2011年 06月 30日
1408号室
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★ネタバレ注意★
2007年、ミカエル・ハフストローム監督作品。
スティーヴン・キングの同名短編が原作です。
納涼ホラー大会(笑)。
作家のマイク・エンズリン(ジョン・キューザック)は、怪奇現象が噂されるスポットを訪ね歩き、因縁曰くつきのホテルに宿泊しては体験記をまとめる仕事を生業にしていた。ある日かれの私書箱に、「1408号室には立ち入るな」と書かれた絵葉書が届く。逆に興味をそそられたマイクは、絵葉書の写真をもとにNYのドルフィン・ホテルに宿泊しようとしたが、ホテルの支配人(サミュエル・L・ジャクソン)は、異常な熱意でもってマイクを泊めまいとする。ホテルのその部屋では、変死・自然死あわせて56人もの死者が出ており、清掃に入る従業員にも失明などの被害が出ていたのだ。支配人は、中に入って一時間以上もった者はいない、とまで言う。
それにもかかわらず、ホテルオーナーの頑なな方針によって、1408号室は閉鎖されることなく客室として存続していた。客室として開示されている以上、宿泊客を拒むことは法律上できない。支配人は、マイクの強硬な要請に屈し、ルームキーを手渡すのだが……。
というわけで、全編ほぼキューザックのひとり芝居です。邪悪な意志を持つホテルの部屋にひたすら翻弄され続ける104分。ヘタな役者にそんなことされた日には、観ている方がむしろ拷問、という映画に仕上がっていたかと思いますが、キューザックの迫真の演技力で、退屈することなく最後まで見せてくれます。
主な出演者はあとはもう、ホテル支配人を演じたSL・ジャクソンぐらいしかいないのだけど、この役は思ったほどストーリーに関わってはこず、ほぼ、宿泊するのさせないのと、さんざんもめた最初のシーンだけでおしまいでした。そんな役にSL・ジャクソンを得られたことは、この映画としてはラッキーでしたが、なにも別にジャクソンじゃなくてもよかったよね、といった感じでもあります。友情出演、ってやつだったのかもしれない。
ストーリーは、怪奇現象にヘタな理由づけをすることなく、なぜかわからないけどとにかくホテルの「部屋」そのものが邪悪な意志を持って宿泊客を嬲り殺しにする、という「理由のわからない恐怖」を提示してくれていて、ホラーだったらかくあれかし、という骨子ではあるんですが、どうもそこから期待するような「怖さ」がないあたりは、ホラーのくせにかくのごとしか、という感じではあります。もっとこう、心理的にゾーッとさせてほしかったんだけどなぁ。納涼ホラー大会なんだし(すみません、勝手に言ってます)。
なんか、とにかく、力技でくるのね。壁が崩壊したり、水があふれたり、急に寒くなったり。そりゃ、実際わが身にそんなことが起こったら怖いに決まっているけど、そんなディザースター系の映像ばっかり見せられても、ホラーに期待する皮膚感覚の恐怖、というのは味わえないです。むしろ、マイクさんはさぞやお疲れになったたことでしょう、と労いの気持ちに。
ホラー描写で、これはよかったな、と唯一思ったのが、部屋からのエクソダスを試みたマイクが、窓から外に出て、ホテルの外壁を伝って隣の部屋にたどりつこうとしたところ、いつのまにか隣の部屋がなくなっていて、どこまでもどこまでもレンガの壁が続くばかり、というシーン。あれはちょっと怖かったです(笑)。……って、「(笑)」ってなんなんだ。怖かったのが嬉しくて笑ってしまったのね。ホラー観る意味あるのか、オマエ。
原作は未読ですが、ほんとに短い掌編で、作家の背景などについてはほとんど触れられていないそうですが、映画ではさすがにそれでは持たないので、幼い娘を病気でなくし、悲しみに耐えられなくなった作家が、妻を支えようともせず、ただ逃げ出してしまった、という過去を設定しています。そういう「ドラマ」によって話に厚みや広がりをもたせようとした意図はわかるけれど、 ホラー描写の怖さそのものので勝負するか、ホラーにからめた人間の哀感で悲しみを表現するか、そのふたつを欲張ったがために、どっちも中途半端な印象になってしまったなぁ、と思いました。
死んでしまった幼い娘、というのは、作家の心に、邪悪な部屋が付け入る隙を作るための「ためにする設定」でしかないので、娘を亡くした親の悲しみ、というのがまず全然響いてきません。響いてこないので、ホラーの舞台設定を整えるためだけに幼い子どもを死なせるなんて、なんだか品のない脚本だなぁ、と微妙に不愉快な気持ちになってしまう。同じ子どもが死んじゃう設定でも、『ダーク・ウォーター』だったら、巧みに哀感を表現していたんだけどなぁ。
というわけで、悲しみのドラマ、というのが狙いほどには機能していない一方で、恐怖描写そのものは、そちらに尺をとられてあんまり怖くならない印象。とにかく、次から次に、あまりにしつこく「怖がらせ」のイベントが続くので、観ているうちに疲れてきちゃう。しかもラストは、悪夢系を狙ったっぽくて、カタルシスもない。ぞっともしないのに、すっきりもしないという、なんだかあんまり涼しくない映画でした。……ほめてなくてごめん(汗)。実はもうちょっと期待してた(汗)。
2007年、ミカエル・ハフストローム監督作品。
スティーヴン・キングの同名短編が原作です。
納涼ホラー大会(笑)。
作家のマイク・エンズリン(ジョン・キューザック)は、怪奇現象が噂されるスポットを訪ね歩き、因縁曰くつきのホテルに宿泊しては体験記をまとめる仕事を生業にしていた。ある日かれの私書箱に、「1408号室には立ち入るな」と書かれた絵葉書が届く。逆に興味をそそられたマイクは、絵葉書の写真をもとにNYのドルフィン・ホテルに宿泊しようとしたが、ホテルの支配人(サミュエル・L・ジャクソン)は、異常な熱意でもってマイクを泊めまいとする。ホテルのその部屋では、変死・自然死あわせて56人もの死者が出ており、清掃に入る従業員にも失明などの被害が出ていたのだ。支配人は、中に入って一時間以上もった者はいない、とまで言う。
それにもかかわらず、ホテルオーナーの頑なな方針によって、1408号室は閉鎖されることなく客室として存続していた。客室として開示されている以上、宿泊客を拒むことは法律上できない。支配人は、マイクの強硬な要請に屈し、ルームキーを手渡すのだが……。
というわけで、全編ほぼキューザックのひとり芝居です。邪悪な意志を持つホテルの部屋にひたすら翻弄され続ける104分。ヘタな役者にそんなことされた日には、観ている方がむしろ拷問、という映画に仕上がっていたかと思いますが、キューザックの迫真の演技力で、退屈することなく最後まで見せてくれます。
主な出演者はあとはもう、ホテル支配人を演じたSL・ジャクソンぐらいしかいないのだけど、この役は思ったほどストーリーに関わってはこず、ほぼ、宿泊するのさせないのと、さんざんもめた最初のシーンだけでおしまいでした。そんな役にSL・ジャクソンを得られたことは、この映画としてはラッキーでしたが、なにも別にジャクソンじゃなくてもよかったよね、といった感じでもあります。友情出演、ってやつだったのかもしれない。
ストーリーは、怪奇現象にヘタな理由づけをすることなく、なぜかわからないけどとにかくホテルの「部屋」そのものが邪悪な意志を持って宿泊客を嬲り殺しにする、という「理由のわからない恐怖」を提示してくれていて、ホラーだったらかくあれかし、という骨子ではあるんですが、どうもそこから期待するような「怖さ」がないあたりは、ホラーのくせにかくのごとしか、という感じではあります。もっとこう、心理的にゾーッとさせてほしかったんだけどなぁ。納涼ホラー大会なんだし(すみません、勝手に言ってます)。
なんか、とにかく、力技でくるのね。壁が崩壊したり、水があふれたり、急に寒くなったり。そりゃ、実際わが身にそんなことが起こったら怖いに決まっているけど、そんなディザースター系の映像ばっかり見せられても、ホラーに期待する皮膚感覚の恐怖、というのは味わえないです。むしろ、マイクさんはさぞやお疲れになったたことでしょう、と労いの気持ちに。
ホラー描写で、これはよかったな、と唯一思ったのが、部屋からのエクソダスを試みたマイクが、窓から外に出て、ホテルの外壁を伝って隣の部屋にたどりつこうとしたところ、いつのまにか隣の部屋がなくなっていて、どこまでもどこまでもレンガの壁が続くばかり、というシーン。あれはちょっと怖かったです(笑)。……って、「(笑)」ってなんなんだ。怖かったのが嬉しくて笑ってしまったのね。ホラー観る意味あるのか、オマエ。
原作は未読ですが、ほんとに短い掌編で、作家の背景などについてはほとんど触れられていないそうですが、映画ではさすがにそれでは持たないので、幼い娘を病気でなくし、悲しみに耐えられなくなった作家が、妻を支えようともせず、ただ逃げ出してしまった、という過去を設定しています。そういう「ドラマ」によって話に厚みや広がりをもたせようとした意図はわかるけれど、 ホラー描写の怖さそのものので勝負するか、ホラーにからめた人間の哀感で悲しみを表現するか、そのふたつを欲張ったがために、どっちも中途半端な印象になってしまったなぁ、と思いました。
死んでしまった幼い娘、というのは、作家の心に、邪悪な部屋が付け入る隙を作るための「ためにする設定」でしかないので、娘を亡くした親の悲しみ、というのがまず全然響いてきません。響いてこないので、ホラーの舞台設定を整えるためだけに幼い子どもを死なせるなんて、なんだか品のない脚本だなぁ、と微妙に不愉快な気持ちになってしまう。同じ子どもが死んじゃう設定でも、『ダーク・ウォーター』だったら、巧みに哀感を表現していたんだけどなぁ。
というわけで、悲しみのドラマ、というのが狙いほどには機能していない一方で、恐怖描写そのものは、そちらに尺をとられてあんまり怖くならない印象。とにかく、次から次に、あまりにしつこく「怖がらせ」のイベントが続くので、観ているうちに疲れてきちゃう。しかもラストは、悪夢系を狙ったっぽくて、カタルシスもない。ぞっともしないのに、すっきりもしないという、なんだかあんまり涼しくない映画でした。……ほめてなくてごめん(汗)。実はもうちょっと期待してた(汗)。
by shirakian
| 2011-06-30 18:58
| 映画さ行