2012年 08月 19日
プロメテウス
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★ネタバレ注意★
エイリアン・シリーズのプリクエール製作が始動!
しかも監督はリドリー・スコット!
この第一報に触れたときのトキメキは、譬える言葉もありません。詳細な情報が出てくるのを、赤い鼻緒のじょじょはいたあるきはじめたみいちゃんみたく、一日千秋の思いで待ちました。そして観たトレイラー。
ん?
エイリアンのエの字も言わないんですけど。
人類の最大の謎、それは《人類の起源》、とか、エイリアン・シリーズとはおよそ関係のなさそうなこと言ってるんですけど。
頑なに正体を隠した姑息な予告編。ここには、隠さねばならない何かがある。観客を騙して劇場に誘い込もうという邪悪な意図が垣間見える……。
2089年、エイリアン・シリーズお馴染みの悪役、「会社」ことウェイランド社は、世界各地の古代遺跡で発見された星座標をもとに、人類の起源を探るべく、宇宙船プロメテウス号を発進させた。訪れた惑星には、明らかに人造と見られる建造物があり、科学者一行が探査に入ったところ、2000年前に死んだ異星人(これをエンジニアと称します)の死体と、得体の知れないポッド状の物が発見された。持ち帰った死体をチェックしたところ、なんとそのDNAは人類のそれと完全に一致したのである。果たしてエンジニアと人類との関係は? そして謎のポッドの正体とは?
えっと、ここでプロメテウス号が訪れた惑星がエイリアン1で訪れたのと同じ惑星だったら、整合性があってすっきりしたのかな、とも思いますが、どうやら別の惑星であったらしいです。エイリアン1の惑星っていうのは、自分たちが開発した生物兵器(すなわちエイリアン)を運搬していたエンジニアたちが、うっかり制御をしくじって墜落しちゃったその事故現場だったわけですが、こちらの惑星は、その生物兵器を量産するための工場(?)だったっぽいです。こっちでもやっぱり、エンジニアたちはうっかりバイオハザードを引き起こして、飼い犬に手を噛まれて(ほぼ)全滅。プロメテウス号の乗員が訪れたのは、その跡地だった模様。
エンジニアさんたちって、ほんとにうっかりやさんですね。かれらが人類を創っちまったのも、どうやらうっかりの結果だったみたいですよ。
そのうっかり星人(違)の星を訪れたメンバーですが、まず、探査行のきっかけとなった星座標を発見し、研究チームのリーダー格を勤めたエリザベス・ショウにノオミ・ラパス、公私ともにそのパートナーであるチャーリー・ホロウェイにローガン・マーシャル=グリーン、会社側代表メレディス・ヴィッカーズにシャーリーズ・セロン、宇宙船プロメテウス号の船長ヤネックにイドリス・エルバ、エイリアン・シリーズの「ロボット枠」デヴィッドにマイケル・ファスベンダーという布陣。あとキャスト表にガイ・ピアースの名前が見えるんだけど、え? ピアースどこ? と思ったら、かれの役柄はウェイランド社社長のピーター・ウェイランド。棺桶に腰のあたりまでつっこんだ死にかけの老人なんである。半妖怪レベルの特殊メイクで顔なんかわかりません。な、なんでこんな役をピアースが(汗)?
最初になんだか釈然としないのがノオミ・ラバスのキャラクターです。全く未知の惑星を探査しようとしているというのに、会社が雇った保安要員に対して「学術調査なのに武器を携行するなんておかしいわ」と能天気な発言をするわ、そもそもだれが何の目的で残したものかもわからない星座標を「わたしたちを人類創造の神秘に導く『招待状』よ!」と(根拠もなく)信じこむわと、なにかとスイーツな思考の持ち主なので、若干イライラします。アクションものの女性キャラとしては珍しいタイプじゃないけど、リプリーさんのご先祖(違)がこんなひとだなんてガッカリすぎる。
しかもビジュアルが大変残念。背低いし、脚短いし、顔地味だし。これで彼女が紅一点ならここまで残念には思わなかったかもしれませんが、なにせ共演がシャーリーズ・セロン。この映画に於いても(当然いつものごとく)彼女は凛然と美しい。こんなセロンが隣にいるというのに主演がラバスと言われても。
釈然としない観客を前に、展開するストーリーの凡庸さ。所詮フォーマットの決まった話である以上、ある程度展開に予想はついてしまうものですが、その上で緊張感を持続させるのがプロの技。リドスコ監督はエイリアン1では見事にそれをやってのけてくれたのに。
漫然と提示されるだけでまともに回収されない「謎」は、続編を睨んでの布石なのかもしれませんが、続編があろうがなかろうが独立した一個の作品として世に出した以上はそこで完結させるべき。続編へひっぱる新たな謎は、本編での謎を見事回収しきった後に改めて提示すべき。なんかもう、エンジニアによるDNA改変の試み(=エイリアン製造の試み)に関する描写って子どもの落書きみたいにグダグダだよ……。
しかも、このお話のエイリアン(未満)は、攻撃してこない敵。こちらから出向いていかない限り、無害なんです。連れて来なけりゃいいんです。ムリとわかれば逃げればいいだけの話なんです。危ない情況に陥ってしまったのは、単に、探検隊なら普通にするべき用心を怠って、未知の惑星であっさりヘルメットを取るといった類の素人くさい失態を重ねた結果なんです。なので、絶体絶命の絶望感や緊迫感など抱きようがないんです。ドキドキもしない。ハラハラもしない。ましてやワクワクなんかどこにもない。
結果的にプロメテウス号が特攻をしかけるハメになったのは、全滅したはずのエンジニアの最後のひとりが生き残っていたことが判明したからですが、それにしたって相手はひとり、それなりに武装しているはずの船、シャーリーズ・ゼロンや船長さんなど、それなりに闘えそうな生き残りのメンツ。闘って潰して凱旋帰国するがよろし。いたずらに悲壮感を煽る必要があったとも思えません。ましてやシャーリーズにあんな死に方させてんぢゃねーよ(怒)。
タイトルのプロメテウスというのは、自らも同じ神族の身でありながらゼウスに逆らい人間に益をなそうとしたがために残酷な罰を与えられたプロメテウスそのひとを、人類のメタファーとしたものかと思われますが、神(創造主=うっかり星人)の意図を考えず、自ら神に近づいていった人類は、グリズリーに向かって「クマさん、かわい~☆」と手を差し出してバックリ喰われる都会人のようなもの。しかもその人類は、神を真似て自らも(擬似)生命を創りだしてしまった。最後のエンジニアが、デヴィッドに話かけられた途端ぶちきれてかれの首をチョンパ! したのは、そういうことです。不遜に対して下された鉄槌。神を真似る者への罰です。
この話のキモは、結局 ” I choose to believe.” ということなんだと思う。
このフレーズは大事なので、劇中二度繰り返されています。一度はもちろんエリザベス自身の所信表明として、いまひとつは、デヴィッドが盗み見たコールドスリープ中のエリザベスの夢の中で、彼女の父親が言った台詞として。
エリザベスはつまり、何らかの根拠があってエンジニアの残したメッセージ(であったかどうかすら実際には怪しい)を「招待状」であると「判断」したのではなく、単にそう信じることを選んだが故にそうに違いないと「妄信」したのです。
クマはかわいいと信じることを選んだ彼女は、グリズリーに向かって手を差し出す。かわいい(と自分が信じた)クマが、自分を襲うことなどありえない(と自分が信じた)のだから。
ということはやっぱり、一見肯定的に見えるこのメッセージって、やっぱり監督の皮肉なんだろうな……。全ての紛争は妄信によって始まり、妄信が推進力となる。
わたしにとってはあんまり楽しみどころのない作品となってしまいましたが、そうは言ってもマイケル・ファスベンダーのロボットは大変すばらしかったです☆ デヴィッドはね、『アラビアのロレンス』が大好きで、ピーター・オトゥールの髪型まねっこしたりするのよ。どんだけ眼福なの(>_<)。
ロボットと言うものは、アシモフがロビーを描いた昔から、無邪気と冷酷の狭間でゆれるもの。その人間ならざる者を演じて、ファスベンダーがまたひとつ、ちがった引き出しを持っていることを見せてくれました。私利私欲を持たない者の無邪気。奉仕する者の謙譲。感情を持たない者の冷酷。感情を持たないはずのかれが、それでも抑え切れなかった好奇心。
好奇心はネコを殺し、首だけになった美しいロボットを星々の彼方まで旅立たせる。
続編はほんとに作られるのでしょうか?
ノオミ・ラパスは第二のシガニー・ウィーバーになれるのか?
・プロメテウス@ぴあ映画生活
エイリアン・シリーズのプリクエール製作が始動!
しかも監督はリドリー・スコット!
この第一報に触れたときのトキメキは、譬える言葉もありません。詳細な情報が出てくるのを、赤い鼻緒のじょじょはいたあるきはじめたみいちゃんみたく、一日千秋の思いで待ちました。そして観たトレイラー。
ん?
エイリアンのエの字も言わないんですけど。
人類の最大の謎、それは《人類の起源》、とか、エイリアン・シリーズとはおよそ関係のなさそうなこと言ってるんですけど。
頑なに正体を隠した姑息な予告編。ここには、隠さねばならない何かがある。観客を騙して劇場に誘い込もうという邪悪な意図が垣間見える……。
2089年、エイリアン・シリーズお馴染みの悪役、「会社」ことウェイランド社は、世界各地の古代遺跡で発見された星座標をもとに、人類の起源を探るべく、宇宙船プロメテウス号を発進させた。訪れた惑星には、明らかに人造と見られる建造物があり、科学者一行が探査に入ったところ、2000年前に死んだ異星人(これをエンジニアと称します)の死体と、得体の知れないポッド状の物が発見された。持ち帰った死体をチェックしたところ、なんとそのDNAは人類のそれと完全に一致したのである。果たしてエンジニアと人類との関係は? そして謎のポッドの正体とは?
えっと、ここでプロメテウス号が訪れた惑星がエイリアン1で訪れたのと同じ惑星だったら、整合性があってすっきりしたのかな、とも思いますが、どうやら別の惑星であったらしいです。エイリアン1の惑星っていうのは、自分たちが開発した生物兵器(すなわちエイリアン)を運搬していたエンジニアたちが、うっかり制御をしくじって墜落しちゃったその事故現場だったわけですが、こちらの惑星は、その生物兵器を量産するための工場(?)だったっぽいです。こっちでもやっぱり、エンジニアたちはうっかりバイオハザードを引き起こして、飼い犬に手を噛まれて(ほぼ)全滅。プロメテウス号の乗員が訪れたのは、その跡地だった模様。
エンジニアさんたちって、ほんとにうっかりやさんですね。かれらが人類を創っちまったのも、どうやらうっかりの結果だったみたいですよ。
そのうっかり星人(違)の星を訪れたメンバーですが、まず、探査行のきっかけとなった星座標を発見し、研究チームのリーダー格を勤めたエリザベス・ショウにノオミ・ラパス、公私ともにそのパートナーであるチャーリー・ホロウェイにローガン・マーシャル=グリーン、会社側代表メレディス・ヴィッカーズにシャーリーズ・セロン、宇宙船プロメテウス号の船長ヤネックにイドリス・エルバ、エイリアン・シリーズの「ロボット枠」デヴィッドにマイケル・ファスベンダーという布陣。あとキャスト表にガイ・ピアースの名前が見えるんだけど、え? ピアースどこ? と思ったら、かれの役柄はウェイランド社社長のピーター・ウェイランド。棺桶に腰のあたりまでつっこんだ死にかけの老人なんである。半妖怪レベルの特殊メイクで顔なんかわかりません。な、なんでこんな役をピアースが(汗)?
最初になんだか釈然としないのがノオミ・ラバスのキャラクターです。全く未知の惑星を探査しようとしているというのに、会社が雇った保安要員に対して「学術調査なのに武器を携行するなんておかしいわ」と能天気な発言をするわ、そもそもだれが何の目的で残したものかもわからない星座標を「わたしたちを人類創造の神秘に導く『招待状』よ!」と(根拠もなく)信じこむわと、なにかとスイーツな思考の持ち主なので、若干イライラします。アクションものの女性キャラとしては珍しいタイプじゃないけど、リプリーさんのご先祖(違)がこんなひとだなんてガッカリすぎる。
しかもビジュアルが大変残念。背低いし、脚短いし、顔地味だし。これで彼女が紅一点ならここまで残念には思わなかったかもしれませんが、なにせ共演がシャーリーズ・セロン。この映画に於いても(当然いつものごとく)彼女は凛然と美しい。こんなセロンが隣にいるというのに主演がラバスと言われても。
釈然としない観客を前に、展開するストーリーの凡庸さ。所詮フォーマットの決まった話である以上、ある程度展開に予想はついてしまうものですが、その上で緊張感を持続させるのがプロの技。リドスコ監督はエイリアン1では見事にそれをやってのけてくれたのに。
漫然と提示されるだけでまともに回収されない「謎」は、続編を睨んでの布石なのかもしれませんが、続編があろうがなかろうが独立した一個の作品として世に出した以上はそこで完結させるべき。続編へひっぱる新たな謎は、本編での謎を見事回収しきった後に改めて提示すべき。なんかもう、エンジニアによるDNA改変の試み(=エイリアン製造の試み)に関する描写って子どもの落書きみたいにグダグダだよ……。
しかも、このお話のエイリアン(未満)は、攻撃してこない敵。こちらから出向いていかない限り、無害なんです。連れて来なけりゃいいんです。ムリとわかれば逃げればいいだけの話なんです。危ない情況に陥ってしまったのは、単に、探検隊なら普通にするべき用心を怠って、未知の惑星であっさりヘルメットを取るといった類の素人くさい失態を重ねた結果なんです。なので、絶体絶命の絶望感や緊迫感など抱きようがないんです。ドキドキもしない。ハラハラもしない。ましてやワクワクなんかどこにもない。
結果的にプロメテウス号が特攻をしかけるハメになったのは、全滅したはずのエンジニアの最後のひとりが生き残っていたことが判明したからですが、それにしたって相手はひとり、それなりに武装しているはずの船、シャーリーズ・ゼロンや船長さんなど、それなりに闘えそうな生き残りのメンツ。闘って潰して凱旋帰国するがよろし。いたずらに悲壮感を煽る必要があったとも思えません。ましてやシャーリーズにあんな死に方させてんぢゃねーよ(怒)。
タイトルのプロメテウスというのは、自らも同じ神族の身でありながらゼウスに逆らい人間に益をなそうとしたがために残酷な罰を与えられたプロメテウスそのひとを、人類のメタファーとしたものかと思われますが、神(創造主=うっかり星人)の意図を考えず、自ら神に近づいていった人類は、グリズリーに向かって「クマさん、かわい~☆」と手を差し出してバックリ喰われる都会人のようなもの。しかもその人類は、神を真似て自らも(擬似)生命を創りだしてしまった。最後のエンジニアが、デヴィッドに話かけられた途端ぶちきれてかれの首をチョンパ! したのは、そういうことです。不遜に対して下された鉄槌。神を真似る者への罰です。
この話のキモは、結局 ” I choose to believe.” ということなんだと思う。
このフレーズは大事なので、劇中二度繰り返されています。一度はもちろんエリザベス自身の所信表明として、いまひとつは、デヴィッドが盗み見たコールドスリープ中のエリザベスの夢の中で、彼女の父親が言った台詞として。
エリザベスはつまり、何らかの根拠があってエンジニアの残したメッセージ(であったかどうかすら実際には怪しい)を「招待状」であると「判断」したのではなく、単にそう信じることを選んだが故にそうに違いないと「妄信」したのです。
クマはかわいいと信じることを選んだ彼女は、グリズリーに向かって手を差し出す。かわいい(と自分が信じた)クマが、自分を襲うことなどありえない(と自分が信じた)のだから。
ということはやっぱり、一見肯定的に見えるこのメッセージって、やっぱり監督の皮肉なんだろうな……。全ての紛争は妄信によって始まり、妄信が推進力となる。
わたしにとってはあんまり楽しみどころのない作品となってしまいましたが、そうは言ってもマイケル・ファスベンダーのロボットは大変すばらしかったです☆ デヴィッドはね、『アラビアのロレンス』が大好きで、ピーター・オトゥールの髪型まねっこしたりするのよ。どんだけ眼福なの(>_<)。
ロボットと言うものは、アシモフがロビーを描いた昔から、無邪気と冷酷の狭間でゆれるもの。その人間ならざる者を演じて、ファスベンダーがまたひとつ、ちがった引き出しを持っていることを見せてくれました。私利私欲を持たない者の無邪気。奉仕する者の謙譲。感情を持たない者の冷酷。感情を持たないはずのかれが、それでも抑え切れなかった好奇心。
好奇心はネコを殺し、首だけになった美しいロボットを星々の彼方まで旅立たせる。
続編はほんとに作られるのでしょうか?
ノオミ・ラパスは第二のシガニー・ウィーバーになれるのか?
・プロメテウス@ぴあ映画生活
by shirakian
| 2012-08-19 20:09
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