2009年 12月 17日
ロックンローラ
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ガイ・リッチー監督のクライム・コメディです。
この映画、わたしの街では上映されなくて、切歯扼腕してたんですが、ようやくDVDで観ることができました。
『リボルバー』を観たときは、どうなることやら、と思ったものですが、この映画は、まんま『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』のノリなので、『ロック、ストック…』や『スナッチ』が好きなら、きっと楽しめると思います。
『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』のノリというのはどういうノリかと言うと、舞台がロンドンで、キャラクターがやくざ者で、登場人物がやたら大勢出てきて、どいつもこいつもやたらお喋りで、それぞれがそれぞれの思惑により勝手放題やってたはずのことが、あちこちでパズルが組み合わさるみたいにカチカチと繋がっていって、一つのしっちゃかめっちゃかの絵ができあがる、というそういうノリです。
なんとなく、ジェラルド・バトラーが主演のような扱いになっているようですが、実際の中心人物は、トム・ウィルキンソン演じるヤクザのボスで、その右腕を演じるマーク・ストロングが狂言回し、と見せかけて、後半はストロングが主役の座に躍り出ます。
バトラーでもストロングでも、主役はだれでも、イケメンが活躍してくれれば、わたしは別に構わなくてよ(笑)。
不動産バブルに湧くロンドンで、一儲けを夢見て不動産投資に手を出したワンツー(ジェラルド・バトラー)とその仲間たちは、逆に地元裏社会のボス、レニー・コール(トム・ウィルキンソン)に多額の借金を負ってしまう。
そんなワンツーに近づいてきた美人会計士ステラ(タンディ・ニュートン)の情報により、ワンツーは棚ボタ式に大金を手に入れるが、それにはまた別の裏があった。
一方、レニーもまた、今までのやり方が通じない新興勢力、ロシア人ディベロッパーに苦汁を飲まされる日々だった。
最初にビックリするのがウィルキンソンの訛。ウィルキンソンって、ほかの映画では、割と教育のある喋り方をする印象があるのですが、この映画のかれは、ロンドンの下町訛丸出しです。一瞬、ダレかと思った。喋り方で、人間、これほど違って見えるとは。
そしてウィルキンソンは、訛っているからといって、純朴ないいひとなんかではもちろん全くなく、登場シーンからしてすでに、利己的で粗暴で冷酷で貪欲でずる賢い、非常にいやぁな男であるのみならず、かれが妻の連れ子に対してどういう振る舞いをしてきたかを知るに及んで(小さな子どもを殴るために、男が腰のベルトをはずす瞬間、っていうのは、女子どもの悪夢の中に棲む「男の中の最悪の部分」の象徴であると思うです)、観客はこの男が大嫌いになる。
この映画では、このいやぁな男がサディスティックな制裁をガンガン受けまくるので、ある種のカタルシスを感じてしまいます。なんていうの? 勧善懲悪? っていうか、やっつける側も別に善なんかじゃないってところがミソですが。
ウィルキンソンが汚れ仕事を一手に引き受けているので、所詮ヤクザ者のマーク・ストロングが大変かっこよく見えてしまって、眼福でございます。
理不尽なボスの下で、全く感情をうかがわせず、じっと忍従する男。常に冷静で良識的な仮面の下で、冷酷さが求められる局面では、どこまでも冷酷になれる男。
やはりストロングは髪があった方が断然見栄えがいいので、次作以降も是非この方向でお願いしたい。
そんな殺伐とした映画の中で、一服の清涼剤となるのが、ジェラルド・バトラー演じるワンツーと、かれのやんちゃ仲間のハンサム・ボブ(トム・ハーディ)のエピソードです。
何者かによって密告されたボブは、明日から服役することに。刑期は五年間。五年もムショで暮らすなんて、とっても耐えられないよ、と半べそのボブを、なんとかなぐさめてやりたいワンツー。お姉ちゃん集めてぱーっとやろうや、と提案するのに、とんでもないことを言い出すボブ。
「おれがほしいのはあんたなんだよ」
ここんとこの、ジェラルド・バトラーのリアクションが、もう、爆笑もんです。
えっ!? えーっ!? おま、ちょ、ホモだったのかっ!?
なんだよ、おまえ、いつだって女にゃ、モテモテだっただろっ!?
んな告白なんかするんじゃねーよっ! ハンサム・ボブならハンサム・ボブらしく、女を抱いてりゃいーじゃねえかっ(>_<)!
親友と思ってた同性から告白されて、絵に描いたようなパニックに陥るジェリー(笑)。
それなのに、こんなにショックを受けて、取り乱してしまったというのに、結局、ボブの思いを受け入れてあげることに決めるワンツーの心優しさ。そして、ボブの方でもまた、ワンツーの優しさにつけこむことなく、かれに求めた一夜の思い出は、セックスではなく、ダンスだったりして(笑)、あまりの優しさに、心が洗われてしまいます(笑)。
こんな暴力的な映画で、心なんか洗われちゃってていいのか、という点が気にならないでもないですが。
ちなみに、この映画のバトラーさん、ロシア人マフィアにも貞操を狙われちゃったりして、大変ご難続きなんですが、女性から見て魅力的なジェラルド・バトラー氏は、男性から見ても魅力的ってことなのかしら。
一言申し添えておけば、ハンサム・ボブへの密告と、突然の起訴猶予という流れもまた、全体の大きな絵を描く際の重要なパーツとなっているのであります。
あと、個人的に見逃しちゃならないと思うのが、タンディ・ニュートンの信じられないほどセクシーなクネクネダンスです。スレンダーでしなやかなボディをクネクネとくねらせて踊るニュートンの艶姿は、ほんとに、なんつーか、有り得ないものを観た! というほど感動的なんですが、いかんせん、カメラがひきすぎてる上に、時間も短すぎるので、若干フラストレーションです。タンディ・ニュートンのクネクネダンスだけで、十分DVDが成り立つと思うんだけどな。
by shirakian
| 2009-12-17 22:13
| 映画ら行