2014年 03月 26日
【海外ドラマ】デクスター/シーズン6
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★ネタバレ注意★
■デクスター/シーズン1
■デクスター/シーズン2
■デクスター/シーズン3
■デクスター/シーズン4
■デクスター/シーズン5
デクスターのシーズン6です。
この番組、ほんとに凄いです。もうシーズンも6だというのに、未だに新鮮に驚かせてくれる。しかも、実はふたごの兄弟がいたのです、とか、死んだと思っていたあのひとが実は生きていたのです、とかいう「小手先のビックリ」じゃなくて、ちゃんとストーリーを展開させていく上で手順を踏んで驚かせてくれるのだからまさに匠の技。心底実力のある脚本家陣を集めた番組なんだと思います。役者さんたちも達者なひとが揃ってるけど、やっぱ脚本が最高品質。
まずは、ビックリの初手は、ラゲルタとエンジェルの離婚ですか。はやっ!
数ヶ月しかもたなかった模様。やっぱり無理のあるカップルだったもの。エンジェルは傷付いたかもしれないけど、結果的にはそれでよかったと思うよ。所詮ラゲルタはラゲルタ、サソリの性の下に生まれた女。ラゲルタってば、マシューズ本部長代理が売春組織の顧客名簿に名前が載っていることを掴んだものだから、とっととエンジェルを切り捨てて、マシューズを脅してちゃっかり警部に昇進ですよ。それでこそマリア。しおらしく恋するラゲルタなんてラゲルタぢゃない!
そんな壊れたカップルを横目に、クインとデボラ組、なんとクインめ、なにをとち狂ったか、肉食系右代表のデボラにプロポーズしちゃうのです。結果はもちろん玉砕。デボラが家庭に収まるタイプのはずないじゃん! クイン、とにかく、落ち着け!
クインのプロポーズに軽くビックリし、クインがふられたのにはさもありなんと納得し、しかしそれで終りじゃない。なんと、ラゲルタの後釜として実質的にマイアミ・メトロ殺人課を率いる警部補に就任したのは、誰もが順当と認めるエンジェルではなく、最年少刑事のデボラであった!(マシューズの、ラゲルタへのせめてもの嫌がらせ人事)。
ひゃ☆ 思わず嬉しくなっちゃいますね。おおお、そうきたか! あっちでもこっちでも縺れからまる人間模様!
そんなマイアミ・メトロですが、事件は待ってはくれません。
裂かれた腹に7匹の蛇をつめこまれた男、身体をバラバラにされ、4体のマネキンと合体させられた男、天使の羽をつけられ仕掛け罠で刺し貫かれた女……。「神の命令」を実行すべく、堕落したこの世界を終わらせるために、ヨハネ黙示録の予言に従って殺人を行うシリアルキラーは、ドゥームズデイ・キラー(DDK)と呼ばれる。容疑者として浮上したのは、元タラハシー大学神学教授のジェームズ・ゲラー(エドワード・ジェームズ・オルモス)とその教え子で美術品修復師のトラヴィス・マーシャル(コリン・ハンクス)だった。
というわけで、今シーズンの「シリアルキラー枠」は、ハリウッドで最も人畜無害なイメージのコリン・ハンクスです☆ 古今東西「神の命令」を持ち出して何かコトに及ぼうと言う連中にロクなヤツはおりませんが、コリン演じるトラヴィスもまた、狂信という名の狂気に憑り付かれたサイコパスです。いかにも大人しげな優しい顔が一転して歪んだ怒りに燃える瞬間の、ギャップの迫力が凄い。大変いい仕事をしていらっさいます。トム・ハンクスさんもさぞお喜びのことでしょう。
このシーズンの中核をなすのがDDKであることは間違いないのですが、しかしドラマの真髄的に最も重要だったのは、シリアルキラーではなく、モス・デフが演じた「改心した犯罪者」のブラザー・サムと、リア・キルステッドが演じたマイアミ・メトロのカウンセラーです。
まずブラザー・サムですが、ブラザーというからには神父さんですね。今回デクスターは何かと神様につきまとわれる。シリアル・キラーも神の名を騙る終末論者だし、息子のハリソンを入園させた幼稚園も厳格なカトリック系の名門幼稚園。デクスターは随所で「神」の問題をつきつけられるのです。デクスターみたいな人間が(っていうか、デクスター「みたいなの」が何人もいたらたまったもんじゃないけど)最も関わっちゃいけない問題に首をつっこんでしまった模様。
デクスターは最初のうち、ブラザー・サムの「改心」を信じてなかったのね。一度闇に染まった者は、一生闇から逃れることなどできない。だから、修理工場を経営しながらチンピラあがりの青年たちを雇って真っ当なたつきの道を与えようとしているブラザー・サムのことを、あれは単なる表の顔に過ぎず、その正体はかれこそがDDKなんじゃないかと疑ってすらいた。だけど、つきあっていくうちに、さすがのデクスターもブラザー・サムの信仰が本物であることを認めざるを得なくなる。
かつて闇の世界にいた者でも光の世界に住むことができるのか?
デクスターは、そんなサムが、もしかしたらハリソンの父親として、正しい道を進むための道しるべになるのではないかと考え、そこに一筋の光明を見出すのです。
デクスターは考える。
ブラザー・サムは光は闇に打ち克つと信じているが、もしかしたら闇は光があるからこそ生じるものなのかもしれない。だとしたら、闇はそれ自体では存在し得ないのではないだろうか。ここにこうして自分の中に闇が存在している以上、光もまた、どこかで見出されることを待ち望んでいるのではないだろうか?
デクスターにだって迷いがあった。常にあった。ずっとあった。
人を殺すことに理由をつけ、掟を儲け、規律と確信の下にシリアル・キラーであり続けることを選択していたデクスターだったけれど、心の底では常に疑惑と不信に苛まれていた。特にハリソンが生まれてからはそうだった。自分はともかく、ハリソンだけは幸せな人生を歩まなければならない。
そんなデクスターの内面の象徴として、父親のハリーの姿がいつまでも消えることなく寄り添っている。ハリーは常にデクスターのそばにいて、デクスターの判断に疑問をさしはさみ、批判し、アドバイスする。一方デクスターは反発し、皮肉り、時には怒りを露にすらするけれど、無視することだけはできない。ハリーはデクスターの良心の(あるいは単なる懐疑の)象徴だった。だから、上記のように考えたとき、ほんの一時見失っていたハリーが(その間デクスターの隣にいたのは、アイストラック・キラーこと、兄のブライアンだった)、ヒッチハイカーの姿になって再び現れるのです。デクスターを待っていた「光」を体現する者として。
しかし、今さらデクスターが光に向かって進むのは容易なことではなかった。結局サムは、自分が助けたチンピラによって殺されてしまうし、デクスターもまた「犯人を赦せ」というサムの言葉に逆らい犯人を処刑してしまうし、DDKの方でも、さんざんデクスターを翻弄した末に、あろうことかハリソンを誘拐して殺そうとする。
結局最終的にこの問題に関してデクスターが出した結論は、「光」からは遠ざかるものだった。デクスターはDDKに語りかける。
光は闇なくしては存在し得ない。光にも闇にも、それぞれの目的があるのだ。そして俺の中にある闇にも目的があるのだとしたら、それはたぶんこの世界に何らかのバランスをもたらすことだろう。
神はいない。神のプランはない。神の意志などない。
ここにあるのは、デクスターの手であり、プランであり、意志だけだ。デクスターは結局、自らの闇を肯定した。
……物語はまたひとつ階梯を上ってしまいました。
そしてもうひとつのポイント。
デボラはとある事件で犯人を銃殺してしまい、警察のプロトコルに従ってカウンセリングを受けるハメになります。初めは反発してバックレようとするデボラだったけど、渋々カウンセリングを受けているうちに、カウンセラーに対して信頼感を抱くようになり、徐々に心の内を語れるようになっていく。
そんな中で明らかになっていった事実があった。
仕事の愚痴ばかりこぼすデボラに対し、カウンセラーが私生活について尋ねるんですね。そう言われて改めてデボラは自分の過去を顧みてみる。
私生活で何か葛藤とかトラウマとかあるかって? えーと、母親はティーンの頃死んだし、父親からはネグレクトされてて、たぶんそのせいで倍も年上の男とつきあってたんだけど、その人はアタシの目の前で射殺されてさ。あ、婚約もしたよ、シリアルキラーだったけど。そう、アイストラック・キラー。デクスターの実兄。や、血は繋がってないよ、デクスターは養子だからね。
なんという波乱万丈。デボラ、イキロ。
ほんとにね、よくよく考えてみると、デボラの人生ってしっちゃかめっちゃかじゃないですか。ドラマがよくできているので行き当たりばったりの印象はなかったんだけど、こうして改めて並べられてみると唖然としてしまう。ところがしかし。唖然とするような内容ではあるけれど、それにはやはり必然性があり、決して行き当たりばったりの展開なんかじゃなかったのです。
ここで明らかになった事実とは、なぜにデボラは次々と、シリアル・キラーだの父親ほども年の違う男だの(あと、情報屋のアントンとか、飲酒癖はじめ警官としては問題ありすぎのクインとか)ばかり選んでしまうのか、ということ。単に肉食系だから、というわけじゃなかった。
かれらはみな、「デクスターとは違う」男たちばかりだった。
デボラは深層心理でデクスターをこそ愛しており、しかし(たとえ血の繋がりはないにせよ)兄妹であるという禁忌の念から無意識にデクスターを忌避しており、その結果、「デクスターとは違う」男ばかりを選んでしまっていたのだった。
なんと、ついに、そこに言及が。
この一連の流れの中でのデボラの複雑極まりない心理状態を演じて、ジェニファー・カーペンター、信じられないぐらいうまいです。ほんとに凄い演技力。この番組がファイナルを迎えた後も、たぶん色々な映画に出て、アカデミー賞に絡むようなお仕事をしていくんだろうな。
そしてこのシーズンでは、終わったはずの過去の声が再び聞こえてきます。トリニティ・キラーの妻子が殺される事件が起こったり、シリアル・キラーに興味津々の研修生の存在からアイストラック・キラーの証拠品が白日の下に晒されたり、同じく研修生でゲーム作家でもある男は、デクスターの(表の)仕事ぶりに心酔し、作ったゲームの批評を頼むのだけど、なんとそれがベイハーバー・ブッチャーをバーチャル体験できるゲームだったり。なにもバーチャルで体験せんでも、デクスターがベイハーバー・ブッチャーだっちゅーの。
ドークスに罪をきせ、逃げおおせたと思っていたはずの、過去の殺人。
それが再びデクスターの上に影を落す。なぜなら、最後のとっておきのお楽しみ、マイアミ・メトロの必死の捜査を欺いて、DDKを自ら処刑する瞬間を、あろうことかデボラに目撃されてしまったから……。
ああ、なんというクリフハンガー。
このドラマ、面白すぎる(>_<)。
■デクスター/シーズン1
■デクスター/シーズン2
■デクスター/シーズン3
■デクスター/シーズン4
■デクスター/シーズン5
デクスターのシーズン6です。
この番組、ほんとに凄いです。もうシーズンも6だというのに、未だに新鮮に驚かせてくれる。しかも、実はふたごの兄弟がいたのです、とか、死んだと思っていたあのひとが実は生きていたのです、とかいう「小手先のビックリ」じゃなくて、ちゃんとストーリーを展開させていく上で手順を踏んで驚かせてくれるのだからまさに匠の技。心底実力のある脚本家陣を集めた番組なんだと思います。役者さんたちも達者なひとが揃ってるけど、やっぱ脚本が最高品質。
まずは、ビックリの初手は、ラゲルタとエンジェルの離婚ですか。はやっ!
数ヶ月しかもたなかった模様。やっぱり無理のあるカップルだったもの。エンジェルは傷付いたかもしれないけど、結果的にはそれでよかったと思うよ。所詮ラゲルタはラゲルタ、サソリの性の下に生まれた女。ラゲルタってば、マシューズ本部長代理が売春組織の顧客名簿に名前が載っていることを掴んだものだから、とっととエンジェルを切り捨てて、マシューズを脅してちゃっかり警部に昇進ですよ。それでこそマリア。しおらしく恋するラゲルタなんてラゲルタぢゃない!
そんな壊れたカップルを横目に、クインとデボラ組、なんとクインめ、なにをとち狂ったか、肉食系右代表のデボラにプロポーズしちゃうのです。結果はもちろん玉砕。デボラが家庭に収まるタイプのはずないじゃん! クイン、とにかく、落ち着け!
クインのプロポーズに軽くビックリし、クインがふられたのにはさもありなんと納得し、しかしそれで終りじゃない。なんと、ラゲルタの後釜として実質的にマイアミ・メトロ殺人課を率いる警部補に就任したのは、誰もが順当と認めるエンジェルではなく、最年少刑事のデボラであった!(マシューズの、ラゲルタへのせめてもの嫌がらせ人事)。
ひゃ☆ 思わず嬉しくなっちゃいますね。おおお、そうきたか! あっちでもこっちでも縺れからまる人間模様!
そんなマイアミ・メトロですが、事件は待ってはくれません。
裂かれた腹に7匹の蛇をつめこまれた男、身体をバラバラにされ、4体のマネキンと合体させられた男、天使の羽をつけられ仕掛け罠で刺し貫かれた女……。「神の命令」を実行すべく、堕落したこの世界を終わらせるために、ヨハネ黙示録の予言に従って殺人を行うシリアルキラーは、ドゥームズデイ・キラー(DDK)と呼ばれる。容疑者として浮上したのは、元タラハシー大学神学教授のジェームズ・ゲラー(エドワード・ジェームズ・オルモス)とその教え子で美術品修復師のトラヴィス・マーシャル(コリン・ハンクス)だった。
というわけで、今シーズンの「シリアルキラー枠」は、ハリウッドで最も人畜無害なイメージのコリン・ハンクスです☆ 古今東西「神の命令」を持ち出して何かコトに及ぼうと言う連中にロクなヤツはおりませんが、コリン演じるトラヴィスもまた、狂信という名の狂気に憑り付かれたサイコパスです。いかにも大人しげな優しい顔が一転して歪んだ怒りに燃える瞬間の、ギャップの迫力が凄い。大変いい仕事をしていらっさいます。トム・ハンクスさんもさぞお喜びのことでしょう。
このシーズンの中核をなすのがDDKであることは間違いないのですが、しかしドラマの真髄的に最も重要だったのは、シリアルキラーではなく、モス・デフが演じた「改心した犯罪者」のブラザー・サムと、リア・キルステッドが演じたマイアミ・メトロのカウンセラーです。
まずブラザー・サムですが、ブラザーというからには神父さんですね。今回デクスターは何かと神様につきまとわれる。シリアル・キラーも神の名を騙る終末論者だし、息子のハリソンを入園させた幼稚園も厳格なカトリック系の名門幼稚園。デクスターは随所で「神」の問題をつきつけられるのです。デクスターみたいな人間が(っていうか、デクスター「みたいなの」が何人もいたらたまったもんじゃないけど)最も関わっちゃいけない問題に首をつっこんでしまった模様。
デクスターは最初のうち、ブラザー・サムの「改心」を信じてなかったのね。一度闇に染まった者は、一生闇から逃れることなどできない。だから、修理工場を経営しながらチンピラあがりの青年たちを雇って真っ当なたつきの道を与えようとしているブラザー・サムのことを、あれは単なる表の顔に過ぎず、その正体はかれこそがDDKなんじゃないかと疑ってすらいた。だけど、つきあっていくうちに、さすがのデクスターもブラザー・サムの信仰が本物であることを認めざるを得なくなる。
かつて闇の世界にいた者でも光の世界に住むことができるのか?
デクスターは、そんなサムが、もしかしたらハリソンの父親として、正しい道を進むための道しるべになるのではないかと考え、そこに一筋の光明を見出すのです。
デクスターは考える。
ブラザー・サムは光は闇に打ち克つと信じているが、もしかしたら闇は光があるからこそ生じるものなのかもしれない。だとしたら、闇はそれ自体では存在し得ないのではないだろうか。ここにこうして自分の中に闇が存在している以上、光もまた、どこかで見出されることを待ち望んでいるのではないだろうか?
デクスターにだって迷いがあった。常にあった。ずっとあった。
人を殺すことに理由をつけ、掟を儲け、規律と確信の下にシリアル・キラーであり続けることを選択していたデクスターだったけれど、心の底では常に疑惑と不信に苛まれていた。特にハリソンが生まれてからはそうだった。自分はともかく、ハリソンだけは幸せな人生を歩まなければならない。
そんなデクスターの内面の象徴として、父親のハリーの姿がいつまでも消えることなく寄り添っている。ハリーは常にデクスターのそばにいて、デクスターの判断に疑問をさしはさみ、批判し、アドバイスする。一方デクスターは反発し、皮肉り、時には怒りを露にすらするけれど、無視することだけはできない。ハリーはデクスターの良心の(あるいは単なる懐疑の)象徴だった。だから、上記のように考えたとき、ほんの一時見失っていたハリーが(その間デクスターの隣にいたのは、アイストラック・キラーこと、兄のブライアンだった)、ヒッチハイカーの姿になって再び現れるのです。デクスターを待っていた「光」を体現する者として。
しかし、今さらデクスターが光に向かって進むのは容易なことではなかった。結局サムは、自分が助けたチンピラによって殺されてしまうし、デクスターもまた「犯人を赦せ」というサムの言葉に逆らい犯人を処刑してしまうし、DDKの方でも、さんざんデクスターを翻弄した末に、あろうことかハリソンを誘拐して殺そうとする。
結局最終的にこの問題に関してデクスターが出した結論は、「光」からは遠ざかるものだった。デクスターはDDKに語りかける。
光は闇なくしては存在し得ない。光にも闇にも、それぞれの目的があるのだ。そして俺の中にある闇にも目的があるのだとしたら、それはたぶんこの世界に何らかのバランスをもたらすことだろう。
神はいない。神のプランはない。神の意志などない。
ここにあるのは、デクスターの手であり、プランであり、意志だけだ。デクスターは結局、自らの闇を肯定した。
……物語はまたひとつ階梯を上ってしまいました。
そしてもうひとつのポイント。
デボラはとある事件で犯人を銃殺してしまい、警察のプロトコルに従ってカウンセリングを受けるハメになります。初めは反発してバックレようとするデボラだったけど、渋々カウンセリングを受けているうちに、カウンセラーに対して信頼感を抱くようになり、徐々に心の内を語れるようになっていく。
そんな中で明らかになっていった事実があった。
仕事の愚痴ばかりこぼすデボラに対し、カウンセラーが私生活について尋ねるんですね。そう言われて改めてデボラは自分の過去を顧みてみる。
私生活で何か葛藤とかトラウマとかあるかって? えーと、母親はティーンの頃死んだし、父親からはネグレクトされてて、たぶんそのせいで倍も年上の男とつきあってたんだけど、その人はアタシの目の前で射殺されてさ。あ、婚約もしたよ、シリアルキラーだったけど。そう、アイストラック・キラー。デクスターの実兄。や、血は繋がってないよ、デクスターは養子だからね。
なんという波乱万丈。デボラ、イキロ。
ほんとにね、よくよく考えてみると、デボラの人生ってしっちゃかめっちゃかじゃないですか。ドラマがよくできているので行き当たりばったりの印象はなかったんだけど、こうして改めて並べられてみると唖然としてしまう。ところがしかし。唖然とするような内容ではあるけれど、それにはやはり必然性があり、決して行き当たりばったりの展開なんかじゃなかったのです。
ここで明らかになった事実とは、なぜにデボラは次々と、シリアル・キラーだの父親ほども年の違う男だの(あと、情報屋のアントンとか、飲酒癖はじめ警官としては問題ありすぎのクインとか)ばかり選んでしまうのか、ということ。単に肉食系だから、というわけじゃなかった。
かれらはみな、「デクスターとは違う」男たちばかりだった。
デボラは深層心理でデクスターをこそ愛しており、しかし(たとえ血の繋がりはないにせよ)兄妹であるという禁忌の念から無意識にデクスターを忌避しており、その結果、「デクスターとは違う」男ばかりを選んでしまっていたのだった。
なんと、ついに、そこに言及が。
この一連の流れの中でのデボラの複雑極まりない心理状態を演じて、ジェニファー・カーペンター、信じられないぐらいうまいです。ほんとに凄い演技力。この番組がファイナルを迎えた後も、たぶん色々な映画に出て、アカデミー賞に絡むようなお仕事をしていくんだろうな。
そしてこのシーズンでは、終わったはずの過去の声が再び聞こえてきます。トリニティ・キラーの妻子が殺される事件が起こったり、シリアル・キラーに興味津々の研修生の存在からアイストラック・キラーの証拠品が白日の下に晒されたり、同じく研修生でゲーム作家でもある男は、デクスターの(表の)仕事ぶりに心酔し、作ったゲームの批評を頼むのだけど、なんとそれがベイハーバー・ブッチャーをバーチャル体験できるゲームだったり。なにもバーチャルで体験せんでも、デクスターがベイハーバー・ブッチャーだっちゅーの。
ドークスに罪をきせ、逃げおおせたと思っていたはずの、過去の殺人。
それが再びデクスターの上に影を落す。なぜなら、最後のとっておきのお楽しみ、マイアミ・メトロの必死の捜査を欺いて、DDKを自ら処刑する瞬間を、あろうことかデボラに目撃されてしまったから……。
ああ、なんというクリフハンガー。
このドラマ、面白すぎる(>_<)。
by shirakian
| 2014-03-26 01:25
| 海外ドラマ