2013年 08月 10日
パシフィック・リム
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★ネタバレ注意★
ギレルモ・デル・トロ監督作品だということ以外、出演者どころかジャンルすら確かめず、果たしてこの作品がファンタジーなのかSFなのかサスペンスなのかミリタリーアクションなのかシリアスな戦争映画なのか、それすら知らなかったのですが、とりあえず劇映画ということで、いつものように2D上映で観たのだけど、もしかしたら失敗だったかも。これは、劇映画というより体感型アトラクション、映像偏重93%のアメージング体験。3Dどころか、いっそIMAXで観るのが正しい鑑賞の仕方だったかも。
近未来の地球。宇宙人の侵略は空からはでなく深海から始まった。
太平洋沖合いの海底にあるクレバスから突如現れた巨大生物(カイジュウ)に襲撃された世界中の主要都市は、壊滅的な被害を受ける。試行錯誤の末、国際的な軍事組織、環太平洋防衛軍はパイロットと神経を接続して動く2人乗りの巨大ヒトガタロボット「イェーガー」を開発し、カイジュウを退治することに成功した、かに見えた。しかし緒戦は勝利したものの、次々と果てしなく現れ続けるカイジュウの猛攻に、やがてイェーガーの攻撃では歯が立たなくなってしまう。防衛軍は海浜地帯に巨大な障壁を築く工事に着手し、イェーガープロジェクトは放棄されてしまう。
といったあたりの背景説明が、冒頭短い時間に手際よく説明されていきます。
中でも、人間が単独で巨大ロボットに接続するのは脳の負担が大きすぎるので、苦肉の策として採用された2人パイロット制は、パイロット2人の緊密な繋がりと絶対的な信頼、相性のよさがなければ成り立たない、という基本設定がとにかく巧い。ここからいかようにもドラマチックに物語を膨らませ得る可能性が生まれています。
実際、主人公のローリー・ベケット(チャーリー・ハナム)も、ぴったり息のあった仲のいい兄のヤンシー(ディエゴ・クラテンホフ)と一心同体で連勝街道を邁進してきたのです。それなのに、アラスカ沖の戦いで、兄は命を落としてしまう、弟に接続したままの状態で。弟のトラウマはいかばかりか、想像するだに余りある。
こういうワクワクものの物語を、巨大ロボットの凄まじい巨大さと強さ、カイジュウのおぞましい姿かたちと執拗さ、それらを見事に表現したすばらしい映像で、グイグイ魅せてくれるのです。しまったー、IMAXで観るべきだったー、次また絶対IMAXに来よう! って、この時点では思ってましたとも。
だけど、後が続かないのね。
だって、ほら、映像偏重93%の体感型アトラクションですもん。ドラマも人間描写もあまりに平板で薄っぺらいわけです。だけど、こういう話ですもん、人間描写なんか薄っぺらでも構わない。脚本がきちんとツボを抑えてさえいれば。
背景設定はどうあれ、結局は巨大ロボットがカイジュウと闘う話でしょ? マジンガーZのようなものだよね?(その世代か)。だったら、それにふさわしい物語の流れ、っていうものがあるでしょ。脚本監修に是非とも日本のアニメ界の人材を入れるべきであったと思うのよ。本場のプロなら心得てる。この脚本のソレジャナイ感の因って来る所以を。こういう話には王道的盛り上げ方っていうのが絶対的にあると思うの。それは決してマンネリとかじゃないの。必要な段取りなの。美学なの。だってそうでしょ、人類滅亡を阻止するために主要人物が我が身を犠牲にして特攻して果てるシーンがありながら、観客を泣かせられないなんて、アニメ道からはずれているにもほどがある。(別にアニメじゃないんだが)。
というわけで、中盤から後半にかけての「正しい」流れを例示してみたいと思います。なので以下の文章は、実際の映画とは全く何の関係もないです。自己満足です。ウザイです。読んでも時間の無駄である可能性が高いです。
兄の死から5年。
あまりにも深い衝撃と喪失感から未だに立ち直ることのできないローリーは、戦局は益々悪化しているというのに、パイロットとしての仕事は愚か戦闘行為につくことすらできず、「壁」建設の現場で作業員として働いていた。壊れかけたローリーの心に訪れる無数のフラッシュバック。無邪気だった子ども時代、平凡だった高校時代、イェーガーパイロットとしての才能を見出され、訓練に明け暮れる日々、やがて配備された実戦、恐怖、憤怒、苦痛、悲哀、歓喜、いつの瞬間も、ローリーの心は兄と繋がっていた。この(時に兄の目を通して見た)記憶が、尺は短いのですが、要領よく編集されて再現されるシーンがしみじみとイイです。これで観客のローリーへの感情移入は完璧です。
そんなローリーの下に、かつての指揮官だったスタッカー・ペントコスト(イドリス・エルバ)が訪れる。ペントコストは、障壁の建設などという怯懦で消極的な愚作に逃げ込み、イェーガープロジェクトを放棄した環太平洋防衛軍に見切りをつけ、香港を拠点として独自にイェーガー軍団を再編していたのである。もはや残り少ないイェーガー。それ以上に残り少ない熟練パイロット。ペントコストの計画にはどうしてもローリーが必要だったのだ。
「軍団」とは言うけれど、ペントコストの下に集結したイェーガーはわずか4体。ロシア人夫妻、中国人兄弟がそれぞれ操るマシンのほか、かつてローリーの愛機だった乗り手のない一体、そしてもう一体はオーストラリア人親子、ハーク・ハンセン(マックス・マーティーニ)とチャック・ハンセン(ロバート・カジンスキー)の乗機だった。父親のハークは環太平洋防衛軍でローリーと面識があり、その豊かな経験と穏やかな人柄をローリーも大変慕っていたのだが、しかしかれは最後の闘いで腕を負傷し、マシンに搭乗することができない状態だった。組む相手がおらず、出撃のメドが立たない息子のチャックは荒れ気味で、無闇に「新入り」のローリーにつっかかってくる。
しかし現実を見れば、ローリーが組める相手は現時点ではチャックしかいないのだ。チャックの度重なる暴言をぐっと堪え、なんとか歩み寄ろうと努力するローリーだったが、刻限が迫る中、二人が協調(ドリフト)する訓練は捗捗しい進展を見ない。父親は子どもじみた息子の行動に頭を抱え、総指揮を務めるペントコストは焦りに苛まれていた。
そんなふたりに訪れた決定的な事件は、シュミレーターでドリフトした時、チャックの中に否応なく流れ込んできたローリーのトラウマだった。チャックもまた、兄の死を自らの体験としてその身に受けた際のローリーの苦しみを、自らの体験として味わってしまったのだ。たかが身内の死程度のものから立ち直れない腰抜けと(なぜならこの時代、身内の死は全く特別な事件ではないから)、ローリーのことを見下していたチャックだったのに、いざ実際にそれを体験してしまうと、ローリーがどれほどの困難を乗り越えてきたのかがようやく理解できたのだった。そうしてチャックは少しずつローリーの実力を認め、真摯に訓練に向き合うようになる。……という流れが、割と長目に時間を割いて丹念に描かれていくのですが、これがもう王道少年ジャンプ展開。観ているだけで胸が熱くなるし、やがて来る決戦への期待に胸が躍るのです。
さて、わずか4機のイェーガーで、どうやってカイジュウを殲滅しようというのだろうか? 実はペントコストには計画があった。イェーガーに大量の核を搭載し、カイジュウがこの世界に侵入する経路そのものを破壊し、閉ざしてしまおうというものであった。ところがこの計画には一つだけ致命的な欠点があり、経路を閉鎖するには、核を搭載したままクレバス深くに侵入しなければならず、そこで核を爆発させてしまえば、パイロットは戻って来ることはできない。このミッションは、初めからワンウェイチケットであることが定められた特攻計画だったのである。
今でこそ司令官の地位にあるペントコストだったが、かつては自らイェーガーパイロットとして闘った歴戦の勇士だった。しかし、被曝対策が不十分だった初期マシンに長年搭乗した結果、ペントコストは放射能に汚染され、余命幾許もなかったのである。乗り手のない4番目のイェーガーに乗り、クレバスを爆破する任務は自分こそが果たすべきである。ペントコストはほかのパイロットたちには詳細を伏せ、単独でイェーガーに乗り込み、最後のミッションに出撃しようとする。
しかしそんなペントコストの目論見は、あっさりハークに見抜かれてしまう。ペントコストが現役を引退する前、ふたりはペアを組んで戦っていたのだ。きみが行くならおれも行く。イェーガーは二人で操縦するものだ。それはきみが一番よく知っていることだろう? 淡々とハークに告げられては、ペントコストも拒否することはできなかった。かくて病身のペントコストと傷を負ったハークは、大量の核と共に4番目のイェーガーに乗り込むのだった。
今回もまた通常のミッションだと信じ切っていたチャックは、思いがけぬ父親の復帰に大喜びで、やる気満々だったが、いよいよクレバスに到着しようかという局面になって、ようやく作戦の詳細を知らされて愕然となる。
冗談じゃない。初めから死ぬとわかっている任務に親父を行かせることなんかできるものか!
しかし、息子の動揺をよそに、あくまで冷静にハークは諭す。おれとペントコストが無事にクレバスに突入できるように、おまえは仲間たちとともに、おれたちの機体を援護してくれ。カイジュウは全力で阻止にかかってくるはずだ。おまえたちの援護がなければおれたちはクレバスに突入することができないんだぞ?
それでも納得ができず、取り乱してしまうチャック。しかしそこでローリーが懸命に止める。きみも知ってるだろう、兄貴が死ぬとき、何を思っていたか、親父さんはきみがいるからこそ、自分の命を投げ出して地球を救おうと思えるんだぞ、しっかりしろ、支えてやれ、それがきみのやるべきことだ!
ローリーの説得に事態を受け入れるチャック。ロシア人夫妻も中国人兄弟も、それぞれペントコストおよびハークを敬愛しており、ローリーとチャックの会話も聞いていた。その上でハークとペントコストを援護して戦うのです。その戦闘の悲壮感と迫力はまさに比類なきものです。その上で、援護にまわった三機はみな、無事に帰還を果たすのです。
チャック、悔いなく生きろ……。
振り絞るような最後の一言を残し、クレバスに消えたハークとペントコスト。かくて地球は、カイジュウたちの侵入路を封鎖し、恒久的平和を得ることができたのであった……。
という展開なら、わたしなんか、いとも簡単にコヨーテ泣きしたかと思うのですが。
まあ、ぶっちゃけ、要するに、菊地凛子のラインは全くいらなかった、ということです。
あと、「あらすじ」では触れることができませんでしたが、カイジュウオタクのニュートン・ガイズラー博士(チャーリー・デイ)と、数学バカのハーマン・ゴットリープ博士(バーン・ゴーマン)、更にかれらに関わるカイジュウの死体処理業者であるハンニバル・チャウ(ロン・パールマン)は、キャラが立っててとても面白かったです。特にパールマン、最高☆ かれらの行動がもっと本筋に絡めていたらもっとよかったんだけど。
ギレルモ・デル・トロ監督作品だということ以外、出演者どころかジャンルすら確かめず、果たしてこの作品がファンタジーなのかSFなのかサスペンスなのかミリタリーアクションなのかシリアスな戦争映画なのか、それすら知らなかったのですが、とりあえず劇映画ということで、いつものように2D上映で観たのだけど、もしかしたら失敗だったかも。これは、劇映画というより体感型アトラクション、映像偏重93%のアメージング体験。3Dどころか、いっそIMAXで観るのが正しい鑑賞の仕方だったかも。
近未来の地球。宇宙人の侵略は空からはでなく深海から始まった。
太平洋沖合いの海底にあるクレバスから突如現れた巨大生物(カイジュウ)に襲撃された世界中の主要都市は、壊滅的な被害を受ける。試行錯誤の末、国際的な軍事組織、環太平洋防衛軍はパイロットと神経を接続して動く2人乗りの巨大ヒトガタロボット「イェーガー」を開発し、カイジュウを退治することに成功した、かに見えた。しかし緒戦は勝利したものの、次々と果てしなく現れ続けるカイジュウの猛攻に、やがてイェーガーの攻撃では歯が立たなくなってしまう。防衛軍は海浜地帯に巨大な障壁を築く工事に着手し、イェーガープロジェクトは放棄されてしまう。
といったあたりの背景説明が、冒頭短い時間に手際よく説明されていきます。
中でも、人間が単独で巨大ロボットに接続するのは脳の負担が大きすぎるので、苦肉の策として採用された2人パイロット制は、パイロット2人の緊密な繋がりと絶対的な信頼、相性のよさがなければ成り立たない、という基本設定がとにかく巧い。ここからいかようにもドラマチックに物語を膨らませ得る可能性が生まれています。
実際、主人公のローリー・ベケット(チャーリー・ハナム)も、ぴったり息のあった仲のいい兄のヤンシー(ディエゴ・クラテンホフ)と一心同体で連勝街道を邁進してきたのです。それなのに、アラスカ沖の戦いで、兄は命を落としてしまう、弟に接続したままの状態で。弟のトラウマはいかばかりか、想像するだに余りある。
こういうワクワクものの物語を、巨大ロボットの凄まじい巨大さと強さ、カイジュウのおぞましい姿かたちと執拗さ、それらを見事に表現したすばらしい映像で、グイグイ魅せてくれるのです。しまったー、IMAXで観るべきだったー、次また絶対IMAXに来よう! って、この時点では思ってましたとも。
だけど、後が続かないのね。
だって、ほら、映像偏重93%の体感型アトラクションですもん。ドラマも人間描写もあまりに平板で薄っぺらいわけです。だけど、こういう話ですもん、人間描写なんか薄っぺらでも構わない。脚本がきちんとツボを抑えてさえいれば。
背景設定はどうあれ、結局は巨大ロボットがカイジュウと闘う話でしょ? マジンガーZのようなものだよね?(その世代か)。だったら、それにふさわしい物語の流れ、っていうものがあるでしょ。脚本監修に是非とも日本のアニメ界の人材を入れるべきであったと思うのよ。本場のプロなら心得てる。この脚本のソレジャナイ感の因って来る所以を。こういう話には王道的盛り上げ方っていうのが絶対的にあると思うの。それは決してマンネリとかじゃないの。必要な段取りなの。美学なの。だってそうでしょ、人類滅亡を阻止するために主要人物が我が身を犠牲にして特攻して果てるシーンがありながら、観客を泣かせられないなんて、アニメ道からはずれているにもほどがある。(別にアニメじゃないんだが)。
というわけで、中盤から後半にかけての「正しい」流れを例示してみたいと思います。なので以下の文章は、実際の映画とは全く何の関係もないです。自己満足です。ウザイです。読んでも時間の無駄である可能性が高いです。
兄の死から5年。
あまりにも深い衝撃と喪失感から未だに立ち直ることのできないローリーは、戦局は益々悪化しているというのに、パイロットとしての仕事は愚か戦闘行為につくことすらできず、「壁」建設の現場で作業員として働いていた。壊れかけたローリーの心に訪れる無数のフラッシュバック。無邪気だった子ども時代、平凡だった高校時代、イェーガーパイロットとしての才能を見出され、訓練に明け暮れる日々、やがて配備された実戦、恐怖、憤怒、苦痛、悲哀、歓喜、いつの瞬間も、ローリーの心は兄と繋がっていた。この(時に兄の目を通して見た)記憶が、尺は短いのですが、要領よく編集されて再現されるシーンがしみじみとイイです。これで観客のローリーへの感情移入は完璧です。
そんなローリーの下に、かつての指揮官だったスタッカー・ペントコスト(イドリス・エルバ)が訪れる。ペントコストは、障壁の建設などという怯懦で消極的な愚作に逃げ込み、イェーガープロジェクトを放棄した環太平洋防衛軍に見切りをつけ、香港を拠点として独自にイェーガー軍団を再編していたのである。もはや残り少ないイェーガー。それ以上に残り少ない熟練パイロット。ペントコストの計画にはどうしてもローリーが必要だったのだ。
「軍団」とは言うけれど、ペントコストの下に集結したイェーガーはわずか4体。ロシア人夫妻、中国人兄弟がそれぞれ操るマシンのほか、かつてローリーの愛機だった乗り手のない一体、そしてもう一体はオーストラリア人親子、ハーク・ハンセン(マックス・マーティーニ)とチャック・ハンセン(ロバート・カジンスキー)の乗機だった。父親のハークは環太平洋防衛軍でローリーと面識があり、その豊かな経験と穏やかな人柄をローリーも大変慕っていたのだが、しかしかれは最後の闘いで腕を負傷し、マシンに搭乗することができない状態だった。組む相手がおらず、出撃のメドが立たない息子のチャックは荒れ気味で、無闇に「新入り」のローリーにつっかかってくる。
しかし現実を見れば、ローリーが組める相手は現時点ではチャックしかいないのだ。チャックの度重なる暴言をぐっと堪え、なんとか歩み寄ろうと努力するローリーだったが、刻限が迫る中、二人が協調(ドリフト)する訓練は捗捗しい進展を見ない。父親は子どもじみた息子の行動に頭を抱え、総指揮を務めるペントコストは焦りに苛まれていた。
そんなふたりに訪れた決定的な事件は、シュミレーターでドリフトした時、チャックの中に否応なく流れ込んできたローリーのトラウマだった。チャックもまた、兄の死を自らの体験としてその身に受けた際のローリーの苦しみを、自らの体験として味わってしまったのだ。たかが身内の死程度のものから立ち直れない腰抜けと(なぜならこの時代、身内の死は全く特別な事件ではないから)、ローリーのことを見下していたチャックだったのに、いざ実際にそれを体験してしまうと、ローリーがどれほどの困難を乗り越えてきたのかがようやく理解できたのだった。そうしてチャックは少しずつローリーの実力を認め、真摯に訓練に向き合うようになる。……という流れが、割と長目に時間を割いて丹念に描かれていくのですが、これがもう王道少年ジャンプ展開。観ているだけで胸が熱くなるし、やがて来る決戦への期待に胸が躍るのです。
さて、わずか4機のイェーガーで、どうやってカイジュウを殲滅しようというのだろうか? 実はペントコストには計画があった。イェーガーに大量の核を搭載し、カイジュウがこの世界に侵入する経路そのものを破壊し、閉ざしてしまおうというものであった。ところがこの計画には一つだけ致命的な欠点があり、経路を閉鎖するには、核を搭載したままクレバス深くに侵入しなければならず、そこで核を爆発させてしまえば、パイロットは戻って来ることはできない。このミッションは、初めからワンウェイチケットであることが定められた特攻計画だったのである。
今でこそ司令官の地位にあるペントコストだったが、かつては自らイェーガーパイロットとして闘った歴戦の勇士だった。しかし、被曝対策が不十分だった初期マシンに長年搭乗した結果、ペントコストは放射能に汚染され、余命幾許もなかったのである。乗り手のない4番目のイェーガーに乗り、クレバスを爆破する任務は自分こそが果たすべきである。ペントコストはほかのパイロットたちには詳細を伏せ、単独でイェーガーに乗り込み、最後のミッションに出撃しようとする。
しかしそんなペントコストの目論見は、あっさりハークに見抜かれてしまう。ペントコストが現役を引退する前、ふたりはペアを組んで戦っていたのだ。きみが行くならおれも行く。イェーガーは二人で操縦するものだ。それはきみが一番よく知っていることだろう? 淡々とハークに告げられては、ペントコストも拒否することはできなかった。かくて病身のペントコストと傷を負ったハークは、大量の核と共に4番目のイェーガーに乗り込むのだった。
今回もまた通常のミッションだと信じ切っていたチャックは、思いがけぬ父親の復帰に大喜びで、やる気満々だったが、いよいよクレバスに到着しようかという局面になって、ようやく作戦の詳細を知らされて愕然となる。
冗談じゃない。初めから死ぬとわかっている任務に親父を行かせることなんかできるものか!
しかし、息子の動揺をよそに、あくまで冷静にハークは諭す。おれとペントコストが無事にクレバスに突入できるように、おまえは仲間たちとともに、おれたちの機体を援護してくれ。カイジュウは全力で阻止にかかってくるはずだ。おまえたちの援護がなければおれたちはクレバスに突入することができないんだぞ?
それでも納得ができず、取り乱してしまうチャック。しかしそこでローリーが懸命に止める。きみも知ってるだろう、兄貴が死ぬとき、何を思っていたか、親父さんはきみがいるからこそ、自分の命を投げ出して地球を救おうと思えるんだぞ、しっかりしろ、支えてやれ、それがきみのやるべきことだ!
ローリーの説得に事態を受け入れるチャック。ロシア人夫妻も中国人兄弟も、それぞれペントコストおよびハークを敬愛しており、ローリーとチャックの会話も聞いていた。その上でハークとペントコストを援護して戦うのです。その戦闘の悲壮感と迫力はまさに比類なきものです。その上で、援護にまわった三機はみな、無事に帰還を果たすのです。
チャック、悔いなく生きろ……。
振り絞るような最後の一言を残し、クレバスに消えたハークとペントコスト。かくて地球は、カイジュウたちの侵入路を封鎖し、恒久的平和を得ることができたのであった……。
という展開なら、わたしなんか、いとも簡単にコヨーテ泣きしたかと思うのですが。
まあ、ぶっちゃけ、要するに、菊地凛子のラインは全くいらなかった、ということです。
あと、「あらすじ」では触れることができませんでしたが、カイジュウオタクのニュートン・ガイズラー博士(チャーリー・デイ)と、数学バカのハーマン・ゴットリープ博士(バーン・ゴーマン)、更にかれらに関わるカイジュウの死体処理業者であるハンニバル・チャウ(ロン・パールマン)は、キャラが立っててとても面白かったです。特にパールマン、最高☆ かれらの行動がもっと本筋に絡めていたらもっとよかったんだけど。
by shirakian
| 2013-08-10 23:51
| 映画は行