2011年 11月 25日
インモータルズ -神々の戦い-
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★ネタバレ注意★
『落下の王国』のターセム・シン監督の最新作です。
製作には『300』のスタッフが集結!
毒々しいばかりに独創的なビジュアルと、スピーディで残虐なアクションはまさにこのコラボの勝利。そして更にもうひとつ、石岡瑛子による衣装デザインの美しさもあわせて豪華絢爛・錦繍綾羅・華麗奔放、大いに目を楽しませてもらえた111分でした☆
幻想の超古代、ゼウス(ルーク・エヴァンス)率いるギリシャの神々は、天界に於いてタイタン族との戦いに勝利し、かれらを地底深くに封じ込めた。しかし、勝利した神々を崇めない男がいた。病に臥した家族を助けよという祈りを無視されたことに恨みを抱いたハイペリオン(ミッキー・ローク)である。ハイペリオンはタイタン族の封印を解き放つことができる「エピロスの弓」を求めて、ギリシャへの侵攻を開始する。虐げられるギリシャの人々を目の当たりにしつつ、それでも不介入の方針を貫くゼウスを後目に、まんまとエピロスの弓を手に入れたハイペリオンは、ついにタイタン族の封印を解く!
まず目をひくのが、ドラマの始点となる主人公テセウス(ヘンリー・カヴィル)が暮らす寒村のロケーション。海を臨む断崖絶壁、そのギリギリにはりつくように建てられた家々。テセウスの生業は農業らしいのだけど、草木どころか土壌すらない土地。一体人々はどうやって暮らしているのだろう。だけど、花もない緑もない鋭角な岩だけで形作られた風景が、なんとも言えず魅力的。
ヘンリー・カヴィルって、『人生万歳!』で、エヴァン・レイチェル・ウッドと結ばれた完璧なイケメンにして清き心の持ち主という、天文学的奇跡の青年(笑)を演じた役者さんとして記憶に新しいですが、新しいスーパーマンを演じるひとなんだね。なるほど、ほんとに端正な容姿をしていらっさる。人間でありながら、ゼウスに愛され、目をかけられ、一身に期待を集めた後、ついには天界に招じ入れられるというキャラクターを演じて説得力があります。
この映画のゼウスは、自分の子どもたちには、人間界に介入することを厳しく禁じているにもかかわらず、テセウスのことが気になって自分は地上界に降りてきちゃう。自分だけズルイと抗議されれば、仮の姿(ジョン・ハート)をとっているから問題ないもん、とマイルールにも程がある主張。ダブルスタンダードは感心しませんね。
ゼウスを演じたルーク・エヴァンスは、ちょっと老けたジェームズ・マカヴォイという印象の役者さんですが、ゼウスを演じるには線が細い感じ。やっぱ最高神なんだから、も少しカリスマ性のあるひとがほしかったかなぁ、と思います。ショーン・ビーンとかリーアム・ニーソンとか☆
この押しの弱いゼウスのダブルスタンダードは、自分と子どもたちの間だけでなく、子どもたちの間にも適用されちゃう。同じ人間界に介入しても、アレスは一瞬にして焼き殺されてしまうのに、アテネは免除されるとか。そして、一瞬にして神であるアレスを焼き殺すことができるゼウスであるのに、後半のバトルシーンでは、解き放たれたタイタン族相手に相当苦戦している様子。ここでもあの技使えばいいのに。
なので、ラストバトルの描写は理性的には納得いかないのですが、バトルから引き出されるエモーション的には結果オーライという不思議。天空から颯爽と地上に降り立つその姿は神だけにまことに神々しいばかりだというのに、その凛々しい神々が次々と血しぶきをあげてタイタン族に屠られていく姿のたまらない痛ましさ。かれらは本来、こんな地底で血を流して倒れるような存在ではないはずなのに、と胸えぐられる心地がします。それもこれも、映像があまりに美しいから? とにかく半端でない残虐描写が繰り広げられるというのに、血腥さより美しさを感じさせてしまう映像マジック。
でもねー、タイタン族の牢獄を見守る巨像の扱い、あれは残念だったわー。絶対立ち上がって動き出すと思ってたのに、なんだ、やっぱりただの彫像なのか~。せっかく神様が絡んでいるんだから、もっと遊んでよ~(>_<)。しかしこれまたゼウスの矛盾、ああやってタイタン族をやっつけることができるのなら、最初からそうしておけば、こんな事態にはならなかったものを……。
映像とからめて特筆すべきはやはり衣装です。ハイペリオンがかぶる兜は、マイメロディみたいなシルエットでどこかユーモラスなだけに却って恐ろしい。ミッキー・ロークとのマッチングがたまりません。神々の被り物もまた、それぞれに未だかつて見た事のない独創的な造形で、これは、アレだ、ウィリアム王子のロイヤルウェディングで全世界を騒然とさせた、ユージェニー・マウントバッテン=ウィンザーの帽子に匹敵するクオリティと見た。あの造形は見事だ(感心)。
そして更に、夢で未来を予見する巫女たちがまとう、ほんのりエロチックなドレスがすばらしいです。一見清楚ながら、何かの拍子にほの見える絶妙のエロス。これまた絶妙な赤の色味。身につけるフリーダ・ピントの美貌と相まって、いかにも浮世離れした雰囲気を醸しだすことに成功しています。それにしてもフリーダ・ピントという女優さんは瞳が美しい。ほんとに未来が見通せるんじゃないかと思ってしまいます。
しかし何といっても、この映画の一番手柄はミッキー・ロークでしょう。世にも恐ろしいサディスティックな暴君。息をするように暴力を振るい、人々を痛めつけ、虫けらのように殺す。ラストでのテセウスとのガチンコ対決は大迫力です。さすがレスラー。
やることなすこととにかく残虐なんだけど、最高に「閲覧注意」なシーンは、やはりアレですね、「きさまなど子孫が残せぬようにしてやる」グシャッ! のシーンですよね。女のわたしが見ててもひーってなるのに、男性のみなさんは見てるだけで冷や汗が出たのではあるまいか。
映像に比べてストーリーが弱いのは残念でした。弱いというか、むしろ、あるのかないのか、というレベル。ドラマ性がないので、キャラクターの心情描写も生きないし、スティーヴン・ドーフのスタブロスなんかは、うまく使えば人気キャラにすらなれたやも知れぬのに(あのテのアウトロウキャラは、造形に成功すればとても魅力的になる可能性が高い)、うまく物語世界に絡むことに失敗して、清々しく浮いているだけだった印象。肝心のエピロスの弓も、ハンディな大砲ぐらいの威力しかなかったし、使いどころも盛り上げることに失敗した印象。第一、主人公であるはずのテセウスが、このひといなくても物語が成立するなぁ、と観客をして思わせてしまったのは大いなる失点だった鴨。ハイペリオンVSゼウスの物語だったよね、基本は。
・インモータルズ -神々の戦い-@ぴあ映画生活
『落下の王国』のターセム・シン監督の最新作です。
製作には『300』のスタッフが集結!
毒々しいばかりに独創的なビジュアルと、スピーディで残虐なアクションはまさにこのコラボの勝利。そして更にもうひとつ、石岡瑛子による衣装デザインの美しさもあわせて豪華絢爛・錦繍綾羅・華麗奔放、大いに目を楽しませてもらえた111分でした☆
幻想の超古代、ゼウス(ルーク・エヴァンス)率いるギリシャの神々は、天界に於いてタイタン族との戦いに勝利し、かれらを地底深くに封じ込めた。しかし、勝利した神々を崇めない男がいた。病に臥した家族を助けよという祈りを無視されたことに恨みを抱いたハイペリオン(ミッキー・ローク)である。ハイペリオンはタイタン族の封印を解き放つことができる「エピロスの弓」を求めて、ギリシャへの侵攻を開始する。虐げられるギリシャの人々を目の当たりにしつつ、それでも不介入の方針を貫くゼウスを後目に、まんまとエピロスの弓を手に入れたハイペリオンは、ついにタイタン族の封印を解く!
まず目をひくのが、ドラマの始点となる主人公テセウス(ヘンリー・カヴィル)が暮らす寒村のロケーション。海を臨む断崖絶壁、そのギリギリにはりつくように建てられた家々。テセウスの生業は農業らしいのだけど、草木どころか土壌すらない土地。一体人々はどうやって暮らしているのだろう。だけど、花もない緑もない鋭角な岩だけで形作られた風景が、なんとも言えず魅力的。
ヘンリー・カヴィルって、『人生万歳!』で、エヴァン・レイチェル・ウッドと結ばれた完璧なイケメンにして清き心の持ち主という、天文学的奇跡の青年(笑)を演じた役者さんとして記憶に新しいですが、新しいスーパーマンを演じるひとなんだね。なるほど、ほんとに端正な容姿をしていらっさる。人間でありながら、ゼウスに愛され、目をかけられ、一身に期待を集めた後、ついには天界に招じ入れられるというキャラクターを演じて説得力があります。
この映画のゼウスは、自分の子どもたちには、人間界に介入することを厳しく禁じているにもかかわらず、テセウスのことが気になって自分は地上界に降りてきちゃう。自分だけズルイと抗議されれば、仮の姿(ジョン・ハート)をとっているから問題ないもん、とマイルールにも程がある主張。ダブルスタンダードは感心しませんね。
ゼウスを演じたルーク・エヴァンスは、ちょっと老けたジェームズ・マカヴォイという印象の役者さんですが、ゼウスを演じるには線が細い感じ。やっぱ最高神なんだから、も少しカリスマ性のあるひとがほしかったかなぁ、と思います。ショーン・ビーンとかリーアム・ニーソンとか☆
この押しの弱いゼウスのダブルスタンダードは、自分と子どもたちの間だけでなく、子どもたちの間にも適用されちゃう。同じ人間界に介入しても、アレスは一瞬にして焼き殺されてしまうのに、アテネは免除されるとか。そして、一瞬にして神であるアレスを焼き殺すことができるゼウスであるのに、後半のバトルシーンでは、解き放たれたタイタン族相手に相当苦戦している様子。ここでもあの技使えばいいのに。
なので、ラストバトルの描写は理性的には納得いかないのですが、バトルから引き出されるエモーション的には結果オーライという不思議。天空から颯爽と地上に降り立つその姿は神だけにまことに神々しいばかりだというのに、その凛々しい神々が次々と血しぶきをあげてタイタン族に屠られていく姿のたまらない痛ましさ。かれらは本来、こんな地底で血を流して倒れるような存在ではないはずなのに、と胸えぐられる心地がします。それもこれも、映像があまりに美しいから? とにかく半端でない残虐描写が繰り広げられるというのに、血腥さより美しさを感じさせてしまう映像マジック。
でもねー、タイタン族の牢獄を見守る巨像の扱い、あれは残念だったわー。絶対立ち上がって動き出すと思ってたのに、なんだ、やっぱりただの彫像なのか~。せっかく神様が絡んでいるんだから、もっと遊んでよ~(>_<)。しかしこれまたゼウスの矛盾、ああやってタイタン族をやっつけることができるのなら、最初からそうしておけば、こんな事態にはならなかったものを……。
映像とからめて特筆すべきはやはり衣装です。ハイペリオンがかぶる兜は、マイメロディみたいなシルエットでどこかユーモラスなだけに却って恐ろしい。ミッキー・ロークとのマッチングがたまりません。神々の被り物もまた、それぞれに未だかつて見た事のない独創的な造形で、これは、アレだ、ウィリアム王子のロイヤルウェディングで全世界を騒然とさせた、ユージェニー・マウントバッテン=ウィンザーの帽子に匹敵するクオリティと見た。あの造形は見事だ(感心)。
そして更に、夢で未来を予見する巫女たちがまとう、ほんのりエロチックなドレスがすばらしいです。一見清楚ながら、何かの拍子にほの見える絶妙のエロス。これまた絶妙な赤の色味。身につけるフリーダ・ピントの美貌と相まって、いかにも浮世離れした雰囲気を醸しだすことに成功しています。それにしてもフリーダ・ピントという女優さんは瞳が美しい。ほんとに未来が見通せるんじゃないかと思ってしまいます。
しかし何といっても、この映画の一番手柄はミッキー・ロークでしょう。世にも恐ろしいサディスティックな暴君。息をするように暴力を振るい、人々を痛めつけ、虫けらのように殺す。ラストでのテセウスとのガチンコ対決は大迫力です。さすがレスラー。
やることなすこととにかく残虐なんだけど、最高に「閲覧注意」なシーンは、やはりアレですね、「きさまなど子孫が残せぬようにしてやる」グシャッ! のシーンですよね。女のわたしが見ててもひーってなるのに、男性のみなさんは見てるだけで冷や汗が出たのではあるまいか。
映像に比べてストーリーが弱いのは残念でした。弱いというか、むしろ、あるのかないのか、というレベル。ドラマ性がないので、キャラクターの心情描写も生きないし、スティーヴン・ドーフのスタブロスなんかは、うまく使えば人気キャラにすらなれたやも知れぬのに(あのテのアウトロウキャラは、造形に成功すればとても魅力的になる可能性が高い)、うまく物語世界に絡むことに失敗して、清々しく浮いているだけだった印象。肝心のエピロスの弓も、ハンディな大砲ぐらいの威力しかなかったし、使いどころも盛り上げることに失敗した印象。第一、主人公であるはずのテセウスが、このひといなくても物語が成立するなぁ、と観客をして思わせてしまったのは大いなる失点だった鴨。ハイペリオンVSゼウスの物語だったよね、基本は。
・インモータルズ -神々の戦い-@ぴあ映画生活
by shirakian
| 2011-11-25 23:48
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