2014年 03月 31日
X-MEN2
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★ネタバレ注意★
■X-メン
■X-MEN:ファースト・ジェネレーション
■ウルヴァリン:X-MEN ZERO
X-MENおさらい企画第二弾、本作『X-MEN2』(X2)は、2003年に公開されたブライアン・シンガー監督による『X-メン』の映画化第2作。
2作目でありかつ1作目の完全な続編ですが、興行成績が1作目をしのいだのみならず、作品としても1作目より出来がいいという稀有な続編であります。
前回の事件からまだ間もない頃。
テレポーテーション能力を有するミュータント・ナイトクロウラー(アラン・カミング)がホワイトハウスに侵入し大統領を襲撃した。米政府当局は、対ミュータント対策本部顧問のウィリアム・ストライカー(ブライアン・コックス)の指揮の下、ナイトクロウラーを匿っていると思われるX-MENの本拠地を急襲する。
生徒たちが拘束される一方で、マグニートー(イアン・マッカラン)の面会に訪れていたプロフェッサーX(パトリック・スチュワート)とサイクロプス(ジェームズ・マースデン)もまたストライカーに捕らえられる。
からくもストライカーの手を逃れたウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)ら及びこれに合流したマグニートーとミスティーク(レベッカ・ローミン=ステイモス)一行は、ストライカーの根拠地であるアルカリ湖のダムを目指す。
ストライカーの目的は、「セレブロ」を模した「ダーク・セレブロ」を使って世界中のミュータントを根絶する事。一方、ウルヴァリンらに協力するとみせかけて同行したマグニートーの方でもまた、この「ダーク・セレブロ」を使ってミュータント以外の人間を殲滅しようとしていたのだった。
当作品が1作目より出来がいいというのは、まず何と言ってもスケール感が大幅にアップしていることで、アクションにしてもロケーションにしても1作目とは段違いの迫力を感じます。
本来持っていた能力に目覚めたジーンを筆頭に、アイスマン(ショーン・アシュモア)やパイロ(アーロン・スタンフォード)と言った若手の少年たちの活躍も目覚しいですが、やはりストームのバージョンアップぶりが凄い。
前作と今作の間で果たしてストームに何が起こったのかと言うと、2001年のアカデミー賞です。ストーム役のハル・ベリーが主演女優賞を受賞したのです。上掲ポスターを見れば一目瞭然のごとく、ハル・ベリーはヒュー・ジャックマンとほぼ同じ扱い。名優ブライアン・コックスはもとより、パトリック・スチュワートの顔すら見られないポスターなのに、この大きさ。アカデミー効果の大きさは半端じゃないです。前作では綺麗だけど(ほぼ)無名の黒人女優だったハル・ベリーが今作ではアカデミー女優。扱いの大きさは彼女の発言権の大きさでもあり、その証拠に、前作では漫画原作に忠実だったストームのヘアスタイルが今作では大幅に変更されて今風になっているのも、ハル・ベリー自身の提案によるものだったらしい。
全体のバランスを考えれば、さほど重要なキャラクターとは思えないストームがクローズアップされ過ぎるのは考えものですが、自在に天候を操るというストームの能力は画的に見ればやはり見応えがありますから、作品に外連味を添えることに貢献していたと思います。だけどやっぱり、今作でも重要なモチーフだったはずのウルヴァリン&ジーン&サイクロプスの三角関係を描くのであれば、サイクロプスの扱いがあまりにも小さすぎ。かなりバランスが悪いです。
異能を生かしたミュータントの活躍と言えば、新たに登場したふたりのミュータント、ナイトクロウラーとレディ・デスストライク(ケリー・ヒュー)も面白い。
前作でマグニートーの部下だったセイバートゥースなんかが、強いっちゃ強いけど単に腕力まかせで闘い方が単調に堕してた印象があるのに対し、ナイトクロウラーのテレポーテーション能力は見た目にも華がありますし、かれの「人間らしい」優しい心持ちも、ドラマに深みを与えていたと思います。
レディ・ストライクの方は、ウルヴァリン同様アマダンチウムの骨格を仕込まれた女。ウルヴァリンは何ら特別な存在ではなかった、というサプライズも去ることながら、格闘シーンでは小柄な身体を駆使してウルヴァリンと互角に戦う女戦士っぷりがすばらしい(ってか、やっぱ、ウルヴァリン、特に強いってわけじゃないみたい)。最期がちょっとかわいそうでした。
かわいそうと言えば、ストライカーの息子ジェイソン(マイケル・リード・マッケイ)。能力のおかげで母親に死なれ、父親に疎まれてしまった息子。息子に対して心を閉ざしてしまった父親は、息子を廃人にしてまで息子の能力を己の野望のために利用しようとし、息子は(贖罪の気持ちからか、愛情ゆえか、すでに人格を失ってしまっていたのか)父親にされるがままに悪事に加担するのです。なんて悲しい親子関係。
そういう前作では不足していたエモーショナルな描写は、前作での最大不満ポイントだった「人間とミュータントの関係」が全く描けていない、「普通の人々」に関する描写が一切ない、という欠点に関しても目配りが行き届いていました。
アイスマンの家族の描写が挿入されていたのです。息子の異能を直視しようとせず、普通の寄宿学校のつもりでX-MENの訓練校に息子を預けた両親。ストライカーの襲撃から逃れ、逃亡の途中で逃げ込んだ実家で、初めて息子の恐るべき能力を目にして戦慄する両親、兄の来訪を警察に通報してしまう弟……。特段目を見張るような描写があるわけではありませんが、こういうエピソードがあるとないとじゃ物語の奥行きが全然違うのです。
そしてラスト、ダム決壊から仲間を守るために自分を犠牲にしたジーンの決意。これもまた大変感動的ですが、ただ、ここには、サイクロプスを愛しながらもウルヴァリンに惹かれてしまったジーンが、この関係を清算しようとした(ある意味自己罰的な)意味合いも確かにあったと思うので、やはりサイクロプスの描写不足が悔やまれるのでした。
あと、ブライアン・コックスのストライカーって、『X-MEN ZERO』でダニー・ヒューストンが演った役だよなー、ヒューストンが年とるとコックスになるのかー、と思うのも楽しかったですし、マグニートーとミスティークが仲良く並んでいるシーンを見ると、このふたりって、マイケル・ファスベンダーとジェニファー・ローレンスだった時代から、こうして仲良くよりそっているんだねぇ、と微笑ましくなってしまうのでした。
■X-メン
■X-MEN:ファースト・ジェネレーション
■ウルヴァリン:X-MEN ZERO
X-MENおさらい企画第二弾、本作『X-MEN2』(X2)は、2003年に公開されたブライアン・シンガー監督による『X-メン』の映画化第2作。
2作目でありかつ1作目の完全な続編ですが、興行成績が1作目をしのいだのみならず、作品としても1作目より出来がいいという稀有な続編であります。
前回の事件からまだ間もない頃。
テレポーテーション能力を有するミュータント・ナイトクロウラー(アラン・カミング)がホワイトハウスに侵入し大統領を襲撃した。米政府当局は、対ミュータント対策本部顧問のウィリアム・ストライカー(ブライアン・コックス)の指揮の下、ナイトクロウラーを匿っていると思われるX-MENの本拠地を急襲する。
生徒たちが拘束される一方で、マグニートー(イアン・マッカラン)の面会に訪れていたプロフェッサーX(パトリック・スチュワート)とサイクロプス(ジェームズ・マースデン)もまたストライカーに捕らえられる。
からくもストライカーの手を逃れたウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)ら及びこれに合流したマグニートーとミスティーク(レベッカ・ローミン=ステイモス)一行は、ストライカーの根拠地であるアルカリ湖のダムを目指す。
ストライカーの目的は、「セレブロ」を模した「ダーク・セレブロ」を使って世界中のミュータントを根絶する事。一方、ウルヴァリンらに協力するとみせかけて同行したマグニートーの方でもまた、この「ダーク・セレブロ」を使ってミュータント以外の人間を殲滅しようとしていたのだった。
当作品が1作目より出来がいいというのは、まず何と言ってもスケール感が大幅にアップしていることで、アクションにしてもロケーションにしても1作目とは段違いの迫力を感じます。
本来持っていた能力に目覚めたジーンを筆頭に、アイスマン(ショーン・アシュモア)やパイロ(アーロン・スタンフォード)と言った若手の少年たちの活躍も目覚しいですが、やはりストームのバージョンアップぶりが凄い。
前作と今作の間で果たしてストームに何が起こったのかと言うと、2001年のアカデミー賞です。ストーム役のハル・ベリーが主演女優賞を受賞したのです。上掲ポスターを見れば一目瞭然のごとく、ハル・ベリーはヒュー・ジャックマンとほぼ同じ扱い。名優ブライアン・コックスはもとより、パトリック・スチュワートの顔すら見られないポスターなのに、この大きさ。アカデミー効果の大きさは半端じゃないです。前作では綺麗だけど(ほぼ)無名の黒人女優だったハル・ベリーが今作ではアカデミー女優。扱いの大きさは彼女の発言権の大きさでもあり、その証拠に、前作では漫画原作に忠実だったストームのヘアスタイルが今作では大幅に変更されて今風になっているのも、ハル・ベリー自身の提案によるものだったらしい。
全体のバランスを考えれば、さほど重要なキャラクターとは思えないストームがクローズアップされ過ぎるのは考えものですが、自在に天候を操るというストームの能力は画的に見ればやはり見応えがありますから、作品に外連味を添えることに貢献していたと思います。だけどやっぱり、今作でも重要なモチーフだったはずのウルヴァリン&ジーン&サイクロプスの三角関係を描くのであれば、サイクロプスの扱いがあまりにも小さすぎ。かなりバランスが悪いです。
異能を生かしたミュータントの活躍と言えば、新たに登場したふたりのミュータント、ナイトクロウラーとレディ・デスストライク(ケリー・ヒュー)も面白い。
前作でマグニートーの部下だったセイバートゥースなんかが、強いっちゃ強いけど単に腕力まかせで闘い方が単調に堕してた印象があるのに対し、ナイトクロウラーのテレポーテーション能力は見た目にも華がありますし、かれの「人間らしい」優しい心持ちも、ドラマに深みを与えていたと思います。
レディ・ストライクの方は、ウルヴァリン同様アマダンチウムの骨格を仕込まれた女。ウルヴァリンは何ら特別な存在ではなかった、というサプライズも去ることながら、格闘シーンでは小柄な身体を駆使してウルヴァリンと互角に戦う女戦士っぷりがすばらしい(ってか、やっぱ、ウルヴァリン、特に強いってわけじゃないみたい)。最期がちょっとかわいそうでした。
かわいそうと言えば、ストライカーの息子ジェイソン(マイケル・リード・マッケイ)。能力のおかげで母親に死なれ、父親に疎まれてしまった息子。息子に対して心を閉ざしてしまった父親は、息子を廃人にしてまで息子の能力を己の野望のために利用しようとし、息子は(贖罪の気持ちからか、愛情ゆえか、すでに人格を失ってしまっていたのか)父親にされるがままに悪事に加担するのです。なんて悲しい親子関係。
そういう前作では不足していたエモーショナルな描写は、前作での最大不満ポイントだった「人間とミュータントの関係」が全く描けていない、「普通の人々」に関する描写が一切ない、という欠点に関しても目配りが行き届いていました。
アイスマンの家族の描写が挿入されていたのです。息子の異能を直視しようとせず、普通の寄宿学校のつもりでX-MENの訓練校に息子を預けた両親。ストライカーの襲撃から逃れ、逃亡の途中で逃げ込んだ実家で、初めて息子の恐るべき能力を目にして戦慄する両親、兄の来訪を警察に通報してしまう弟……。特段目を見張るような描写があるわけではありませんが、こういうエピソードがあるとないとじゃ物語の奥行きが全然違うのです。
そしてラスト、ダム決壊から仲間を守るために自分を犠牲にしたジーンの決意。これもまた大変感動的ですが、ただ、ここには、サイクロプスを愛しながらもウルヴァリンに惹かれてしまったジーンが、この関係を清算しようとした(ある意味自己罰的な)意味合いも確かにあったと思うので、やはりサイクロプスの描写不足が悔やまれるのでした。
あと、ブライアン・コックスのストライカーって、『X-MEN ZERO』でダニー・ヒューストンが演った役だよなー、ヒューストンが年とるとコックスになるのかー、と思うのも楽しかったですし、マグニートーとミスティークが仲良く並んでいるシーンを見ると、このふたりって、マイケル・ファスベンダーとジェニファー・ローレンスだった時代から、こうして仲良くよりそっているんだねぇ、と微笑ましくなってしまうのでした。
by shirakian
| 2014-03-31 19:41
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