2007年 10月 30日
グッド・シェパード
|
去年のサプライズは、リーヴ・シュライバーとトミー・リー・ジョーンズというふたりの名優が、それぞれ監督としてもすごい映画が撮れる、ということを証明してくれたことでした(クリント・イーストウッドはもう言うまでもなく)。
そして今年、ロバート・デ・ニーロもやってくれましたよ。こりゃすげぇ。名優必ずしも名監督に非ず、ではあるんでしょうけれど、名優だし名監督だもん、という人も結構いるのだなぁ。
CIAの誕生に関わった一人の男(マット・デイモン)の人生の軌跡を、過去(40年代)と現在(60年代)を交互に描写するという形で描いたもの。主軸はキューバのピックス湾上陸作戦が失敗する原因となった情報漏洩の問題と、デイモンに送りつけられた写真と録音テープ、二つの謎の解明です。
“過去”の時間も“現在”の時間も、物語上は同時に進行していきます。観客は二つの時間を同時に辿ることにより、“いまこうしてある現在”が形作られていく過程を目撃することになり、そして最後に二つの時間軸はカッチリと一つに交わるのです。
息を呑むほど緻密な脚本です。
主演のマット・デイモンは、とても寡黙な男です。何があっても何も言わない。何を考えているのか妻や息子にすらわからない。過酷すぎる現実と繊細すぎる自我との間で苦悶しつつ、決して溺れずその海を泳ぎ渡ってしまえるしたたかさと非情さを持つ男。しかも20代の若者である時期と、50歳になろうかという壮年の男である時期を、巧みに演じ分けなければなならい。
ものすごく難しい役だったと思いますが、デイモンの演技、見事です。
かれが作る「瓶詰めの船」がとても象徴的。自由に大海を航海すべき船をボトルに閉じこめるという作業をするデイモンこそが、実はガラスの内側に閉じこめられている。感情を感じさない日頃の無表情が一変して、この「船をボトルに閉じこめる」作業をしている時だけ、かれが少年めいた翳りのない笑みを見せるのが、なにか痛ましい。
思えばこのひとって、いつもなにか、驚かせてくれる。
『グッドウィル・ハンディング』での鮮やかすぎる登場からして驚きでしたが、『ボーン・アイデンティティ』でアクションができることを見せつけてくれたときも驚きだったし、『オーシャンズ』でのコミカルな演技も驚きでした。でもやっぱり、ここまでの演技力を見せつけてくれた今回が一番驚きだったかもしれない。
なので、マット・デイモンの演技に不満があるとかじゃなく、むしろデイモンがとても素晴らしかったがゆえに、逆にこの「感情を表に出さない寡黙で繊細な(だけど同時に非情にもなれる)男」、デイモン以外の役者に演じさせるとしたらだれが適役だろう? と考えてしまいました。
イーサン・ホーク? ゲイリー・シニーズ? クライブ・オーウェン? コリン・ファレル? ジョニー・デップ? ライアン・フィリップ? ビリー・ボブ・ソーントン? ジュード・ロウ? ヒース・レジャー? ……ぱっと浮かんだのはこういう人々です。特にイーサンが真っ先に浮かびました。
でも、やっぱ、なんか、違いますよね。うん。デイモンがいい。一番いい。っていうか、これ、デイモンだからこその役なんだわ。さすがのキャスティングです。
キャスティングといえば、脇を固める人々もゾクゾクするよな面子です。マイケル・ガンボン、アレック・ボールドウィン、ウィリアム・ハート、ジョン・タトゥーロ、そしてもちろんロバート・デ・ニーロ。めちゃめちゃ渋い。スクリーン内おやじ指数98、ぐらいの勢いですが、いやもう見応えたっぷりです。
情報戦なんですからテクノロジーの発展度合いを問わず、冷酷残酷無惨なものであるには違いないのですが、冷戦時代のスパイは、やはりなんとなくノスタルジックなスタイルを感じさせます(仕立屋に情報を預けておくとか、両替を口実に情報を受け渡しするとか、チョコレートや煙草といった小道具とか)。そのセピア色の雰囲気におやじーズがピッタリマッチしております。
デイモンの息子を演じた人は、何ていう人だったのかな。すごく繊細でもろそうな感じです。いかにもデイモンのアキレス腱になりそうな感じ。一瞬、え? フレディ・ハイモアってもうこんなに成長したの? と思ったんですが、さすがにフレディくんはまだこんなに大きくないか(92年生まれですって。いま15歳ぐらい?)。
そして今年、ロバート・デ・ニーロもやってくれましたよ。こりゃすげぇ。名優必ずしも名監督に非ず、ではあるんでしょうけれど、名優だし名監督だもん、という人も結構いるのだなぁ。
CIAの誕生に関わった一人の男(マット・デイモン)の人生の軌跡を、過去(40年代)と現在(60年代)を交互に描写するという形で描いたもの。主軸はキューバのピックス湾上陸作戦が失敗する原因となった情報漏洩の問題と、デイモンに送りつけられた写真と録音テープ、二つの謎の解明です。
“過去”の時間も“現在”の時間も、物語上は同時に進行していきます。観客は二つの時間を同時に辿ることにより、“いまこうしてある現在”が形作られていく過程を目撃することになり、そして最後に二つの時間軸はカッチリと一つに交わるのです。
息を呑むほど緻密な脚本です。
主演のマット・デイモンは、とても寡黙な男です。何があっても何も言わない。何を考えているのか妻や息子にすらわからない。過酷すぎる現実と繊細すぎる自我との間で苦悶しつつ、決して溺れずその海を泳ぎ渡ってしまえるしたたかさと非情さを持つ男。しかも20代の若者である時期と、50歳になろうかという壮年の男である時期を、巧みに演じ分けなければなならい。
ものすごく難しい役だったと思いますが、デイモンの演技、見事です。
かれが作る「瓶詰めの船」がとても象徴的。自由に大海を航海すべき船をボトルに閉じこめるという作業をするデイモンこそが、実はガラスの内側に閉じこめられている。感情を感じさない日頃の無表情が一変して、この「船をボトルに閉じこめる」作業をしている時だけ、かれが少年めいた翳りのない笑みを見せるのが、なにか痛ましい。
思えばこのひとって、いつもなにか、驚かせてくれる。
『グッドウィル・ハンディング』での鮮やかすぎる登場からして驚きでしたが、『ボーン・アイデンティティ』でアクションができることを見せつけてくれたときも驚きだったし、『オーシャンズ』でのコミカルな演技も驚きでした。でもやっぱり、ここまでの演技力を見せつけてくれた今回が一番驚きだったかもしれない。
なので、マット・デイモンの演技に不満があるとかじゃなく、むしろデイモンがとても素晴らしかったがゆえに、逆にこの「感情を表に出さない寡黙で繊細な(だけど同時に非情にもなれる)男」、デイモン以外の役者に演じさせるとしたらだれが適役だろう? と考えてしまいました。
イーサン・ホーク? ゲイリー・シニーズ? クライブ・オーウェン? コリン・ファレル? ジョニー・デップ? ライアン・フィリップ? ビリー・ボブ・ソーントン? ジュード・ロウ? ヒース・レジャー? ……ぱっと浮かんだのはこういう人々です。特にイーサンが真っ先に浮かびました。
でも、やっぱ、なんか、違いますよね。うん。デイモンがいい。一番いい。っていうか、これ、デイモンだからこその役なんだわ。さすがのキャスティングです。
キャスティングといえば、脇を固める人々もゾクゾクするよな面子です。マイケル・ガンボン、アレック・ボールドウィン、ウィリアム・ハート、ジョン・タトゥーロ、そしてもちろんロバート・デ・ニーロ。めちゃめちゃ渋い。スクリーン内おやじ指数98、ぐらいの勢いですが、いやもう見応えたっぷりです。
情報戦なんですからテクノロジーの発展度合いを問わず、冷酷残酷無惨なものであるには違いないのですが、冷戦時代のスパイは、やはりなんとなくノスタルジックなスタイルを感じさせます(仕立屋に情報を預けておくとか、両替を口実に情報を受け渡しするとか、チョコレートや煙草といった小道具とか)。そのセピア色の雰囲気におやじーズがピッタリマッチしております。
デイモンの息子を演じた人は、何ていう人だったのかな。すごく繊細でもろそうな感じです。いかにもデイモンのアキレス腱になりそうな感じ。一瞬、え? フレディ・ハイモアってもうこんなに成長したの? と思ったんですが、さすがにフレディくんはまだこんなに大きくないか(92年生まれですって。いま15歳ぐらい?)。
by shirakian
| 2007-10-30 22:39
| 映画か行