2011年 10月 18日
ウォルター少年と、夏の休日
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★ネタバレ注意★
2003年ティム・マッキャンリーズ監督作品。
キーラ・セジウィック出演作です。
コメント欄でリコメンドいただきました☆
ハナゲのよーな邦題でかなり損をしている映画なのではないかと思いますが、オリジナルタイトルは” Secondhand Lions”。内容もまさに、セコハンライオンたちのお話なんであります。セコハンライオンというのは、ロバート・デュヴァルとマイケル・ケインが演じるハブとガースのマッキャン兄弟のこと、であると同時に、劇中、ほんもののセコハンライオンも出てくるんだぜい☆ 動物好きはテンションあがります☆
1960年代初頭。14歳の少年ウォルター(ハーレイ・ジョエル・オスメント)は、母親メイ(キーラ・セジウィック)の都合で、大叔父にあたるハブ(ロバート・デュヴァル)とガース(マイケル・ケイン)が住むテキサスの農場に預けられることになった。大叔父マッキャン兄弟は、広大な敷地に建つテレビも電話もない廃屋のような家に、5匹の犬と1匹のブタと共に暮らしていたが、実はかれらは大金を持っているという噂が広まっており、セールスマンの訪問が引きも切らなかった。兄弟の日課はこの訪れてくるセールスマンを銃で脅して撃退すること。戸惑いの中、ウォルターにとってはまるでライフ・オン・マーズみたいな生活が始まったのだが。
というわけで、マッキャン兄弟ですが、いまはおとなしく(?)引退しているかに見えるふたりの爺さん、若い頃は相当ヤンチャだったらしい。そのヤンチャっぷりも、酒にバイクに喧嘩に明け暮れ、といったレベルのヤンチャさではなく、世界を股にかけたワールドワイドなヤンチャっぷり。ヨーロッパ観光のつもりででかけた旅行を皮切りに、フランスの外人部隊に強制参加させられるわ、アラブのお姫様と恋に落ちるわ、お姫様を巡って鞘当を演じたアラブのシークから大金を巻き上げるわ、文字通り波乱万丈の青春時代☆
そして爺さんたちは、単に過去の栄光に生きるのみならず、いまだって十分やるときゃやるオトコなんである。難癖つけてきたチンケな若い衆を、コテンパンにやっつけて説教しちゃったりするんである。そりゃあもう、カッコイイんであります☆
そうは言ってももはや人生の終着点が見えてきたふたり、輝いていた青春時代を思えば、心に風の吹かない日はなく、ともすれば無気力に傾きがちな日々に、少年ウォルターが新しい光をあててくれたわけで、少年と老人、持ちつ持たれつ、ウィンウィンのシチュエーションが成立したわけです。
上述した「ほんもののセコハンライオン」ですけれど、これは、マッキャン兄弟が、自分ちの庭(と言っても広大)でサファリごっこをするために購入した、年寄のメスライオン。しかし、実際やってきたライオンを見れば、すっかり人慣れしたおとなしいよい子で、これをなぐさみに撃ち殺すなんて、到底ウォルターが許しません(そりゃそうだ、観客も映倫も許しません(笑))。ここは当然、庭で飼うことになるんだけれど、ご存知でした? ライオンにはライオン用のカリカリがあるんだよ(笑)。ただしこのカリカリ(ドライフード)、一袋が25キロ入りとか言ってるけど(ネコだったら、何か月分?)。
テキサスのヤンチャ老人の家のトウモロコシ畑に棲みついた引退したライオン。
シュールにして美しく、胸あたたかい珠玉の映像であります。思い出すだに多幸感がこみあげてきます。
で、このライオンが、かわいがってくれたウォルターを守って闘うシーンがまた、胸がいっぱいになるのであります。ライオンの最後の描写も優しくていいなぁ。
あとね、ライオンに負けてないのが5匹の犬たち。喜びも悲しみも、人間と共有してくれる最良の友だちなんです。ウォルター少年が、悲しいときも楽しいときも、いつもキリッとした顔で5匹揃ってそばにいるのよ。マッキャン兄弟がことさらネコ可愛がりしている描写がないのもいい。ベタベタかわいがったりするまでもなく、ごく普通に家族なんだね。むしろ対等な関係というか。
さて、キーラ・セジウィックですが、今回演じたメイは、究極のダメ母です。『誰も知らない』で自分の子どもたちを見捨てて飢え死にさせたYOUが演じた母親を思わせるキャラクター。常にオトコがいなけりゃダメで、その依存っぷりは、どんなに利用されても暴力をふるわれても決して目が醒めないレベル。すぐバレる見え透いた嘘をつき、子どもを置き去りにして悪びれるところがない。常にオンナとしての自分が優先。ウォルターが生まれて以来、「ウォルターの利益」を最優先に考えたことなどただの一度もないという母親。クローザーのブレンダとは対極にあるようなおバカさんですね。
でも、対する子どもが“小さなおぢさん”、ハーレイ・ジョエル・オスメントなんですもの、ちっとも負けてる気がしない。大叔父さんたちの家に「遺棄」された最初こそ、いかにも寄る辺ない感じだったけど、いつまでたってもくだらないオトコにふりまわされている母親に、最後にはきっぱりと最後通牒をつきつける強さと聡明さとしたたかさを見せるほどに成長してくれて(それもこれもセコハン・ライオンズの薫陶のおかげ)、観客の溜飲を下げてくれます。
あともうひとり、若かりし頃のハブが恋したアラブのお姫様、ジャスミンを演じたのがエマニュエル・ヴォージエであります☆ アラブ風のクッキリ目張りメイクと小麦色の肌色で、最初はだれだかわかんなかったんですが、CSI:NYのエンジェル刑事だよ。やっぱり綺麗なお方ですなぁ。「ほんとうの話とは到底思えない」老人の回顧譚の中に棲む夢のお姫様にぴったりの、絵に描いたような美貌が映えていました。
2003年ティム・マッキャンリーズ監督作品。
キーラ・セジウィック出演作です。
コメント欄でリコメンドいただきました☆
ハナゲのよーな邦題でかなり損をしている映画なのではないかと思いますが、オリジナルタイトルは” Secondhand Lions”。内容もまさに、セコハンライオンたちのお話なんであります。セコハンライオンというのは、ロバート・デュヴァルとマイケル・ケインが演じるハブとガースのマッキャン兄弟のこと、であると同時に、劇中、ほんもののセコハンライオンも出てくるんだぜい☆ 動物好きはテンションあがります☆
1960年代初頭。14歳の少年ウォルター(ハーレイ・ジョエル・オスメント)は、母親メイ(キーラ・セジウィック)の都合で、大叔父にあたるハブ(ロバート・デュヴァル)とガース(マイケル・ケイン)が住むテキサスの農場に預けられることになった。大叔父マッキャン兄弟は、広大な敷地に建つテレビも電話もない廃屋のような家に、5匹の犬と1匹のブタと共に暮らしていたが、実はかれらは大金を持っているという噂が広まっており、セールスマンの訪問が引きも切らなかった。兄弟の日課はこの訪れてくるセールスマンを銃で脅して撃退すること。戸惑いの中、ウォルターにとってはまるでライフ・オン・マーズみたいな生活が始まったのだが。
というわけで、マッキャン兄弟ですが、いまはおとなしく(?)引退しているかに見えるふたりの爺さん、若い頃は相当ヤンチャだったらしい。そのヤンチャっぷりも、酒にバイクに喧嘩に明け暮れ、といったレベルのヤンチャさではなく、世界を股にかけたワールドワイドなヤンチャっぷり。ヨーロッパ観光のつもりででかけた旅行を皮切りに、フランスの外人部隊に強制参加させられるわ、アラブのお姫様と恋に落ちるわ、お姫様を巡って鞘当を演じたアラブのシークから大金を巻き上げるわ、文字通り波乱万丈の青春時代☆
そして爺さんたちは、単に過去の栄光に生きるのみならず、いまだって十分やるときゃやるオトコなんである。難癖つけてきたチンケな若い衆を、コテンパンにやっつけて説教しちゃったりするんである。そりゃあもう、カッコイイんであります☆
そうは言ってももはや人生の終着点が見えてきたふたり、輝いていた青春時代を思えば、心に風の吹かない日はなく、ともすれば無気力に傾きがちな日々に、少年ウォルターが新しい光をあててくれたわけで、少年と老人、持ちつ持たれつ、ウィンウィンのシチュエーションが成立したわけです。
上述した「ほんもののセコハンライオン」ですけれど、これは、マッキャン兄弟が、自分ちの庭(と言っても広大)でサファリごっこをするために購入した、年寄のメスライオン。しかし、実際やってきたライオンを見れば、すっかり人慣れしたおとなしいよい子で、これをなぐさみに撃ち殺すなんて、到底ウォルターが許しません(そりゃそうだ、観客も映倫も許しません(笑))。ここは当然、庭で飼うことになるんだけれど、ご存知でした? ライオンにはライオン用のカリカリがあるんだよ(笑)。ただしこのカリカリ(ドライフード)、一袋が25キロ入りとか言ってるけど(ネコだったら、何か月分?)。
テキサスのヤンチャ老人の家のトウモロコシ畑に棲みついた引退したライオン。
シュールにして美しく、胸あたたかい珠玉の映像であります。思い出すだに多幸感がこみあげてきます。
で、このライオンが、かわいがってくれたウォルターを守って闘うシーンがまた、胸がいっぱいになるのであります。ライオンの最後の描写も優しくていいなぁ。
あとね、ライオンに負けてないのが5匹の犬たち。喜びも悲しみも、人間と共有してくれる最良の友だちなんです。ウォルター少年が、悲しいときも楽しいときも、いつもキリッとした顔で5匹揃ってそばにいるのよ。マッキャン兄弟がことさらネコ可愛がりしている描写がないのもいい。ベタベタかわいがったりするまでもなく、ごく普通に家族なんだね。むしろ対等な関係というか。
さて、キーラ・セジウィックですが、今回演じたメイは、究極のダメ母です。『誰も知らない』で自分の子どもたちを見捨てて飢え死にさせたYOUが演じた母親を思わせるキャラクター。常にオトコがいなけりゃダメで、その依存っぷりは、どんなに利用されても暴力をふるわれても決して目が醒めないレベル。すぐバレる見え透いた嘘をつき、子どもを置き去りにして悪びれるところがない。常にオンナとしての自分が優先。ウォルターが生まれて以来、「ウォルターの利益」を最優先に考えたことなどただの一度もないという母親。クローザーのブレンダとは対極にあるようなおバカさんですね。
でも、対する子どもが“小さなおぢさん”、ハーレイ・ジョエル・オスメントなんですもの、ちっとも負けてる気がしない。大叔父さんたちの家に「遺棄」された最初こそ、いかにも寄る辺ない感じだったけど、いつまでたってもくだらないオトコにふりまわされている母親に、最後にはきっぱりと最後通牒をつきつける強さと聡明さとしたたかさを見せるほどに成長してくれて(それもこれもセコハン・ライオンズの薫陶のおかげ)、観客の溜飲を下げてくれます。
あともうひとり、若かりし頃のハブが恋したアラブのお姫様、ジャスミンを演じたのがエマニュエル・ヴォージエであります☆ アラブ風のクッキリ目張りメイクと小麦色の肌色で、最初はだれだかわかんなかったんですが、CSI:NYのエンジェル刑事だよ。やっぱり綺麗なお方ですなぁ。「ほんとうの話とは到底思えない」老人の回顧譚の中に棲む夢のお姫様にぴったりの、絵に描いたような美貌が映えていました。
by shirakian
| 2011-10-18 21:29
| 映画あ行