2010年 08月 12日
ゴーストシップ
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★ネタバレ注意★
2002年、スティーヴ・ベック監督作品。
カール・アーバン ミニ特集のラストです。
オリジナル作品ですが、古い映画のリメイクのような、ちょっぴりノスタルジックなかほりのする丁寧な造りの正統派ホラーです。
1962年、イタリアの豪華客船アントニア・グレーザー号は、アメリカに向けて大西洋を航行中に突如消息を絶った。40年後、半年に及ぶ仕事を終えて帰還したサルベージ船アークティック・ウォリアー号のクルーは、フェリマンと名乗る男(デズモンド・ハリントン)に、ペーリング海上空を飛行中、漂流船を見つけたので曳航してほしいと持ちかけられる。
調査に出向いたところ、当該船こそがアントニア・グレーザー号であることを知る。海洋法では公海上で発見された船舶は発見者が所有権を有する。豪華船はそれ自体計り知れない財産価値を持っていたが、さらに船内で大量の金塊が発見されたのだった。
映画冒頭、アントニア・クルーザー号上で大量虐殺事件が起こったことが描かれます。ホールに集まった着飾った乗客たちが、ワイヤーで一斉に両断されるのです。このシーンは、ほんと、気合はいってます。まるで大きな予算の大作のような凝った作り。グロテスクで印象的。なかなかステキなシーンです。……ただ、残念なのは、このクオリティを保った恐怖描写がここ一箇所のみ、ということで、あとはぐっと低予算っぽい大人しい描写に終始します。それも身の丈にあった感じで悪くはないんだけど。
とにかく、そういうわけで、アントニア・クルーザー号はもちろん“ゴースト・シップ”なわけですが、実はこの話、幽霊系じゃなくて悪魔系。悪魔がからむと、皮膚感覚の恐怖がなくなってしまうので、まあ、全然、怖くないです。ええと、人体両断とかは、もちろん気色は悪いのですが、それと恐怖は別。
要するに、何が起こっていたかというと、サタンの下働きくんが、サタンに献上するための魂を「船いっぱい」集めるために奮戦努力していると、船に穴があいて沈みそうになってしまった。船が沈んでしまうと、せっかく船に捉えておいた魂がみんな逃げ出してしまうので、有能なサルベージチームを雇って船の修理をさせようと考えた、という、ある意味、ケナゲなお話。
船いっぱいの魂を集めなければならない、とか、船が沈んだら魂も解放されるとか、そういうお約束はどこから出てくるのか、なんか元になる伝承があるですか?
お約束と言えば、「刻印を持つ者」の魂は船が沈んでも解放されず、サタンの下働きの更に下働きとして丁稚奉公しなけりゃならない決まりになっているようです。
「刻印を持つ者」というのは、生きてる間になんらかの悪さをしたひと、というぐらいのことらしいですが、定義は曖昧。クルーの中では、間もなく結婚しようとしているのに、女幽霊の色香に惑わされたグリーア(イザイア・ワシントン)と、人を殺したドッジ(ロン・エルダード)のふたりが刻印認定された模様で、残りのクルーはどうやら無事に成仏できたっぽいです。
が、この辺の描写には、やや不満を感じるです。グリーアの「悪さ」は、どう考えても目くじらたてるほどのものとは思えないし、ドッジの「殺人」も正当防衛の範疇に入るんじゃないかと思えるもので、ドッジ自身が悪人だったとは思えない、という「悪さ」の量刑判断についての疑問がひとつと、もうひとつは、せっかく「刻印を持つ者」という決まりごとを提示し、事実、女幽霊の手に刻印が浮き上がる描写などもありましたから、グリーアやドッジの死に際しても刻印を浮き上がらせて、ほかの「無垢なる死」を遂げたメンバーとは一線を画してほしかった、というのがひとつ。どうせやるならやることはきっちりやってほしいの。
とは言っても、この映画はキャラクターが生き生きと描けているので、なかなか楽しいのであります。主演(だよね?)の紅一点エップス(ジュリアナ・マルグリーズ)がとにかくオットコマエでかっこいいし、いつもいつも小学男子みたいにじゃれあってばかりのドッジとマンダー(カール・アーバン)の仲良し二人組みもいい味出してました。
ただ、主演と見せかけて早期退場だったガブリエル・バーンのキャラクター描写は、いささか弱すぎたような気がします。かれがあそこまで使い物にならなくなってしまった理由づけがいまいちよくわからない。何かトラウマ要因があったような演出なのに、それ自体は描かれていないのね。マルグリースがあれだけしっかりしてるんだから、その父親的存在のバーンはもっとどっしり構えていてほしかったと思うのですが。
そして、マンダーことカール・アーバンは、“ボーン”のキリルとは打って変わった、なごみ系わんこキャラです。大変腕のいい溶接工で、事実、海中での溶接作業という、危険かつ困難な仕事を悠々とこなすステキに働くオニーサン的場面もあるのですが、大体のところは、兄貴分のドッジにからかわれてばかりで、じゃんけんするといつも負けているらしい(でも、律儀にじゃんけんで勝負する(笑))。
女性のマルグリーズに隙がないので、穴に落ちて助けられたり、怖い体験して怯えたりするのもマンダーの役目(笑)。よれっとしたネルシャツがまた、お似合いです。
一仕事終えたビールはんまい♪
2002年、スティーヴ・ベック監督作品。
カール・アーバン ミニ特集のラストです。
オリジナル作品ですが、古い映画のリメイクのような、ちょっぴりノスタルジックなかほりのする丁寧な造りの正統派ホラーです。
1962年、イタリアの豪華客船アントニア・グレーザー号は、アメリカに向けて大西洋を航行中に突如消息を絶った。40年後、半年に及ぶ仕事を終えて帰還したサルベージ船アークティック・ウォリアー号のクルーは、フェリマンと名乗る男(デズモンド・ハリントン)に、ペーリング海上空を飛行中、漂流船を見つけたので曳航してほしいと持ちかけられる。
調査に出向いたところ、当該船こそがアントニア・グレーザー号であることを知る。海洋法では公海上で発見された船舶は発見者が所有権を有する。豪華船はそれ自体計り知れない財産価値を持っていたが、さらに船内で大量の金塊が発見されたのだった。
映画冒頭、アントニア・クルーザー号上で大量虐殺事件が起こったことが描かれます。ホールに集まった着飾った乗客たちが、ワイヤーで一斉に両断されるのです。このシーンは、ほんと、気合はいってます。まるで大きな予算の大作のような凝った作り。グロテスクで印象的。なかなかステキなシーンです。……ただ、残念なのは、このクオリティを保った恐怖描写がここ一箇所のみ、ということで、あとはぐっと低予算っぽい大人しい描写に終始します。それも身の丈にあった感じで悪くはないんだけど。
とにかく、そういうわけで、アントニア・クルーザー号はもちろん“ゴースト・シップ”なわけですが、実はこの話、幽霊系じゃなくて悪魔系。悪魔がからむと、皮膚感覚の恐怖がなくなってしまうので、まあ、全然、怖くないです。ええと、人体両断とかは、もちろん気色は悪いのですが、それと恐怖は別。
要するに、何が起こっていたかというと、サタンの下働きくんが、サタンに献上するための魂を「船いっぱい」集めるために奮戦努力していると、船に穴があいて沈みそうになってしまった。船が沈んでしまうと、せっかく船に捉えておいた魂がみんな逃げ出してしまうので、有能なサルベージチームを雇って船の修理をさせようと考えた、という、ある意味、ケナゲなお話。
船いっぱいの魂を集めなければならない、とか、船が沈んだら魂も解放されるとか、そういうお約束はどこから出てくるのか、なんか元になる伝承があるですか?
お約束と言えば、「刻印を持つ者」の魂は船が沈んでも解放されず、サタンの下働きの更に下働きとして丁稚奉公しなけりゃならない決まりになっているようです。
「刻印を持つ者」というのは、生きてる間になんらかの悪さをしたひと、というぐらいのことらしいですが、定義は曖昧。クルーの中では、間もなく結婚しようとしているのに、女幽霊の色香に惑わされたグリーア(イザイア・ワシントン)と、人を殺したドッジ(ロン・エルダード)のふたりが刻印認定された模様で、残りのクルーはどうやら無事に成仏できたっぽいです。
が、この辺の描写には、やや不満を感じるです。グリーアの「悪さ」は、どう考えても目くじらたてるほどのものとは思えないし、ドッジの「殺人」も正当防衛の範疇に入るんじゃないかと思えるもので、ドッジ自身が悪人だったとは思えない、という「悪さ」の量刑判断についての疑問がひとつと、もうひとつは、せっかく「刻印を持つ者」という決まりごとを提示し、事実、女幽霊の手に刻印が浮き上がる描写などもありましたから、グリーアやドッジの死に際しても刻印を浮き上がらせて、ほかの「無垢なる死」を遂げたメンバーとは一線を画してほしかった、というのがひとつ。どうせやるならやることはきっちりやってほしいの。
とは言っても、この映画はキャラクターが生き生きと描けているので、なかなか楽しいのであります。主演(だよね?)の紅一点エップス(ジュリアナ・マルグリーズ)がとにかくオットコマエでかっこいいし、いつもいつも小学男子みたいにじゃれあってばかりのドッジとマンダー(カール・アーバン)の仲良し二人組みもいい味出してました。
ただ、主演と見せかけて早期退場だったガブリエル・バーンのキャラクター描写は、いささか弱すぎたような気がします。かれがあそこまで使い物にならなくなってしまった理由づけがいまいちよくわからない。何かトラウマ要因があったような演出なのに、それ自体は描かれていないのね。マルグリースがあれだけしっかりしてるんだから、その父親的存在のバーンはもっとどっしり構えていてほしかったと思うのですが。
そして、マンダーことカール・アーバンは、“ボーン”のキリルとは打って変わった、なごみ系わんこキャラです。大変腕のいい溶接工で、事実、海中での溶接作業という、危険かつ困難な仕事を悠々とこなすステキに働くオニーサン的場面もあるのですが、大体のところは、兄貴分のドッジにからかわれてばかりで、じゃんけんするといつも負けているらしい(でも、律儀にじゃんけんで勝負する(笑))。
女性のマルグリーズに隙がないので、穴に落ちて助けられたり、怖い体験して怯えたりするのもマンダーの役目(笑)。よれっとしたネルシャツがまた、お似合いです。
by shirakian
| 2010-08-12 21:34
| 映画か行