2011年 05月 12日
アンノウン
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★ネタバレ注意★
エキサイト・ブログの仕様では、「どの記事がよく読まれているか」を知るすべはないのですが(もしあるなら教えてたもれ)、検索ワードなどから想像するに、うちのブログで最もよく読まれている記事は『エスター』なんじゃないかな、と思うです。なにしろ、「イザベル・ファーマン」で検索して来られる方がとても多い。特にファーマンについて詳しい言及があるわけではないエントリーなので、結構申し訳ない気持ちで一杯なわけですが(汗)。
で、その『エスター』のジャウマ・コレット=セラ監督の作品です。
リーアム・ニーソン主演。『96時間』や『Aチーム』で大暴れしてくれたタフな親父が、みたび頑張る!
予告編では、妻であるはずの女性に、あなたなんか知らないと言われた主人公が、それじゃ一体おれってだれなんだ、とオロオロするシーンが使われていたので、ズバコーーンとフォーガットンする話だったら困るなぁ(翻訳:宇宙人等の人知を超える存在が人知を超える目的と人知を超える方法で人知を超えて主人公を翻弄するので、結局人知ではわけがわからない話だったら困るなぁ)、と思っていたら、ちゃんときっちりサスペンスでしたので、ひとまず安心です。タフな親父も健在だ。
学会に出席するためにベルリンを訪れた植物学者のマーティン・ハリス(リーアム・ニーソン)は、ホテルに着いたところで、パスポート等が入ったアタッシュケースを空港に置き忘れてしまったことに気づき、妻のエリザベス(ジャニュアリー・ジョーンズ)に一言も告げず、慌ててタクシーで引き返す途中、事故に遭って4日間昏睡状態に陥ってしまう。
ようやく昏睡から醒め、ホテルに戻ると、妻は自分を知らないといい、マーティン・ハリスを名乗る別人(エイダン・クイン)こそが自分の夫だと言う。
途方に暮れたマーティンは、旧友のロドニー・コール(フランク・ランジェラ)に電話で泣き付くも、時まさにアメリカは感謝祭休暇の最中で、コールは掴まらず、事故に遭ったときに乗っていたタクシー運転手のジーナ(ダイアン・クルーガー)をつきとめ、何か知らないか尋ねようとするが、不法移民であるジーナはマーティンの接触を嫌う。
いよいよ自分は狂ってしまったのかと戦慄するマーティンは、しかし、謎の男に襲われることにより、確かに自分がなんらかのトラブルに巻きこまれていることを知る。そのトラブルとは果たして?
この話、とにかく配役がステキ、と思いました。
闘うタフガイのニーソンがいいのはいつもの通りですが、まず、妻を演じるジャニュアリー・ジョーンズがいい。華奢で楚々とした風情の、ハッとするすような美女なので、記憶を失ったマーティンが、とにかく妻を守らなければ! と焦れ焦れになる気持ちがよくわかる反面、どこかアンニュイで不機嫌でミステリアスな雰囲気は、これは絶対何かあるな、と思わせるものがあり。ゾクゾクします。綺麗なひとだー。
同じく綺麗どころで、タクシー運転手のジーナを演じたダイアン・クルーガーもよい。基本的に善良で優しく、マーティンに対して同情的ですが、精神的に強くて、決断力・行動力があり、荒事に巻きこまれても動じない。しかも、その設定にはちゃんと、ボスニア紛争で一家全員惨殺された過去があるという裏づけがあり、なるほど、そんな体験をすれば腹も据わるよね、というのが納得できる。彼女の存在はマーティンにとっての支えであると同時に、映画的清涼剤にもなっています。
そして、旧東ドイツでスパイをしていた探偵のエルンスト・ユルゲン(ブルーノ・ガンツ)! この存在感がものっそよいです。かれは、マーティンが入院した病院の親切な看護婦が、なにかお困りのようだから、わたしの知人の探偵に相談してみたら? と紹介してくれた人物なのだけど、正直、やや凡庸な印象だった前半の物語が、ガンツが出てきた途端、俄然凄みと面白みを増してくる感じがします。惜しむらくは、退場があっさりしすぎだったなぁ。もうひとふんばりも二ふんばりもしてほしかったところですが……。 それにしても、旧東側のスパイ、という設定は、ベルリンというロケーションとあいまって絶好のスパイスでありました。ごちそうさまでした。
でも、わたし的に一番大喜びだったのは、「もうひとりのマーティン」を演じたのが、エイダン・クインだったとゆーことです。クインとニーソン、『マイケル・コリンズ』(1996)で共演したふたりの再共演ですよ☆ これはわたしにとって、思いがけないサプライス・プレゼントでありました。わたしがエイダン・クインを最初に認識したのがこの映画だったので、その当時、リーアム・ニーソンがあんなにでかいとは知らなかったわたしは、ニーソンの親友を演じたエイダン・クインのことを、ティム・ロスのように小柄な役者さんだと思いこんでいたものでした。なつかしいわぁ。(なにもティム・ロスを引き合いにだす必要はなかろーに)。
ちなみに、エイダン・クインは、「白木庵的ステキな声の役者リスト」に入ってらっさる美声の持ち主。前回観たのが、ロドリゴ・ガルシア監督の『美しい人』(2005)だったのですが、5年の間にすっかり老けこんじゃってて、びっくりしました(汗)。……髪の毛は、あれはわざとあんな色にしたのかな。ナチュラルに白髪だったのかな。それに、太った。(いい加減オマエ、うるさいヨ)。
あと、もちろん、怪しい黒幕を演じたフランク・ランジェラも役柄にぴったりで、凄みがあってステキでしたし(ただし、こちらも、ガンツ同様、退場があっさりしすぎだったので、もうひとふんばりも二ふんばりもしてほしかったですが)、事件のキーを握るドイツ人科学者を演じた、「白木庵が観る全てのドイツ映画に必ず出てくる」(それは言いすぎ)セバスチャン・コッホも、如何にもひとのいい善良な科学者という雰囲気でとてもよかったです。
ストーリー的には、さあ、驚天動地のサスペンスをやるぞ! と意気込みも勇ましく、次々と伏線をはっては、きちんと律儀に回収していく手腕はお見事ですが、やっぱり、設定自体の粗が目だったです(汗)。ズバコーーンとフォーガットンする話でなかったことは幸いでしたが、オチの弱さはきわめて残念です。
とにかく何より、オイオイなのは、普通、貴重品を入れたアタッシュケースを、あんな風に置き忘れたりはしないでしょう。ぼんくらな団体旅行客だってしないミスを、ニーソンのようなプロフィールの人間がやるなんて、ありえない。そこから全てが始まってるけど、そこから全てがまちがっとる(汗)。
そして、元凄腕スパイのガンツをして、かれらに目をつけられたら最後、逃げ延びる手段はない、と自殺の道を選ばせるほどの暗殺者集団、という設定であるにもかかわらず、組織のひとびと、どなたもこなたも手際が悪すぎ(汗)。殺しに関してはど素人のダイアン・クルーガーにいいようにしてやられるっちゃ、どういうこっちゃ。
毅然と計画を遂行していたジャニュアリー・ジョーンズだって、最後の爆弾処理の手際の悪さは噴飯ものだし。あれはナイですから。プロじゃないですから。
でも、観ている間は、ニーソンのかっこよさもあいまって、存分に楽しませていただけましたので、なんの文句もありません。サンクス☆
エキサイト・ブログの仕様では、「どの記事がよく読まれているか」を知るすべはないのですが(もしあるなら教えてたもれ)、検索ワードなどから想像するに、うちのブログで最もよく読まれている記事は『エスター』なんじゃないかな、と思うです。なにしろ、「イザベル・ファーマン」で検索して来られる方がとても多い。特にファーマンについて詳しい言及があるわけではないエントリーなので、結構申し訳ない気持ちで一杯なわけですが(汗)。
で、その『エスター』のジャウマ・コレット=セラ監督の作品です。
リーアム・ニーソン主演。『96時間』や『Aチーム』で大暴れしてくれたタフな親父が、みたび頑張る!
予告編では、妻であるはずの女性に、あなたなんか知らないと言われた主人公が、それじゃ一体おれってだれなんだ、とオロオロするシーンが使われていたので、ズバコーーンとフォーガットンする話だったら困るなぁ(翻訳:宇宙人等の人知を超える存在が人知を超える目的と人知を超える方法で人知を超えて主人公を翻弄するので、結局人知ではわけがわからない話だったら困るなぁ)、と思っていたら、ちゃんときっちりサスペンスでしたので、ひとまず安心です。タフな親父も健在だ。
学会に出席するためにベルリンを訪れた植物学者のマーティン・ハリス(リーアム・ニーソン)は、ホテルに着いたところで、パスポート等が入ったアタッシュケースを空港に置き忘れてしまったことに気づき、妻のエリザベス(ジャニュアリー・ジョーンズ)に一言も告げず、慌ててタクシーで引き返す途中、事故に遭って4日間昏睡状態に陥ってしまう。
ようやく昏睡から醒め、ホテルに戻ると、妻は自分を知らないといい、マーティン・ハリスを名乗る別人(エイダン・クイン)こそが自分の夫だと言う。
途方に暮れたマーティンは、旧友のロドニー・コール(フランク・ランジェラ)に電話で泣き付くも、時まさにアメリカは感謝祭休暇の最中で、コールは掴まらず、事故に遭ったときに乗っていたタクシー運転手のジーナ(ダイアン・クルーガー)をつきとめ、何か知らないか尋ねようとするが、不法移民であるジーナはマーティンの接触を嫌う。
いよいよ自分は狂ってしまったのかと戦慄するマーティンは、しかし、謎の男に襲われることにより、確かに自分がなんらかのトラブルに巻きこまれていることを知る。そのトラブルとは果たして?
この話、とにかく配役がステキ、と思いました。
闘うタフガイのニーソンがいいのはいつもの通りですが、まず、妻を演じるジャニュアリー・ジョーンズがいい。華奢で楚々とした風情の、ハッとするすような美女なので、記憶を失ったマーティンが、とにかく妻を守らなければ! と焦れ焦れになる気持ちがよくわかる反面、どこかアンニュイで不機嫌でミステリアスな雰囲気は、これは絶対何かあるな、と思わせるものがあり。ゾクゾクします。綺麗なひとだー。
同じく綺麗どころで、タクシー運転手のジーナを演じたダイアン・クルーガーもよい。基本的に善良で優しく、マーティンに対して同情的ですが、精神的に強くて、決断力・行動力があり、荒事に巻きこまれても動じない。しかも、その設定にはちゃんと、ボスニア紛争で一家全員惨殺された過去があるという裏づけがあり、なるほど、そんな体験をすれば腹も据わるよね、というのが納得できる。彼女の存在はマーティンにとっての支えであると同時に、映画的清涼剤にもなっています。
そして、旧東ドイツでスパイをしていた探偵のエルンスト・ユルゲン(ブルーノ・ガンツ)! この存在感がものっそよいです。かれは、マーティンが入院した病院の親切な看護婦が、なにかお困りのようだから、わたしの知人の探偵に相談してみたら? と紹介してくれた人物なのだけど、正直、やや凡庸な印象だった前半の物語が、ガンツが出てきた途端、俄然凄みと面白みを増してくる感じがします。惜しむらくは、退場があっさりしすぎだったなぁ。もうひとふんばりも二ふんばりもしてほしかったところですが……。 それにしても、旧東側のスパイ、という設定は、ベルリンというロケーションとあいまって絶好のスパイスでありました。ごちそうさまでした。
でも、わたし的に一番大喜びだったのは、「もうひとりのマーティン」を演じたのが、エイダン・クインだったとゆーことです。クインとニーソン、『マイケル・コリンズ』(1996)で共演したふたりの再共演ですよ☆ これはわたしにとって、思いがけないサプライス・プレゼントでありました。わたしがエイダン・クインを最初に認識したのがこの映画だったので、その当時、リーアム・ニーソンがあんなにでかいとは知らなかったわたしは、ニーソンの親友を演じたエイダン・クインのことを、ティム・ロスのように小柄な役者さんだと思いこんでいたものでした。なつかしいわぁ。(なにもティム・ロスを引き合いにだす必要はなかろーに)。
ちなみに、エイダン・クインは、「白木庵的ステキな声の役者リスト」に入ってらっさる美声の持ち主。前回観たのが、ロドリゴ・ガルシア監督の『美しい人』(2005)だったのですが、5年の間にすっかり老けこんじゃってて、びっくりしました(汗)。……髪の毛は、あれはわざとあんな色にしたのかな。ナチュラルに白髪だったのかな。それに、太った。(いい加減オマエ、うるさいヨ)。
あと、もちろん、怪しい黒幕を演じたフランク・ランジェラも役柄にぴったりで、凄みがあってステキでしたし(ただし、こちらも、ガンツ同様、退場があっさりしすぎだったので、もうひとふんばりも二ふんばりもしてほしかったですが)、事件のキーを握るドイツ人科学者を演じた、「白木庵が観る全てのドイツ映画に必ず出てくる」(それは言いすぎ)セバスチャン・コッホも、如何にもひとのいい善良な科学者という雰囲気でとてもよかったです。
ストーリー的には、さあ、驚天動地のサスペンスをやるぞ! と意気込みも勇ましく、次々と伏線をはっては、きちんと律儀に回収していく手腕はお見事ですが、やっぱり、設定自体の粗が目だったです(汗)。ズバコーーンとフォーガットンする話でなかったことは幸いでしたが、オチの弱さはきわめて残念です。
とにかく何より、オイオイなのは、普通、貴重品を入れたアタッシュケースを、あんな風に置き忘れたりはしないでしょう。ぼんくらな団体旅行客だってしないミスを、ニーソンのようなプロフィールの人間がやるなんて、ありえない。そこから全てが始まってるけど、そこから全てがまちがっとる(汗)。
そして、元凄腕スパイのガンツをして、かれらに目をつけられたら最後、逃げ延びる手段はない、と自殺の道を選ばせるほどの暗殺者集団、という設定であるにもかかわらず、組織のひとびと、どなたもこなたも手際が悪すぎ(汗)。殺しに関してはど素人のダイアン・クルーガーにいいようにしてやられるっちゃ、どういうこっちゃ。
毅然と計画を遂行していたジャニュアリー・ジョーンズだって、最後の爆弾処理の手際の悪さは噴飯ものだし。あれはナイですから。プロじゃないですから。
でも、観ている間は、ニーソンのかっこよさもあいまって、存分に楽しませていただけましたので、なんの文句もありません。サンクス☆
by shirakian
| 2011-05-12 19:12
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