2009年 05月 08日
身代金
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シニーズ探訪の二。
『二十日鼠と人間』を観たら、ゲイリー・シニーズの過去作をもっと観たくなりましたので、主な作品をぽつぽつと振り返っていきたいと思います。
シニーズはインタビューに答えて、『身代金』に出演したときに、警官について徹底的にリサーチ&役作りをしたので、CSI:NYのマック・テイラーを演じるに当たっては特別に役作りする必要がなかった、と答えています。つまりこの映画は、マック・テイラーの原点とも言える作品なわけです(笑)。
1996年、ロン・ハワード監督作品です。
いーよー、面白いよー、これ。
96年ということは、いまから13年も前ということになりますが、びっくりするのがシニーズの変わってなさ。思わずテイラー捜査官! と呼びかけたくなるぐらい、いまのシニーズそのままです。このひとってば、経年劣化がほとんどないのね(驚)! ハリウッドの役者さんには年齢不詳に若いひとがいっぱいいますが、ゲイリー・シニーズも地味にその一角を占めていたのであったと再認識いたしました(笑)。嬉しいなぁ。いつまでも元気で素敵でセクシーでいてね♪
初見のとき、あのシニーズが誘拐犯の役をやるとは! とビックリした記憶があったので、シニーズが主犯、という事実はネタバレだから伏せておかなきゃいけないよね、と思っていたのですが、再見してみると、このネタは思ってたよりずっと早い時点であっさりばらされてました。そうだった、初見のときビックリしたのは、予告編に騙されてたからでした。予告編、シニーズが仕事熱心な刑事さんに見えるように、実にうまいこと作ってあったですよ。うん。
この物語のキモは、主犯がだれか、とかそういうサプライスにあるのではなく、加害者ゲイリー・シニーズVS被害者メル・ギブソンの、がっぷり四つに組んだ男の戦いにあるのであります。
航空会社のオーナー社長であるメル・ギブソン(妻はレネ・ルッソ。『リーサル・ウェポン』カップル再び♪)の息子が誘拐された。要求された身代金200万ドルはギブソンにとって痛くもない額であったのに、受け渡しに失敗、息子の安否は不明のまま。犯人の度重なる強迫にぶちきれたギブソンは、身代金として用意した現金を、賞金として提示する。マスコミで流れた衝撃の情報に、全米をあげての誘拐犯狩りが始まった!
まず面白いのが、被害者であるギブソンが決してクリーンな人物としては描かれていないということです。労働組合ともめた際に、裸一貫で築き上げた自分の会社を守るため、組合員に多額の賄賂を支払い、受け取った組合員は逮捕の上有罪判決を食らったのに、ギブソンはうまいこと逃れて無傷だった、という経緯があります。
誘拐犯人は、ギブソンのこの汚点につけこんできました。一度物事を金で解決した男なら、再び同じことをするだろう。そうともおまえは、金で物事を解決する男だ、と。
そしてさらにこの事実は、身代金を賞金に転じるという大きな賭けに打って出た際に、妻の目からは、会社を救うためには金を払うのに、息子を救うためには払えないのか、という不審と疑惑と絶望の温床となり、この上なくドラマを盛り上げてくれるのです。
しかしギブソンは別に、身代金を惜しんでこんなことをしたわけではもちろんなく、身代金を渡してしまえば息子の命は助からない、息子の命を助けたければ、犯人に参った! と言わせるしかない、というギリギリの判断があったのです。
果たして犯人は、参った! とサジをなげるような相手なのか?
いやいや、なんのなんの、だってそれはゲイリー・シニーズ。タフで有能で剃刀のように切れる男。絶対に敵にはまわしたくない相手です。マック・テイラー、犯罪者じゃなくて捜査官でいてくれてよかった(>_<)!
刑事であるシニーズは、誘拐捜査を知り尽くしており、身代金の受け渡しを指示する際にも、 たとえばロッカーの鍵をプールの底に置いて、ギブソンを着衣のままそこに飛び込ませることにより、盗聴装置を使えなくするなど、ありとあらゆる手段を用いてギブソンとFBIを翻弄します。
ギブソンに盗聴や逆探知の可能性のある電話を棄てさせ、自ら用意した無線機を使って連絡を取らせるシニーズ。シニーズのふてぶてしい言辞に切れるギブソン。あくまで冷徹なシニーズ。緊迫感あふれる名シーンです。特に、シニーズの堂々たる悪役っぷりが、骨の髄までカッコイイです(≧▽≦)!
しかもシニーズ、知能犯であるばかりか武闘派でもある(笑)。かれがこの仕事に際して集めたチームの中に、実働部隊として頼りになるオールマイティの犯罪者、リーヴ・シュレイバーがいました。(シニーズが全然変わってないので、昔の映画だってことを忘れちゃいそうになるのですが、さすがにシュレイバーはかな~り若い感じです。(あくまで今と比べてですが)まだ線が細くてカワイイよ)。
しかしシュレイバーは、身代金受け渡しの失敗により、常に一緒に仕事をしていたかわいい弟(ドニー・ウォールバーグ)を死なせてしまう。切れて無茶をしそうになるシュレイバーを止めるシニーズ。その方法は? 首への手刀一撃! ほんとに一撃! 無造作な一撃でもって、あの大柄なシュレイバーを床に沈めてしまうです。さすが海兵隊出身!(なのはマック・テイラー)。無駄にバタバタ闘わないのに、文句なく強い。惚れるなというのがムリですから。
結局、シニーズのチームは、シュレイバーの弟の死を契機にグズグズと崩れていき、ギブソンの懸賞金作戦が引き金となって崩壊してしまいます。チームを見限ったシニーズは、身代金を棄て、正義の警官として懸賞金を手に入れようとする。しかし土壇場になって、さすがのシニーズもミスを犯してしまうのだった。
ということで、シニーズが実は犯人、とギブソンが気づくポイントはいくつかあるのですが、その中に、いままでギブソンとシニーズが電話や無線を通してさんざん言葉を交わしてしまった、という点があります。当然こうした展開では、犯人がもらしたある印象的な台詞が、後に繰り返されたり想起されたりして、犯人であるはずのない人物が実は犯人であることが判明する、というパターンがあるわけですが、この台詞が面白いんですよ。
Should be a problem?
特別でも印象的でもない、ごく普通の平凡な台詞だし、イントネーションだってアクセントだって、別に特徴があったわけでもないのに、シニーズが同じその台詞を繰り返してしまったばっかりに、ギブソンに、ん? と思わせてしまう。ほんっとに、蟻の穴から堤防決壊なのであります。
ということは、ギブソンは相当知的な男ということになり、熱血イメージの(そして事実熱血ぶりを披露する)ギブソンはミスキャストなのでは? という意見もあるようですが、キャラクターの対比としては、冷静沈着なシニーズVS熱血イメージのギブソン、で、ちょうどバランスがよかったように思います。
あともうひとつ面白かったのが、児童誘拐という、親にとっては身を切られるよりも辛い、文字通り死ぬか生きるかの問題も、捜査するFBIにとってはお仕事の一環であるに過ぎないということです。
捜査に当たったデルロイ・リンドーが、取り乱すレネ・ルッソを落ち着かせようとして、誘拐された子どもが無事に帰ってくる確立は、なんと10人に7人なんですよ、すごいでしょ? 残りの3人は、まあ、アクシデントってことで、別に捜査のミスとかじゃないんですよ? とアピールするシーンがあるのですが、親に言わせりゃ、とんでもねぇ(笑)。例え確立が99%でも、自分の子どもが残りの1%であるのなら、億万の成功例なんか何の意味もありはしないのに、FBI捜査官リンドーには、その辺の機微は決してわからない。なにしろ、よかったよ、うちは金持ちじゃなくて、というのがかれの本音なんですから。
その辺の人間模様もきっちり描き出すロン・ハワード監督は、やはり名匠なんであります。
ひとつだけ不満があるとすれば、シニーズのガールフレンドがリリ・テイラーだということかしら。いい女優さんだとは思うけど、個性的すぎるよ、リリ(>_<)。
『二十日鼠と人間』を観たら、ゲイリー・シニーズの過去作をもっと観たくなりましたので、主な作品をぽつぽつと振り返っていきたいと思います。
シニーズはインタビューに答えて、『身代金』に出演したときに、警官について徹底的にリサーチ&役作りをしたので、CSI:NYのマック・テイラーを演じるに当たっては特別に役作りする必要がなかった、と答えています。つまりこの映画は、マック・テイラーの原点とも言える作品なわけです(笑)。
1996年、ロン・ハワード監督作品です。
いーよー、面白いよー、これ。
96年ということは、いまから13年も前ということになりますが、びっくりするのがシニーズの変わってなさ。思わずテイラー捜査官! と呼びかけたくなるぐらい、いまのシニーズそのままです。このひとってば、経年劣化がほとんどないのね(驚)! ハリウッドの役者さんには年齢不詳に若いひとがいっぱいいますが、ゲイリー・シニーズも地味にその一角を占めていたのであったと再認識いたしました(笑)。嬉しいなぁ。いつまでも元気で素敵でセクシーでいてね♪
初見のとき、あのシニーズが誘拐犯の役をやるとは! とビックリした記憶があったので、シニーズが主犯、という事実はネタバレだから伏せておかなきゃいけないよね、と思っていたのですが、再見してみると、このネタは思ってたよりずっと早い時点であっさりばらされてました。そうだった、初見のときビックリしたのは、予告編に騙されてたからでした。予告編、シニーズが仕事熱心な刑事さんに見えるように、実にうまいこと作ってあったですよ。うん。
この物語のキモは、主犯がだれか、とかそういうサプライスにあるのではなく、加害者ゲイリー・シニーズVS被害者メル・ギブソンの、がっぷり四つに組んだ男の戦いにあるのであります。
航空会社のオーナー社長であるメル・ギブソン(妻はレネ・ルッソ。『リーサル・ウェポン』カップル再び♪)の息子が誘拐された。要求された身代金200万ドルはギブソンにとって痛くもない額であったのに、受け渡しに失敗、息子の安否は不明のまま。犯人の度重なる強迫にぶちきれたギブソンは、身代金として用意した現金を、賞金として提示する。マスコミで流れた衝撃の情報に、全米をあげての誘拐犯狩りが始まった!
まず面白いのが、被害者であるギブソンが決してクリーンな人物としては描かれていないということです。労働組合ともめた際に、裸一貫で築き上げた自分の会社を守るため、組合員に多額の賄賂を支払い、受け取った組合員は逮捕の上有罪判決を食らったのに、ギブソンはうまいこと逃れて無傷だった、という経緯があります。
誘拐犯人は、ギブソンのこの汚点につけこんできました。一度物事を金で解決した男なら、再び同じことをするだろう。そうともおまえは、金で物事を解決する男だ、と。
そしてさらにこの事実は、身代金を賞金に転じるという大きな賭けに打って出た際に、妻の目からは、会社を救うためには金を払うのに、息子を救うためには払えないのか、という不審と疑惑と絶望の温床となり、この上なくドラマを盛り上げてくれるのです。
しかしギブソンは別に、身代金を惜しんでこんなことをしたわけではもちろんなく、身代金を渡してしまえば息子の命は助からない、息子の命を助けたければ、犯人に参った! と言わせるしかない、というギリギリの判断があったのです。
果たして犯人は、参った! とサジをなげるような相手なのか?
いやいや、なんのなんの、だってそれはゲイリー・シニーズ。タフで有能で剃刀のように切れる男。絶対に敵にはまわしたくない相手です。マック・テイラー、犯罪者じゃなくて捜査官でいてくれてよかった(>_<)!
刑事であるシニーズは、誘拐捜査を知り尽くしており、身代金の受け渡しを指示する際にも、 たとえばロッカーの鍵をプールの底に置いて、ギブソンを着衣のままそこに飛び込ませることにより、盗聴装置を使えなくするなど、ありとあらゆる手段を用いてギブソンとFBIを翻弄します。
ギブソンに盗聴や逆探知の可能性のある電話を棄てさせ、自ら用意した無線機を使って連絡を取らせるシニーズ。シニーズのふてぶてしい言辞に切れるギブソン。あくまで冷徹なシニーズ。緊迫感あふれる名シーンです。特に、シニーズの堂々たる悪役っぷりが、骨の髄までカッコイイです(≧▽≦)!
しかもシニーズ、知能犯であるばかりか武闘派でもある(笑)。かれがこの仕事に際して集めたチームの中に、実働部隊として頼りになるオールマイティの犯罪者、リーヴ・シュレイバーがいました。(シニーズが全然変わってないので、昔の映画だってことを忘れちゃいそうになるのですが、さすがにシュレイバーはかな~り若い感じです。(あくまで今と比べてですが)まだ線が細くてカワイイよ)。
しかしシュレイバーは、身代金受け渡しの失敗により、常に一緒に仕事をしていたかわいい弟(ドニー・ウォールバーグ)を死なせてしまう。切れて無茶をしそうになるシュレイバーを止めるシニーズ。その方法は? 首への手刀一撃! ほんとに一撃! 無造作な一撃でもって、あの大柄なシュレイバーを床に沈めてしまうです。さすが海兵隊出身!(なのはマック・テイラー)。無駄にバタバタ闘わないのに、文句なく強い。惚れるなというのがムリですから。
結局、シニーズのチームは、シュレイバーの弟の死を契機にグズグズと崩れていき、ギブソンの懸賞金作戦が引き金となって崩壊してしまいます。チームを見限ったシニーズは、身代金を棄て、正義の警官として懸賞金を手に入れようとする。しかし土壇場になって、さすがのシニーズもミスを犯してしまうのだった。
ということで、シニーズが実は犯人、とギブソンが気づくポイントはいくつかあるのですが、その中に、いままでギブソンとシニーズが電話や無線を通してさんざん言葉を交わしてしまった、という点があります。当然こうした展開では、犯人がもらしたある印象的な台詞が、後に繰り返されたり想起されたりして、犯人であるはずのない人物が実は犯人であることが判明する、というパターンがあるわけですが、この台詞が面白いんですよ。
Should be a problem?
特別でも印象的でもない、ごく普通の平凡な台詞だし、イントネーションだってアクセントだって、別に特徴があったわけでもないのに、シニーズが同じその台詞を繰り返してしまったばっかりに、ギブソンに、ん? と思わせてしまう。ほんっとに、蟻の穴から堤防決壊なのであります。
ということは、ギブソンは相当知的な男ということになり、熱血イメージの(そして事実熱血ぶりを披露する)ギブソンはミスキャストなのでは? という意見もあるようですが、キャラクターの対比としては、冷静沈着なシニーズVS熱血イメージのギブソン、で、ちょうどバランスがよかったように思います。
あともうひとつ面白かったのが、児童誘拐という、親にとっては身を切られるよりも辛い、文字通り死ぬか生きるかの問題も、捜査するFBIにとってはお仕事の一環であるに過ぎないということです。
捜査に当たったデルロイ・リンドーが、取り乱すレネ・ルッソを落ち着かせようとして、誘拐された子どもが無事に帰ってくる確立は、なんと10人に7人なんですよ、すごいでしょ? 残りの3人は、まあ、アクシデントってことで、別に捜査のミスとかじゃないんですよ? とアピールするシーンがあるのですが、親に言わせりゃ、とんでもねぇ(笑)。例え確立が99%でも、自分の子どもが残りの1%であるのなら、億万の成功例なんか何の意味もありはしないのに、FBI捜査官リンドーには、その辺の機微は決してわからない。なにしろ、よかったよ、うちは金持ちじゃなくて、というのがかれの本音なんですから。
その辺の人間模様もきっちり描き出すロン・ハワード監督は、やはり名匠なんであります。
ひとつだけ不満があるとすれば、シニーズのガールフレンドがリリ・テイラーだということかしら。いい女優さんだとは思うけど、個性的すぎるよ、リリ(>_<)。
by shirakian
| 2009-05-08 21:32
| 映画ま行