2014年 12月 29日
2014 Moviegoing
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●印象に残った作品 ()内は監督名、50音順
01 悪童日記 (ヤーノシュ・サース)
02 エンダーのゲーム (ギャヴィン・フッド)
03 オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ (ジム・ジャームッシュ)
04 グランド・ブダペスト・ホテル (ウェス・アンダーソン)
05 グレート デイズ! ―夢に挑んだ父と子― (ニルス・タヴェルニエ)
06 ザ・イースト (ザル・バトマングリッジ)
07 サード・パーソン (ポール・ハギス)
08 チョコレートドーナツ (トラヴィス・ファイン)
09 ディス/コネクト (ヘンリー=アレックス・ルビン)
10 MUD マッド (ジェフ・ニコルズ)
今年劇場で観た映画は70本でした。うちレビューを書いた本数は54本です。
残りの16本はどうしたかと言うと、どうしたんでしょうねぇ……。(遠い目)。
今年は、世評の高い映画と個人的に琴線に触れた映画があんまり一致しなかったなぁ、という印象です。確かに評価されている映画はいい映画だったとは思うのですが、自らの身に引きつけて考えた時に、自分にとって意味のある映画だったか、というと、今一つピンとこない場合が多かったということです。今年わたしにとって意味があった映画は、とりあえず上記の10本でした。あの傑作もあの話題作もあの超大作も入っていない、なんだかみょうちくりんなリストになってしまいましたが。
『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』。吸血鬼ブームと言われて久しいですが、巷間、吸血鬼ものと言えばホラーに傾く傾向がある印象。だけど違うの、そうじゃないの、吸血鬼って言えばデカダンでしょう! という観客のモヤモヤを見事に払底してくれたのがこの映画でした。ティルダ・スウィントンの吸血鬼は吸血鬼映画史上に残るほぼ完璧な吸血鬼であったと深く心に刻まれたことでした。
『ザ・イースト』。ほとんど話題にも上らなかった地味な映画ですが、この映画の持つ鋭利な問題提起やクレバーな問題処理は、もっとずっと評価されてしかるべきだったと思います。まさに今撮る意味があり、今観る意味がある映画だったと思うのです。
『サード・パーソン』。世間の評価が物足りなくてもどかしい思いをしたという意味では、この映画もそうです。まさに数式のように緻密で幾何学的な美しさがありながら、知に溺れた独りよがりではなく、人間の心の陰影を鮮やかに描き出した血肉の通った脚本は、いっそ凄味すら感じられるほどだと言うのに、メタフィクションであることを指摘するだけで終わってしまうのでは勿体なさすぎると思うのです。大事なことなので二度言いますが、この脚本は凄いです。
『ディス/コネクト』。こんな凡庸なテーマで、ここまで作家の個性を押し出した映画が撮れるとはと舌を巻いた映画でした。この監督の持つポテンシャルは侮れない。近い将来必ずやドカンと来るひとだと思うので、是非とも作品の選択を間違わないでいただきたいと思います。ハリウッド資本に潰されたりすることがありませんように。
『MUD マッド』。言わずと知れたマシュー・マコノヒーの映画ですが、今年マコノヒーは大活躍、代表作ならこの映画ではなくアカデミー賞主演男優賞を受賞した『ダラス・バイヤーズクラブ』や『インターステラー』を挙げるべきだし、実際どちらの映画もすごい映画だったことには間違いないのですが、わたしの個人的「意味」を問うならば、やっぱりこの映画のマコノヒーということになるのです。この映画ってたぶん、時を経ても細々と愛され続けてやがては『スタンド・バイ・ミー』みたいなクラシックになっていく可能性を秘めた映画だと思います。
『エンダーのゲーム』。確かに作品としては欠点の多いものだったかもしれませんが、わたしにとってはとてもとても大切な映画となりました。作ってくれてありがとう、と心の底からお礼を言いたい気持ちです。一年振り返ってみて今年の一本を言うのなら、やっぱりこの映画になっちゃうというのは、世評とはズレてしまったかなぁと残念なんですが、誰かほかにおられないかな、この映画が好きで好きでたまらなかった人。
●印象に残った女優 ()内は作品名、50音順
01 上白石萌音 (舞妓はレディ)
02 ケイト・ウィンスレット (とらわれて夏)
03 ケイト・ブランシェット (ブルージャスミン)
04 ティルダ・スウィントン (オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ)
05 ブリット・マーリング (ザ・イースト)
06 プリヤンカー・チョープラ (バルフィ! 人生に唄えば)
07 ロザムンド・パイク (ゴーン・ガール)
今年はリストに挙げた作品についてはほぼ全部レビューを書いておりますので、唯一書かなかった『ゴーン・ガール』のロザムンド・パイクについてだけちょこっと。この映画は、作品自体はかなり不満に感じたのでした。なにしろ同工異曲の作品なら星の数のテーマ&モチーフですから、よほどの「何か」がないとつまらないと言うのに、結局その「何か」を感じなかったので、「ペラい」という印象だったのです。だけどロザムンド・パイクはよかった。親のエゴや結婚生活に傷ついて追い詰められた「被害者」から、人格障害を疑わせるソシオパス的モンスターまでのグラデーションを見事に演じ分けたパフォーマンスはほんとうにすばらしかったです。
●印象に残った男優 ()内は作品名、50音順
01 アーミル・カーン (チェイス!)
02 アラン・カミング (チョコレートドーナツ)
03 アレキサンダー・スカルスガルド (ザ・イースト)
04 エイサ・バターフィールド (エンダーのゲーム)
05 佐々木蔵之介 (超高速!参勤交代)
06 ジョシュ・ブローリン (とらわれて夏)
07 トム・ヒドルストン (マイティ・ソー/ダーク・ワールド)
08 フィリップ・シーモア・ホフマン (誰よりも狙われた男)
09 マイケル・ファスベンダー (それでも夜は明ける)
10 マシュー・マコノヒー (MUD マッド、ダラス・バイヤーズクラブ、インターステラー)
11 レイフ・ファインズ (グランド・ブダペスト・ホテル)
今年はもう、フィリップ・シーモア・ホフマンに尽きるのです。なんという人を失ってしまったのだろう。今でも悔やんでも悔やみきれませんが、このさき様々な役柄を観るにつけ、ああこの役ってほんとうならフィリップ・シーモア・ホフマンが演じるべき役だったよなぁ、と嘆息することになるのは間違いないです。そんなかれの掉尾を飾る作品が、『誰よりも狙われた男』という佳作であったことがほんとうによかったと思います。
だけど仕事の上でのアクター・オブ・ザ・イヤーを言うなら、これはもう文句なしにマシュー・マコノヒーですよね。2014年はかれの年でした。ええと、そうして、(誰も訊いちゃいないけど)今年イチオシのイケメンはアレキサンダー・スカルスガルドです☆
■過去のMoviegoing
01 悪童日記 (ヤーノシュ・サース)
02 エンダーのゲーム (ギャヴィン・フッド)
03 オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ (ジム・ジャームッシュ)
04 グランド・ブダペスト・ホテル (ウェス・アンダーソン)
05 グレート デイズ! ―夢に挑んだ父と子― (ニルス・タヴェルニエ)
06 ザ・イースト (ザル・バトマングリッジ)
07 サード・パーソン (ポール・ハギス)
08 チョコレートドーナツ (トラヴィス・ファイン)
09 ディス/コネクト (ヘンリー=アレックス・ルビン)
10 MUD マッド (ジェフ・ニコルズ)
今年劇場で観た映画は70本でした。うちレビューを書いた本数は54本です。
残りの16本はどうしたかと言うと、どうしたんでしょうねぇ……。(遠い目)。
今年は、世評の高い映画と個人的に琴線に触れた映画があんまり一致しなかったなぁ、という印象です。確かに評価されている映画はいい映画だったとは思うのですが、自らの身に引きつけて考えた時に、自分にとって意味のある映画だったか、というと、今一つピンとこない場合が多かったということです。今年わたしにとって意味があった映画は、とりあえず上記の10本でした。あの傑作もあの話題作もあの超大作も入っていない、なんだかみょうちくりんなリストになってしまいましたが。
『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』。吸血鬼ブームと言われて久しいですが、巷間、吸血鬼ものと言えばホラーに傾く傾向がある印象。だけど違うの、そうじゃないの、吸血鬼って言えばデカダンでしょう! という観客のモヤモヤを見事に払底してくれたのがこの映画でした。ティルダ・スウィントンの吸血鬼は吸血鬼映画史上に残るほぼ完璧な吸血鬼であったと深く心に刻まれたことでした。
『ザ・イースト』。ほとんど話題にも上らなかった地味な映画ですが、この映画の持つ鋭利な問題提起やクレバーな問題処理は、もっとずっと評価されてしかるべきだったと思います。まさに今撮る意味があり、今観る意味がある映画だったと思うのです。
『サード・パーソン』。世間の評価が物足りなくてもどかしい思いをしたという意味では、この映画もそうです。まさに数式のように緻密で幾何学的な美しさがありながら、知に溺れた独りよがりではなく、人間の心の陰影を鮮やかに描き出した血肉の通った脚本は、いっそ凄味すら感じられるほどだと言うのに、メタフィクションであることを指摘するだけで終わってしまうのでは勿体なさすぎると思うのです。大事なことなので二度言いますが、この脚本は凄いです。
『ディス/コネクト』。こんな凡庸なテーマで、ここまで作家の個性を押し出した映画が撮れるとはと舌を巻いた映画でした。この監督の持つポテンシャルは侮れない。近い将来必ずやドカンと来るひとだと思うので、是非とも作品の選択を間違わないでいただきたいと思います。ハリウッド資本に潰されたりすることがありませんように。
『MUD マッド』。言わずと知れたマシュー・マコノヒーの映画ですが、今年マコノヒーは大活躍、代表作ならこの映画ではなくアカデミー賞主演男優賞を受賞した『ダラス・バイヤーズクラブ』や『インターステラー』を挙げるべきだし、実際どちらの映画もすごい映画だったことには間違いないのですが、わたしの個人的「意味」を問うならば、やっぱりこの映画のマコノヒーということになるのです。この映画ってたぶん、時を経ても細々と愛され続けてやがては『スタンド・バイ・ミー』みたいなクラシックになっていく可能性を秘めた映画だと思います。
『エンダーのゲーム』。確かに作品としては欠点の多いものだったかもしれませんが、わたしにとってはとてもとても大切な映画となりました。作ってくれてありがとう、と心の底からお礼を言いたい気持ちです。一年振り返ってみて今年の一本を言うのなら、やっぱりこの映画になっちゃうというのは、世評とはズレてしまったかなぁと残念なんですが、誰かほかにおられないかな、この映画が好きで好きでたまらなかった人。
●印象に残った女優 ()内は作品名、50音順
01 上白石萌音 (舞妓はレディ)
02 ケイト・ウィンスレット (とらわれて夏)
03 ケイト・ブランシェット (ブルージャスミン)
04 ティルダ・スウィントン (オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ)
05 ブリット・マーリング (ザ・イースト)
06 プリヤンカー・チョープラ (バルフィ! 人生に唄えば)
07 ロザムンド・パイク (ゴーン・ガール)
今年はリストに挙げた作品についてはほぼ全部レビューを書いておりますので、唯一書かなかった『ゴーン・ガール』のロザムンド・パイクについてだけちょこっと。この映画は、作品自体はかなり不満に感じたのでした。なにしろ同工異曲の作品なら星の数のテーマ&モチーフですから、よほどの「何か」がないとつまらないと言うのに、結局その「何か」を感じなかったので、「ペラい」という印象だったのです。だけどロザムンド・パイクはよかった。親のエゴや結婚生活に傷ついて追い詰められた「被害者」から、人格障害を疑わせるソシオパス的モンスターまでのグラデーションを見事に演じ分けたパフォーマンスはほんとうにすばらしかったです。
●印象に残った男優 ()内は作品名、50音順
01 アーミル・カーン (チェイス!)
02 アラン・カミング (チョコレートドーナツ)
03 アレキサンダー・スカルスガルド (ザ・イースト)
04 エイサ・バターフィールド (エンダーのゲーム)
05 佐々木蔵之介 (超高速!参勤交代)
06 ジョシュ・ブローリン (とらわれて夏)
07 トム・ヒドルストン (マイティ・ソー/ダーク・ワールド)
08 フィリップ・シーモア・ホフマン (誰よりも狙われた男)
09 マイケル・ファスベンダー (それでも夜は明ける)
10 マシュー・マコノヒー (MUD マッド、ダラス・バイヤーズクラブ、インターステラー)
11 レイフ・ファインズ (グランド・ブダペスト・ホテル)
今年はもう、フィリップ・シーモア・ホフマンに尽きるのです。なんという人を失ってしまったのだろう。今でも悔やんでも悔やみきれませんが、このさき様々な役柄を観るにつけ、ああこの役ってほんとうならフィリップ・シーモア・ホフマンが演じるべき役だったよなぁ、と嘆息することになるのは間違いないです。そんなかれの掉尾を飾る作品が、『誰よりも狙われた男』という佳作であったことがほんとうによかったと思います。
だけど仕事の上でのアクター・オブ・ザ・イヤーを言うなら、これはもう文句なしにマシュー・マコノヒーですよね。2014年はかれの年でした。ええと、そうして、(誰も訊いちゃいないけど)今年イチオシのイケメンはアレキサンダー・スカルスガルドです☆
■過去のMoviegoing
by shirakian
| 2014-12-29 15:49