2012年 10月 29日
エージェント・マロリー
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★ネタバレ注意★
スティーヴン・ソダーバーグ監督のアクション・スリラー。
エスコート嬢が主役の『ガールフレンド・エクスペリエンス』で、人気№1ポルノ女優サーシャ・グレイを起用したソダーバーグ監督が、女スパイが主役の本作では、本物の格闘家、ジーナ・カラーノを抜擢したことで話題の映画です。
マロリー・ケイン(ジーナ・カラーノ)は凄腕の女スパイ。政府系の「汚れ仕事」を請け負う民間軍事企業の経営者ケネス(ユアン・マクレガー)の下で働くマロリーは、ケネスとはかつて恋人関係でもあった。同僚のアーロン(チャニング・テイタム)と共に、バルセロナでの人質救出ミッションを成功させたマロリーに、ケネスから持ち込まれた次なる仕事は、MI-6に雇われたフリーランスのポール(マイケル・ファスベンダー)と新婚夫婦を装い、指定された男に接触すること。それは休暇にも等しい簡単なミッションのはずだったのだが。
などというストーリーは一応あるにはあるのですが、要するに全てはジーナ・カラーノのアクションシーンをお膳立てするための手続きといった感じで、スパイ物として特筆すべきスマートな趣向はありません。
簡単に言えば、まずチャニング・テイタムがジーナ・カラーノと闘ってぼこぼこにされ、次にマイケル・ファスベンダーがジーナ・カラーノと闘ってぼこぼこにされ、さらに続いてユアン・マクレガーがジーナ・カラーノと闘ってぼこぼこにされ、最後にアントニオ・バンデラスがジーナ・カラーノに「次はおまえだ」と言われて「あひゃっ!」となる、というお話。
そんだけなんだけど、面白いよ。名だたる男どもがほんとにぼこぼこにされちゃうんだよ。
なんと言ってもやっぱ、ジーナ・カラーノ、ほんものの格闘家だし! 骨格と筋肉がそんじょそこらのモデル体型の女優さんとは全然違いましてよ。ほんとうに闘える身体なんだね。殴っても蹴っても、ドスンズドンと重低音の迫力。格闘技がわかるひとが見たら、この面白さはひとしおなんじゃないでしょうか。残念ながらわたしには猫に小判だったけど、それでもとってもキモチがよかったです。
それに、ジーナ・カラーノってほんとに美人☆ 華があってアップに耐える。闘ってるときのカッコよさは言うまでもないけど、ドレスアップしても映える映える。ガッチリ体型だけど、スタイルは抜群。演技者としてのポテンシャルが如何程のものなのか、この映画ではわかりませんでしたが、でもアクションのできる女優という貴重な存在として、これからも映画畑で活躍していただきたいものです。
ジーナ・カラーノをショウアップする映画でジーナ・カラーノがとってもよかったわけですから、もう何も文句をつける筋合いのものではないんだけど、カラーノ以外のキャスティングが結構謎でした。
や、チャニング・テイタムとマイケル・ファスベンダーはノー・プロブレムです。がっしりと逞しいテイタムにしても、細身ながらその身体能力の高さには定評のあるファスベンダーにしても、「闘える感」に不足はなく、ジーナ・カラーノとの真剣勝負にはまさに手に汗握ります。問題なのはユアン・マクレガー。
黒幕的立ち位置のバンデラスが実際にジーナ・カラーノと闘う前にエンディングを迎えちゃうので、映画的には「最後に倒す敵」はマクレガーということになるんだけど、なんでそこでかれ?
だってユアン・マクレガーだよ? 身体もちっこいし、筋肉だって貧弱だよ? かれが強かったのはオビ・ワンのときだけでしょ? オビ・ワンっつったって別に腕っぷしが強かったわけじゃないでしょ? ライトセーバーとかフォースとか、なんか色々あったじゃん? 素手じゃ無理っしょ?
そんなマクレガーが暴走トラックのごとき怒りに燃えるジーナ・カラーノと闘うんですもん、完全にジャイアンに苛められるのび太にしか見えません。あまりの痛ましさに目を開けていられません。ちっともスカッとしないんですけど(>_<)。
そしてもうひとり、謎のキャストがビル・パクストン。
パクストンが演じているのはマロリーの父親ジョン・ケインの役です。
この父親はですね、娘が今まで何をやってきたか(人殺しすら含めて)全て完全に熟知していながら、あくまで娘を信じ、娘のサイドに立ち、娘のために我が身を犠牲にしようとする父親の鑑のような人物なんです。そして娘のマロリーの方も、こんなに強い自立した女性でありながら、父親にだけは自分の全てを曝け出すことができるんです。心の底から信頼しているんです。父娘ふたりの決して壊すことのできない絆というのは、暴力と嘘と裏切りばかりが横行する殺伐としたこの物語世界にあっては、唯一の救いなんです。感情的に盛り上がるとしたら、もうこのポイントしかないんです。たったひとつのチャンスなんです。
それなのにビル・パクストン……。
わたしのように草を食むように映画ばっかり観ている人間は、今までの人生でパクストンさんとはそれなりに遭遇してきているわけで、なんだかんだで10本以上は出演作を観ていることになろうかと思いますが、未だに顔がわかりません(汗)。名優なのかもしれないし、演技巧者なのかもしれないし、イケメンだったり好感度抜群だったりするのかもしれないんだけれど、どうにもこうにも印象が薄い。全くもって、忘れようにも思い出せない役者。
そんなビルじゃあ、盛り上がろうにも盛り上がれないのよ。ああん、このひと、だれだったっけ、と身悶えしているうちに映画が終わってしまうのよ。なんでここでビル・パクストンなのよ。リチャード・ジェンキンスっていうひとがいるでしょうが! ジェンキンスだったらここぞとばかりに確実に泣かせてくれたのに!
要するに、人脈豊富なソダーバーグ監督の、あまりに通すぎてついていけない趣味に翻弄された映画でもあったわけです。
あ、あと、マイケル・ダグラスも出てたけど、元気そうでなによりでした。一時期、げっそり痩せちゃってたものね。癌を克服されたんだね。おめでとうございます。まだお子さんも小さいことだし、末永く健やかにご活躍していただきたいものだと思いました。
・エージェント・マロリー@ぴあ映画生活
スティーヴン・ソダーバーグ監督のアクション・スリラー。
エスコート嬢が主役の『ガールフレンド・エクスペリエンス』で、人気№1ポルノ女優サーシャ・グレイを起用したソダーバーグ監督が、女スパイが主役の本作では、本物の格闘家、ジーナ・カラーノを抜擢したことで話題の映画です。
マロリー・ケイン(ジーナ・カラーノ)は凄腕の女スパイ。政府系の「汚れ仕事」を請け負う民間軍事企業の経営者ケネス(ユアン・マクレガー)の下で働くマロリーは、ケネスとはかつて恋人関係でもあった。同僚のアーロン(チャニング・テイタム)と共に、バルセロナでの人質救出ミッションを成功させたマロリーに、ケネスから持ち込まれた次なる仕事は、MI-6に雇われたフリーランスのポール(マイケル・ファスベンダー)と新婚夫婦を装い、指定された男に接触すること。それは休暇にも等しい簡単なミッションのはずだったのだが。
などというストーリーは一応あるにはあるのですが、要するに全てはジーナ・カラーノのアクションシーンをお膳立てするための手続きといった感じで、スパイ物として特筆すべきスマートな趣向はありません。
簡単に言えば、まずチャニング・テイタムがジーナ・カラーノと闘ってぼこぼこにされ、次にマイケル・ファスベンダーがジーナ・カラーノと闘ってぼこぼこにされ、さらに続いてユアン・マクレガーがジーナ・カラーノと闘ってぼこぼこにされ、最後にアントニオ・バンデラスがジーナ・カラーノに「次はおまえだ」と言われて「あひゃっ!」となる、というお話。
そんだけなんだけど、面白いよ。名だたる男どもがほんとにぼこぼこにされちゃうんだよ。
なんと言ってもやっぱ、ジーナ・カラーノ、ほんものの格闘家だし! 骨格と筋肉がそんじょそこらのモデル体型の女優さんとは全然違いましてよ。ほんとうに闘える身体なんだね。殴っても蹴っても、ドスンズドンと重低音の迫力。格闘技がわかるひとが見たら、この面白さはひとしおなんじゃないでしょうか。残念ながらわたしには猫に小判だったけど、それでもとってもキモチがよかったです。
それに、ジーナ・カラーノってほんとに美人☆ 華があってアップに耐える。闘ってるときのカッコよさは言うまでもないけど、ドレスアップしても映える映える。ガッチリ体型だけど、スタイルは抜群。演技者としてのポテンシャルが如何程のものなのか、この映画ではわかりませんでしたが、でもアクションのできる女優という貴重な存在として、これからも映画畑で活躍していただきたいものです。
ジーナ・カラーノをショウアップする映画でジーナ・カラーノがとってもよかったわけですから、もう何も文句をつける筋合いのものではないんだけど、カラーノ以外のキャスティングが結構謎でした。
や、チャニング・テイタムとマイケル・ファスベンダーはノー・プロブレムです。がっしりと逞しいテイタムにしても、細身ながらその身体能力の高さには定評のあるファスベンダーにしても、「闘える感」に不足はなく、ジーナ・カラーノとの真剣勝負にはまさに手に汗握ります。問題なのはユアン・マクレガー。
黒幕的立ち位置のバンデラスが実際にジーナ・カラーノと闘う前にエンディングを迎えちゃうので、映画的には「最後に倒す敵」はマクレガーということになるんだけど、なんでそこでかれ?
だってユアン・マクレガーだよ? 身体もちっこいし、筋肉だって貧弱だよ? かれが強かったのはオビ・ワンのときだけでしょ? オビ・ワンっつったって別に腕っぷしが強かったわけじゃないでしょ? ライトセーバーとかフォースとか、なんか色々あったじゃん? 素手じゃ無理っしょ?
そんなマクレガーが暴走トラックのごとき怒りに燃えるジーナ・カラーノと闘うんですもん、完全にジャイアンに苛められるのび太にしか見えません。あまりの痛ましさに目を開けていられません。ちっともスカッとしないんですけど(>_<)。
そしてもうひとり、謎のキャストがビル・パクストン。
パクストンが演じているのはマロリーの父親ジョン・ケインの役です。
この父親はですね、娘が今まで何をやってきたか(人殺しすら含めて)全て完全に熟知していながら、あくまで娘を信じ、娘のサイドに立ち、娘のために我が身を犠牲にしようとする父親の鑑のような人物なんです。そして娘のマロリーの方も、こんなに強い自立した女性でありながら、父親にだけは自分の全てを曝け出すことができるんです。心の底から信頼しているんです。父娘ふたりの決して壊すことのできない絆というのは、暴力と嘘と裏切りばかりが横行する殺伐としたこの物語世界にあっては、唯一の救いなんです。感情的に盛り上がるとしたら、もうこのポイントしかないんです。たったひとつのチャンスなんです。
それなのにビル・パクストン……。
わたしのように草を食むように映画ばっかり観ている人間は、今までの人生でパクストンさんとはそれなりに遭遇してきているわけで、なんだかんだで10本以上は出演作を観ていることになろうかと思いますが、未だに顔がわかりません(汗)。名優なのかもしれないし、演技巧者なのかもしれないし、イケメンだったり好感度抜群だったりするのかもしれないんだけれど、どうにもこうにも印象が薄い。全くもって、忘れようにも思い出せない役者。
そんなビルじゃあ、盛り上がろうにも盛り上がれないのよ。ああん、このひと、だれだったっけ、と身悶えしているうちに映画が終わってしまうのよ。なんでここでビル・パクストンなのよ。リチャード・ジェンキンスっていうひとがいるでしょうが! ジェンキンスだったらここぞとばかりに確実に泣かせてくれたのに!
要するに、人脈豊富なソダーバーグ監督の、あまりに通すぎてついていけない趣味に翻弄された映画でもあったわけです。
あ、あと、マイケル・ダグラスも出てたけど、元気そうでなによりでした。一時期、げっそり痩せちゃってたものね。癌を克服されたんだね。おめでとうございます。まだお子さんも小さいことだし、末永く健やかにご活躍していただきたいものだと思いました。
・エージェント・マロリー@ぴあ映画生活
by shirakian
| 2012-10-29 12:56
| 映画あ行