2012年 06月 17日
スノーホワイト
|
★ネタバレ注意★
白雪姫生誕百周年を記念して(嘘)、今年は白雪姫の映画が二本も封切られる模様です。二作に共通しているのは、白雪姫よりも悪い女王のキャスティングが注目を集めていることで、もう一本の “Mirror Mirror”で悪い女王を演じてるのはジュリア・ロバーツですが、こちらの女王様はシャーリーズ・セロンです。まっこと、世界で一番美しいのはだぁれ、と問うにふさわしい女優さんであろうかと思います。
ジュリア・ロバーツ版はロマンチック・コメディのようですが、こちらは堂々たるアクション・ファンタジー巨編。原題が “SNOW WHITE AND THE HUNTSMAN” であることからも伺われるように、原作では一脇役に過ぎなかったはずの狩人の存在が大きな比重を占めております。っていうか、白雪姫と狩人ってイーブン? って期待しちゃうタイトルだよね。だって狩人、クリス・ヘムズワースなんだもん☆ はりきって観に行きましたとも。
結論から先に言うと、狩人エリックを演じたオーストラリアの秋田犬こと(だれが言ってる)クリス・ヘムズワース、愛妻を亡くしてやさぐれている男という設定だったので、笑顔がほとんど観られなくて大変残念でした。きみはにっこり笑ってナンボだろうに(アイドルか)。
そしてスノーホワイトを演じるのがクリステン・スチュワート。……このキャスティングってどうなのかな。確かにクリステン・スチュワートは存在感も演技力もあるよい女優さんだと思いますけれど、絶世の美女というのは違うような気がする。スチュワートとセロンを比べれば、明らかにセロンの方が美人だよね(汗)? 顔立ちのみならず、指の先まで気配りの行き届いたモデル出身のセロンの美しい立ち姿に比べて、訓練も矯正も受けたことのない良くも悪くもナチュラルなスチュワートの立ち姿は、いかにも野暮ったくて到底お姫様には見えません。いつもポカンと口を開けているのもNGだ。
そして更に、この映画のオリジナル設定である、お姫様と王子様(仮)と狩人の三角関係(?)っていうのも、女子高生とヴァンパイアと狼男の三角関係の二番煎じみたいでなんかヤな感じ。スノーホワイトが毒リンゴを食べて倒れたシーンの後で、王子様(じゃなくて侯爵の息子なんだけど)がキスしても蘇らなかったのに、狩人がキスしたら蘇った、っていうのはやっぱ笑うとこなのかなぁ(汗)?
それはさておき、物語の大筋はご存知の通り。
お妃を亡くした王様、美しい後添いを娶ったならば、実は彼女は怖い魔女。婚礼の当日に王様を暗殺して王座に君臨し、王様の一粒種、スノーホワイトをお城の塔に幽閉してしまう。それから7年。魔女は、永遠の若さと美貌を確保するため若い娘のエキスを吸いまくっていたんだけれど、どうにもそれでは追いつかない。魔法の鏡の(余計な)助言により、成長したスノーホワイトの心臓を食べれば我が身が永遠に安泰であることを知った魔女は、スノーホワイトの殺害を目論むが。
というわけで森へ逃げた白雪姫を狩人が助け、7人(最初は8人いたのが一人死亡して脱落)の小人が守り、という展開ではあるのですが、原作と決定的に違うのは、こちらのスノーホワイトは王子様が現れるのをただ座して待っているだけのお姫様ではなく、自ら甲冑をまとい、軍隊を率いて魔女に戦いを挑む闘うヒロインであるということです。その設定自体はもはや目新しくはないのだけれども。
壮大なスケールの美しい映像が大変見事な本作ですが、残念なことに、なんだかどこにもオリジナリティが感じられない絵作りです。どの瞬間を切り取っても別の映画で観たような絵ばっかり。特にだれもが思うのが『ロード・オブ・ザ・リング』との類似でしょう。白雪姫が王子(仮)と狩人と共にホビット ドワーフたちとパーティを組んで尾根を越えて行くシーンなんて、もうどっちのシーンだか見分けがつかないくらいのソックリっぷり。こうなるとむしろ笑ってしまう。ニュージーランドでロケしたの?
ストーリーについても、せっかく一軍を率いて闘うお姫様の物語なのに、スノーホワイトが不遇の歳月にも臥薪嘗胆、決起に備えて日々精進怠らず、というような描写が全くなく、また、その決起の際にも、非戦派を説得しての乾坤一擲の決起であったのに、説得のための根拠が皆無であるため、虚しい演説にのみ終始している大変残念な印象。
そしてファンタジーとしての側面を観れば、せっかくスノーホワイトこそ天然自然の理に反する魔女の所業と対立する自然そのものを体現するものなのだ、という「発見」が描かれていたにもかかわらず、その後の戦闘(=問題解決のための試み)のシーンでその貴重な設定が全く生かされておらず、ごく平凡な戦闘シーンになってしまっていたのもまた大変残念なことでした。妖精とかシシガミ 白鹿とかトロールとか湖の村とか、思わせぶりに色々出てきた割には何にもないのね。
一方、よかったのはやはりシャーリーズ・セロン。世界一の美女を演じて違和感のないその美貌も素晴らしいですが、何より一番よかったのは、怖い魔女が美貌に執着するその理由、というのがしっかりと描かれていたことです。美しく生まれついたばっかりに、男の欲望に踏みにじられて不幸な運命を辿ることになったラヴェンナ。男性的暴力が支配するこの世界で彼女が生き延びるには、若さと美貌を武器にするしかなかった。それを思うと、若さが失われていくのを自覚する彼女の焦りと恐慌が、一種の共感を持って胸に迫り、単なる御伽噺のワルモノという以上の存在感を与えているのです。
あとそれと、7人の小人がよかったなぁ。だってキャストが面白いのよ。レイ・ウィンストンとかニック・フロストとか、妥協のない顔ぶれ。まさかレイ・ウィンストンが白雪姫の小人の役を演じる日が来ようとは(笑)。いっそハイホーを歌ってくれていたらもっとよかったのに。
この映画、続編の製作が決定しているそうです。白雪姫的ストーリーは完結してしまったので、全く新たなオリジナルストーリーとなるのでしょうが、一体どういう風に展開するのでしょうね? クリス・ヘムズワースが続投するなら観ちゃうだろうなとは思うものの、シャーリーズ・セロンの出番がないなら、かなり意欲が削がれちゃいますね。
・スノーホワイト@ぴあ映画生活
白雪姫生誕百周年を記念して(嘘)、今年は白雪姫の映画が二本も封切られる模様です。二作に共通しているのは、白雪姫よりも悪い女王のキャスティングが注目を集めていることで、もう一本の “Mirror Mirror”で悪い女王を演じてるのはジュリア・ロバーツですが、こちらの女王様はシャーリーズ・セロンです。まっこと、世界で一番美しいのはだぁれ、と問うにふさわしい女優さんであろうかと思います。
ジュリア・ロバーツ版はロマンチック・コメディのようですが、こちらは堂々たるアクション・ファンタジー巨編。原題が “SNOW WHITE AND THE HUNTSMAN” であることからも伺われるように、原作では一脇役に過ぎなかったはずの狩人の存在が大きな比重を占めております。っていうか、白雪姫と狩人ってイーブン? って期待しちゃうタイトルだよね。だって狩人、クリス・ヘムズワースなんだもん☆ はりきって観に行きましたとも。
結論から先に言うと、狩人エリックを演じたオーストラリアの秋田犬こと(だれが言ってる)クリス・ヘムズワース、愛妻を亡くしてやさぐれている男という設定だったので、笑顔がほとんど観られなくて大変残念でした。きみはにっこり笑ってナンボだろうに(アイドルか)。
そしてスノーホワイトを演じるのがクリステン・スチュワート。……このキャスティングってどうなのかな。確かにクリステン・スチュワートは存在感も演技力もあるよい女優さんだと思いますけれど、絶世の美女というのは違うような気がする。スチュワートとセロンを比べれば、明らかにセロンの方が美人だよね(汗)? 顔立ちのみならず、指の先まで気配りの行き届いたモデル出身のセロンの美しい立ち姿に比べて、訓練も矯正も受けたことのない良くも悪くもナチュラルなスチュワートの立ち姿は、いかにも野暮ったくて到底お姫様には見えません。いつもポカンと口を開けているのもNGだ。
そして更に、この映画のオリジナル設定である、お姫様と王子様(仮)と狩人の三角関係(?)っていうのも、女子高生とヴァンパイアと狼男の三角関係の二番煎じみたいでなんかヤな感じ。スノーホワイトが毒リンゴを食べて倒れたシーンの後で、王子様(じゃなくて侯爵の息子なんだけど)がキスしても蘇らなかったのに、狩人がキスしたら蘇った、っていうのはやっぱ笑うとこなのかなぁ(汗)?
それはさておき、物語の大筋はご存知の通り。
お妃を亡くした王様、美しい後添いを娶ったならば、実は彼女は怖い魔女。婚礼の当日に王様を暗殺して王座に君臨し、王様の一粒種、スノーホワイトをお城の塔に幽閉してしまう。それから7年。魔女は、永遠の若さと美貌を確保するため若い娘のエキスを吸いまくっていたんだけれど、どうにもそれでは追いつかない。魔法の鏡の(余計な)助言により、成長したスノーホワイトの心臓を食べれば我が身が永遠に安泰であることを知った魔女は、スノーホワイトの殺害を目論むが。
というわけで森へ逃げた白雪姫を狩人が助け、7人(最初は8人いたのが一人死亡して脱落)の小人が守り、という展開ではあるのですが、原作と決定的に違うのは、こちらのスノーホワイトは王子様が現れるのをただ座して待っているだけのお姫様ではなく、自ら甲冑をまとい、軍隊を率いて魔女に戦いを挑む闘うヒロインであるということです。その設定自体はもはや目新しくはないのだけれども。
壮大なスケールの美しい映像が大変見事な本作ですが、残念なことに、なんだかどこにもオリジナリティが感じられない絵作りです。どの瞬間を切り取っても別の映画で観たような絵ばっかり。特にだれもが思うのが『ロード・オブ・ザ・リング』との類似でしょう。白雪姫が王子(仮)と狩人と共に
ストーリーについても、せっかく一軍を率いて闘うお姫様の物語なのに、スノーホワイトが不遇の歳月にも臥薪嘗胆、決起に備えて日々精進怠らず、というような描写が全くなく、また、その決起の際にも、非戦派を説得しての乾坤一擲の決起であったのに、説得のための根拠が皆無であるため、虚しい演説にのみ終始している大変残念な印象。
そしてファンタジーとしての側面を観れば、せっかくスノーホワイトこそ天然自然の理に反する魔女の所業と対立する自然そのものを体現するものなのだ、という「発見」が描かれていたにもかかわらず、その後の戦闘(=問題解決のための試み)のシーンでその貴重な設定が全く生かされておらず、ごく平凡な戦闘シーンになってしまっていたのもまた大変残念なことでした。妖精とか
一方、よかったのはやはりシャーリーズ・セロン。世界一の美女を演じて違和感のないその美貌も素晴らしいですが、何より一番よかったのは、怖い魔女が美貌に執着するその理由、というのがしっかりと描かれていたことです。美しく生まれついたばっかりに、男の欲望に踏みにじられて不幸な運命を辿ることになったラヴェンナ。男性的暴力が支配するこの世界で彼女が生き延びるには、若さと美貌を武器にするしかなかった。それを思うと、若さが失われていくのを自覚する彼女の焦りと恐慌が、一種の共感を持って胸に迫り、単なる御伽噺のワルモノという以上の存在感を与えているのです。
あとそれと、7人の小人がよかったなぁ。だってキャストが面白いのよ。レイ・ウィンストンとかニック・フロストとか、妥協のない顔ぶれ。まさかレイ・ウィンストンが白雪姫の小人の役を演じる日が来ようとは(笑)。いっそハイホーを歌ってくれていたらもっとよかったのに。
この映画、続編の製作が決定しているそうです。白雪姫的ストーリーは完結してしまったので、全く新たなオリジナルストーリーとなるのでしょうが、一体どういう風に展開するのでしょうね? クリス・ヘムズワースが続投するなら観ちゃうだろうなとは思うものの、シャーリーズ・セロンの出番がないなら、かなり意欲が削がれちゃいますね。
・スノーホワイト@ぴあ映画生活
by shirakian
| 2012-06-17 17:31
| 映画さ行