2011年 03月 25日
トゥルー・グリット
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★ネタバレ注意★
コーエン兄弟の西部劇!
ジョン・ウェイン主演の『勇気ある追跡』(1969年)の原作となったチャールズ・ポーティスの同名小説をもとにして撮った映画だそうですが、監督にリメイクという認識はなく、あくまで同じ原作に基づいた別の映画、ということらしいです。
2010年アカデミー賞においては、作品賞、主演男優賞(ジェフ・ブリッジス)、助演女優賞(ヘイリー・スタインフェルド)、監督賞(イーサン&ジョエル・コーエン)、脚色賞(イーサン&ジョエル・コーエン)、撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞、音響賞(編集)、音響賞(調整)の10部門にノミネートされました(残念ながら受賞はナシ)。
ならず者に父親を殺された14歳の少女マティ・ロス(ヘイリー・スタインフェルド)が、自力で連邦保安官のルースター・コグバーン(ジェフ・ブリッジス)を雇い、父の仇を討つため、追跡行に出るというお話。いかにも西部劇らしいシンプルな筋立てです。
父親を殺したならず者トム・チェイニーがジョシュ・ブローリン、チェイニーと行を共にする列車強盗のリーダー格ラッキー・ネッド・ペッパーがバリー・ペッパー、マティとは別口の雇い主の依頼で同じくチェイニーを追っているテキサスレンジャーのラビーフがマット・デイモンという、なかなか楽しい顔ぶれ。
しかし恐るべきことに、ブリッジス、デイモン、ブローリンというアカデミー俳優たちを向こうにまわし、決してひけをとらないどころか、一際異彩を放っていたのは、ほかならぬ14歳の女の子、ヘイリー・スタインフェルドなのです。なんでも彼女は、この映画がデビュー作なんですって。これがアンジェリーナ・ジョリーなら、華もお色気も実績も申し分ない女優さんですから、『ソルト』や『ツーリスト』といった男ばかりの物語の中で、女ひとりで映画を牽引したとしても、もはや不思議には感じませんが、弱冠14歳の新人女優が、見事にこの汗臭い埃っぽい男映画をひっぱりぬいたとあっては、瞠目せざるを得ませんぞ。今後の活躍が楽しみぢゃ。
本家アカデミー賞で、音響関係の賞にふたつもノミネートされているところを見ると、音響がすばらしかったらしいのですが、ごめんなさい、残念ながら私はそれはあんまりわからなかったです。でも、全米批評家協会賞と英国アカデミー賞で、それぞれめでたく受賞を果たした撮影に関しては、ほんとにとってもゴージャスだったなぁ、と感嘆いたしましたです。
サボテンの花さいてる砂と岩の西部、馬の蹄の跡にたまる泥水をすする渇いたテキサスの西部、ではなく、この映画のロケーションはコロラド川の清流流れる緑豊かな森の中です。見慣れている西部劇とはちょっと趣がちがって面白い。黒々とした森に舞い散る粉雪、高い木に吊るされた男。いちいち絵になるシーンが続きます。
だけどそうは言っても、やっぱり面白いのはキャラクター。
コーエン兄弟の映画はいつも、明確な笑いには繋がらないのにどうにもおかしい微妙なユーモアが、基調低音のように流れているのだけれど、この映画のキャラクター設定もまさにそれが成功している事例。特にその空気感を担っていたのが、ブリッジスとデイモンのふたり。マット・デイモンという役者さんは、おとぼけた雰囲気のユーモアを担わせると味があるなぁ、と思いますが、やっぱりジェフ・ブリッジス演じる飲んだくれ保安官がおかしい。
とにかくこの保安官、お喋り! 男は黙ってハードボイルドの西部劇なぞなんのその、14歳の少女があきれるぐらい、別れた女房がどうのこうのと、ずーっとくだらないお喋りをしてる(笑)。そしてもちろん、かつての自分の武勇伝。「ひとりで7人の敵を相手したんだ、口に手綱をくわえて、両手に拳銃を持って撃ちまくったのさ」なんて、実話というより法螺与太話の類にしか聞こえないのに、クライマックスの対決シーンでは、ほんとにその「口に手綱をくわえて」が再現されるという、なんとも楽しい演出☆ 保安官、カッコイイ! こういう定番演出はやはり燃えるのです(笑)。
ひとつ残念だったのは、ジョッシュ・ブローリンとバリー・ペッパーの出番が少なすぎて描写が物足りないことですね。掘り下げれば面白そうなキャラクターだったのになぁ。特にブローリンは勿体無かったです。
コーエン兄弟の西部劇!
ジョン・ウェイン主演の『勇気ある追跡』(1969年)の原作となったチャールズ・ポーティスの同名小説をもとにして撮った映画だそうですが、監督にリメイクという認識はなく、あくまで同じ原作に基づいた別の映画、ということらしいです。
2010年アカデミー賞においては、作品賞、主演男優賞(ジェフ・ブリッジス)、助演女優賞(ヘイリー・スタインフェルド)、監督賞(イーサン&ジョエル・コーエン)、脚色賞(イーサン&ジョエル・コーエン)、撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞、音響賞(編集)、音響賞(調整)の10部門にノミネートされました(残念ながら受賞はナシ)。
ならず者に父親を殺された14歳の少女マティ・ロス(ヘイリー・スタインフェルド)が、自力で連邦保安官のルースター・コグバーン(ジェフ・ブリッジス)を雇い、父の仇を討つため、追跡行に出るというお話。いかにも西部劇らしいシンプルな筋立てです。
父親を殺したならず者トム・チェイニーがジョシュ・ブローリン、チェイニーと行を共にする列車強盗のリーダー格ラッキー・ネッド・ペッパーがバリー・ペッパー、マティとは別口の雇い主の依頼で同じくチェイニーを追っているテキサスレンジャーのラビーフがマット・デイモンという、なかなか楽しい顔ぶれ。
しかし恐るべきことに、ブリッジス、デイモン、ブローリンというアカデミー俳優たちを向こうにまわし、決してひけをとらないどころか、一際異彩を放っていたのは、ほかならぬ14歳の女の子、ヘイリー・スタインフェルドなのです。なんでも彼女は、この映画がデビュー作なんですって。これがアンジェリーナ・ジョリーなら、華もお色気も実績も申し分ない女優さんですから、『ソルト』や『ツーリスト』といった男ばかりの物語の中で、女ひとりで映画を牽引したとしても、もはや不思議には感じませんが、弱冠14歳の新人女優が、見事にこの汗臭い埃っぽい男映画をひっぱりぬいたとあっては、瞠目せざるを得ませんぞ。今後の活躍が楽しみぢゃ。
本家アカデミー賞で、音響関係の賞にふたつもノミネートされているところを見ると、音響がすばらしかったらしいのですが、ごめんなさい、残念ながら私はそれはあんまりわからなかったです。でも、全米批評家協会賞と英国アカデミー賞で、それぞれめでたく受賞を果たした撮影に関しては、ほんとにとってもゴージャスだったなぁ、と感嘆いたしましたです。
サボテンの花さいてる砂と岩の西部、馬の蹄の跡にたまる泥水をすする渇いたテキサスの西部、ではなく、この映画のロケーションはコロラド川の清流流れる緑豊かな森の中です。見慣れている西部劇とはちょっと趣がちがって面白い。黒々とした森に舞い散る粉雪、高い木に吊るされた男。いちいち絵になるシーンが続きます。
だけどそうは言っても、やっぱり面白いのはキャラクター。
コーエン兄弟の映画はいつも、明確な笑いには繋がらないのにどうにもおかしい微妙なユーモアが、基調低音のように流れているのだけれど、この映画のキャラクター設定もまさにそれが成功している事例。特にその空気感を担っていたのが、ブリッジスとデイモンのふたり。マット・デイモンという役者さんは、おとぼけた雰囲気のユーモアを担わせると味があるなぁ、と思いますが、やっぱりジェフ・ブリッジス演じる飲んだくれ保安官がおかしい。
とにかくこの保安官、お喋り! 男は黙ってハードボイルドの西部劇なぞなんのその、14歳の少女があきれるぐらい、別れた女房がどうのこうのと、ずーっとくだらないお喋りをしてる(笑)。そしてもちろん、かつての自分の武勇伝。「ひとりで7人の敵を相手したんだ、口に手綱をくわえて、両手に拳銃を持って撃ちまくったのさ」なんて、実話というより法螺与太話の類にしか聞こえないのに、クライマックスの対決シーンでは、ほんとにその「口に手綱をくわえて」が再現されるという、なんとも楽しい演出☆ 保安官、カッコイイ! こういう定番演出はやはり燃えるのです(笑)。
ひとつ残念だったのは、ジョッシュ・ブローリンとバリー・ペッパーの出番が少なすぎて描写が物足りないことですね。掘り下げれば面白そうなキャラクターだったのになぁ。特にブローリンは勿体無かったです。
by shirakian
| 2011-03-25 19:25
| 映画た行