2014年 05月 01日
アウトランダー
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★ネタバレ注意★
2008年、ハワード・マケイン監督作品。
ジム・カヴィーゼルの出演作です。
ヒトガタ宇宙人、っていうか、爪のさきまでまるっと地球人そっくりな宇宙人ケイナン(ジム・カヴィーゼル)は、とある惑星の植民に失敗し、犠牲となった家族らの遺体と共に、新天地を求めて航行中、アクシデントに見舞われ、8世紀のノルウェーに不時着する。
そこはヴァイキングが暮らす森の中の王国で、ジョン・ハートの統治下、人々は狩りをし、武器を鍛え、蜂蜜酒を作り、子どもを育て、ヴァイキングの誇りと共に暮らしていた。
国王のジョン・ハートは、一人娘のフレイア(ソフィア・マイルズ)を先王の息子ウルリック(ジャック・ヒューストン)に嫁がせ、ウルリックに王位を譲りたいと考えていたが、フレイアはいまいちウルリックがタイプじゃないのでウンと言わない。というのもウルリック、顔はいいし、腕っ節は強いし、勇敢だし働き者だし性格も悪くはないんだけれど、ちょっぴりおばかさんなのが物足りないみたい。単純素朴なウルリックにとって、女心ってむずかしい。
そんなジョン王の国は、ガナー(ロン・パールマン)が収める隣国(っていうか隣村ってカンジ)とは微妙な行き違いがあり、下手すると一触即発の気配があった。そんなガナーの村が何者かに襲撃される。犠牲者は全て拉致され、生死のほどもわからない。ガナーはジョン王の仕業と思い、怒り心頭で攻め寄せて来るが。
ケイナンがこの地を訪れたのは、まさにそんなタイミング。そしてケイナンには、ガナーの村を襲った敵の正体がわかっていた。それはかれがよその星から連れてきてしまった異星生命体だったのである。
という物語は、ケイナンとジョン王国の男たちとガナーの村の男たちが力をあわせてエイリアンと闘うのがメイン。特に展開に新味があるわけではありませんが、バイキングの村にしても、ケイナンの回想の中で描かれるかれらが植民したエキゾチックな惑星にしても、なかなかに美しく独創的に描かれており、また、異星の怪獣の描写にしても、そんなにすごいCGが使われているわけではないんだけれど、「闇夜で赤く光る」などの特性をうまく生かしたクレバーな描写で粗も目立たず、きちんとグロテスクにおどろしく描けていてナイスだと思います。
キャストも、主演のカヴィーゼルはじめ、ジョン・ハートにロン・パールマンにソフィア・マイルズにジャック・ヒューストン(ジョン・ヒューストンのお孫さんなんですって)と手堅いメンツを集めてあるし、ストーリーも無理や破綻や冗長さを感じさせないし、画的な描写も悪くないとあれば、そこそこ高評価のファンタジーだと思うのですが、本邦未公開であるらしいです。スクリーンで観るべきタイプの映画なのに残念ね。
何をやらせても有能なジム・カヴィーゼルは、この映画でも馬を乗りこなすわ、剣の達人だわ、巨大な熊を退治するわ、シールド渡り(ヴァイキングの度胸だめしのゲーム)をするわ、潜水までこなすわの多才っぷり。フィンチはいい部下を見つけたねぇ。
いきなりこんなよそもの(outlander)が現れたら、そりゃ女心はぐらつきます。ウルリックからしたら、今までどんなに頑張っても振り向いてもらえなかったフレイアの視線がよそもんに釘づけになっちゃってるのは悔しい限りだと思うのですが、この映画の場合、フレイアをはさんだケイナンとウルリックの三角関係というよくあるパターンを踏まず、フレイアにも「トロフィーとしての美女」ではない、独立した対等な人格を与え、三者の友情の物語として描いている点が爽やかでよいなぁ、と思います。特に、ケイナンとウルリックの間に純粋な友情が育っていく過程がよいです。ウルリックってほんと性格がいいよ。普通だったらケイナンを陥れようとしたりするイヤな描写があるはずなんだけど、そういうのが全くないのよ。
この物語のキモは、ケイナンがつれてきてしまった異星生命体の正体ですが、この怪獣って実は、ケイナンたちが植民した惑星の原住生物だったのです。高度な文明を誇るケイナンたちの種族は、原住生物がいようがいまいがおかまいなしに、移住に適した星とあれば強引に支配するのが常だった。この赤く光る怪獣の星でも、まずは一気にかれらを焼き払ってから自分たちの町を建設したのです。
ところがそこで手ひどいしっぺ返しに会う。絶滅させたと思った原住生物だったのに、しぶとく生き延び、逆にケイナンたちのコミュニティが滅ぼされてしまった。大勢の死者を出し、ケイナンもまた愛する妻子を失って、ほうほうのていで逃げ出した宇宙船に、怪獣が一匹、まぎれこんでしまっていた。それを知らずにケイナンは、地球にそれを連れてきてしまったのでした。
それがわかってしまうと、怪獣、なんにも悪くない。怪獣の目からしたら、ヴァイキングの人々が新しい環境でようやく見つけたおいしい餌に見えたとしてもしょうがない。しかも怪獣、子育て中だし。
この設定って、エイリアンを思い出しますよね。
エイリアン2で繁殖地を荒らしたリプリーたちの宇宙船にまぎれこんだエイリアンが、エイリアン3のような辺境惑星で道草をくわず、直接地球に行っていたら、きっとこんな展開になってたに違いない、という感じ。エイリアン3で観たかったのこそ、こういう話だったんじゃなかったのかな。なんで道草するかな。
ジム・カヴィーゼルって、ハイ・ファンタジーの文脈にはあんまり馴染まない印象ですが、この映画の場合、「遠い星からやってきた男」という設定なので、まさにはまり役です。
2008年、ハワード・マケイン監督作品。
ジム・カヴィーゼルの出演作です。
ヒトガタ宇宙人、っていうか、爪のさきまでまるっと地球人そっくりな宇宙人ケイナン(ジム・カヴィーゼル)は、とある惑星の植民に失敗し、犠牲となった家族らの遺体と共に、新天地を求めて航行中、アクシデントに見舞われ、8世紀のノルウェーに不時着する。
そこはヴァイキングが暮らす森の中の王国で、ジョン・ハートの統治下、人々は狩りをし、武器を鍛え、蜂蜜酒を作り、子どもを育て、ヴァイキングの誇りと共に暮らしていた。
国王のジョン・ハートは、一人娘のフレイア(ソフィア・マイルズ)を先王の息子ウルリック(ジャック・ヒューストン)に嫁がせ、ウルリックに王位を譲りたいと考えていたが、フレイアはいまいちウルリックがタイプじゃないのでウンと言わない。というのもウルリック、顔はいいし、腕っ節は強いし、勇敢だし働き者だし性格も悪くはないんだけれど、ちょっぴりおばかさんなのが物足りないみたい。単純素朴なウルリックにとって、女心ってむずかしい。
そんなジョン王の国は、ガナー(ロン・パールマン)が収める隣国(っていうか隣村ってカンジ)とは微妙な行き違いがあり、下手すると一触即発の気配があった。そんなガナーの村が何者かに襲撃される。犠牲者は全て拉致され、生死のほどもわからない。ガナーはジョン王の仕業と思い、怒り心頭で攻め寄せて来るが。
ケイナンがこの地を訪れたのは、まさにそんなタイミング。そしてケイナンには、ガナーの村を襲った敵の正体がわかっていた。それはかれがよその星から連れてきてしまった異星生命体だったのである。
という物語は、ケイナンとジョン王国の男たちとガナーの村の男たちが力をあわせてエイリアンと闘うのがメイン。特に展開に新味があるわけではありませんが、バイキングの村にしても、ケイナンの回想の中で描かれるかれらが植民したエキゾチックな惑星にしても、なかなかに美しく独創的に描かれており、また、異星の怪獣の描写にしても、そんなにすごいCGが使われているわけではないんだけれど、「闇夜で赤く光る」などの特性をうまく生かしたクレバーな描写で粗も目立たず、きちんとグロテスクにおどろしく描けていてナイスだと思います。
キャストも、主演のカヴィーゼルはじめ、ジョン・ハートにロン・パールマンにソフィア・マイルズにジャック・ヒューストン(ジョン・ヒューストンのお孫さんなんですって)と手堅いメンツを集めてあるし、ストーリーも無理や破綻や冗長さを感じさせないし、画的な描写も悪くないとあれば、そこそこ高評価のファンタジーだと思うのですが、本邦未公開であるらしいです。スクリーンで観るべきタイプの映画なのに残念ね。
何をやらせても有能なジム・カヴィーゼルは、この映画でも馬を乗りこなすわ、剣の達人だわ、巨大な熊を退治するわ、シールド渡り(ヴァイキングの度胸だめしのゲーム)をするわ、潜水までこなすわの多才っぷり。フィンチはいい部下を見つけたねぇ。
いきなりこんなよそもの(outlander)が現れたら、そりゃ女心はぐらつきます。ウルリックからしたら、今までどんなに頑張っても振り向いてもらえなかったフレイアの視線がよそもんに釘づけになっちゃってるのは悔しい限りだと思うのですが、この映画の場合、フレイアをはさんだケイナンとウルリックの三角関係というよくあるパターンを踏まず、フレイアにも「トロフィーとしての美女」ではない、独立した対等な人格を与え、三者の友情の物語として描いている点が爽やかでよいなぁ、と思います。特に、ケイナンとウルリックの間に純粋な友情が育っていく過程がよいです。ウルリックってほんと性格がいいよ。普通だったらケイナンを陥れようとしたりするイヤな描写があるはずなんだけど、そういうのが全くないのよ。
この物語のキモは、ケイナンがつれてきてしまった異星生命体の正体ですが、この怪獣って実は、ケイナンたちが植民した惑星の原住生物だったのです。高度な文明を誇るケイナンたちの種族は、原住生物がいようがいまいがおかまいなしに、移住に適した星とあれば強引に支配するのが常だった。この赤く光る怪獣の星でも、まずは一気にかれらを焼き払ってから自分たちの町を建設したのです。
ところがそこで手ひどいしっぺ返しに会う。絶滅させたと思った原住生物だったのに、しぶとく生き延び、逆にケイナンたちのコミュニティが滅ぼされてしまった。大勢の死者を出し、ケイナンもまた愛する妻子を失って、ほうほうのていで逃げ出した宇宙船に、怪獣が一匹、まぎれこんでしまっていた。それを知らずにケイナンは、地球にそれを連れてきてしまったのでした。
それがわかってしまうと、怪獣、なんにも悪くない。怪獣の目からしたら、ヴァイキングの人々が新しい環境でようやく見つけたおいしい餌に見えたとしてもしょうがない。しかも怪獣、子育て中だし。
この設定って、エイリアンを思い出しますよね。
エイリアン2で繁殖地を荒らしたリプリーたちの宇宙船にまぎれこんだエイリアンが、エイリアン3のような辺境惑星で道草をくわず、直接地球に行っていたら、きっとこんな展開になってたに違いない、という感じ。エイリアン3で観たかったのこそ、こういう話だったんじゃなかったのかな。なんで道草するかな。
ジム・カヴィーゼルって、ハイ・ファンタジーの文脈にはあんまり馴染まない印象ですが、この映画の場合、「遠い星からやってきた男」という設定なので、まさにはまり役です。
by shirakian
| 2014-05-01 08:46
| 映画あ行