2012年 09月 25日
白雪姫と鏡の女王
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★ネタバレ注意★
6月の『スノーホワイト』のシャーリーズ・セロンに続き、こちらはジュリア・ロバーツが鏡の女王を演じる白雪姫。ターセム・シン監督……っていうか、監督、名前の表記が変わったのかしら、これからはターセム・シン・ダンドワール監督って呼ばなきゃいけないことになったのかしら、シンって苗字だと思ってたけど、ちがったのかしら、ダンドワールさんと結婚でもしたのかしら、そんなのどうでもいいことかしら、ちょっとわたしうるさかったかしら、ごめんなさい。
そうは言ってもこの映画、ターセム・シン監督の映画というよりもはや、石岡瑛子さんの映画であると言うべきかも。衣装が凄い。衣装がステキ。衣装が至福。この衣装を観られただけでもよしとすべき。もうほかになにもいらない。大変残念なことに、この映画が石岡さんの遺作となってしまわれたそうです。今まで様々な映画に於いてすばらしい衣装の数々でわたしたちの目を楽しませてくださって、ほんとうにどうもありがとうございました。心からのご冥福をお祈り申し上げます。
正統的ファンタジー・アドベンチャーだったセロン版と比して、こちらは最初からコメディを狙ったライト感覚の御伽噺として作られているようですが、監督がターセム・“ビジュアリスト”・シン監督であり、中心となるのが石岡瑛子さんの衣装であることからも瞭然であるように、映像表現の面白さということに関しては、こちらの映画に一日の長があるようです。頑張ってお金かけて凝って作ってる割には、どっかで観たような映像ばっかりだったセロン版とは一味違う、シン監督にしか描けないイメージの豊かさ、というのがあって、やはり目にも心にも楽しい。
竹馬に乗って暗躍する小人たちのカーニバルチックなアクション、一種独特な魔法の鏡の世界、鏡の魔女がくりだすデストロイヤーの操り人形などなど、衣装以外にも楽しい映像が盛りだくさん。そんな中で、お城の造形が世にも醜悪だったのはわざとかしら。いまだかつてあれほど醜いお城は観た事がないです。おかげで、これまたとっても印象的ではありましたが。
幼い頃に父親である国王を失ったスノーホワイト(リリー・コリンズ)は、意地悪な継母の女王(ジュリア・ロバーツ)によって、18歳となる今日まで、お城の塔に幽閉されてきた。女王はとんだ浪費家で、国家財源を食い潰し、増税に告ぐ増税で国民生活は破綻すれすれ。そんな王国に、冒険を求めて裕福な隣国の王子(アーミー・ハマー)がやって来た。本来なら王女の婿さん候補の好青年、しかし女王は金蔓である王子と自ら結婚することを画策し、侍従長のブライトン(ネイサン・レイン)にスノーホワイトの暗殺を命じる。
継子イジメという陰惨なモチーフは変わらぬながら、ジュリア・ロバーツにしてもネイサン・レインにしても、誇張されたコミカルな演技はお手の物、堂に入った挙措も台詞まわしも、まっこと安心して楽しめる匠の技、お見事であります。そして苛められる方のリリー・コリンズも、あっけらかんとしているというか悲壮感がないというか、なんだか図太い感じが大正解なのです。このお姫様ってば、すくすく屈託なく育っちゃって、ほんとにかわいいったらありゃしない☆
屈託のないスノーホワイトは、小人たちの指導の下、しっかり戦闘訓練を積んで闘える女に成長していくし、王子様にキスをしかけるのも自分からだし、魔女の毒リンゴなんかにゃ惑わされもしないんだけど、かといってふてぶてしい印象はなく、やっぱり初々しくてかわいらしいのだから、リリー・コリンズ、拾い物だね。
しかし一番の収穫はなんといってもアーミー・ハマーの王子様でしょう。このひと、コメディもかなりいけます。屈辱的な情況(っていうか、要するにこっぱずかしいシチュエーション)を演じて「痛々しい」と感じさせずにちゃんと「滑稽だ」と感じさせることができるというのはコメディを演じる上で不可欠の才能。アーミー・ハマーは大丈夫。サルマタ(?)いっちょがちゃんとおかしい。この美貌にしてこのコメディセンスがあれば、今後ラブコメ方面でひっぱりだこになるのはまちがいなしですね。ヒュー・グラントの後を継ぐのはハマーかしら。
ラストを締めくくるマサラダンスも楽しかったです。やっぱ、ターセム・シン監督はインド系のひとだものね。だけどひとつだけ注文をつけるとしたら、確かにリリー・コリンズのダンスはかわいらしいけど、でもやっぱマサラダンスなんですもん、ヒロインだけに踊らせといちゃだめよ、相手役も踊らなきゃ、そしてねっとりと熱く見つめあわなきゃ、そしてそしていよいよキスという瞬間にプイと顔を背ける演出がなきゃ。
最後に、この映画でジュリア・ロバーツの鏡の女王に誑かされる王様を演じたのは、ショーン・ビーンなんですが、ショーン・ビーンがこの映画で王様を演じるという情報は、結構逸早く伝わっていたと思います。少なくともわたしの認識では、この映画は「ショーンの新作(でもどうせまたカメオ)」でありましたよ。
以下、にっこりかわゆい王様の画像をはさんで(黄色いローブがとってもお似合い☆、石岡瑛子さん、グッジョブ☆)ショーン・ビーンが演じた王様について書きますが、王様の運命に関するネタバレになると思いますので、忌避の方はご注意ください。
ショーン・ビーンという(ある程度の)ビッグ・ネームを配しておきながら、映画の前半中盤後半を通して(ということは映画のほとんど大部分の時間)、王様の出番が全くないのですね。王様なんか存在自体まるまるカットされてもなんの不思議もない端役ではありますが、わざわざショーン・ビーンを起用しておいてそれはナイ。そこで自ずと観客は考える。存在は言及されるも姿を見せないキャラクターがこの映画にはふたつある。それはキングとビーストだ。だとすると、1足す1が2になる原理で、ビーストっつーのがキングなんだろうなぁ、王様、うっかり女王の魔法でビーストに変えられちゃったんだろうなぁ。
というわけで(少なくともショーン・ビーンのファンにとっては)ビーストがキングだということは自明の理でサプライズではありませんから、うんと早い段階から、興味は一体キングがどんなビーストに変身させられちゃってるのかしらというそっちの方に傾きます。ウルフマンのベニチオ・デル・トロみたいなものすごい特殊メイクが見られたりするのかしら。わくわく。
だけど実際に現れたビーストは、ネバーエンディングストーリーのファルコンみたいな愛らしいドラゴンでございましたよ。さすがショーンクオリティ。なるほど、あのキングが変身するならビーストっつったってこうなるだろうよなぁ、と納得納得。それにしてもかわいいドラゴンだね。キャラクターグッズがあるならほしくなるぐらいの勢い。
そして女王の魔法が解け、人間の姿を取り戻したキングは、成長した愛娘と再会して、ひたすらポカンとしていらっさる。おや、おまえ、いつのまにこんなに大きくなったんだ?
キング、ご冗談を。あなたがうっかりビーストなんかにさせられちゃったから、今まで長い長い時間、あなたを敬愛していた国民はさんざん苦しめられてきたんですよ? そればかりか、あなたの愛娘にいたっては、危うく殺されるところだったと言うのに、おやいつのまになんて、ボケてんじゃねーよ、普通ならカカト落としくらわされても文句は言えないところですが、スノーホワイトは即座に、お父様! とひしと抱きつく。
それが許されるのがショーン・ビーンのキャラクターなんですねぇ。だって、わかるもん、このパパキングがどれだけスノーホワイトをかわいがって育ててきたか。たとえ何年もの空白があろうと、娘がそんな父親を恨むわけなんかないということが。そしてこんなパパの娘だから、スノーホワイトもあんなキャラクターに育ったんだなぁ、とこれまた大納得ですよ。さすがショーンクオリティ。
それにしてもおっとりと品のある大変よさげな王様。今後末永く、王国に栄えあらんことを☆
・白雪姫と鏡の女王@ぴあ映画生活
6月の『スノーホワイト』のシャーリーズ・セロンに続き、こちらはジュリア・ロバーツが鏡の女王を演じる白雪姫。ターセム・シン監督……っていうか、監督、名前の表記が変わったのかしら、これからはターセム・シン・ダンドワール監督って呼ばなきゃいけないことになったのかしら、シンって苗字だと思ってたけど、ちがったのかしら、ダンドワールさんと結婚でもしたのかしら、そんなのどうでもいいことかしら、ちょっとわたしうるさかったかしら、ごめんなさい。
そうは言ってもこの映画、ターセム・シン監督の映画というよりもはや、石岡瑛子さんの映画であると言うべきかも。衣装が凄い。衣装がステキ。衣装が至福。この衣装を観られただけでもよしとすべき。もうほかになにもいらない。大変残念なことに、この映画が石岡さんの遺作となってしまわれたそうです。今まで様々な映画に於いてすばらしい衣装の数々でわたしたちの目を楽しませてくださって、ほんとうにどうもありがとうございました。心からのご冥福をお祈り申し上げます。
正統的ファンタジー・アドベンチャーだったセロン版と比して、こちらは最初からコメディを狙ったライト感覚の御伽噺として作られているようですが、監督がターセム・“ビジュアリスト”・シン監督であり、中心となるのが石岡瑛子さんの衣装であることからも瞭然であるように、映像表現の面白さということに関しては、こちらの映画に一日の長があるようです。頑張ってお金かけて凝って作ってる割には、どっかで観たような映像ばっかりだったセロン版とは一味違う、シン監督にしか描けないイメージの豊かさ、というのがあって、やはり目にも心にも楽しい。
竹馬に乗って暗躍する小人たちのカーニバルチックなアクション、一種独特な魔法の鏡の世界、鏡の魔女がくりだすデストロイヤーの操り人形などなど、衣装以外にも楽しい映像が盛りだくさん。そんな中で、お城の造形が世にも醜悪だったのはわざとかしら。いまだかつてあれほど醜いお城は観た事がないです。おかげで、これまたとっても印象的ではありましたが。
幼い頃に父親である国王を失ったスノーホワイト(リリー・コリンズ)は、意地悪な継母の女王(ジュリア・ロバーツ)によって、18歳となる今日まで、お城の塔に幽閉されてきた。女王はとんだ浪費家で、国家財源を食い潰し、増税に告ぐ増税で国民生活は破綻すれすれ。そんな王国に、冒険を求めて裕福な隣国の王子(アーミー・ハマー)がやって来た。本来なら王女の婿さん候補の好青年、しかし女王は金蔓である王子と自ら結婚することを画策し、侍従長のブライトン(ネイサン・レイン)にスノーホワイトの暗殺を命じる。
継子イジメという陰惨なモチーフは変わらぬながら、ジュリア・ロバーツにしてもネイサン・レインにしても、誇張されたコミカルな演技はお手の物、堂に入った挙措も台詞まわしも、まっこと安心して楽しめる匠の技、お見事であります。そして苛められる方のリリー・コリンズも、あっけらかんとしているというか悲壮感がないというか、なんだか図太い感じが大正解なのです。このお姫様ってば、すくすく屈託なく育っちゃって、ほんとにかわいいったらありゃしない☆
屈託のないスノーホワイトは、小人たちの指導の下、しっかり戦闘訓練を積んで闘える女に成長していくし、王子様にキスをしかけるのも自分からだし、魔女の毒リンゴなんかにゃ惑わされもしないんだけど、かといってふてぶてしい印象はなく、やっぱり初々しくてかわいらしいのだから、リリー・コリンズ、拾い物だね。
しかし一番の収穫はなんといってもアーミー・ハマーの王子様でしょう。このひと、コメディもかなりいけます。屈辱的な情況(っていうか、要するにこっぱずかしいシチュエーション)を演じて「痛々しい」と感じさせずにちゃんと「滑稽だ」と感じさせることができるというのはコメディを演じる上で不可欠の才能。アーミー・ハマーは大丈夫。サルマタ(?)いっちょがちゃんとおかしい。この美貌にしてこのコメディセンスがあれば、今後ラブコメ方面でひっぱりだこになるのはまちがいなしですね。ヒュー・グラントの後を継ぐのはハマーかしら。
ラストを締めくくるマサラダンスも楽しかったです。やっぱ、ターセム・シン監督はインド系のひとだものね。だけどひとつだけ注文をつけるとしたら、確かにリリー・コリンズのダンスはかわいらしいけど、でもやっぱマサラダンスなんですもん、ヒロインだけに踊らせといちゃだめよ、相手役も踊らなきゃ、そしてねっとりと熱く見つめあわなきゃ、そしてそしていよいよキスという瞬間にプイと顔を背ける演出がなきゃ。
最後に、この映画でジュリア・ロバーツの鏡の女王に誑かされる王様を演じたのは、ショーン・ビーンなんですが、ショーン・ビーンがこの映画で王様を演じるという情報は、結構逸早く伝わっていたと思います。少なくともわたしの認識では、この映画は「ショーンの新作(でもどうせまたカメオ)」でありましたよ。
以下、にっこりかわゆい王様の画像をはさんで(黄色いローブがとってもお似合い☆、石岡瑛子さん、グッジョブ☆)ショーン・ビーンが演じた王様について書きますが、王様の運命に関するネタバレになると思いますので、忌避の方はご注意ください。
ショーン・ビーンという(ある程度の)ビッグ・ネームを配しておきながら、映画の前半中盤後半を通して(ということは映画のほとんど大部分の時間)、王様の出番が全くないのですね。王様なんか存在自体まるまるカットされてもなんの不思議もない端役ではありますが、わざわざショーン・ビーンを起用しておいてそれはナイ。そこで自ずと観客は考える。存在は言及されるも姿を見せないキャラクターがこの映画にはふたつある。それはキングとビーストだ。だとすると、1足す1が2になる原理で、ビーストっつーのがキングなんだろうなぁ、王様、うっかり女王の魔法でビーストに変えられちゃったんだろうなぁ。
というわけで(少なくともショーン・ビーンのファンにとっては)ビーストがキングだということは自明の理でサプライズではありませんから、うんと早い段階から、興味は一体キングがどんなビーストに変身させられちゃってるのかしらというそっちの方に傾きます。ウルフマンのベニチオ・デル・トロみたいなものすごい特殊メイクが見られたりするのかしら。わくわく。
だけど実際に現れたビーストは、ネバーエンディングストーリーのファルコンみたいな愛らしいドラゴンでございましたよ。さすがショーンクオリティ。なるほど、あのキングが変身するならビーストっつったってこうなるだろうよなぁ、と納得納得。それにしてもかわいいドラゴンだね。キャラクターグッズがあるならほしくなるぐらいの勢い。
そして女王の魔法が解け、人間の姿を取り戻したキングは、成長した愛娘と再会して、ひたすらポカンとしていらっさる。おや、おまえ、いつのまにこんなに大きくなったんだ?
キング、ご冗談を。あなたがうっかりビーストなんかにさせられちゃったから、今まで長い長い時間、あなたを敬愛していた国民はさんざん苦しめられてきたんですよ? そればかりか、あなたの愛娘にいたっては、危うく殺されるところだったと言うのに、おやいつのまになんて、ボケてんじゃねーよ、普通ならカカト落としくらわされても文句は言えないところですが、スノーホワイトは即座に、お父様! とひしと抱きつく。
それが許されるのがショーン・ビーンのキャラクターなんですねぇ。だって、わかるもん、このパパキングがどれだけスノーホワイトをかわいがって育ててきたか。たとえ何年もの空白があろうと、娘がそんな父親を恨むわけなんかないということが。そしてこんなパパの娘だから、スノーホワイトもあんなキャラクターに育ったんだなぁ、とこれまた大納得ですよ。さすがショーンクオリティ。
それにしてもおっとりと品のある大変よさげな王様。今後末永く、王国に栄えあらんことを☆
・白雪姫と鏡の女王@ぴあ映画生活
by shirakian
| 2012-09-25 18:50
| 映画さ行