2010年 12月 14日
デイブレイカー
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★ネタバレ注意★
ヴァンパイアブームって、まだ真っ盛りなんでしょうか、そろそろ終焉したのでしょうか。
終焉したのだとしたら、この作品が掉尾を飾ったことになるのかもしれない。
オーストラリアからやって来た、ピーターとマイケルのスピエリッグ兄弟が放つ、ヴァンパイアSFアクションであります。
『クロッシング』に続き、イーサン・ホークの出演作、という程度の何気ない興味で、さほど期待もせずに観に行ったのですが、これがなかなかの拾いもの。創意工夫を凝らした意欲作だったのであります。面白かった☆ サンクス、ピーター&マイケル!
2019年。一匹のコウモリによって媒介されたウィルスが、人類の95%をもヴァンパイアに変えてしまった社会。ヴァンパイアたちが、日差しを避け昼夜逆転した生活ながら、かつてと変わらず地下鉄で会社に出勤し、それぞれの仕事をこなす生活を続けている一方で、人間は捕獲され、食料(血液)供給源として飼育されていた。しかしその数は圧倒的に不足しており、ヴァンパイア社会には深刻な飢えが蔓延しつつあった。
こういう設定は、まあ、オーソドックスなものであろうかと思うのですが、この映画が一番ユニークな点は、物語の主人公として、ヴァンパイアに対抗するヒューマン・レジスタンスのメンバーではなく、代用血液の開発に勤しむヴァンパイア科学者のエドワード・ダルトン(イーサン・ホーク)をもってきたことでしょう。
わたしなんか、頭っからホークは人間側代表、と思い込んで見始めたので、冒頭の登場シーンで、ホークが鏡に映らない、という演出を観て、思わずゾクゾクしてしまいました。おおお、そうきたか、そうきたか、と舌なめずりするような気持ち。こういうジャンルの映画を観るときの醍醐味はコレだよねぇ♪
というわけでこの映画、吸血鬼は太陽に弱いとか、鏡に映らないとか、不死であるけど新陳代謝はなく心臓は停止した状態であるとか、杭で心臓を突き刺したり頭を切り落としたりしないと殺せないとか、ヴァンパイアに血を吸われた人間はヴァンパイアになってしまうとか、ヴァンパイアものの定石をきちんと踏まえた上で、新たな独自設定が加えられています。
なんと恐ろしいことに、この映画のヴァンパイアたちは、人血を飲まないでいると、身体が変異してしまうのです。耳が尖り、急速に老化が進み、異形のものに変わってしまうのみならず、理性を失い、ヴァンパイアを襲撃するようになってしまう。こうした存在はサブサイダーと呼ばれ、大都市を中心に、地下に巣くい、大量に増殖しつつあり、ヴァンパイアにとって大きな脅威となりつつありました。そのため、軍隊を出動させて、大量に捕獲・処刑が行われていたのです。
また、ヴァンパイアのサブサイダー化は、単に人血の欠乏によるのみならず、ヴァンパイアの血を吸っても発症するし、さらには、自分で自分の血を飲むと、さらに一層加速して進行してしまう、ということになっている模様です。なので、この世界のヴァンパイアたちは、どんなに仲間が増えても、仲間の血でとりあえずの空腹を満たすことはできない、という縛り。エドガーはアランに血(エナジー)を分けてあげたりしてたのに、ここでは、そういうことはできないのね。
そして、それ以上に大きな独自設定として、ヴァンパイアはある行程を経ることによって、人類に返り咲くことができる! という隠しダマがございまして、これこそが、限られた食料供給源である人類が絶滅しつつある、という究極の食料危機を回避する究極の解決策になるのでは? という展開であります。
だけど、ヴァンパイアのだれもが、不可抗力の感染により、意志に反してヴァンパイアになってしまったわけではなく、ヴァンパイアの不死性に価値を見出し、自ら望んでヴァンパイアであることを選んだ者だっているわけで、ヴァンパイアが全員人間に戻ってメデタシメデタシとはならない模様。そこに利害の対立と葛藤が生じてしまう。
そもそもが、血液供給を担っている製薬会社の社長、チャールズ・ブロムリー(サム・ニール)なんてひとは、ヴァンパイアがみんな人間に戻ってしまっては千載一遇の金儲けのチャンスを逃してしまうわけで、人間に戻ることを望まないどころか、積極的に人間回帰の試みを邪魔する立場にあります。だって、人造血液の完成に、ようやくこぎつけたタイミングだったんだもん。
ヴァンパイアにとって、血液というのは、ほんと、すごくデリケートな食材であるらしく、さきほど述べたがごとく、人間の血液じゃなければ絶対にダメで、人造血液の適合を調べる人体実験(っていうか、ヴァンパイア実験)では、人造血液を与えられた被検体ヴァンパイアが、なんつーか、こう、バシャーッ! っとですね、破裂しちゃったりするわけです。怖いですね。この映画、その類の描写には、容赦がありません。やるときゃ、とことん、やるタチらしいです。
キャストについて述べれば、このわかりやすい悪役を演じたサム・ニールが、なかなかはまってて適役でした。エルビスかぶれのヒューマン・レジスタンスの闘士ライオネル・コーマックを演じたウィレム・デフォーは、キャラは立ってるし、あちこち純粋にカッコイイシーンもあって、全く悪くないんですが、ちょっとキャラ設定上、狙いすぎのような気もします。やや、あざとい(あくまで演技ではなく、設定が)。
イーサン・ホークは相変わらずヘタレてて、ステキ。究極の解決策を見つけ、人類とヴァンパイアの救世主となり得るキャラクターのくせに、ほんとにもう、相変わらずヘタレててステキ(笑)。
モラル上、どんなに空腹でも絶対に人血は飲まない、と心に誓った硬骨漢でありながら、人血を飲まないことによるサブサイダー化の進行により、耳がとんがってきてることに気づいてオドオドしちゃったりするし、そしてまた、徹底的に太陽光を避けるために、コンピュータで管理された、セキュリティは万全のはずの家に住みながら、あっさりと、あまりにもあっさりと、色んなひとに家宅侵入されちゃってる迂闊さっぷりなども、期待されるヒーロー像にはほど遠いホーク的ヒーローでナイスです。だいたい、この映画のヴァンパイアって、別に身体能力は高くないみたいです。人間と変わらない。ただ不死なだけ(っていうか、実際問題として、もうすでに死んでる存在なわけだし)。
そして、是非とも言及しておかねばならないのが、ホークの弟フランキー・ダルトンを演じたマイケル・ドーマンであります。
フランキーは軍人。この時代のヴァンパイア軍人の仕事は、サブサイダーを殲滅したり、血液供給源の人間を捕獲したり、兄エドワードが目指す、人類とヴァンパイアの共存といった世界とは真逆のものです。そして、そうでなくても、エドワードとフランキーの間には、微妙なわだかまりがあったっぽい。なぜなら、エドワードがヴァンパイアになったのは、フランキーに襲われたのが原因だったから。
そのことについて、エドワードはずっと、弟に裏切られたと思っていたのだけど、弟はかわいいので、邪険にはできない。ところが実は弟は弟で、人間でいてはこの世界では生き延びられないので、兄を死なせないために、敢て兄の意志を無視して兄の首に噛み付いたのでした。うまくかみあわない、兄弟愛。
で、この弟を演じたマイケル・ドーマン、登場シーンからハッとなるほどのイケメンさんなのでありました☆ 全くのニューフェイスだったんですが、どうやらオーストラリア期待の若手であるらしいです(出身はニュージーランド)。サム・ワーシントンに引き続き、またしてもやってくれましたよ、ダウン・アンダー。まっこと、かの地は、人材の宝庫ぜよ。初登場でいきなり観客の注意を喚起できる力(っていうか、美貌(笑))のある役者さんですから、将来ヒュー・ジャックマンになるのも夢じゃないです。楽しみに見守っていきたいと思います。
ヴァンパイアブームって、まだ真っ盛りなんでしょうか、そろそろ終焉したのでしょうか。
終焉したのだとしたら、この作品が掉尾を飾ったことになるのかもしれない。
オーストラリアからやって来た、ピーターとマイケルのスピエリッグ兄弟が放つ、ヴァンパイアSFアクションであります。
『クロッシング』に続き、イーサン・ホークの出演作、という程度の何気ない興味で、さほど期待もせずに観に行ったのですが、これがなかなかの拾いもの。創意工夫を凝らした意欲作だったのであります。面白かった☆ サンクス、ピーター&マイケル!
2019年。一匹のコウモリによって媒介されたウィルスが、人類の95%をもヴァンパイアに変えてしまった社会。ヴァンパイアたちが、日差しを避け昼夜逆転した生活ながら、かつてと変わらず地下鉄で会社に出勤し、それぞれの仕事をこなす生活を続けている一方で、人間は捕獲され、食料(血液)供給源として飼育されていた。しかしその数は圧倒的に不足しており、ヴァンパイア社会には深刻な飢えが蔓延しつつあった。
こういう設定は、まあ、オーソドックスなものであろうかと思うのですが、この映画が一番ユニークな点は、物語の主人公として、ヴァンパイアに対抗するヒューマン・レジスタンスのメンバーではなく、代用血液の開発に勤しむヴァンパイア科学者のエドワード・ダルトン(イーサン・ホーク)をもってきたことでしょう。
わたしなんか、頭っからホークは人間側代表、と思い込んで見始めたので、冒頭の登場シーンで、ホークが鏡に映らない、という演出を観て、思わずゾクゾクしてしまいました。おおお、そうきたか、そうきたか、と舌なめずりするような気持ち。こういうジャンルの映画を観るときの醍醐味はコレだよねぇ♪
というわけでこの映画、吸血鬼は太陽に弱いとか、鏡に映らないとか、不死であるけど新陳代謝はなく心臓は停止した状態であるとか、杭で心臓を突き刺したり頭を切り落としたりしないと殺せないとか、ヴァンパイアに血を吸われた人間はヴァンパイアになってしまうとか、ヴァンパイアものの定石をきちんと踏まえた上で、新たな独自設定が加えられています。
なんと恐ろしいことに、この映画のヴァンパイアたちは、人血を飲まないでいると、身体が変異してしまうのです。耳が尖り、急速に老化が進み、異形のものに変わってしまうのみならず、理性を失い、ヴァンパイアを襲撃するようになってしまう。こうした存在はサブサイダーと呼ばれ、大都市を中心に、地下に巣くい、大量に増殖しつつあり、ヴァンパイアにとって大きな脅威となりつつありました。そのため、軍隊を出動させて、大量に捕獲・処刑が行われていたのです。
また、ヴァンパイアのサブサイダー化は、単に人血の欠乏によるのみならず、ヴァンパイアの血を吸っても発症するし、さらには、自分で自分の血を飲むと、さらに一層加速して進行してしまう、ということになっている模様です。なので、この世界のヴァンパイアたちは、どんなに仲間が増えても、仲間の血でとりあえずの空腹を満たすことはできない、という縛り。エドガーはアランに血(エナジー)を分けてあげたりしてたのに、ここでは、そういうことはできないのね。
そして、それ以上に大きな独自設定として、ヴァンパイアはある行程を経ることによって、人類に返り咲くことができる! という隠しダマがございまして、これこそが、限られた食料供給源である人類が絶滅しつつある、という究極の食料危機を回避する究極の解決策になるのでは? という展開であります。
だけど、ヴァンパイアのだれもが、不可抗力の感染により、意志に反してヴァンパイアになってしまったわけではなく、ヴァンパイアの不死性に価値を見出し、自ら望んでヴァンパイアであることを選んだ者だっているわけで、ヴァンパイアが全員人間に戻ってメデタシメデタシとはならない模様。そこに利害の対立と葛藤が生じてしまう。
そもそもが、血液供給を担っている製薬会社の社長、チャールズ・ブロムリー(サム・ニール)なんてひとは、ヴァンパイアがみんな人間に戻ってしまっては千載一遇の金儲けのチャンスを逃してしまうわけで、人間に戻ることを望まないどころか、積極的に人間回帰の試みを邪魔する立場にあります。だって、人造血液の完成に、ようやくこぎつけたタイミングだったんだもん。
ヴァンパイアにとって、血液というのは、ほんと、すごくデリケートな食材であるらしく、さきほど述べたがごとく、人間の血液じゃなければ絶対にダメで、人造血液の適合を調べる人体実験(っていうか、ヴァンパイア実験)では、人造血液を与えられた被検体ヴァンパイアが、なんつーか、こう、バシャーッ! っとですね、破裂しちゃったりするわけです。怖いですね。この映画、その類の描写には、容赦がありません。やるときゃ、とことん、やるタチらしいです。
キャストについて述べれば、このわかりやすい悪役を演じたサム・ニールが、なかなかはまってて適役でした。エルビスかぶれのヒューマン・レジスタンスの闘士ライオネル・コーマックを演じたウィレム・デフォーは、キャラは立ってるし、あちこち純粋にカッコイイシーンもあって、全く悪くないんですが、ちょっとキャラ設定上、狙いすぎのような気もします。やや、あざとい(あくまで演技ではなく、設定が)。
イーサン・ホークは相変わらずヘタレてて、ステキ。究極の解決策を見つけ、人類とヴァンパイアの救世主となり得るキャラクターのくせに、ほんとにもう、相変わらずヘタレててステキ(笑)。
モラル上、どんなに空腹でも絶対に人血は飲まない、と心に誓った硬骨漢でありながら、人血を飲まないことによるサブサイダー化の進行により、耳がとんがってきてることに気づいてオドオドしちゃったりするし、そしてまた、徹底的に太陽光を避けるために、コンピュータで管理された、セキュリティは万全のはずの家に住みながら、あっさりと、あまりにもあっさりと、色んなひとに家宅侵入されちゃってる迂闊さっぷりなども、期待されるヒーロー像にはほど遠いホーク的ヒーローでナイスです。だいたい、この映画のヴァンパイアって、別に身体能力は高くないみたいです。人間と変わらない。ただ不死なだけ(っていうか、実際問題として、もうすでに死んでる存在なわけだし)。
そして、是非とも言及しておかねばならないのが、ホークの弟フランキー・ダルトンを演じたマイケル・ドーマンであります。
フランキーは軍人。この時代のヴァンパイア軍人の仕事は、サブサイダーを殲滅したり、血液供給源の人間を捕獲したり、兄エドワードが目指す、人類とヴァンパイアの共存といった世界とは真逆のものです。そして、そうでなくても、エドワードとフランキーの間には、微妙なわだかまりがあったっぽい。なぜなら、エドワードがヴァンパイアになったのは、フランキーに襲われたのが原因だったから。
そのことについて、エドワードはずっと、弟に裏切られたと思っていたのだけど、弟はかわいいので、邪険にはできない。ところが実は弟は弟で、人間でいてはこの世界では生き延びられないので、兄を死なせないために、敢て兄の意志を無視して兄の首に噛み付いたのでした。うまくかみあわない、兄弟愛。
で、この弟を演じたマイケル・ドーマン、登場シーンからハッとなるほどのイケメンさんなのでありました☆ 全くのニューフェイスだったんですが、どうやらオーストラリア期待の若手であるらしいです(出身はニュージーランド)。サム・ワーシントンに引き続き、またしてもやってくれましたよ、ダウン・アンダー。まっこと、かの地は、人材の宝庫ぜよ。初登場でいきなり観客の注意を喚起できる力(っていうか、美貌(笑))のある役者さんですから、将来ヒュー・ジャックマンになるのも夢じゃないです。楽しみに見守っていきたいと思います。
by shirakian
| 2010-12-14 20:04
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