2014年 05月 20日
【海外ドラマ】LAW & ORDER:クリミナル・インテント #116 幸せな共犯者
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★ネタバレ注意★
『LAW & ORDER:クリミナル・インテント』は『LAW & ORDER』のスピンオフの一つで、2001年から放送が開始され、第10シーズンまで製作された人気シリーズ、だそうです。ごめん、観たことないのよ。
だったらなにゆえ一話だけ、と言えば、マイケル・エマーソンが出ているからです。本国では2002年3月に放送されたシーズン1の第16話です。原題は”Phantom”。
ジム・カヴィーゼルの出演作を追跡するのは全くもってピースオブケイクですが、マイケル・エマーソンの場合そうはいかない。役者さんとしては遅咲きだったことにあわせて、もともとは舞台の役者さんだったそうですね。出演作自体そんなに多くない上に、レギュラーとか主役級とかとなると、もっと少ない。
このドラマは、NYPD重要事件捜査本部(MCS)の刑事、ロバート・ゴーレン(ヴィンセント・ドノフリオ)とアレクサンドラ・エイムズ(キャスリン・アーブ)の捜査活動を描いた刑事ドラマであるようです。シリアルキラーとかテロリストとか性犯罪とか失踪事件とかコールドケースとか、捜査対象が特殊化されているわけではなく、重要と思われる事件なら全般的に扱っているっぽい。クローザーのブレンダのチームと同様の部署かな、と思いますけど、あちらとは随分雰囲気がちがう。
「普通の刑事ドラマ」としてのこの番組の特色は、ドノフリオ演じるゴーレン刑事が得意とする、些細な証拠や曖昧な供述から犯人の心理を読み解き、巧みな口説でじわじわと追い詰めていく技にあるのかな、というのが一話だけ観た印象です。刑事コロンボがキャラクターとしてはチャーミングでも犯人にとっては極めてイヤな相手である、というのと同じ意味で、おつきあいはご遠慮したいタイプみたい。
さてこのエピソードの概要ですが。
以前ゴーレンとエイムズによって逮捕された銀行強盗が、シンシン刑務所から仮出所した2日後、他殺死体で発見される。被害者の妹シャーロットに接触したところ、恋人のジェリー・ランキン(マイケル・エマーソン)の存在が浮上する。ジェリーは二重生活を送るミステリアスな男だった。シャーロットと清い交際をする一方でよそに妻子がいたのである。
ジェリーはシャーロットはもとより妻子や親に到るまで、国連で働くエコノミストであると信じさせていたが、実際は国連に籍はなく、華やかな経歴で他人を騙す詐欺師だったのである。シャーロットに近づいたのも、彼女が兄から預かった強盗で得た金が目的だった。シャーロットの兄に気づかれたジェリーはスタンガンで動きを封じた後刺殺し、警察の捜査の手が伸びたシャーロットをも、同様に自由を奪った後絞殺しようとして、意識不明の重態にしてしまう。
子どもたちから英雄視されることに己の存在意義を感じていたジェリーは、事件が発覚し子どもたちから見限られる恐怖に耐え切れず、可愛さあまってその殺害を企てる。そのことを察知したゴーレンとエイムズは、かれが立て篭もっているホテルへと急行するのだが。
というお話。エマーソン、バッドガイです。
だけど、この顔。
この画像は、警察の捜査が自分に及ぶことを察知して不安におののいているジェリー。ただちにセーフハウスに匿って温かい緑茶を淹れてあげたくなります。行状を見れば同情の余地もない十分な悪党なんですけどね。
最初にシャーロットの兄を刺殺した時、ためらい傷が一杯で、検死報告を見たゴーレンが、殺しは初めてだったのかもしれない、と思ったくらいなんですが、なんのなんの、それに先立ち、やはりスタンガンを使って相手の自由を奪うという(ある意味卑劣な)やり方で、財産目当てに義父(妻の父親)を殺しているのです。更にシャーロットの兄で殺しをやめておけばまだしも、一応「恋人」としてつきあっていたシャーロット自身をも手にかけてしまう。更にその上、幼い自分の子どもたちまで殺そうとするとあってはもはや弁解の余地のないモンスターです。
だけど。
エピソードの邦題、「幸せな共犯者」というのは、ラストでエイムズが言った皮肉、「(意識不明に陥っているシャーロットは)共犯者の正体を知らずにすんだわけだからある意味幸せよね」という台詞から来ています。シャーロットは確かに銀行強盗の兄の共犯者ではあったかもしれませんが(強奪した金を預かったわけだから)、ジェリーの「共犯者」と言ってしまうのはかわいそうな気もします。だって彼女はジェリーが身分を詐称している既婚者であることを知らなかったんですもの。本気でジェリーに惚れてたのよ。そして、惚れる気持ちにムリはないのよ。ダークスーツをバリッと着こなしたマイケル・エマーソン、ものっそステキなんだもの。
一方、原題の”Phantom”はジェリーそのひとのことを指しています。
この世のどこにも実態のない幽霊のような男。
周到に練り挙げられた華やかな設定の中では世界中を忙しく飛びまわる男は、重ねた嘘に阻まれて実社会では居場所をなくし、一日中さびれた植物園で、静かに本を読んで(時にはうたたねなんかして)時間を潰すしかない。
見る者をして不安にさせるほどに感情豊かな目をしたファントムが、掴まって刑務所に入れられてしまうことを思うと、ほんとはモンスターだってわかってはいても、居た堪れない気持ちになりますね。だって刑務所にはティーバックみたいなのがいっぱいいるのよ。どんだけ苛められることか。
そういう前提があるものですから、追い詰められた崖っぷちで実の子どもたちをライフルで狙うジェリーに対して、先述した「些細な証拠や曖昧な供述から犯人の心理を読み解き、巧みな口説でじわじわと追い詰めていく技」でもって懐柔しようとするゴーレンを見ていると、普通ならこれって、勇敢にも人質と武装犯の間に割り込み身を挺して人質を守ろうとする極めてヒロイックなシーンのはずなのに、「このマニュピレイティブなシルバータングめ!」って罵りたくなってしまうの。ごめんね、ドノフリオ。
『LAW & ORDER:クリミナル・インテント』は『LAW & ORDER』のスピンオフの一つで、2001年から放送が開始され、第10シーズンまで製作された人気シリーズ、だそうです。ごめん、観たことないのよ。
だったらなにゆえ一話だけ、と言えば、マイケル・エマーソンが出ているからです。本国では2002年3月に放送されたシーズン1の第16話です。原題は”Phantom”。
ジム・カヴィーゼルの出演作を追跡するのは全くもってピースオブケイクですが、マイケル・エマーソンの場合そうはいかない。役者さんとしては遅咲きだったことにあわせて、もともとは舞台の役者さんだったそうですね。出演作自体そんなに多くない上に、レギュラーとか主役級とかとなると、もっと少ない。
このドラマは、NYPD重要事件捜査本部(MCS)の刑事、ロバート・ゴーレン(ヴィンセント・ドノフリオ)とアレクサンドラ・エイムズ(キャスリン・アーブ)の捜査活動を描いた刑事ドラマであるようです。シリアルキラーとかテロリストとか性犯罪とか失踪事件とかコールドケースとか、捜査対象が特殊化されているわけではなく、重要と思われる事件なら全般的に扱っているっぽい。クローザーのブレンダのチームと同様の部署かな、と思いますけど、あちらとは随分雰囲気がちがう。
「普通の刑事ドラマ」としてのこの番組の特色は、ドノフリオ演じるゴーレン刑事が得意とする、些細な証拠や曖昧な供述から犯人の心理を読み解き、巧みな口説でじわじわと追い詰めていく技にあるのかな、というのが一話だけ観た印象です。刑事コロンボがキャラクターとしてはチャーミングでも犯人にとっては極めてイヤな相手である、というのと同じ意味で、おつきあいはご遠慮したいタイプみたい。
さてこのエピソードの概要ですが。
以前ゴーレンとエイムズによって逮捕された銀行強盗が、シンシン刑務所から仮出所した2日後、他殺死体で発見される。被害者の妹シャーロットに接触したところ、恋人のジェリー・ランキン(マイケル・エマーソン)の存在が浮上する。ジェリーは二重生活を送るミステリアスな男だった。シャーロットと清い交際をする一方でよそに妻子がいたのである。
ジェリーはシャーロットはもとより妻子や親に到るまで、国連で働くエコノミストであると信じさせていたが、実際は国連に籍はなく、華やかな経歴で他人を騙す詐欺師だったのである。シャーロットに近づいたのも、彼女が兄から預かった強盗で得た金が目的だった。シャーロットの兄に気づかれたジェリーはスタンガンで動きを封じた後刺殺し、警察の捜査の手が伸びたシャーロットをも、同様に自由を奪った後絞殺しようとして、意識不明の重態にしてしまう。
子どもたちから英雄視されることに己の存在意義を感じていたジェリーは、事件が発覚し子どもたちから見限られる恐怖に耐え切れず、可愛さあまってその殺害を企てる。そのことを察知したゴーレンとエイムズは、かれが立て篭もっているホテルへと急行するのだが。
というお話。エマーソン、バッドガイです。
だけど、この顔。
この画像は、警察の捜査が自分に及ぶことを察知して不安におののいているジェリー。ただちにセーフハウスに匿って温かい緑茶を淹れてあげたくなります。行状を見れば同情の余地もない十分な悪党なんですけどね。
最初にシャーロットの兄を刺殺した時、ためらい傷が一杯で、検死報告を見たゴーレンが、殺しは初めてだったのかもしれない、と思ったくらいなんですが、なんのなんの、それに先立ち、やはりスタンガンを使って相手の自由を奪うという(ある意味卑劣な)やり方で、財産目当てに義父(妻の父親)を殺しているのです。更にシャーロットの兄で殺しをやめておけばまだしも、一応「恋人」としてつきあっていたシャーロット自身をも手にかけてしまう。更にその上、幼い自分の子どもたちまで殺そうとするとあってはもはや弁解の余地のないモンスターです。
だけど。
エピソードの邦題、「幸せな共犯者」というのは、ラストでエイムズが言った皮肉、「(意識不明に陥っているシャーロットは)共犯者の正体を知らずにすんだわけだからある意味幸せよね」という台詞から来ています。シャーロットは確かに銀行強盗の兄の共犯者ではあったかもしれませんが(強奪した金を預かったわけだから)、ジェリーの「共犯者」と言ってしまうのはかわいそうな気もします。だって彼女はジェリーが身分を詐称している既婚者であることを知らなかったんですもの。本気でジェリーに惚れてたのよ。そして、惚れる気持ちにムリはないのよ。ダークスーツをバリッと着こなしたマイケル・エマーソン、ものっそステキなんだもの。
一方、原題の”Phantom”はジェリーそのひとのことを指しています。
この世のどこにも実態のない幽霊のような男。
周到に練り挙げられた華やかな設定の中では世界中を忙しく飛びまわる男は、重ねた嘘に阻まれて実社会では居場所をなくし、一日中さびれた植物園で、静かに本を読んで(時にはうたたねなんかして)時間を潰すしかない。
見る者をして不安にさせるほどに感情豊かな目をしたファントムが、掴まって刑務所に入れられてしまうことを思うと、ほんとはモンスターだってわかってはいても、居た堪れない気持ちになりますね。だって刑務所にはティーバックみたいなのがいっぱいいるのよ。どんだけ苛められることか。
そういう前提があるものですから、追い詰められた崖っぷちで実の子どもたちをライフルで狙うジェリーに対して、先述した「些細な証拠や曖昧な供述から犯人の心理を読み解き、巧みな口説でじわじわと追い詰めていく技」でもって懐柔しようとするゴーレンを見ていると、普通ならこれって、勇敢にも人質と武装犯の間に割り込み身を挺して人質を守ろうとする極めてヒロイックなシーンのはずなのに、「このマニュピレイティブなシルバータングめ!」って罵りたくなってしまうの。ごめんね、ドノフリオ。
by shirakian
| 2014-05-20 19:14
| 海外ドラマ