズン飛ばしただけでこの事態。時間として1年? ヘタすると数か月? あり得ない。
アメリカというのはペア圧力が異様に高い社会で、パートナーのいない男女の居場所のなさは計り知れない。ホッチに関しても、いつまでも独り身というわけにはいくまいという配慮が働いてのことでしょう。もっと言えば、ワンナイトスタンドの相手に不自由ないタイプであるとか、あるいはハウスみたいにお金を払って奉仕してもらうことにこだわりのないタイプであるならともかく、ホッチのような堅物が性的問題にどのように対処しているのか、という疑問もあったのかもしれない。世界で最もセックスレスが多い日本人からすると全くもって余計なお世話なんだけど、アメリカ人にとってはまっこと由々しき問題だったんだと思うよ。
だけどそれにしたって、そんなの、番組として座りのいいキャラクター描写という必然性故の成り行きでしょう。ホッチというひとについて真剣に考えたら、こういう解答になるとはとても思えない。高校生のときに出会って、それから一途にずっと好きだった相手、しかもそのヘイリーは、ホッチの「せいで」無残な殺され方をしてしまった。や、もちろんホッチに責めを負わせるなんて残酷すぎるのだけど、ホッチとさえ関わっていなければヘイリーは決してあんな死に方をすることはなかった、ということは紛れもない事実であり、そのことはホッチ自身が誰よりも一番深く感じていたことなんじゃないのかな。そんなひとが、ヘイリーが死んでから1年やそこらで、新しい恋をしようと思えるものかな。
テレビシリーズのキャラクターって、恋人がいないと色々不都合があったり、兎にも角にも恋愛ドラマに持ち込みたいという思惑があったりで、前の人と別れてもすぐ次の人と出会って恋に落ちる展開になりがち。なにかと言うとすぐmove on、move onって言う。だけど、ほんとにリアルなひとの心って、そんなに簡単に愛情の対象を切り替えることってできるものかな? あんまり安易にムーボンバカボンバカボンボンって言われると、どうにも釈然としないのだけど。そんなにムーボンしたいのならば、仕事の上でするべきなのでは? いつまでもユニットチーフの立場に甘んじていることに関しては、誰も何も言わないの?
ホッチがとっても軽薄なひとに見えたよ。そこも狙った?
■クリミナル・マインド/シーズン1
■クリミナル・マインド/シーズン2
■クリミナル・マインド/シーズン3
■クリミナル・マインド/シーズン4
■クリミナル・マインド/シーズン5
■クリミナル・マインド/シーズン6
クリミナルマインドのシーズン7です。
とてもとても楽しみにしていたシーズンでした。なにしろJJが戻って来る。エミリーも生き返る(笑)。上掲画像に顔を揃えた7人。やっぱりこのメンツが揃ってこそのクリマイですとも!
だけど実のところ、ちょっとガッカリな展開があって、気分が盛り下がってしまったのです。おかげであんまり熱心に視聴する気になれなくて、今回のエントリーは覚書みたいな感じです。
まずはやっぱりエミリー。
せっかく戻ってきてくれたのに、結局エミリーはこのシーズンで最後なんですよ。だけど、今回は納得できます。予算削減のための人減らしとかいう気の滅入る理由ではなく、エミリーを演じるパジェット・ブリュースター自身の意向ですから。綺麗で優しくて気配りのあるエミリーが大好きだったから、番組ファンとしてはとっても残念だけど、女優として、同じ役ばかりに縛られるのではなく色々なキャラクターを演じたいという希望はよくわかる。心から応援したいと思います。新しいお仕事、うまくいっているのならいいな。
そしてJJ。
JJには盛りだくさんのシーズンとなりました。第一に、今季は渉外担当ではなく、プロファイラーとしての復帰です。ただでさえオトコマエだったJJですが、肉体的にもタフネスを発揮することになりました。JJまで銃を構えたり回し蹴りしたりするなんてなんだかちょっと嘘っぽいけど、もともとこの番組で描かれるプロファイラー像って、この番組独自のファンタジーですから、その辺のところは華麗にスルーしたいと思います。ただただ気になるのは、ホッチが肩代わりしていた渉外の仕事は誰がやるんだ、ということなんだけど、やっぱりホッチがやるんだろうな。そう言えばホッチは今季、アルコールの問題を抱えるストラウスの仕事まで押し付けられておりましたね。(ホロリ)。
それよりJJ的に大変だったのは、リードに逆恨みされたことかも。
リードは、エミリーの死が偽装だったことを知っていたのに黙っていたJJが許せなかったのね。古狸のロッシは、もともとそんなことだろうと察していたからさほどのショックは受けなかったし、リードより大人のモーガンは、自分の中できちんと折り合いをつけたけど(しかも、オトシマエはきっちりエミリーにつけさせたし)、その点リードはまだまだ甘ったれの末っ子ちゃん。さすがにエミリー本人に向けるわけにはいかない怒りの矛先をモロにJJに向けてしまって、口をきこうとすらしない有様。見かねたホッチが、怒るならおれに怒るべきだろう、と諌めにかかると、ふてくされリードの言うことにゃ、ぼくはあなたの家で泣いたわけじゃないからね! ですと。
リードってば、JJの家で何日も泣き続けたらしいです。JJもさぞかし困っただろうと思うけど、それ以上にダンナのウィルはさぞや持て余したことでしょう。それでも追い出そうとしなかったあたり、ほんとにいい人だわ。そう言えば、JJを追ってワシントンにやって来たウィル、もしかして職業はヒモなのかしら、と心配していたんだけど、無事こっちの警察に異動できてたみたいでよかったです。しかも今シーズンはちゃんと見せ場もあった上に、ついにJJとゴールイン☆ おめでとう、ウィル、おめでとうJJ! なんだか女房の尻にしかれそうではあるけれど、末永くお幸せに。もうレギュラーの離婚劇なんか見たくありませんので、そこんところヨロシク。殉職とかは、もっとイヤよ。
リードに関してもうひとつ印象的だったのは、とある催し物で己の才能を生かし見事に社会貢献をしている若き天才に出会ったリードが、ぼくだって同じ天才なのに、毎日犯罪者なんかに関わってナニやってんだろうな、と自省するエピソードです。や、その迷い自体は、自分たちがやっている仕事は、犯罪捜査を通して一人でも多くの罪なき人を助けるやりがいのある仕事であり、なによりぼくはこのチームが大好きだ、という予定調和の地点に着地するんだけど、「とある催し」というのが面白かったです。パトリシア・コーンウェルの新作発表か何か? 講演会? リードはそこにゲストとして招かれていたんだけど、コーンウェル本人が出演していたのです。
コーンウェルと言えば、検屍官ケイ・スカーペッタシリーズ。残念ながらこのシリーズ、ヒロインの人格についていけなくなって途中で脱落してしまったのですが、ルミノール反応とか死体農場のシステムとか、犯罪捜査の基本のきに関するいろんなことを初めて知ったのがこのシリーズだったのです。
次はロッシ。今シーズンのロッシは波乱万丈。
ひとつは、最初の妻とのエピソード。三度の離婚を経験しているロッシですが、最初の妻はやっぱり格別。久しぶりにコンタクトがあって再会したら、そこはかとなく蘇る情熱。これはもしかしてよりが戻ったりするかも? とちょっとウキウキ気分だったロッシなのに、妻が連絡してきた理由は悲しいものでした。病魔に侵され余命幾ばくもないが、死ぬのは怖い、いよいよ最後の時がきたら、あなたのその手で逝かせてほしい。それはあまりに酷な願い。ロッシに肯う術などありません。悲しみと後悔と罪悪感すら抱えてロッシはかつて愛したひとを見送らなければなりませんでした。
この話、女は恋を上書き保存するが、男は名前をつけて個別保存する、と巷間言われているけれど、ロッシですらそうなんだなぁと感慨深かったです。
そしてもうひとつも負けないくらいキツイ。
かつて逮捕したシリアルキラー。判明しているだけでも40人あまりを殺害し、当然死刑を宣告されたが、死刑執行から逃れるために、犯人はロッシに条件を持ち出した。刑執行の延期と引き換えに、まだ見つかっていない被害者の埋葬場所を明かす、と。少なくともあと60人、見つけてもらえず朽ちていった被害者がいる。そして60人分の、愛するひとを弔うことすらできずにいる遺族がいる。ロッシは条件を飲むしかなかった。しかも犯人の悪魔の提案、ロッシは新しい被害者の名前を、何年にも渡って毎年ひとりずつ、自分の誕生日に聞かされなければならない。その名を知らされたロッシは、その都度自分で遺族に告知します。それが自分の仕事なのだから、と。いつか報われてほしい。決して壊れないでほしい。祈らずにはいられない挿話でした。
このエピソードでは、逮捕当時の若かりし姿が再現されているのが面白いです。ホッチがしきっていた現場にすでに引退していたロッシがアドバイザーとして招かれて、きみはなかなか優秀だな、とか言うのよ。この時の若作り、ほかのメンバーはソフトフォーカスでごまかしてた印象だけど、ロッシについては髪の毛を盛って若返りをはかっていたのがご愛嬌でした。
モーガンも個人的に辛い事件がありました。
行方不明になっていた従妹、いつまでも探し続ける叔母が不憫で、とある大量殺人事件の際に、その犯人が従妹も殺したと嘘をついてしまったモーガン。ところがその後、ほかならぬモーガンの妹が、生きている従妹を目撃してしまう。さっそく地元シカゴに駆けつけたモーガンですが、従妹の周辺はただならぬ気配。ヘタ打っちゃって大変なことに、とホッチに電話で泣きつくと、すぐに全てを理解してくれたホッチ、余計なことは何にも聞かず、すぐにシカゴに向かうと打てば響く返答。(ホッチはこういう際の決断がものすごく早い)。その時のモーガンの、ものっそほっとした顔がなんとも味わい深かったです。眉なんか八の字に下げちゃって。かわいいったらありゃしない。
たぶん、こんな感想を番組製作者が見ると、ちょっと情けない気持ちになるんじゃないかなぁと申し訳ないです。どんなに知力をふりしぼって面白いストーリーや斬新な犯人像を考えても、視聴者の記憶に残っているのはソコなんかい、って。うん、実はそうなの、ごめんなさいね。
記憶に残ると言えば、ゲストキャラのマックス・マーティーニ。
渋かっこいいマーティーニは、帰還兵の役。PTSD様の症状を発症して無差別殺人に走ってしまう男です。確かまだギデオンがいた頃にもそんな話あったよなぁ、と思いますけど、その時の話と違うのは、マーティーニの症状は戦場体験が直接の引き金になったわけではなく、帰還後の交通事故による器質障害が原因だった、という点です。他人を視覚認識できなくなってしまうらしい。電話で話をする分には相手が誰だかわかるのに、顔をあわせてしまうと、それがその人だとはわからなくなってしまう。だからその人になりすましている悪者だと思い込んでしまうのです。その結果、なんと自分の両親まで手をかけてしまうという悲劇的展開。心の歪んだモンスターなんかじゃなかったのが幸いでした。ちゃんと治療して立ち直ってほしい。っていうか、レギュラーになって出演してほしい(笑)。
ゲストキャラにまで触れながら、肝心のレギュラーメンバーが足りてない。
実は、今季ガッカリだった展開って、ガルシアとホッチに関するものだったのです。
まずはガルシア。ペネロペったらケヴィンと別れてしまった。
これがこのふたりだけの問題だったら、長い人生時にはそういうことだってあるよね、と肩をすくめて見過ごせるんだけど、ガルシアの場合モーガンが絡むのでちょとイヤな感触になってしまう。
モーガンとガルシアって、本人の魅力とか能力とか価値とか何とかそういうことは度外視して、「世俗の価値観のみにのっとって鑑みれば」、紛れもないジョックとナードの関係でしょう。スポーツマンで異性にモテモテのモーガンと、オタクで太めのガルシアでは、恋愛市場における立場は歴然としている。それにもかかわらず今まで曲がりなりにもふたりの間に対等な関係が成立していたのは、その関係性が世俗的男女関係とは無関係なところにあるという大前提があったから。もちろんふたりは同僚なわけで、共に同じ仕事をする者として、相手の有能さを認めてしまえば、異性として魅力的であろうがなかろうが、というより異性であろうがなかろうが、そんなことは関係ない。だけどこのふたりの場合、関係性は単なる同僚にとどまらず、兄妹のような親密さ、という考えようによっては何となくうさんくさい付加価値がつけられてきた。そしてその件に関するふたりの「無邪気さ」については疑問をさしはさんではいけないというのが暗黙の了解になってたと思うのね。
だけどほんとは言わないだけで、誰もがみんな前から知ってた。ガルシアってモーガンのこと、明らかに異性として好きじゃん。だけど自分じゃモーガンの恋愛対象にはならないってわかっているから、「兄妹のような関係」というところに甘んじていた。たぶんそのこと、ケヴィンも知ってたと思う。ガルシアの気持ちがほんとの本音じゃ自分にないことはわかっていたけど、だけどケヴィンにとって、モーガンの恋愛対象にはならないガルシアは、恋愛対象どころか崇拝の対象ですらあったから、だからガルシアがモーガンとどんな理不尽な振る舞いをしようと、必死に見て見ぬふりをしてきたんじゃなかったのかな。腕を組むとかキスをするとか遠征先で同室で寝泊まりするとかね。だけど今季のガルシア、夜中に酔ってモーガンを呼び出すなんて、明らかに一線を越えてた。のこのこやって来るモーガンもモーガンなんだけど、モーガンの場合、自分の「無邪気さ」に関しては疑ってもいないフシがある。そのくらい恋愛対象としては全く眼中になかったってことなのかも。そして一方のガルシアは、都合のいい崇拝者のケヴィンを、自尊心の防波堤にしていたような気がする。
そしてホッチ。かれには新しい恋人ができました。
普通だったら喜ばしいことだけど、ホッチの場合、ヘイリーの死から1シーズン飛ばしただけでこの事態。時間として1年? ヘタすると数か月? あり得ない。
アメリカというのはペア圧力が異様に高い社会で、パートナーのいない男女の居場所のなさは計り知れない。ホッチに関しても、いつまでも独り身というわけにはいくまいという配慮が働いてのことでしょう。もっと言えば、ワンナイトスタンドの相手に不自由ないタイプであるとか、あるいはハウスみたいにお金を払って奉仕してもらうことにこだわりのないタイプであるならともかく、ホッチのような堅物が性的問題にどのように対処しているのか、という疑問もあったのかもしれない。世界で最もセックスレスが多い日本人からすると全くもって余計なお世話なんだけど、アメリカ人にとってはまっこと由々しき問題だったんだと思うよ。
だけどそれにしたって、そんなの、番組として座りのいいキャラクター描写という必然性故の成り行きでしょう。ホッチというひとについて真剣に考えたら、こういう解答になるとはとても思えない。高校生のときに出会って、それから一途にずっと好きだった相手、しかもそのヘイリーは、ホッチの「せいで」無残な殺され方をしてしまった。や、もちろんホッチに責めを負わせるなんて残酷すぎるのだけど、ホッチとさえ関わっていなければヘイリーは決してあんな死に方をすることはなかった、ということは紛れもない事実であり、そのことはホッチ自身が誰よりも一番深く感じていたことなんじゃないのかな。そんなひとが、ヘイリーが死んでから1年やそこらで、新しい恋をしようと思えるものかな。
テレビシリーズのキャラクターって、恋人がいないと色々不都合があったり、兎にも角にも恋愛ドラマに持ち込みたいという思惑があったりで、前の人と別れてもすぐ次の人と出会って恋に落ちる展開になりがち。なにかと言うとすぐmove on、move onって言う。だけど、ほんとにリアルなひとの心って、そんなに簡単に愛情の対象を切り替えることってできるものかな? あんまり安易にムーボンバカボンバカボンボンって言われると、どうにも釈然としないのだけど。そんなにムーボンしたいのならば、仕事の上でするべきなのでは? いつまでもユニットチーフの立場に甘んじていることに関しては、誰も何も言わないの?
ホッチがとっても軽薄なひとに見えたよ。そこも狙った?
by shirakian
| 2014-09-08 22:18
| 海外ドラマ