2014年 08月 10日
【海外ドラマ】クリミナル・マインド/シーズン6
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■クリミナル・マインド/シーズン1
■クリミナル・マインド/シーズン2
■クリミナル・マインド/シーズン3
■クリミナル・マインド/シーズン4
■クリミナル・マインド/シーズン5
クリミナル・マインドのシーズン6です。
本国ではすでにシーズン10が進行中。ビハインドにも程があるんですが、なかなか観始める踏ん切りがつきませんでした。なぜならJJが降板してしまうシーズンだから。そしてエミリーが中盤であんなことになってしまうシーズンだから(>_<)。
事の経緯はこうです。クリマイ人気に便乗したスピンオフを製作してもうひと儲けしようと欲をかいた番組製作側が予算削減のために、じゃなくて、出世に飽くなき意欲を燃やすエリン・“人民の敵”・ストラウスが、優秀なJJをペンタゴンに売り込んで点数を稼ぐために、本人も直属上司であるホッチも全く希望していないにもかかわらず、無理やりJJに異動を迫ってきたのです。当初は毅然としてつっぱねていたJJも、必死に援護射撃を続けたホッチも、度重なるオファー(脅迫とも言う)についに断り切れなくなり、泣く泣くJJはBAUを去ることになってしまいます。
JJを手放さざるを得なくなってしまったホッチですが、必ずきみを取り戻すから、そのために後任はとらずにおくとJJに告げます。おれの力不足だった、すまない、と。こんな上司がどこにいる(>_<)。
そして最後に餞の言葉、I miss you……
全米が泣いた瞬間です。そりゃそうだ、JJが産休でしばらくいなくなるだけで心細くてたまらなくなってしまったホッチですもの、あんな顔してあんなこと言われたら、わたしだったらペンタゴンどころかトイレにだって行けませんけど、さすがBAUオトコマエ番付№1のJJは、涙も見せず荒野へと踏み出していくのでした。でもホッチ、大丈夫よ! JJ、次のシーズンには何事もなかったかのように帰ってくるから! あとほんのちょびっとの辛抱よ!
というわけで今季は大変喜びの薄い、味気ないシーズンとなってしまいましたが、そんな中でもやっぱりロッシのサドっぷりが大変ステキでした。
一粒種ジャックの育児に余念がないシングルファザーのホッチは、忙しい仕事の合間を縫って、ちびっこサッカーの付き添いだってきっちりやります。っていうか、コーチまで任されちゃったりしてるのです。それを知ったロッシ、
「ふーん? おまえさんにコーチを任せるとはねぇ? 一体何がよかったんだか?」
ちくちくつついてくる安定のサドっぷり。ホッチもホッチで聞き流しゃいいものを、思わずピキッとなって言い返してしまいます。
「集中力です!」
そこか! きみのウリはそこか!
しかも、なんだか収まらないホッチ、ぶちぶちと言い募ってしまいます。
「だってほかの親なんか、試合そっちのけで携帯ばっか見てるし!」
「おやおや、おまえさんだって忙しさじゃ人後に落ちまいに?」
鼻であしらうロッシでしたが、その後、ちゃんとジャックの試合を観に来てくれるんです。早朝集合をものともせずに。ほんとにいいひとだわ。だけど客観的にみると、孫の行事で親以上にはしゃいでいるイケテルおじいちゃんにしか見えませんでしたけど。そしてホッチ、仕事の場では抑えてますけど、絶対仕切り屋ですね。ちびっこサッカーのコーチ、水を得た魚の風情。
あと、試験的に新人を採用する場面で、事件関係者だった新人が少女だった頃を知っていたロッシとホッチ、思わずしんみりしてしまいます。小さかったあの子が、我々と同じフィールドで仕事をするようになるなんて。
「年取ったなって感じます?」
「いーや、全然」
いたずらっぽく訊ねるホッチに、飄々と答えるちょいワルおやぢ。思えばホッチにだって新人の頃があったわけですが、その時のBAUって、考えるだにコワイ面子。ロッシ、ギデオン、ライアンですよ。いずれも曲者揃い、しかも当時は血気盛んな働き盛り、そんなおやじたちに囲まれた新人ホッチ、一体どんだけいじり倒されたことでしょう。ストラウスの多少のいじわるなんかじゃびくともしませんとも。
えーと、さてこの新人ですけれども、何よりも予算削減が目的で雇われたギャラの安い女優である以上、知名度や実績やスキルがないのは仕方がないとして、キャラクター上の設定や描写も全然ダメだったのはどういうことだろう。普通だったら、人気があるキャストの後を埋める新レギュラーとあれば、視聴者が受け入れやすいように工夫を凝らすものだと思うのだけど、そういう苦心の痕跡がまるで見られません。
まず設定について言えば、JJの後任はとらないというホッチの希望が前提にあったとは言え、とにかく渉外担当ではないひとが来てしまったわけで、これじゃホッチの負担が減らない。そして、シアトル警察で実績のあったエルや、FBIに長く務めたエミリーとは違い、インターンあがりのど新人が来てしまったわけで、これじゃホッチの負担が減らない。更に、ほかのメンバーなら普通に持っている「このひとならでは」のスペシャリティを持っているわけでもないので、これじゃホッチの負担が減らない。ホッチの負担も減らせない新人なんて、新たに参入させる意味があるのか。一体誰得の人事なんだ。
次にキャラクター描写について見てみれば、なんなのこのひと、とにかく態度がでかい。
ロッシの隣に立膝で座る、とかね。ロッシだよ? 伝説のプロファイラーだよ? 自分もこれからプロファイラーとしてやっていこうと考えている新人が、「伝説」とまで呼ばれているひとの隣で立膝だよ? 考えられる? あと、一生懸命しゃべってるリードの話を無造作に遮る、とかね。そりゃ、リードの話は長いかもしれない、うざいかもしれない、わけわかんないかもしれないよ? だけど職場の先輩だよ? しかもその実力については大いにリスペクトされてる博士様だよ? モーガンやエミリーならともかく、昨日今日来たばかりの新人が話を遮るって、あり得る? リードだけじゃないよ。ガルシアにだって失礼千万な態度をとるよ。失礼っていうより、まるで自分の部下であるかのように顎で使うよ。なんだかまるで、テクニカルサポートなんかとは立場が違うとでも思っていそうな態度だよ。何か勘違いしてない? この上ホッチにまで横着なことをしたら、バールのようなもので以下自粛しようかと思いましたが、さすがにホッチの前ではおとなしくしていた模様です。
さきほど、ほかのメンバーなら「このひとならでは」のスペシャリティを普通に持っている、と書きましたけれど、たとえばそれは、外交官の娘として世界中で暮らした経験を持つエミリーの語学力であったり(エミリーは最初この能力で気難しいギデオンから認められた)、ロールプレイングを得意とするモーガンの優れた共感力であったり(モーガンのRP描写自体は最近めったに見られなくなってしまいましたが、かれの共感力については今シーズンでも色々描写がありました)、写真記憶を始めとしたリードの押しも押されもせぬ天才っぷりであったり、ガルシアの言うまでもないコンピュータスキルであったり、とてもクリアに描き出されています。
そしてホッチについて言えば、自分のウリは「集中力」であると認識している模様ですが、うん、まあ、もちろんそれもあるけれど、ホッチの場合、点と点とを結びつけて一枚の絵を描き出す直観力が凄いと思う。たとえば今シーズンでは、行方不明になった潜入捜査官の自宅を家宅捜査した際に、ランニングが趣味であるはずの捜査官の部屋にランニングシューズが見当たらないことから、誘拐された時の状況を的確に割り出してみせる、というシーンがありました。そしてこのシーンでよかったのは、その状況を潜入捜査官の上司、という第三者の目を通して描いたことです。「ランニングシューズが「ない」だけでそこまでわかるなんて……」と唖然とする上司。これで視聴者はホッチたちが何をやってのけているのかを再確認できた。なにしろ我々はもう見慣れてしまって、その証拠からこの結論をあのスピードで導き出す、ということが何だか普通のことのように思えてしまっているのだけれど、とんでもない。BAUってやっぱり、とてつもないプロフェッショナルな集団なんです。
そんなホッチのもうひとつのスペシャリティは、犯人の説得です。人質交渉のような仕事は、ホッチの役割になってる。相手の心理を本を読むように読み取り、どうやったらこちらの思惑通りに動かせるかを熟知し、そのために相手の心の中に無理なく潜り込むテクニックを持っている。今シーズンも、武器を持った危険な容疑者相手に説得工作をする局面が幾つかあったのですが、さすがにその全部をホッチが担当する、というわけにはいきませんでした。キャラクターのバランスというのがあるからね。ラジオを通して暗闇の殺人鬼に呼びかけたのはJJだったし、立て籠ったナチュラルボーン・キラーズのカップルを説得したのはモーガンでした。いずれもホッチが両者に譲る形でその仕事を任せたのですが、ここまではいい。ただし新人、テメーはダメだ。
シーズンも最後の方で、義母を人質にして青年が立てこもる、という事案がありましたが、この時、ホッチは説得に新人を伴い、交渉を主導させます。新人に場数を踏ませるため、というのが建前だけど、番組的にはもちろん新人のシーンを捻出するため、という「為にする事情」が見え見えのシーンです。幼児にあんよの練習をさせる母親は微笑ましいけど、ラッシュアワー時の駅のホームでやられたら話は別です。確かに新人に経験は必要でしょうが、犯人が人質を殺しかねないあんな局面でやられたら、視聴者は苛立ち以外に感じようがない。シーン描写に対するネガティブな感情は演じるキャラクターにダイレクトに向かいます。キャラクターに好感を持たせたいと思っているのなら、配慮が足りないというところですが、たぶんこの時点ですでに製作陣はこのキャラに見切りをつけていたんだと思う。
あと、言及したいポイントはまだまだいっぱいあるのですが。もちろん、イアン・ドイルとエミリーの話とか、ゲストで印象的だったロバート・ネッパーとかケリー・ウィリアムズとか、マーメイド・ホッチとか、ホッチ家のハロウィンクッキーはホームメイドなのか否か、という重大なポイントとか。
だけど、長くなっちゃいますので、最後に一個だけ。
さきほどモーガンの共感力について触れましたが、本来他人の気持のわかる優しいひとであるだけに、エミリーの件で一番傷ついてしまったのはモーガンだったかもしれない。モーガンの傷心を思うと、せめてチームメンバーにぐらい真相を明かせなかったのかしら、と胸が痛いわけです。だけど、それで言うなら、まだギデオンがいた頃、テロリストがショッピングモールを攻撃する、という情報をつかんでいながら、ホッチはそのモールに行こうとしていた妻のヘイリーに警告を発することができなかった、というエピソードがありました。職業倫理上、どうしても言うことができなかったのです。かれらの仕事はそういう仕事。それを思うと、ホッチがモーガンにすら秘密にせざるを得なかったのは、仕方がなかったと言うしかないです。
だけどホッチは、事件後の捜査官たちの心理状態に関する聞き取り調査を、ストラウスではなく自らが行います。せめてみなの声に耳を傾け、その心の傷に寄り添おうとしたのです。そんなホッチに対し、モーガンは心置きなく自分の怒りや悲しみをぶちまけることができた。そしてモーガンは言うのですね。おれはこうしてあんたにぶつけることができるけど、あんは誰にぶちまけるんだ? ホッチのことにまで気を配っていたのはモーガンだけだったかもしれない。ただでさえモーガンに対して心苦しく思っているホッチ、これはほんとにたまらんかったでしょう。
この悲しみを誰にぶつける?
おまえと同じだよ。彼女がいてくれたらと思うだけだ。
by shirakian
| 2014-08-10 20:37
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