2009年 06月 05日
スター・トレック
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スター・トレック、もちろん、有名な作品ですから、なんとなくは知ってます。レナード・ニモイ氏を見ると、あ、スポック、と思う程度には。
そんな程度のわたくしですが。
や、面白かったです。
由緒正しいスペースオペラという感じ。うん。素直にスペースオペラと言える作品って、実は結構ありそでないので、これはほんとに、嬉しいサプライスです。
エリック・バナ氏が演じる敵キャラ・ネロの宇宙船がどぉんと大画面に現れたときなど、ちょっと待て、これって一体工学的にどんな正当な理由があってこんな形になっているんだ、だけど絵的には全くもってこいつで正解だよ、ベイビー! と膝をたたいてしまうくらいスペースオペラであります。
惑星崩壊に伴うブラックホールの出現により、時間を越えてしまった宇宙船が、出現した過去の世界で、「これから起こるはずの」惨劇の復讐をするために、これから惨劇を引き起こすはずの人物を巻き込み、こうなっていたはずの歴史を改変してしまうが、歴史を改変したところで、惨劇自体は止めようがない、というプロットには、ワクワクとときめいてしまいます。いいね、いいね、そうこなくっちゃ♪
冒頭部の、少年カークの暴走シーンも、かれのキャラクターを余すところなく表している上に、映像的にもとてもすばらしく、これから始まる物語への期待をこの上なく煽ってくれますし。カークのエピソードからスポックのエピソードに繋ぎ、そのままスポックの成長後のエピソードに移行して、そこから青年になったカークの場面に繋ぐ、という流れも大変スマートで手際がよくて、すばらしい。
しかしそうは言っても、この映画を一本の映画として見ると、映画というより、テレビシリーズの第一話、という印象がしてしまったことは否めません。もちろん、映像のレベルはテレビシリーズなんてもんじゃないです。すばらしいクオリティです。映画館の大スクリーンで観てこその堂々たる「映画」であります。
ただ、お話が、どうも、イントロ編、の域を出ていない気がするのです。キャラクター紹介。こういうキャラたちがこのエンタープライズ号に集まって、これから色んな冒険を繰り広げていくわけであります。次週の展開に請うご期待! という感じです。
そして、これがテレビシリーズなら、この映画の、このキャラクターたちの、次週の冒険には、恐らくチャンネルをあわせることはないだろうなぁ、と思ってしまいました。
つまり、キャラクターものとしてみれば、キャラクターに全く興味がもてませんでした……(汗)。
カーク船長のような、無鉄砲な熱血漢的若造キャラに興味がもてたためしは、いままでの人生で一度もないと断言できてしまうわたくしですので、カーク船長に興味がもてなかったのは、映画のせいでも演じたクリス・パインが悪いわけでもないとは思うのですが、ほかにも色々多彩なキャラクターがいるはずなのに、全部が全部なんだか大味で、「こういう設定になっております」とカタログを見せられたような感じです。血の通ったキャラクターとして認識するには到りませんでした。
カール・アーバンに久々にスクリーンで再会できるのを楽しみにしてたんですけど、マッコイって結局どういうひとだったのか……。これは別にアーバンがマッコイを演じるにふさわしくない役者だった、とかいうことではなく、「この」映画の「この」マッコイという役が、アーバンの魅力を引き出すのに適した役ではなかった、という印象です。……言わずもがなですが、あくまでこれはわたくしの印象ですので。マッコイ最高! アーバン最高! というご意見だって、もちろんもちろん、あって当然と思います。
強いて言えば、サイモン・ペッグ演じるスコットはとてもチャーミングでしたが、出番が少なすぎてキャラクターが立つまでには到っていません。それにやっぱり、いきなり現れたどこのだれとも知れぬ人物に、船の心臓部である機関をまるっとまかせてしまうという、あまりに大雑把な設定には、どうしてもついていけませんでした。
それを言うなら、指揮権委譲の描写もひどい……。個人所有の数人乗りのボートの話ならともかく、エンタープライズ号は、大勢の人間が生活しているひとつの街ほどもある巨大な宇宙船で、しかも、軍艦でしょう? 乗組員は、士官学校で教育を受けた軍人さんたちでしょう?
艦長の交代劇のお粗末さにもびっくりしますが、艦橋にいるのがどうしてあんな若いひとたちばかりなのかも、理解に苦しみます。これもまた、「こういうことになっている」ということでスルーすべきポイントなんでしょうか。
責任ある指導者として、ガッチリ艦橋を守っていてほしいメンバーが、なにかと理由をつけてはバタバタと持ち場を離れてしまう展開も、スマートとは言いがたいですし、逆に、医務室にいてほしいお医者さんがなぜか艦橋で目だってたりするのも、お約束とはいえ、ほかに人材はおらんのかい、いや、いる、いまそこにいた、しかも大勢、と思ってしまうし。
そして、ウフーラとスポックがいきなりあんなことになったのも、やっぱひとつぐらいラブロマンスが必要でしょう! というお約束の範疇なんでしょうか? あの展開にラブストーリーとしてついていけたひとは、ひとつ挙手をお願いしたいです。
個々のキャラクターを描こうと功を焦り、エンタープライズというひとつの「社会」、およびそのエンタープライズを有するひとつの「宇宙」の描写が疎かになった、というか、ハナからそんなもん描く気は全くなかった、ということでしょうか。
要するに、わたしのごくごく個人的な感想は、この映画はよくできたストーリーの、大変すばらしい映像の、楽しいガジェットと、由緒正しいスペースオペラの雰囲気を持った、豪華なキャストの、面白い映画ではあるけれども、別にスター・トレックのキャラクターでやらなくてもよかったんじゃないかなぁ、というあたりに落ち着くような気がします。J・J・エイブラムス監督が、原作に全く思いいれがない、というのは秘密でもなんでもないことですし。やっぱ、そうなんだろうなぁ、という感じです。
そんな程度のわたくしですが。
や、面白かったです。
由緒正しいスペースオペラという感じ。うん。素直にスペースオペラと言える作品って、実は結構ありそでないので、これはほんとに、嬉しいサプライスです。
エリック・バナ氏が演じる敵キャラ・ネロの宇宙船がどぉんと大画面に現れたときなど、ちょっと待て、これって一体工学的にどんな正当な理由があってこんな形になっているんだ、だけど絵的には全くもってこいつで正解だよ、ベイビー! と膝をたたいてしまうくらいスペースオペラであります。
惑星崩壊に伴うブラックホールの出現により、時間を越えてしまった宇宙船が、出現した過去の世界で、「これから起こるはずの」惨劇の復讐をするために、これから惨劇を引き起こすはずの人物を巻き込み、こうなっていたはずの歴史を改変してしまうが、歴史を改変したところで、惨劇自体は止めようがない、というプロットには、ワクワクとときめいてしまいます。いいね、いいね、そうこなくっちゃ♪
冒頭部の、少年カークの暴走シーンも、かれのキャラクターを余すところなく表している上に、映像的にもとてもすばらしく、これから始まる物語への期待をこの上なく煽ってくれますし。カークのエピソードからスポックのエピソードに繋ぎ、そのままスポックの成長後のエピソードに移行して、そこから青年になったカークの場面に繋ぐ、という流れも大変スマートで手際がよくて、すばらしい。
しかしそうは言っても、この映画を一本の映画として見ると、映画というより、テレビシリーズの第一話、という印象がしてしまったことは否めません。もちろん、映像のレベルはテレビシリーズなんてもんじゃないです。すばらしいクオリティです。映画館の大スクリーンで観てこその堂々たる「映画」であります。
ただ、お話が、どうも、イントロ編、の域を出ていない気がするのです。キャラクター紹介。こういうキャラたちがこのエンタープライズ号に集まって、これから色んな冒険を繰り広げていくわけであります。次週の展開に請うご期待! という感じです。
そして、これがテレビシリーズなら、この映画の、このキャラクターたちの、次週の冒険には、恐らくチャンネルをあわせることはないだろうなぁ、と思ってしまいました。
つまり、キャラクターものとしてみれば、キャラクターに全く興味がもてませんでした……(汗)。
カーク船長のような、無鉄砲な熱血漢的若造キャラに興味がもてたためしは、いままでの人生で一度もないと断言できてしまうわたくしですので、カーク船長に興味がもてなかったのは、映画のせいでも演じたクリス・パインが悪いわけでもないとは思うのですが、ほかにも色々多彩なキャラクターがいるはずなのに、全部が全部なんだか大味で、「こういう設定になっております」とカタログを見せられたような感じです。血の通ったキャラクターとして認識するには到りませんでした。
カール・アーバンに久々にスクリーンで再会できるのを楽しみにしてたんですけど、マッコイって結局どういうひとだったのか……。これは別にアーバンがマッコイを演じるにふさわしくない役者だった、とかいうことではなく、「この」映画の「この」マッコイという役が、アーバンの魅力を引き出すのに適した役ではなかった、という印象です。……言わずもがなですが、あくまでこれはわたくしの印象ですので。マッコイ最高! アーバン最高! というご意見だって、もちろんもちろん、あって当然と思います。
強いて言えば、サイモン・ペッグ演じるスコットはとてもチャーミングでしたが、出番が少なすぎてキャラクターが立つまでには到っていません。それにやっぱり、いきなり現れたどこのだれとも知れぬ人物に、船の心臓部である機関をまるっとまかせてしまうという、あまりに大雑把な設定には、どうしてもついていけませんでした。
それを言うなら、指揮権委譲の描写もひどい……。個人所有の数人乗りのボートの話ならともかく、エンタープライズ号は、大勢の人間が生活しているひとつの街ほどもある巨大な宇宙船で、しかも、軍艦でしょう? 乗組員は、士官学校で教育を受けた軍人さんたちでしょう?
艦長の交代劇のお粗末さにもびっくりしますが、艦橋にいるのがどうしてあんな若いひとたちばかりなのかも、理解に苦しみます。これもまた、「こういうことになっている」ということでスルーすべきポイントなんでしょうか。
責任ある指導者として、ガッチリ艦橋を守っていてほしいメンバーが、なにかと理由をつけてはバタバタと持ち場を離れてしまう展開も、スマートとは言いがたいですし、逆に、医務室にいてほしいお医者さんがなぜか艦橋で目だってたりするのも、お約束とはいえ、ほかに人材はおらんのかい、いや、いる、いまそこにいた、しかも大勢、と思ってしまうし。
そして、ウフーラとスポックがいきなりあんなことになったのも、やっぱひとつぐらいラブロマンスが必要でしょう! というお約束の範疇なんでしょうか? あの展開にラブストーリーとしてついていけたひとは、ひとつ挙手をお願いしたいです。
個々のキャラクターを描こうと功を焦り、エンタープライズというひとつの「社会」、およびそのエンタープライズを有するひとつの「宇宙」の描写が疎かになった、というか、ハナからそんなもん描く気は全くなかった、ということでしょうか。
要するに、わたしのごくごく個人的な感想は、この映画はよくできたストーリーの、大変すばらしい映像の、楽しいガジェットと、由緒正しいスペースオペラの雰囲気を持った、豪華なキャストの、面白い映画ではあるけれども、別にスター・トレックのキャラクターでやらなくてもよかったんじゃないかなぁ、というあたりに落ち着くような気がします。J・J・エイブラムス監督が、原作に全く思いいれがない、というのは秘密でもなんでもないことですし。やっぱ、そうなんだろうなぁ、という感じです。
by shirakian
| 2009-06-05 21:19
| 映画さ行