2011年 06月 18日
X-MEN:ファースト・ジェネレーション
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★ネタバレ注意★
わたし燃えましたわ!
プロフェッサーXとマグニートーの若かりし頃を描いたX-MEN誕生秘話です。燃えるんです。
1960年代。チャールズ・エグゼビア(ジェームズ・マカヴォイ)は、自ら強力なテレパシー能力を持つミュータントであると同時に、遺伝子研究という方面からミュータントの謎の究明に邁進する若き科学者だった。そんなチャールズの前に、CIAエージェントのモイラ・マクタガート(ローズ・バーン)が現れる。何者かがミュータントの力を利用して核戦争を引き起こそうとしている、という疑惑が浮上していたのだ。
それを契機にCIAに協力することになったチャールズは、もうひとりのミュータント、エリック・レーンシャー(マイケル・ファスベンダー)と出会う。ユダヤ人のエリックは、大戦中母親を収容所で惨殺され、自身もまた被検体にされるという過去を持っていた。CIAのターゲットであるセバスチャン・ショウ(ケヴィン・ベーコン)こそ、エリックの母親を殺し、かれを被検体にした憎き仇だったのだ。
共通の敵を前にしたチャーリーとエリックは、互いに協力し、仲間を集め、次第に友情をはぐくんでいく。そしてついに、キューバへミサイルを持ち込み、米ソ開戦に持ち込もうとするショウと対決する日がやってきた。
このシリーズの何が好きって、「おいしいところはとにかく全部ひとりで持って行く」単独ヒーローの話じゃなくて、それぞれ異なる背景や能力を持ったひとびとが寄り集まり、互いに共感しあい、反発しあい、助け合い、補いあい、知恵を出しあい、勇気を分け合って、共に戦う話であるということです。
そういう観点から言いますとやはり、若き日のプロフェッサーXとマグニートーの間に友情がはぐくまれていく過程の描写には、堪えられないものがあります。いままで観てきた映画シリーズでは、反目しあい敵味方に別れて闘うふたりに、こんな時代もあったのね、と思うと、思わず目頭がじんわり熱くなってしまいます。
磁力を使って思いのままに金属を操れるエリックも、チャールズと出会ったときはまだ、自分の力をコントロールすることを知りませんでした。母親を殺された怒りから発現したかれの能力は、やはり怒りによって奮い起こすしかなく、その結果、能力者本人をも殺しかねない諸刃の刃物だったのです。そんなエリックにチャールズは、感情をコントロールし、集中力を高める心の持ちようを示唆します。チャールズの導きによって、初めて力を意図的にコントロールすることを得たエリックが、巨大なパラボラアンテナを動かすシーンは感動的ですらあります。
チャールズは同様にして、全米からリクルートしてきた年若いミュータントたちに、能力の制御の方法を教えていくのですが、それはつまり、いかに感情をコントロールするか、という問題でもあります。憎しみや劣等感や恐怖や奢りといったマイナスの感情は、一時的には力を爆発させることができるとしても、大局的に見るとよい結果をもたらさない。平らかに落ち着いた心の持ちようを説くチャールズって、スターウォーズのヨーダのようだ。ジェームズ・マカヴォイの雰囲気にとてもよく似合っていたと思います。
こういう、訓練を経てなにかを克服していくシーン、というのは、それ自体が快感であると同時に、来るべき本当の戦いへの期待をはらませて、ほんとうにワクワクしてしまいます。しかも、それを描くのに、マシュー・ボーン監督の演出は、全く無駄というものがない。余計なシーンがひとつもなければ、長すぎるカットもひとつもない。
そして訪れた決戦当日。それまでに、無駄のない軽快なテンポで、敵の力の巨大さを過不足なく描写してありますから、いかにそれが困難な戦いになるかということは想像に難くないです。固唾をのんで見守る観客の目の前で、期待を裏切らない、迫力に満ちたバトルが展開されていくのです。マグニートーが潜水艦を海中から持ち挙げるシーンなんて、ほんとに胸が一杯になってしまいますから(>_<)!
ミュータントたちは、決して没個性な兵隊ではありません。それぞれに感情があり、思想があり、思惑がある。だから、同じ経験を共にしても、下す決断はそれぞれで、決断を下す動機もまたそれぞれです。この映画では、そのあたりの機微がまた、とてもうまく描かれています。同じミュータントでも、チャールズの理想に共感して従おうとする者もいれば、セバスチャン・ショウの「力」に魅了されて “ヘルファイヤークラブ”の一員となる者もある。最初はチャールズと行を共にしていても、情況によってはショウに寝返る者がいるし、ショウが退場した後もまた、それぞれの去就は別れるのです。そうした描写がとてもいい。
中でも、チャールズの妹同然で育ったミスティークことレイブン・ダークホルム(ジェニファー・ローレンス)の心の動きは見ごたえがありました。ミュータントといっても、チャールズのように外見は一般人と全くかわらない者もいるけれど、変身能力を有するレイブンの「素顔」は、青い鱗状の肌という、明らかに「異形」の者です。これを隠して人間の中に溶け込むのか、これを誇示して人間との差異を際立たせるのか。ちがうことは醜いことなのか、隠さなければならないことなのか、そうした少女らしい疑問から始まったレイブンの思いは、ひととミュータントは平和共存できるというチャールズの根本思想への疑問へと繋がっていきます。チャールズの考えが必ずしも無条件で正しいわけではないのです。
あと、キャラクターで言えば、ショウの側近エマ・フロストを演じたジャニュアリー・ジョーンズがもう、目の保養で(笑)! 綺麗なひとだなー。ほんと、お人形さんみたいだなー。巻き髪とかホットパンツとかジャンプスーツとか、60年代のファッションも、この方がお召しになると、最高にスタイリッシュでかっこいいです。いつも不機嫌な顔でニコリともしないのがまたイイ。身体がダイアモンドに変化するミュータントって、『ウルヴァリン』にも出てきたけど、視覚効果がそれよりずっと洗練されていたような気がします。単純に、観ていてとっても綺麗だった。
そして、忘れてはいけないのがショウを演じたケヴィン・ベーコン!
悪役がしょぼいと映画そのものがしょぼくなってしまうことは言うまでもありません。その点、ベーコンの悪役っぷりは、カケラも共感する余地のない実に憎々しい悪役中の悪役で、大いに映画を盛り上げてくれました。元ナチのショウが、キューバ危機を演出して、世界を核戦争に巻き込もうとする、という設定もうまい。そもそも核爆弾の存在そのものが、もとを正せばナチに起因している。
でもやっぱりこの映画の最大の目玉は、マイケル・ファスベンダー。主役はまちがいなくマグニートーだと思います☆ かれが背負っている背景が、そのままダイレクトにストーリーに絡んでいるし、第一その背景そのものが重厚でドラマチック。一旦はチャールズに協力するものの、理想主義的なチャールズの思想を受け入れることができず、やがては袂を分かつという流れも、エリックの過去を思えば説得力があります。
劇中、ドイツ語、フランス語、スペイン語、そして英語を流暢に操るマルチリンガルっぷりもエレガントですが、ファッションも立ち姿もアクションシーンもなにもかもステキ☆ 「ただ突っ立って、手を差し出すだけで敵を倒す」という荒唐無稽なアクションも、ファスベンダーがやれば、そこにほんとうに「力」の存在を感じさせます。飛来してくる大量のミサイルを全て押し留め、敵に向かって弾き返すシーンなんかも、すごい迫力でした。
そしてまた、クールにふるまう仮面の下で、自分の力に対する自信の欠如に怯えてすらいた瑞々しい心が、力をコントロールすることを覚えていく過程の中で、強くなると同時に頑なな鎧に覆われていくさまを、巧みに演じ分ける一方で、一匹狼的キャラクターでありながら、幼い頃からずっと生活を共にしてきたチャールズですら見過ごしてきたレイブンの心の葛藤を敏感に感じ取り、フォローするあたりの肌理細やかな描写がまた、とてもよかったと思います。
ウルヴァリンの続編は作られるみたいですが、この話の続編もあるのかな。だとしたら是非観たいと思いました。ただひとつ難を言えば、ビースト役にニコラス・ホルト、という配役でしょうか。あんな綺麗な子を、なにもあそこまで毛むくじゃらにしなくても……。
わたし燃えましたわ!
プロフェッサーXとマグニートーの若かりし頃を描いたX-MEN誕生秘話です。燃えるんです。
1960年代。チャールズ・エグゼビア(ジェームズ・マカヴォイ)は、自ら強力なテレパシー能力を持つミュータントであると同時に、遺伝子研究という方面からミュータントの謎の究明に邁進する若き科学者だった。そんなチャールズの前に、CIAエージェントのモイラ・マクタガート(ローズ・バーン)が現れる。何者かがミュータントの力を利用して核戦争を引き起こそうとしている、という疑惑が浮上していたのだ。
それを契機にCIAに協力することになったチャールズは、もうひとりのミュータント、エリック・レーンシャー(マイケル・ファスベンダー)と出会う。ユダヤ人のエリックは、大戦中母親を収容所で惨殺され、自身もまた被検体にされるという過去を持っていた。CIAのターゲットであるセバスチャン・ショウ(ケヴィン・ベーコン)こそ、エリックの母親を殺し、かれを被検体にした憎き仇だったのだ。
共通の敵を前にしたチャーリーとエリックは、互いに協力し、仲間を集め、次第に友情をはぐくんでいく。そしてついに、キューバへミサイルを持ち込み、米ソ開戦に持ち込もうとするショウと対決する日がやってきた。
このシリーズの何が好きって、「おいしいところはとにかく全部ひとりで持って行く」単独ヒーローの話じゃなくて、それぞれ異なる背景や能力を持ったひとびとが寄り集まり、互いに共感しあい、反発しあい、助け合い、補いあい、知恵を出しあい、勇気を分け合って、共に戦う話であるということです。
そういう観点から言いますとやはり、若き日のプロフェッサーXとマグニートーの間に友情がはぐくまれていく過程の描写には、堪えられないものがあります。いままで観てきた映画シリーズでは、反目しあい敵味方に別れて闘うふたりに、こんな時代もあったのね、と思うと、思わず目頭がじんわり熱くなってしまいます。
磁力を使って思いのままに金属を操れるエリックも、チャールズと出会ったときはまだ、自分の力をコントロールすることを知りませんでした。母親を殺された怒りから発現したかれの能力は、やはり怒りによって奮い起こすしかなく、その結果、能力者本人をも殺しかねない諸刃の刃物だったのです。そんなエリックにチャールズは、感情をコントロールし、集中力を高める心の持ちようを示唆します。チャールズの導きによって、初めて力を意図的にコントロールすることを得たエリックが、巨大なパラボラアンテナを動かすシーンは感動的ですらあります。
チャールズは同様にして、全米からリクルートしてきた年若いミュータントたちに、能力の制御の方法を教えていくのですが、それはつまり、いかに感情をコントロールするか、という問題でもあります。憎しみや劣等感や恐怖や奢りといったマイナスの感情は、一時的には力を爆発させることができるとしても、大局的に見るとよい結果をもたらさない。平らかに落ち着いた心の持ちようを説くチャールズって、スターウォーズのヨーダのようだ。ジェームズ・マカヴォイの雰囲気にとてもよく似合っていたと思います。
こういう、訓練を経てなにかを克服していくシーン、というのは、それ自体が快感であると同時に、来るべき本当の戦いへの期待をはらませて、ほんとうにワクワクしてしまいます。しかも、それを描くのに、マシュー・ボーン監督の演出は、全く無駄というものがない。余計なシーンがひとつもなければ、長すぎるカットもひとつもない。
そして訪れた決戦当日。それまでに、無駄のない軽快なテンポで、敵の力の巨大さを過不足なく描写してありますから、いかにそれが困難な戦いになるかということは想像に難くないです。固唾をのんで見守る観客の目の前で、期待を裏切らない、迫力に満ちたバトルが展開されていくのです。マグニートーが潜水艦を海中から持ち挙げるシーンなんて、ほんとに胸が一杯になってしまいますから(>_<)!
ミュータントたちは、決して没個性な兵隊ではありません。それぞれに感情があり、思想があり、思惑がある。だから、同じ経験を共にしても、下す決断はそれぞれで、決断を下す動機もまたそれぞれです。この映画では、そのあたりの機微がまた、とてもうまく描かれています。同じミュータントでも、チャールズの理想に共感して従おうとする者もいれば、セバスチャン・ショウの「力」に魅了されて “ヘルファイヤークラブ”の一員となる者もある。最初はチャールズと行を共にしていても、情況によってはショウに寝返る者がいるし、ショウが退場した後もまた、それぞれの去就は別れるのです。そうした描写がとてもいい。
中でも、チャールズの妹同然で育ったミスティークことレイブン・ダークホルム(ジェニファー・ローレンス)の心の動きは見ごたえがありました。ミュータントといっても、チャールズのように外見は一般人と全くかわらない者もいるけれど、変身能力を有するレイブンの「素顔」は、青い鱗状の肌という、明らかに「異形」の者です。これを隠して人間の中に溶け込むのか、これを誇示して人間との差異を際立たせるのか。ちがうことは醜いことなのか、隠さなければならないことなのか、そうした少女らしい疑問から始まったレイブンの思いは、ひととミュータントは平和共存できるというチャールズの根本思想への疑問へと繋がっていきます。チャールズの考えが必ずしも無条件で正しいわけではないのです。
あと、キャラクターで言えば、ショウの側近エマ・フロストを演じたジャニュアリー・ジョーンズがもう、目の保養で(笑)! 綺麗なひとだなー。ほんと、お人形さんみたいだなー。巻き髪とかホットパンツとかジャンプスーツとか、60年代のファッションも、この方がお召しになると、最高にスタイリッシュでかっこいいです。いつも不機嫌な顔でニコリともしないのがまたイイ。身体がダイアモンドに変化するミュータントって、『ウルヴァリン』にも出てきたけど、視覚効果がそれよりずっと洗練されていたような気がします。単純に、観ていてとっても綺麗だった。
そして、忘れてはいけないのがショウを演じたケヴィン・ベーコン!
悪役がしょぼいと映画そのものがしょぼくなってしまうことは言うまでもありません。その点、ベーコンの悪役っぷりは、カケラも共感する余地のない実に憎々しい悪役中の悪役で、大いに映画を盛り上げてくれました。元ナチのショウが、キューバ危機を演出して、世界を核戦争に巻き込もうとする、という設定もうまい。そもそも核爆弾の存在そのものが、もとを正せばナチに起因している。
でもやっぱりこの映画の最大の目玉は、マイケル・ファスベンダー。主役はまちがいなくマグニートーだと思います☆ かれが背負っている背景が、そのままダイレクトにストーリーに絡んでいるし、第一その背景そのものが重厚でドラマチック。一旦はチャールズに協力するものの、理想主義的なチャールズの思想を受け入れることができず、やがては袂を分かつという流れも、エリックの過去を思えば説得力があります。
劇中、ドイツ語、フランス語、スペイン語、そして英語を流暢に操るマルチリンガルっぷりもエレガントですが、ファッションも立ち姿もアクションシーンもなにもかもステキ☆ 「ただ突っ立って、手を差し出すだけで敵を倒す」という荒唐無稽なアクションも、ファスベンダーがやれば、そこにほんとうに「力」の存在を感じさせます。飛来してくる大量のミサイルを全て押し留め、敵に向かって弾き返すシーンなんかも、すごい迫力でした。
そしてまた、クールにふるまう仮面の下で、自分の力に対する自信の欠如に怯えてすらいた瑞々しい心が、力をコントロールすることを覚えていく過程の中で、強くなると同時に頑なな鎧に覆われていくさまを、巧みに演じ分ける一方で、一匹狼的キャラクターでありながら、幼い頃からずっと生活を共にしてきたチャールズですら見過ごしてきたレイブンの心の葛藤を敏感に感じ取り、フォローするあたりの肌理細やかな描写がまた、とてもよかったと思います。
ウルヴァリンの続編は作られるみたいですが、この話の続編もあるのかな。だとしたら是非観たいと思いました。ただひとつ難を言えば、ビースト役にニコラス・ホルト、という配役でしょうか。あんな綺麗な子を、なにもあそこまで毛むくじゃらにしなくても……。
by shirakian
| 2011-06-18 19:22
| 映画あ行