2009年 02月 21日
ディファイアンス |

こんなシリアスなテーマの映画を観てこんな感想を持つのは、なんだかひどく不謹慎なことのような気がするけど、この映画、すごく楽しかったです。エンターテイメントとしてのホスピタリティにあふれてる感じ。尤も、エドワード・ズウィック監督って、いつもそうだ。シリアスなテーマを、娯楽作品として料理する手腕がすごい。
第二次世界大戦中、ナチスドイツの迫害を逃れ、森の中に逃げ込んだユダヤ人たちは、やがてパルチザンとして武器を持って抵抗運動を繰り広げるようになっていく。ユダヤ人のキャンプは、終戦時には1200人を数える規模に達しており、病院や学校を有したコミュニティとして機能していた。抵抗運動を主導したのは、トゥヴィア(ダニエル・クレイグ)、ズシュ(リーヴ・シュレイバー)、アザエル(ジェイミー・ベル)のビエルスキ兄弟。実際にベラルーシであった史実をもとにした話。
まず、三兄弟(実際はその下にもうひとり、アーロン(ジョージ・マッケイ)がいるのだけど、子どもなので被保護者の立場)のキャスティングが神。クレイグ、シュレイバー、ベルなんて、かのウィンチェスターブラザーズよりもっと似てないにもほどがある兄弟ですが、この三人のそれぞれの役柄にフィットしてるっぷりといったら、そして、そのフィットした三人がかもし出すハーモニーの妙といったら、もう、これ以上のキャスティングは考えられないよね(>_<)! とだれかれなしに強く同意を求めたくなるレベルです。
第一、長兄ダニエル・クレイグ、次兄リーヴ・シュレイバーなんて、兄さんふたりで重戦車なみの頼もしさ。ナチスなんか屁でもない! という気持ちにもなろうというものではありませんか。
や、実際は(というか、このドラマでは)、クレイグは天下無敵のジェイムズ・ボンドではないし、リーヴ・シュレイバーだって『トータル・フィアーズ』の鳥肌が立つほど有能な工作員ではないです。
特にクレイグは、望みもしない重責を押し付けられ、理想や心情と矛盾してばかりの現状と折り合いをつけ、数百人の人々が飢えないように心を砕き、常に決断を迫られる難しい立場で、弟の反発を買い、みなの理解は得られず、それでもいざとなったら、「どうする、トゥヴィア?」とだれもがかれの顔を見る。そんな中で、少しも強くも英雄でもない、ほんとだったら、奥さんの実家でおとなしく商売してたはずの普通の男が、銃を持って、正規に訓練されたドイツ兵相手に、戦を挑むのですから、その辛さは計り知れません。
黙っていても人々が慕い集い従う天性のカリスマ、という部分と、「ただの男」である自分に課せられた重責に喘ぐ素顔、という部分、両方ヒリヒリと演じてのけたダニエル・クレイグの演技は見事です。この映画を観ている間は、007のかれの姿なんか、一瞬も思い出さない。あくまでユダヤ人パルチザンのトゥヴィアなんです。
そしてリーヴ・シュレイバーもすばらしい。タフでぶっきら棒で粗暴な印象ながら、どっしりと落ち着いて頼りになる男。血の気が多い一面もありながら、状況に応じて自分を抑える知恵もあり、他人を思いやる優しさもある。そんなかれは、実力もありプライドもあり何より実績をあげてきた自信もあるのに、あくまで次男坊であるという立場。リーダーは長兄で常に譲歩を強いられる。ついには兄と袂を分かち、独自の戦いを始めるかれですが、森のコミュニティを守りたいと思う気持ちは兄と何ら変わりがない。
コミュニティのために、村の警察署にペニシリンを強奪に行くシーン。体調を崩していた兄を労わり、率先して作戦の指揮を取り、チームが全滅する中、見事薬を手に入れて帰還する男。この顛末だけでも、ズシュというキャラクターがぎゅっと凝縮されているかのようです。
あと、是非とも特筆しなくっちゃ、なのが、クレイグとベルが絶対絶命の危機に陥った瞬間、颯爽と救援にかけつけるズシュとその配下! 『スパイダーマン3』のハリー・オズボーン現る! のシーンもかくや、の胸躍る演出です。実際にパルチザンがドイツの戦車部隊と闘った史実はない、とかそういうことはこの際どうでもいいです。ここで、この、そうこなくっちゃ! という演出をやってしまえるところが、ズウィック監督の真骨頂なんだと思います。ああ、思い出すだに、ドキドキします(>_<)!
そしてそして、ジェイミー・ベル。ベル氏は、もう成長は止まったですか? 身長それ以上伸びませんか? や、小柄なら小柄でニッチなニーズもありますから、どんまいですよ、ジェイミー! なんて余計なお世話だ。ごめん。
しかしこの小柄なベル氏がすばらしい。最初のうちは、両親の死にエグエグとしゃくりあげてるほんの少年だったのに、過酷な体験を経てどんどん頼れる戦士になっていく。
絶望のあまりしゃがみこんでしまった長兄を励まし、人々を立ち上がらせ、前に進ませるシーンは、胸に熱い熱いものがこみあげてきます。あの渡河のシーンは、ロケーションも映像も美しく、生き延びようとする人々の気迫と、いまにも追いつきそうに追いかけてくる絶望という最大の敵と、やがて対岸が見えてくる瞬間のなんとも言えない解放感と希望、ほっとしたのも束の間、すぐに転じる新たな戦闘シーン、と、息をもつけぬ展開で、ほんとうに名シーンに仕上がっています。渡河のシーンの前ぐらいから、ハンカチが濡れっぱなしです。
三兄弟が三人とも、森の中でそれぞれの配偶者と巡りあうのですが、そのメロドラマの側面の描写が御座なりでないのがまたすばらしいです。似たような出会い方をする三組の恋人たちのそれぞれ違った個性が、時にユーモアを交えてどの組も丹念に描かれていて、それぞれのカップルに感情移入できるのです。
中でもジェイミー・ベルとミア・ワシコウスカの初々しいカップルは愛らしかった。雪の中の結婚式のシーンは、殺伐とした戦闘と殺戮と飢えと絶望と逃亡の生活の中で、ぽっと灯りが点るような暖かくも美しいシーンでしたし、この美しい結婚式にかぶせて、別の戦場で戦っているリーヴの映像を流すのは、ありがちな演出とは言え(というか、ありがちなだけに)効果満点。忘れられないシーンになっています。
この映画では、ベラルーシ語の台詞は英語で話されていますが、ロシア語やドイツ語の台詞はロシア語やドイツ語で話されています。で、クレイグやシュレイバーは、ロシア語の台詞を喋るシーンが結構多い。
ダニエル・クレイグはこのロシア語の台詞に相当苦労したらしいですが、驚くのがリーヴ・シュレイバーの流暢さです。そういえば、『トータル・フィアーズ』でもロシア語に堪能な工作員の役で、そのあまりの流暢さに、これが吹き替えでないとは! と人々の驚きを誘っていたし、かれの初監督作品『僕の大事なコレクション』はウクライナが舞台でした。このひとって、履歴のどっかにロシアがあるのでしょうか? そもそもドイツ系で母親がユダヤ人、というとこまではわかったけど、ロシアとの関連が掴めませんでした。気になる……。
あとね、どうでもいいことだけど、これだけ大規模なアクションがある映画にしては、クレジットされたスタントマンの数が極端に少ないです。ケータリングスタッフの数と同じくらい(笑)。それってつまり、役者さんたち本人が、結構過酷なこともやらされたってことなのかなぁ。みんな色々と頑張ったねぇ。
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タイトル : ディファイアンス
主演が『007 慰めの報酬』が大ヒット中のダニエル・クレイグ、監督は『ラスト・サムライ』、『ブラッド・ダイヤモンド』のエドワード・ズウィックという非常に良い組合せの作品にもかかわらず、上映館が50に満たない全国ロードショーなのはその重いテーマ故でしょうか。またもシャンテシネにて鑑賞してきました。ちなみにビエルスキ3兄弟の末弟役は『ジャンパー』で主人公とともに戦うのグリフィン役が記憶に新しいジェイミ...more
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タイトル : 映画『ディファイアンス』を観て
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