2013年 01月 17日
LOOPER/ルーパー
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★ネタバレ注意★
衝撃の事実!
30年後の自分と対面したら、見事なまでに禿げていた!
これに尽きるかなぁ……。(おい)。
ライアン・ジョンソン監督、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ブルース・ウィリス、エミリー・ブラント共演。タイムトラベルもののSFアクション。
2044年、「ルーパー」ジョー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)の仕事は、2074年の未来から送り込まれて来るターゲットを殺すことだった。なぜなら2074年の社会では、すべての人間の体内にマイクロマシンが埋め込まれ、殺人は事実上不可能になっていたため、わざわざタイムマシンで過去に送って処刑する、という迂遠な手段がとられていたからである。そんなある日、ジョーの前に現れたターゲットは、30年後の自分だった!
この30年後のジョーを演じているのがブルース・ウィリス。つまり、別のふたりの役者がひとりの同じ人間を演じているのがキモなんだけど。
設定上は色々破綻があるけれど、ストーリーが魅力的だったので、映画としてはオッケーという意見もあるようですが、わたしはやっぱりダメでした。設定上の色々な破綻に目をつぶることができなかったので、あんまり楽しくありませんでした。
だってこれはSFでしょう? SFというのは空想の物語だからこそ、その部分にしっかりとした整合性がないとダメでしょう? 別にほんとのほんとに理論的に正しいかどうかとか実現可能かどうかとか、そういうことはどうでもいいけど、でも、どうせ嘘なら上手な嘘をつかないと。マジシャンのステージが楽しいのは、単なるトリックがいかにもほんもののように見える工夫が凝らされているからなんだよ。
タイムトラベルものなのに、タイムパラドックスをまるっと完全に無視するって、ほんと、どうなのよ。劇中ウィリスが、話せば長い話になるからパラドックスの件については説明しないとか嘯くんだけど、ふざけんなよ、ちゃんと説明しろよ、てやんでぇ、ちくしょうめぇ、こちとら江戸っ子でぇはないけど、でも気になるんだよ、そういうところは譲れないのよ、青臭く反応しちゃうのよ。こういうジャンルが好きだから。
ヤング・ジョーがオールド・ジョーを殺せなかったら、ヤング・ジョーは抹殺されオールド・ジョーも存在できない。オールド・ジョーが存在するためには、オールド・ジョーを殺したヤング・ジョーが存在する別の時間軸の存在が必要である。従ってオールド・ジョーが存在している時間軸は、オールド・ジョーを殺し損ねたヤング・ジョーが存在している時間軸と同一の時間軸ではない。ヤング・ジョーとオールド・ジョーの時間軸は一致しないのだから、ヤング・ジョーのいかなる振る舞いもオールド・ジョーに影響を及ぼすことはないし、ましてや、ヤング・ジョーの経験がオールド・ジョーの記憶として再現されることはない。
としか納得できない!(もはや駄々っこモード)。
もちろん、絵としては面白いよ?
未来の自分を殺し損ねたらどうなるか、という説明要員として、ジョーの物語に先立ち、同じくルーパーのポール・ダノのエピソードが挿入されているのだけれど、しくじって組織に掴まったポール・ダノが、身体にメッセージを刻まれると、そのメッセージが逃げ回っているオールド・ダノの身体に傷になって現れたり、ポール・ダノが拷問で指を切断されると、時を同じくしてオールド・ダノの指が消えていったり、こういうのは絵として見ると、ほんとに面白い。
だけど、やっぱり、イヤなものはイヤなの(>_<)!
そもそもね、タイムトラベルが実現した社会、というものを何だと思っておるのか。
それだけの技術躍進があったら、どんだけ社会が変容すると思っておるのか。
法律で使用を禁止したらそれで社会生活に影響が出ないとでも思っておるのか。
そこんとこいい加減におざなりにするから、タイムトラベルという一大イノベーションが犯罪組織の邪魔者処理に(のみ?)細々と使われている、とかいうわけのわからん描写になるのよ。大体、一旦実用化した科学技術を法律なんかで禁止できるものかね。当然真っ先に国家が使いまくるし、大々的にテロリストが流用するわ。
そもそも、人を殺すのに過去の人間を大金で雇って代わりにやってもらう犯罪組織って何なのさ? ひとひとり殺すことの簡単さに比べたら、そのやりようはあまりにも非効率に過ぎるでしょうに。人殺しができない社会って、要するに、人を殺せば容易に犯人が特定されるからできない、ってことでしょ? だったら違法なタイムマシンの使用だって当局に特定されたらヤバイでしょ? 同じヤバイなら、殺人の方が単価が安いっつーの。それに何よりオールド・ジョーの中国妻って、「組織」に殺されたんじゃないの?
オールド・ジョーはこの「妻が殺される未来」を回避するために、コトの発端となるべき組織のボス(レインメーカー)を潰すことを考えるわけで、それはよくある「子ども時代のヒットラーを殺したら」というアイディアの八番煎じぐらいの出がらしネタなんだけど、だけどそれにしたって、子ども時代のレインメーカーを殺すことの影響がどんな風に波及するかは予測できない、という要因を全く無視したストーリー展開にはイラッときます。
そして、「なぜかはわからないけど微弱なテレキネシス能力を持つ者がやたらと増えた社会」という小賢しい設定にもイラッときちゃう。だってなにしろこの設定って、ボスだけが能力者だとご都合主義って言われるから、程度の差こそあれそういうひとはいっぱいいた、っていう言い訳を作っておこう、という以上の意味が全くないもの。この設定が物語世界に及ぼす影響っていうのが全然描かれてない上に、第一、この話にはレインメーカーが超人である必然性は少しもない。ヤツがやったことってせいぜい犯罪組織の統合でしょうが。別に悪魔が降臨したわけじゃなし。
あと、最大にガッカリだったのは、オールドと対面することはヤングにとってはサプライズではない、ということ。物語の設定上も予定されたことだし、作中人物も予測の上だし、観客的にも(オールド・ジョーが現れる以前にそうした事情を知らされてしまうので)サプライズではない。
一体何なのだ、このストーリー構成は。
この映画で、未来の自分と対面する驚き、を描かずして一体何を目玉にするというのだ。
唯一よかったのは、ジョセフ・ゴードン=レヴィットのブルース・ウィリスへのなりきりっぷりです。チャームポイントの垂れ眉を封印したどすこいメイクも気合はいっていましたが、ちょっとした目配りとか、口の歪め方とか、仕種とか、台詞の間の取り方とか、声の出し方とか、ほんとにウィリスそっくりでしたもの。本来、全然似てない相手なのに、ここまでそっくりになりきってみせたかれの役者魂には感嘆しました。
・LOOPER/ルーパー@ぴあ映画生活
衝撃の事実!
30年後の自分と対面したら、見事なまでに禿げていた!
これに尽きるかなぁ……。(おい)。
ライアン・ジョンソン監督、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ブルース・ウィリス、エミリー・ブラント共演。タイムトラベルもののSFアクション。
2044年、「ルーパー」ジョー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)の仕事は、2074年の未来から送り込まれて来るターゲットを殺すことだった。なぜなら2074年の社会では、すべての人間の体内にマイクロマシンが埋め込まれ、殺人は事実上不可能になっていたため、わざわざタイムマシンで過去に送って処刑する、という迂遠な手段がとられていたからである。そんなある日、ジョーの前に現れたターゲットは、30年後の自分だった!
この30年後のジョーを演じているのがブルース・ウィリス。つまり、別のふたりの役者がひとりの同じ人間を演じているのがキモなんだけど。
設定上は色々破綻があるけれど、ストーリーが魅力的だったので、映画としてはオッケーという意見もあるようですが、わたしはやっぱりダメでした。設定上の色々な破綻に目をつぶることができなかったので、あんまり楽しくありませんでした。
だってこれはSFでしょう? SFというのは空想の物語だからこそ、その部分にしっかりとした整合性がないとダメでしょう? 別にほんとのほんとに理論的に正しいかどうかとか実現可能かどうかとか、そういうことはどうでもいいけど、でも、どうせ嘘なら上手な嘘をつかないと。マジシャンのステージが楽しいのは、単なるトリックがいかにもほんもののように見える工夫が凝らされているからなんだよ。
タイムトラベルものなのに、タイムパラドックスをまるっと完全に無視するって、ほんと、どうなのよ。劇中ウィリスが、話せば長い話になるからパラドックスの件については説明しないとか嘯くんだけど、ふざけんなよ、ちゃんと説明しろよ、てやんでぇ、ちくしょうめぇ、こちとら江戸っ子でぇはないけど、でも気になるんだよ、そういうところは譲れないのよ、青臭く反応しちゃうのよ。こういうジャンルが好きだから。
ヤング・ジョーがオールド・ジョーを殺せなかったら、ヤング・ジョーは抹殺されオールド・ジョーも存在できない。オールド・ジョーが存在するためには、オールド・ジョーを殺したヤング・ジョーが存在する別の時間軸の存在が必要である。従ってオールド・ジョーが存在している時間軸は、オールド・ジョーを殺し損ねたヤング・ジョーが存在している時間軸と同一の時間軸ではない。ヤング・ジョーとオールド・ジョーの時間軸は一致しないのだから、ヤング・ジョーのいかなる振る舞いもオールド・ジョーに影響を及ぼすことはないし、ましてや、ヤング・ジョーの経験がオールド・ジョーの記憶として再現されることはない。
としか納得できない!(もはや駄々っこモード)。
もちろん、絵としては面白いよ?
未来の自分を殺し損ねたらどうなるか、という説明要員として、ジョーの物語に先立ち、同じくルーパーのポール・ダノのエピソードが挿入されているのだけれど、しくじって組織に掴まったポール・ダノが、身体にメッセージを刻まれると、そのメッセージが逃げ回っているオールド・ダノの身体に傷になって現れたり、ポール・ダノが拷問で指を切断されると、時を同じくしてオールド・ダノの指が消えていったり、こういうのは絵として見ると、ほんとに面白い。
だけど、やっぱり、イヤなものはイヤなの(>_<)!
そもそもね、タイムトラベルが実現した社会、というものを何だと思っておるのか。
それだけの技術躍進があったら、どんだけ社会が変容すると思っておるのか。
法律で使用を禁止したらそれで社会生活に影響が出ないとでも思っておるのか。
そこんとこいい加減におざなりにするから、タイムトラベルという一大イノベーションが犯罪組織の邪魔者処理に(のみ?)細々と使われている、とかいうわけのわからん描写になるのよ。大体、一旦実用化した科学技術を法律なんかで禁止できるものかね。当然真っ先に国家が使いまくるし、大々的にテロリストが流用するわ。
そもそも、人を殺すのに過去の人間を大金で雇って代わりにやってもらう犯罪組織って何なのさ? ひとひとり殺すことの簡単さに比べたら、そのやりようはあまりにも非効率に過ぎるでしょうに。人殺しができない社会って、要するに、人を殺せば容易に犯人が特定されるからできない、ってことでしょ? だったら違法なタイムマシンの使用だって当局に特定されたらヤバイでしょ? 同じヤバイなら、殺人の方が単価が安いっつーの。それに何よりオールド・ジョーの中国妻って、「組織」に殺されたんじゃないの?
オールド・ジョーはこの「妻が殺される未来」を回避するために、コトの発端となるべき組織のボス(レインメーカー)を潰すことを考えるわけで、それはよくある「子ども時代のヒットラーを殺したら」というアイディアの八番煎じぐらいの出がらしネタなんだけど、だけどそれにしたって、子ども時代のレインメーカーを殺すことの影響がどんな風に波及するかは予測できない、という要因を全く無視したストーリー展開にはイラッときます。
そして、「なぜかはわからないけど微弱なテレキネシス能力を持つ者がやたらと増えた社会」という小賢しい設定にもイラッときちゃう。だってなにしろこの設定って、ボスだけが能力者だとご都合主義って言われるから、程度の差こそあれそういうひとはいっぱいいた、っていう言い訳を作っておこう、という以上の意味が全くないもの。この設定が物語世界に及ぼす影響っていうのが全然描かれてない上に、第一、この話にはレインメーカーが超人である必然性は少しもない。ヤツがやったことってせいぜい犯罪組織の統合でしょうが。別に悪魔が降臨したわけじゃなし。
あと、最大にガッカリだったのは、オールドと対面することはヤングにとってはサプライズではない、ということ。物語の設定上も予定されたことだし、作中人物も予測の上だし、観客的にも(オールド・ジョーが現れる以前にそうした事情を知らされてしまうので)サプライズではない。
一体何なのだ、このストーリー構成は。
この映画で、未来の自分と対面する驚き、を描かずして一体何を目玉にするというのだ。
唯一よかったのは、ジョセフ・ゴードン=レヴィットのブルース・ウィリスへのなりきりっぷりです。チャームポイントの垂れ眉を封印したどすこいメイクも気合はいっていましたが、ちょっとした目配りとか、口の歪め方とか、仕種とか、台詞の間の取り方とか、声の出し方とか、ほんとにウィリスそっくりでしたもの。本来、全然似てない相手なのに、ここまでそっくりになりきってみせたかれの役者魂には感嘆しました。
・LOOPER/ルーパー@ぴあ映画生活
by shirakian
| 2013-01-17 19:41
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