2011年 08月 15日
イエスマン “YES”は人生のパスワード
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★ネタバレ注意★
2008年、ペイトン・リード監督作品。
ダニー・ウォレスのベストセラーを原作に、いままでひとに誘われたり頼まれたりするたんびに「ノー」と答えてきた男が、とあるセミナーに参加したことをきっかけに、あらゆることに「イエス」と答える誓いをたててみたところ、なんだか人生変わってきた、という実話の映画化。ジム・キャリー主演作です。
実はジム・キャリーはあんまり得意じゃないです。だったらなぜ観たのかというと、ブラッドリー・クーパーの出演作だからです。クーパーはキャリーの親友の役。親友というか、むしろお兄さんみたいに、キャリーのことをあれこれ心配して面倒みてくれる頼りになるやつ。
カール・アレン(ジム・キャリー)は未だ離婚の痛手から立ち直れず、友人を避け、引きこもりがちの毎日。仕事は銀行の貸付係なんだけど、貸付係というものは、ローン申請者に対して「ノー」というのが仕事のようなもの。かくてカールは、私生活でも仕事でも、毎日「ノー」とばっかり答えるネガティブな毎日。ついには親友ピーター(ブラッドリー・クーパー)の婚約パーティをすっぽかしてしまい、さすがに愛想を尽かされそうになる。
そこで参加した一種の開運セミナー。講師のテレンス・バンドリー(テレンス・スタンプ)の言うことにゃ、意味のある人生を送るための唯一のルールは、どんな誘いや頼み事に対しても、全て「イエス」と答えること! かくて、カールの「イエス・マン」の日々が始まった。
というわけで、ネガティブだった毎日が、とんとん拍子に好転していく展開には爽快感があります。
手始めは図々しいホームレス。かれは、「イエス・マン・セミナー」の会場から出てきた受講者は、かなり無茶な要求でも「イエス」と応じてくれる確率が高いことを知っており、その伝でカールに声をかけたんだけど、案の定、カールは目的地まで送ってくれるわ、携帯電話を使い放題に使わせてくれるわ、笑いがとまらないカモ男。当のカールの方は、車はガス欠になるわ、携帯は充電切れになるわで散々。だけど、世の中を呪いながら徒歩で辿りついたガソリンスタンドで、運命の女性(?)アリソン(ゾーイ・デシャネル)と出会い、なんだかんだでキスまでしてもらっちゃった!
しかも、アリソンとはそれだけに留まらず、いつもならノーとパスするライブの誘いを、イエス行くよ、と応じたところ、なんとそのバンドのボーカルがアリソンだったじゃありませんか! というわけで、二度重なった偶然のおかげで、カールはキュートなアリソンとおつきあい始めることになったのです。
一方仕事の上では、前述のごとくノーというのが仕事のカール、いままでは毎日毎日ノーと連発してたんだけど、全てのローン申請者に対してイエスと応じてみたところ、まさかホントに貸してくれるとは思ってなかった申請者たち、感謝の気持ちで律儀に返済に励み、回収率は100%に近い良好ぐあい。しかも、個々のケースは小口ながら、なにしろ件数が多いため、銀行の利益もばかにならない。かくて万年貸付係だったカールは重役に抜擢されてしまう!
親友の信頼は取り戻すわ、上司には喜ばれるわ、恋人はできるわ、出世はするわで、カールはまさに快進撃! 韓国語や飛行機の操縦といった、いままでならやってみようとも思わなかった習い事にも積極的にチャレンジします。しかし、人生万事塞翁が馬。
来るものは拒まず式にあらゆることに手を出してしまった結果、カールの行動はFBIの目から見ると、まさに敵国のスパイの行動に見えてしまったのでした……。ということから転落を始めるカールのハッピーライフ。さすがにFBIの誤解は、頼もしい親友のピーター(ちなみにかれの職業は弁護士さん)が駆けつけてくれて解くことができたけれど、恋人のアリソンには、いままで自分の提案にイエスと答えていたのは、心からそれに賛成していたからではなく、単に、全てにイエスという教義を実践していただけだったのかと勘ぐられ(しかもそれは半ば事実でもある)、ふられそうになってしまう。
なにもかもイエスと言ってちゃダメなの?
それではと、勇を奮ってノーと言った途端、連鎖式に悪いことが起こりだして、カールはパニックに。
セミナーの主催者のテレンスを掴まえて助けを求めると、かれの口からは意外な真相が。
なにごとも無批判にイエスと言え、と言ったのは、発想転換のためのウォーミングアップ。いままで言えなかったイエスが言えるようになったら、今度は個々の事例について自分の頭で判断して、イエスと言うべきにはイエスと言い、ノーと言うべきには当然ノーと言えばいい、というしごくまっとうなものだったのでした。……そうは言っても、最初のセミナーのとき、カールにイエスと言わせることを強要したテレンスの態度は、かなり行っちゃってたけどね(笑)。だってなにしろ、テレンス・スタンプ、普通にしてても教祖様の迫力十分なんですもん(笑)。
まっとうな主張の割には、オーバーに誇張されたスラップスティック的演出が満載で、ジム・キャリー的には自家薬籠中の演技だったんじゃないかなと思います。ただ、親友のブラッドリー・クーパーも、恋人のゾーイ・デシャネルも、ジム・キャリーに対しては若すぎるので、そこのところ、ちょっと違和感を禁じえなかったです。たぶん、カールというキャラクターは、ジム・キャリーの実年齢よりだいぶ若い設定になっていたのだろうとは思うのですが、ジム・キャリーももはやそんなに若くは見えないので、ちょっとツライものがあったかも……。
ブラッドリー・クーパーが演じたピーターは、特に特徴があるようなキャラクターではなかったんだけど、明るくて社交的で親切で頼りになる、とっても感じのいいひとでした。ただ、セクシー度はかなり控えめなカンジ。むしろお色気は封印してたっぽい(笑)。
カールとアリソンが行き先を決めずに、一番早く乗れる飛行機に乗って旅行に出かけるエピソードが楽しかったな。たまたまそのとき該当したのが、およそ観光客が行くような街じゃない田舎町で、実際ほんとになぁんにもない街なのに、ちっぽけな博物館だとかクレイ射撃場だとか、地元のひとが楽しむようなその街の楽しみを見つけ出してふたりして楽しんじゃう。結局旅行って、どこに行くかじゃなく、だれと行ってどう楽しむか、が大事なのね。もちろん例によって、ジム・キャリーの「楽しませ方」は、「一緒にいると絶対疲れる、否、むしろ、疲れ果てる」式のものなので、わたしだったらノー・サンキューですが、アリソンはほんとに楽しそうだったから、それでよしです。尤も、テロリストでないならあんな街になんの用が? とFBIには疑われてしまうんだけど(笑)。
2008年、ペイトン・リード監督作品。
ダニー・ウォレスのベストセラーを原作に、いままでひとに誘われたり頼まれたりするたんびに「ノー」と答えてきた男が、とあるセミナーに参加したことをきっかけに、あらゆることに「イエス」と答える誓いをたててみたところ、なんだか人生変わってきた、という実話の映画化。ジム・キャリー主演作です。
実はジム・キャリーはあんまり得意じゃないです。だったらなぜ観たのかというと、ブラッドリー・クーパーの出演作だからです。クーパーはキャリーの親友の役。親友というか、むしろお兄さんみたいに、キャリーのことをあれこれ心配して面倒みてくれる頼りになるやつ。
カール・アレン(ジム・キャリー)は未だ離婚の痛手から立ち直れず、友人を避け、引きこもりがちの毎日。仕事は銀行の貸付係なんだけど、貸付係というものは、ローン申請者に対して「ノー」というのが仕事のようなもの。かくてカールは、私生活でも仕事でも、毎日「ノー」とばっかり答えるネガティブな毎日。ついには親友ピーター(ブラッドリー・クーパー)の婚約パーティをすっぽかしてしまい、さすがに愛想を尽かされそうになる。
そこで参加した一種の開運セミナー。講師のテレンス・バンドリー(テレンス・スタンプ)の言うことにゃ、意味のある人生を送るための唯一のルールは、どんな誘いや頼み事に対しても、全て「イエス」と答えること! かくて、カールの「イエス・マン」の日々が始まった。
というわけで、ネガティブだった毎日が、とんとん拍子に好転していく展開には爽快感があります。
手始めは図々しいホームレス。かれは、「イエス・マン・セミナー」の会場から出てきた受講者は、かなり無茶な要求でも「イエス」と応じてくれる確率が高いことを知っており、その伝でカールに声をかけたんだけど、案の定、カールは目的地まで送ってくれるわ、携帯電話を使い放題に使わせてくれるわ、笑いがとまらないカモ男。当のカールの方は、車はガス欠になるわ、携帯は充電切れになるわで散々。だけど、世の中を呪いながら徒歩で辿りついたガソリンスタンドで、運命の女性(?)アリソン(ゾーイ・デシャネル)と出会い、なんだかんだでキスまでしてもらっちゃった!
しかも、アリソンとはそれだけに留まらず、いつもならノーとパスするライブの誘いを、イエス行くよ、と応じたところ、なんとそのバンドのボーカルがアリソンだったじゃありませんか! というわけで、二度重なった偶然のおかげで、カールはキュートなアリソンとおつきあい始めることになったのです。
一方仕事の上では、前述のごとくノーというのが仕事のカール、いままでは毎日毎日ノーと連発してたんだけど、全てのローン申請者に対してイエスと応じてみたところ、まさかホントに貸してくれるとは思ってなかった申請者たち、感謝の気持ちで律儀に返済に励み、回収率は100%に近い良好ぐあい。しかも、個々のケースは小口ながら、なにしろ件数が多いため、銀行の利益もばかにならない。かくて万年貸付係だったカールは重役に抜擢されてしまう!
親友の信頼は取り戻すわ、上司には喜ばれるわ、恋人はできるわ、出世はするわで、カールはまさに快進撃! 韓国語や飛行機の操縦といった、いままでならやってみようとも思わなかった習い事にも積極的にチャレンジします。しかし、人生万事塞翁が馬。
来るものは拒まず式にあらゆることに手を出してしまった結果、カールの行動はFBIの目から見ると、まさに敵国のスパイの行動に見えてしまったのでした……。ということから転落を始めるカールのハッピーライフ。さすがにFBIの誤解は、頼もしい親友のピーター(ちなみにかれの職業は弁護士さん)が駆けつけてくれて解くことができたけれど、恋人のアリソンには、いままで自分の提案にイエスと答えていたのは、心からそれに賛成していたからではなく、単に、全てにイエスという教義を実践していただけだったのかと勘ぐられ(しかもそれは半ば事実でもある)、ふられそうになってしまう。
なにもかもイエスと言ってちゃダメなの?
それではと、勇を奮ってノーと言った途端、連鎖式に悪いことが起こりだして、カールはパニックに。
セミナーの主催者のテレンスを掴まえて助けを求めると、かれの口からは意外な真相が。
なにごとも無批判にイエスと言え、と言ったのは、発想転換のためのウォーミングアップ。いままで言えなかったイエスが言えるようになったら、今度は個々の事例について自分の頭で判断して、イエスと言うべきにはイエスと言い、ノーと言うべきには当然ノーと言えばいい、というしごくまっとうなものだったのでした。……そうは言っても、最初のセミナーのとき、カールにイエスと言わせることを強要したテレンスの態度は、かなり行っちゃってたけどね(笑)。だってなにしろ、テレンス・スタンプ、普通にしてても教祖様の迫力十分なんですもん(笑)。
まっとうな主張の割には、オーバーに誇張されたスラップスティック的演出が満載で、ジム・キャリー的には自家薬籠中の演技だったんじゃないかなと思います。ただ、親友のブラッドリー・クーパーも、恋人のゾーイ・デシャネルも、ジム・キャリーに対しては若すぎるので、そこのところ、ちょっと違和感を禁じえなかったです。たぶん、カールというキャラクターは、ジム・キャリーの実年齢よりだいぶ若い設定になっていたのだろうとは思うのですが、ジム・キャリーももはやそんなに若くは見えないので、ちょっとツライものがあったかも……。
ブラッドリー・クーパーが演じたピーターは、特に特徴があるようなキャラクターではなかったんだけど、明るくて社交的で親切で頼りになる、とっても感じのいいひとでした。ただ、セクシー度はかなり控えめなカンジ。むしろお色気は封印してたっぽい(笑)。
カールとアリソンが行き先を決めずに、一番早く乗れる飛行機に乗って旅行に出かけるエピソードが楽しかったな。たまたまそのとき該当したのが、およそ観光客が行くような街じゃない田舎町で、実際ほんとになぁんにもない街なのに、ちっぽけな博物館だとかクレイ射撃場だとか、地元のひとが楽しむようなその街の楽しみを見つけ出してふたりして楽しんじゃう。結局旅行って、どこに行くかじゃなく、だれと行ってどう楽しむか、が大事なのね。もちろん例によって、ジム・キャリーの「楽しませ方」は、「一緒にいると絶対疲れる、否、むしろ、疲れ果てる」式のものなので、わたしだったらノー・サンキューですが、アリソンはほんとに楽しそうだったから、それでよしです。尤も、テロリストでないならあんな街になんの用が? とFBIには疑われてしまうんだけど(笑)。
by shirakian
| 2011-08-15 19:14
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