2010年 06月 09日
【海外ドラマ】ダーマ&グレッグ/シーズン2
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■ダーマ&グレッグ/シーズン1
結婚6ヶ月、という設定のシーズン2。ダマグレ、まだまだ新婚気分です。
だけどこのドラマ自体は、お気楽な日々のドタバタを描きつつ、カップルや、カップルのまわりの人々の人間関係が少しずつ深化していき、社会との関わりかたもまた変わっていく様子を、あくまでシットコムの文脈の中で描いていますので、新婚気分のシーズン2にも、ふたりや二組の両親たちとの関係性の成熟を予測させる上で、大事なエピソードがいくつかあります。
ちょっとピックアップしてみますと、めぼしいのはこのあたり(時系列順)。
(1)ダーマとグレッグが養子をとる話。
(2)グレッグの祖母の死をめぐる顛末。
(3)ダーマが株式投資に手を出す話。
(1)は、いかにもダーマがダーマらしく、グレッグがグレッグらしく、それぞれの両親がそれぞれらしく反応し、しかもそれぞれがとても感じがよく、尚且つ、今後の「家族」の関係性を暗示させるという優れたエピソードだと思います。
行きつけのスーパーのレジ係の女性が、臨月なのにオトコに逃げられてしまう。産んでも育てられないと絶望する妊婦に同情したダーマが、自分たちが養子にすると申し出て……。という流れ。
犬の子でももらうかのようなノリで気軽にひとりの子どもの親になろうとするダーマもダーマらしいのだけど、最初はキッパリ「No」と言っていたにもかかわらず、妊婦への同情、誕生の感動、赤ん坊のかわいさ……などに流されて(笑)、いつの間にか養親という立場を受け入れてしまうグレッグ。受け入れてしまえばもう、完全に最高の父親ぶりで、赤ん坊を抱く手も堂に入っているのは、トーマス・ギブソン自身の育児体験も寄与しているのかしら(笑)。
さらに、アビーが手放しで素晴らしいことだと激賞するのは当然だし、アビーがよければラリーもオッケーというのもわかるけど、 じーんとくるのがキティ&エドワード組の反応です。最初は当然、グレッグの血もひかない赤ん坊(しかも黒人とのハーフ)を、モンゴメリー家に迎え入れる(ということはいずれはこの家の莫大な財産を継ぐことになる)ということが受け入れられるはずもなく、寝込んでしまうほどだったキティなのに、ダーマに説得され、実際に赤ん坊を見てしまえば、すっかり受け入れて、熱心な「教育ババ」に変身してしまう。そしてエドワードは、キティが受け入れているのならと、慌てず騒がずおっとりとそれを受けとめてくれるのです。
だけど逆に、両家がそれぞれ認めてしまえば、両家それぞれなりの子どもを受け入れるやり方というのがあって、そこでまた派手にもめたりもするのだけれど、結局は両方一緒にやってしまえばいいじゃない、ということになって、神父とラビとシャーマンが同席する愉快な命名式が執り行われたりするのです。これぞダマグレの真骨頂、という展開。
こうして6人団結して受け入れ態勢が整ったにもかかわらず、結局、実の母親が子どもを手放すことができず、子ども部屋を確保するために、広い部屋に引越すことすらしたのに、カップルは失意のうちに子どもを手放すことになります。お別れは悲しかったけど、ふたりの絆がさらに強まった一幕、また、キティへの好感度が一気に大上昇するエピソードでもありました。
(2)は文字通り、グレッグの祖母、エドワードの母親、キティにとっての姑が他界する話。キティと姑は、あくまで礼儀正しい距離をおく関係。エドワードとて、実の母親であっても本音で語り合うような間柄ではありません。なので当然、グレッグも祖母との接点は薄い。それがモンゴメリー家。
モンゴメリー家の作法として、死の床にある祖母と、死について会話するなんて絶対のタブー、ささやくような声で、あたりさわいのない耳当たりのよい会話に終始する、かれらなりの気遣いにあふれた対応。……しかしこれが、ダーマには耐え難い。祖母が死にかけているのは、祖母自身も承知のこと、だったら本音をぶつけあい、本当に望む最期を迎えさせてあげるのが愛情というものではないのか?
ダーマは彼女なりの判断で、いままでキティとエドワードが築いてきた砂糖細工のような場の空気を、さんざんにかき回してしまいます。普通ならこれは、ダーマが「よいこと」をしたと描写される展開。ダーマのおかげで、モンゴメリー家の人々の心が、世代を超え、ついにひとつになったのでした、となる流れ。ところが。
ダーマのやり方が、キティやエドワードではなく、ほかならぬグレッグの神経を逆撫でしてしまったのです。気遣う故に敢て言わない、そういうかかわり方もある。モンゴメリー家は今までそうやってきたし、それは決して愛情がないとかそういうことじゃあない。これがわれわれのやり方なんだ。
Stay out of it!
今まで、ダーマがどんなにダーマ流を持ち込んでも、笑って受け入れていたグレッグが、このときついにダーマにそう言うのです。
結局、祖母は死に、死に目に会えなかったグレッグは「愛しているって伝えたかった」と涙目になってしまうのですが、ダーマが優しくなぐさめます。「お祖母さまは、まだここにいらっしゃるわ。あなたの気持ちはきっと伝わっているはずよ」。とても優しいいいシーン。……エピソード自体は相変わらずドタバタ劇の展開なのに(笑)。
(3)は、グレッグがやっていた投資に好奇心を覚えたダーマが、自分も株式投資に手を出したはいいけど、素人の悲しさで大失敗、資金を回収するため、投資した通販会社の建て直しをはかるべく、敏腕ビジネスマンとして鳴らしたエドワードに相談するのだが、という流れ(ちなみにこのエピで、一旦は子ども部屋として設えられていた部屋が、グレッグの書斎になっていることがわかります。尤も、書斎があっても、居間でパソコン広げてる方が多いグレッグではあるけれども)。
家にいればキティの尻にしかれっぱなしとしか見えないエドワードは、モンゴメリー・インダストリーという大会社のオーナー社長。いまは引退(半引退?)の身だけど、ビジネスマンとしてはマジで凄腕なのです。ダーマの求めに応じ、傾いた通販会社を見事に立て直してしまいます(ついでに、この会社の業務は、「女性のドレスを売っているの」「ふむ、ドレスをね」「……男性に」「つまり、女性へのプレゼント用かね?」「着る為に」という会社です(笑))。
ダーマは資金が回収でき、エドワードは久しぶりに経営の腕をふるうことができ、ウィンウィンのシチュエーションに見えたのだけど、キティにとってはそうじゃなかった。
水を得た魚のように生き生きと蘇ったエドワードとは裏腹に、みじめに打ちのめされたキティは、一見よい関係を築いているように見えたダーマに対し、「あなたは全てを破壊してしまった!」と激しく詰るのです。グレッグについて思い描いていた夢をぶち壊しにしたことは言うに及ばず、エドワードとの絆にもひびを入れた、と。キティは100%ダーマを受け入れたのではなく、グレッグ可愛さで必死に我慢してた部分もあったのに、今度はエドワードにまで「魔手」を伸ばされて、切れてしまったのでした。
「あなたたちふたりは、何でも一緒に考えて選んで決めて、それが当たり前なんでしょう。わたしはそれが羨ましい。わたしとエドワードの関係はそんなんじゃなかった。エドワードが外で働いている間、わたしには待つという選択肢しかなかったのよ。ようやく引退して、仕事第一わたしは二の次、という優先順位が、わたしを一番にしてくれるようになったところだったのに、あなたのせいで、またわたしは二の次にされてしまったわ!」
キティの言葉が単なる身勝手とは思えません。さすがのダーマも深く反省し、エドワードに仕事から手をひくよう頼むのでした。ダーマはここで、キティの貴重な本音を聞くことになり、キティに対する理解がまた一歩深まった展開でした。
ここで面白いなぁ、と思うのが、グレッグの反応。母親と妻と、両方から両方のワルグチを愚痴られるグレッグ、どちらの言い分にも反対せず、一貫して「I know」といい続ける世渡り上手(笑)。嫁と姑の間に立たされた男には、この処世術が一番のようです。
……あと、ダーマが市会議員に立候補する話とか、夫婦して「メンフィス出身者ごっこ」をして遊んでいたら、同じテネシー州のナッシュビル出身の判事さんと知り合っちゃって、裁判中ですら南部訛りのふりをしなければならなくなった話とか、ジェーンのいたずらのおかげで幽霊騒動が起こる話とか、グレッグの「初めての女性」とバッタリ再会しちゃう話とか、グレッグがうっかり元婚約者の部屋で一夜を過ごしてしまう話とか、面白いエピソード、かわいらしいシーン、爆笑の台詞、などなどが一杯一杯あるんだけど、書いてるスペースがないです。残念無念。第二部を書くか。そこまではするな(汗)。
by shirakian
| 2010-06-09 21:08
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