2007年 10月 18日
キングダム/見えざる敵
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本来複雑な情報を簡潔にわかりやすく提示する、というのはハリウッドのお家芸です。多民族多言語多文化のアメリカでは、わかり易く発信するのでなければ、情報を発信する意味がないという思想が徹底している。
「ハリウッド映画」と言うとネガティブな意味で言われることが多いのだけど、この「とことんわかりやすく伝える姿勢」というのは、大いに称揚してしかるべきでは? わかるひとだけわかればいいと、なまじ芸術を気取ったひとりよがりの自慰的映画よか、何千倍もマシだと思う。たとえそれが単なるタイムキラーに過ぎなくとも、少なくともその時間は、楽しく時間が過ごせるわけだし。
というわけで、この映画は「よくできたハリウッド映画」の見本のような映画であると思いました。
なぜそういうことになって、そうなってしまったことの何が問題で、現在どういう事態が進行していて、解決するにには何が必要で、そのためにはどういう努力がなされていて、その結果事態はどうなったか、というのが、それは見事にこの上なくクリアに、スルスルと頭に入ってきます。苛々とひっかかるところが一つもない。まことに見事な脚本です。
しかも、深刻な社会的な問題を扱いつつ、きちんと社会派アクションに特化していて、余計な欲がないところが潔いです。だからとてもテンポがいい。キレがいい。コクがある……かどうかは知らない。
物語はこうです。サウジアラビアで米人居住区をターゲットにした自爆テロが発生。しかも犯人はサウジ警察の制服を着用していた。捜査に赴いたFBI捜査官のチーム4人は、露骨な捜査妨害と文化摩擦の下、ついに犯人を突き止めるのであった。
単に「悪」なるテロと「善」なるFBIとの対決、という勧善懲悪ストーリーにはせず、しかもその上で、サウジVSアメリカという図式すら取らず、サウジ警察とFBIとが協力して事件を解決していく、という流れを作りつつ、実のところ、現地に飛んだFBI捜査官は、国防省の制止をふりきり独自判断で行動しているはみだし集団であり、現地でサポートするサウジ警察官らもまた、体制からのはみだし者である、という皮肉な構図が面白いのです。
異能集団が持てる技能を持ち寄って協力してなにかを成し遂げる、という「チーム物」に目がないわたくし。FBI捜査官4人が、見るからに優秀なプロ集団である、というのが嬉しくてたまりません(笑)。いかにも頼りがいのあるリーダーのジェイミー・フォックス、爆発物のプロフェッショナル、古狸の凄みを見せるクリス・クーパー、法医学の専門家、紅一点ながら毅然として決して媚びないジェニファー・ガーナー、あと一人、ちょっとキャラが薄くて残念、たぶんコンピューター関係の専門家でしょうか、ジェイソン・ベイトマン。
特にクリス・クーパーがかっこよくってたまりません(>_<)。どんなピンチも決して動ぜず、鼻歌混じりに重労働をこなし、しかもきちんと結果を残す! プロ中のプロ。職人芸の極致。こういうひとがひとりいてくれるとチームが引き締まるんだよなぁ。
クーパー氏がポピュラリティを得たのって、『アメリカン・ビューティ』が最初でしょうか? アカデミー賞を獲った『アダプテーション』より、白木庵的お勧めは『遠い空の向こうに』の炭坑夫の役です。なんてゆーか、決してハンサムとかフェロモン系とかそういうことはなく、ごく普通に働くおじさんキャラなのに、不思議な色香を持ってるひとで、このひとが出てくると映画がピシッと引き締まる感じ。『シービスケット』や『ボーン』シリーズ、『ジャーヘッド』のかれもよかったですね♪
そういえばかれは『シリアナ』では、石油利権の関係者の方の役を演じていましたが、今度はその対極のような役を演じたのも面白いですね。
そして最後に明かされるジェイミー・フォックスと敵のテロリストのぶきみな相似を見せる台詞。これがなくてもテーマは最初からとても明確で、そこから一歩もぶれないしっかりした脚本ではあるのですが、やはり、ラストにこれをもってくる巧みさは、こちらも脚本的職人芸であると思います。
ただ、ね、なんで手持ちカメラなのか(汗)。アクションシーンの画面がぶるぶる揺れまくって、物理的に気持ちが悪くなるんですけど(汗)。特にこの映画、やたらとカメラが対象に寄るので、益々気持ちが悪くなるぅ(>_<)。
ほんとうのドキュメンタリーならともかく、劇映画なのに、画面が揺れたら臨場感が出るなんて、一体だれが言い出したんですか? 揺れてる物こそ揺れない画面で見たいのに。そもそも、手持ちカメラなんか流行らせたのだれ? クリストファー・ドイル?
「ハリウッド映画」と言うとネガティブな意味で言われることが多いのだけど、この「とことんわかりやすく伝える姿勢」というのは、大いに称揚してしかるべきでは? わかるひとだけわかればいいと、なまじ芸術を気取ったひとりよがりの自慰的映画よか、何千倍もマシだと思う。たとえそれが単なるタイムキラーに過ぎなくとも、少なくともその時間は、楽しく時間が過ごせるわけだし。
というわけで、この映画は「よくできたハリウッド映画」の見本のような映画であると思いました。
なぜそういうことになって、そうなってしまったことの何が問題で、現在どういう事態が進行していて、解決するにには何が必要で、そのためにはどういう努力がなされていて、その結果事態はどうなったか、というのが、それは見事にこの上なくクリアに、スルスルと頭に入ってきます。苛々とひっかかるところが一つもない。まことに見事な脚本です。
しかも、深刻な社会的な問題を扱いつつ、きちんと社会派アクションに特化していて、余計な欲がないところが潔いです。だからとてもテンポがいい。キレがいい。コクがある……かどうかは知らない。
物語はこうです。サウジアラビアで米人居住区をターゲットにした自爆テロが発生。しかも犯人はサウジ警察の制服を着用していた。捜査に赴いたFBI捜査官のチーム4人は、露骨な捜査妨害と文化摩擦の下、ついに犯人を突き止めるのであった。
単に「悪」なるテロと「善」なるFBIとの対決、という勧善懲悪ストーリーにはせず、しかもその上で、サウジVSアメリカという図式すら取らず、サウジ警察とFBIとが協力して事件を解決していく、という流れを作りつつ、実のところ、現地に飛んだFBI捜査官は、国防省の制止をふりきり独自判断で行動しているはみだし集団であり、現地でサポートするサウジ警察官らもまた、体制からのはみだし者である、という皮肉な構図が面白いのです。
異能集団が持てる技能を持ち寄って協力してなにかを成し遂げる、という「チーム物」に目がないわたくし。FBI捜査官4人が、見るからに優秀なプロ集団である、というのが嬉しくてたまりません(笑)。いかにも頼りがいのあるリーダーのジェイミー・フォックス、爆発物のプロフェッショナル、古狸の凄みを見せるクリス・クーパー、法医学の専門家、紅一点ながら毅然として決して媚びないジェニファー・ガーナー、あと一人、ちょっとキャラが薄くて残念、たぶんコンピューター関係の専門家でしょうか、ジェイソン・ベイトマン。
特にクリス・クーパーがかっこよくってたまりません(>_<)。どんなピンチも決して動ぜず、鼻歌混じりに重労働をこなし、しかもきちんと結果を残す! プロ中のプロ。職人芸の極致。こういうひとがひとりいてくれるとチームが引き締まるんだよなぁ。
クーパー氏がポピュラリティを得たのって、『アメリカン・ビューティ』が最初でしょうか? アカデミー賞を獲った『アダプテーション』より、白木庵的お勧めは『遠い空の向こうに』の炭坑夫の役です。なんてゆーか、決してハンサムとかフェロモン系とかそういうことはなく、ごく普通に働くおじさんキャラなのに、不思議な色香を持ってるひとで、このひとが出てくると映画がピシッと引き締まる感じ。『シービスケット』や『ボーン』シリーズ、『ジャーヘッド』のかれもよかったですね♪
そういえばかれは『シリアナ』では、石油利権の関係者の方の役を演じていましたが、今度はその対極のような役を演じたのも面白いですね。
そして最後に明かされるジェイミー・フォックスと敵のテロリストのぶきみな相似を見せる台詞。これがなくてもテーマは最初からとても明確で、そこから一歩もぶれないしっかりした脚本ではあるのですが、やはり、ラストにこれをもってくる巧みさは、こちらも脚本的職人芸であると思います。
ただ、ね、なんで手持ちカメラなのか(汗)。アクションシーンの画面がぶるぶる揺れまくって、物理的に気持ちが悪くなるんですけど(汗)。特にこの映画、やたらとカメラが対象に寄るので、益々気持ちが悪くなるぅ(>_<)。
ほんとうのドキュメンタリーならともかく、劇映画なのに、画面が揺れたら臨場感が出るなんて、一体だれが言い出したんですか? 揺れてる物こそ揺れない画面で見たいのに。そもそも、手持ちカメラなんか流行らせたのだれ? クリストファー・ドイル?
by shirakian
| 2007-10-18 22:20
| 映画か行